第2夜 神の子01
「相手が術士…しかも、禁術を行ってる可能性が高い…となると」
「私と琥珀と紫苑が有利ね」
紅林の言葉に、4人も軽く頷いて同意を示す。
「俺は物理系は良いが、魔術系は苦手だからな。そう考えると紅林や紫苑の方が適してる」
「僕は補助といっても回復や異常状態系だから、探索系の琥珀の方が術式を見つけやすいと思う。琥珀も、回復系の術は少し使えるし」
湊と翡翠はそう言って愛羅を見上げる。
愛羅も、2人の言いたいことは分かってる為、首を縦に軽く振った。
「でも、湊と翡翠にも控えてて欲しいんだ。今回の件は、本当に読めないからね。何かあってからじゃ遅いし」
「了解。俺と翡翠は、その首飾りの宝玉の中で待機しとく」
「必要になったら名前を呼んで?そうしたらすぐに出てくるから」
「うん、わかった」
愛羅が頷いたのを見て、湊と翡翠はスゥッと姿を消した。
否、首飾りの宝玉の中に入っていった、という方が正しい。
「これからどうするんですか?愛羅」
琥珀の問いに、愛羅は少し考える素振りを見せ
「今夜、姉さんが帰ってくるんだ。術式に関しては、姉さんの方が詳しいから訊いてみる。それまでは待機だね。なにより、さっきまで亜空間にいたから、焔も疲れてるし」
床に寝そべった焔にちらりと視線を移して愛羅は言った。
焔は「少し疲れただけ」と言っていたが、誰の目から見てもかなり体力を消耗しているのが分かった。
彼の意地っ張りな性格を知っている愛羅は口に出して言わないが、彼がここまで無防備になることは珍しいことだ。
大切な相棒である彼に無理はさせたくない、それが愛羅の答えだ。
「……分かった。明日、動くのね?」
「うん。紫苑、多分、今回の件は君にかなり負担を掛けるかもしれない。ごめんな」
「謝らないで。私、愛羅の役に立てるの、嬉しい」
ふんわりと笑う紫苑に、愛羅もふっと微笑を零した。
そんな様子に、紅林と琥珀は驚いたような、嬉しそうな複雑な表情をしていた。
「ねぇ、琥珀。紫苑があんな風に笑うの見たの、久しぶりじゃない?」
「はい。…紫苑が笑顔を見せるのは、愛羅だけですから」
そして愛羅に呼ばれたのも、本当に久々だから。
それぞれの属性の頂点に立つ自分たちは、異界ではいつも一緒に行動しているが、紫苑がこんな風に柔らかく笑うことなんてなかった。
愛羅の存在は偉大ね、と紅林は笑った。
そうですね、と琥珀も嬉しそうに笑った。
「紅林?琥珀?なに笑ってんの?」
何か面白いことでもあったのか?と聞いてくる愛羅に、紅林と琥珀はクスクスと笑って「なんでもない」と返した。
不思議に思った愛羅だが、深くは追求しなかった。
大事なことなら彼女たちが黙ってるなんてことはない、と信じてるからだ。
「じゃぁ、姉さんが帰ってくるまで今までのことをまとめようか」
愛羅のその言葉に3人は集まって、今までのことをまとめ始めた―――。