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1−5

 目的の建築物からやや離れた距離に、詞御と依夜は身を潜めていた。お互いに得意とする獲物を携えて。

 詞御はいつもの打刀わとうの大きさに武具を顕現。

 依夜は新調した三節棍の柄を一つに繋ぎ自身の身長と同じくらいの戦斧を展開していた。


〔さて、作戦の再確認だ。今回は“上位・丙型”でアジトに乗り込む。いいな、依夜〕

〔は、はい。分かっています詞御さん! 高電圧銃スタンガンで敵を無力化ですね〕


 詞御は念話にて淡々と語る一方で、依夜はかなり緊張した声音で返すという両極端な様相。

 それもそのはず、詞御にとっては()()()()仕事だが、依夜は()()実戦だ。緊張するな、という方が無理だと言うのは詞御たちは理解していた。

 だが、依夜が掲げている信念を貫き通すには乗り越えていかなければいけない。故に、詞御は敢えて気遣いをするのをギリギリまで見守ろうと決めていた。


〔念を押すが、“プラズマ”発生させるなよ。()()()()()以外の階位や無位の賊を()()()しまったら、意味がない。主な犯罪者の名簿は記憶しているから、仮に上位がいれば念話で即伝えるから〕


 そう詞御が依夜に念話をしていると、ルアーハから秘匿の念話が詞御に入り込む。


〔心配には及ばん、高天殿。電圧の調整は儂が行う〕

〔そうか。頼りにしているぞ、ルアーハ〕


 一番危惧したいた所が問題ないと判断した詞御は、改めて目的の建造物を視界に収める。それに釣られて依夜も同じものを見る。


〔さてこれから突入するわけだが、依夜は拠点に攻め入るのは初めてだよな?〕

〔はい、その通りです。実戦は初めての経験です〕

〔なら大まかに説明すると、拠点を制圧する場合は相手の十倍以上の戦力を有しなければいけない。かつ正面突破は、今回に於いては愚策になる、()()()、な〕


 詞御の最後の言葉に依夜は軽く首を傾ける。最後の言葉に引っ掛かりを覚えたからだ。それを察した詞御は、言葉を続ける。


〔少数で拠点制圧するなら、速度を最大限に発し速攻で首謀者を捉えるのが普通。無駄な戦闘を避けれるしね。けれど、今回は“一網打尽”が目的。敢えて目立たないと、賊の輩を炙り出しできない。それに悪手をした場合の経験は積むのも一つの勉強だ。今後も自分の浄化屋稼業に同行するなら尚更、な。と、云う訳で――〕


 詞御は、携帯していた袋に手を入れる。

 そして、とある代物を取り出す。それを見てギョッとする依夜。

 だが、それを無視して()()()()()を建造物の城門に投げ込んだ。


 次の瞬間、城門は激しい光と振動と轟音と爆発の衝撃波で粉々に砕けた!

 その光景に狼狽した念話が依夜から発せられる。

 何故なら、旧時代の兵器の使用は法律で使っていけないことになっているからだ。


〔ちょ?! 詞御さん? 今のダイナマイトですよね!?〕

〔法のことなら気にすることないぞ。女王から使用許可も事前に貰っているから。では、いくぞ!〕


 詞御は普段の足取りで未だに噴煙がもうもうと立ち込める城門に向かう。 

 一瞬呆けていた依夜も慌てて追いかける。

 破壊された城門をくぐり抜けた瞬間、鉛玉の驟雨しゅううが詞御と依夜に降り注ぐ。


「これが、一つ目の悪手。こう堂々と入ると、中の住人に気付かれてしまい敵襲を受ける。“悪意”のある攻撃は肉体的には問題なくとも、慣れていない人間には堪える。学園では体験できないだろう?」

「確かにその通りですが、もうちょっと手心をしてくれても!」


 昂輝を纏う倶纏使いには、旧時代の兵器は一切通用しない。しかも二人とも見た目こそ下位・乙型だが、実際は“上位・丙型”のため昂輝の量も密度も全くと言っていいほど桁違い。鉛の弾がいくら増えようが痛くも痒くもない。とはいえ、視覚が遮られてはしまうので、依夜は戦斧を振り回し視界を確保する。

 それとは正反対に詞御は白銀色をしている水晶の刀を振るう事なく、落葉演舞らくようえんぶで流れるように動き、鉛玉の驟雨の一弾とて身体には当たっていない。これは昂輝の消耗を可能な限り抑えるためだ。省エネに越した事はないからだ。

 

 しばらくして鉛玉の驟雨が止み、詞御たちの視界が鮮明になる。

 すると――、


『侵入者だ! 賊は二人で下位・乙型だ。倶纏使い隊、奴らの暴挙を許すな!!』


 拡声器に乗ってこの犯罪組織のかしらからの号令で様々な昂輝色を纏った倶纏使いが詞御たちの周囲を取り囲んでいた。

 依夜がゴクリと唾を飲む。それは学園では決して浴びることのない殺気を帯びた視線を受けたからだ。


〔ここからが依夜の試練ですね〕


 セフィアがそう呟いた直後、依夜にとって浄化屋としての初の戦闘が火蓋を切る!!

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