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『お風呂で読んではいけない 』  ……  そして、底から来る   」  作者: やまちゃぁん


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7/10

第七話 新たな読者

水の底からやってくる


蒼依あおいは、大学で情報メディアを学ぶ20歳の女子学生。風呂好き、ネット小説好き、お気に入りの読書タイムは、入浴中にスマホ片手にアプリで“異世界モノ”を読むことだった。


その日もいつものように、湯船に身を沈め、薄暗くしたバスルームで読書タイムを楽しんでいた。


ふと目に留まったのは、ランキングの上位にあった未読作品。


『第五話まで公開中・話題沸騰のホラー連載』


興味半分でタップしたその瞬間、画面が暗転した。


――『ようこそ、読者さま』


タイトルも作者名も出ていない。だが冒頭の語りは異様に滑らかで、蒼依の指を止める間もなく、ページは進み始めた。


読み始めてすぐに気付く。


……この話、どこかで見たことがある。


湯船、鏡、黒い影――


「これ、私じゃん……?」


そう思った瞬間、背筋がぞっとした。湯が揺れた。振り返ると、蛇口も何も触れていないのに、水面が波打っていた。


スマホの画面が勝手にスクロールし、文字が浮かぶ。


『次は、あなたの番です』




蒼依は風呂場から逃げるように飛び出した。全身びしょ濡れのままリビングに転がり、スマホを床に投げた。


「ふざけないでよ……誰……っ」


けれど、スマホは起動したまま。「第六話」が開かれていた。


『由梨の物語は、いったん閉じた。だが、読者は終わらない。次の“語り手”が必要です』


蒼依は指を震わせながら読み進める。


そこには“自分”の名前が書かれていた。


『2025年8月、新たな読者・蒼依は、湯の中で物語と出会う』




翌日、友人にこの話をしようとしたが、口を開いた瞬間、耳に水音が響いた。


ピチャン……


口が動かない。喉が塞がれたような苦しさ。


家に戻り、スマホを確認すると、新たな投稿が表示されていた。


『第七話:新たな読者』――公開中


だが、表示されていたのは“自分”の顔だった。


フロントカメラの映像。


背景は、浴室。




恐怖と混乱の中、蒼依は決意する。


「こんなのおかしい。消さなきゃ」


アプリをアンインストールしようとすると、スマホが再起動し、画面が黒く染まった。


『書くことからは逃れられません』


湯船の水が勝手に張られていく。


蛇口は閉じたままなのに、底から溢れるように湧き上がっていた。


「いや……来ないで……っ」


しかし、すでに足首まで水が迫っていた。




その夜。


蒼依の部屋には、誰もいなかった。


ただ、バスルームのドアが少しだけ開いており、中には濡れたスマホと、黒いノートが一冊――


そこには、こう書かれていた。


『第八話 執筆予定:2025年秋、次の読者に引き継がれる』



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