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封蓮貴  作者: 如月皇夜
第一章 旋律
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第2夜 神の子02

―夜、愛羅は姉である蒼葉に会う為に離れにきていた。

緋守家の長女であり、やはり次期当主候補であるはずなのだが、彼女も翠同様当主の座には興味なく。

一番下の弟である愛羅に譲ると公言し、母屋ではなく離れで生活している。

本人曰く「離れの方が傍観者として丁度良い」らしく、滅多に母屋にはこない。

会いたければ会いにこい、が彼女の言い分だ。


コンコンッ


「姉さん、僕、愛羅です」


「愛羅?入っておいで」


姉の許しを貰い、離れに入った愛羅を待っていたのは藍色の長い髪を後ろの方で緩やかに結った緋色の眼の少女。

彼女こそが愛羅の姉であり、術式のエキスパートである緋守蒼葉その人だ。


「お前が私を訪ねて来るとは珍しいね。何か困り事でもあったかな?」


何処となく独特な喋り方で話す姉に、愛羅は一連の事を話した。

愛羅の話を無言で聞いていた蒼葉の眼がスゥゥゥッと細められた。

それに気付いた愛羅は、やはり今回の事件は複雑なものなのだと内心溜息を吐いた。


「――…話は分かった。で、愛羅…お前はこの事件どう読む?」


「…まだ調査し始めたばかりな上、分からないことも多いので確信は持てませんが…。今回の件は、術士が関わっている可能性が非常に高いと思われます。それも、カガミを封じるほどの力を持ち、亜空間までも生み出すことが出来る…かなりの使い手でしょう。正直、今回の事件は軽いものじゃない」


愛羅の言葉に、蒼葉は満足げな笑みを浮かべ、手に持っていた扇をパチンと閉じた。


「ふむ…流石私の弟だ、着眼点が良い。お前も気付いている通り、カガミを封じるにはかなりの力が必要だ。アレは戦闘能力は低いが、高位の妖魔。一筋縄では動きを止められん。そして亜空間…。これは高位の術士でも中々難しい。作るのに多量の霊力・妖力を必要とするからな。もし、巧く作れたとしても…作った当人は霊力を根こそぎ使った状態、当分は霊力も戻らない」


「けれど、今回亜空間を作ったであろう人物は、封魔の術式も施してました」


愛羅が眉を顰めると、蒼葉も軽く頷き言葉を続ける。


「それだ、愛羅。いくら高位の術士でも亜空間を作った上、強力な封魔の術を施すのなんて不可能。もし出来るとしたら」


「出来るとしたら…?」


「我ら緋守の血筋の者…それも直系、早く言えば、我ら姉弟か…我らと同様の力を持つ残り2家の者ぐらいだな」


蒼葉のその言葉に、愛羅は眼を見開いた。


「残り2家…と言うと、氷季家ひょうりけ地藤家じとうけですか?」


「そう、氷季と地藤も我ら緋守と同等の力を持っている。しかも、当主格となれば尚更、な」


「ですが…その2家が今回の件に関わっていたとして、何かしらメリットがあるとは思えないんですが」


確か、その2つの家系は利益無しには動かないはずでは?と問う愛羅に、蒼葉は少し考え込む様子を見せ


「ふむ…その辺は愛羅、これからの調べ次第で分かってくるのではないか?」


「………そうですね、今現在の段階では分かりませんが、調べると何か分かるかもしれません。姉さん、今日はありがとうございました」


「いや、また何か助言が欲しければ訪ねて来ると良い。お前は私の大事な弟だからな、助言くらいはしてやろう」


そう言って柔らかく笑う姉に愛羅は軽く礼をして離れを離れた。

愛羅を見送った蒼葉の元に、スゥッと全身を黒で包んだ青年が姿を見せた。


「蒼葉」


影羅えいら、どうだ何か分かったか?」


「まぁ色々な。今回、あいつが関わってる件…紅弥の坊主も受けたらしい」


「おや…、あの子もねぇ…。まぁ、父上共も早急に解決したいのでしょう。あそこの地にはアレがいるから」


「アレ、な。愛羅には言わなくて良いのか?」


「あの子は己で気付くだろうよ。私が教えては意味がない。

しかし…アレのいる地での亜空間作成…やはりかなりの実力を持つ術士が関わってるのは確かだな。

氷季か、地藤か…どちらかの当主格か、はたまた両方か」


「厄介な事になったな」


「まぁ、あの子なら上手く乗り越えられるだろう」


そう言って、蒼葉は意味深な笑みを浮かべた。







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