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1−4

 血霞に沈んだ犯罪者。床に血溜まりが広がる。

 ただ、それを見ての感じ方は三者三様の有り体だ。


 詞御は冷たい目で眼下の始末屋をみて、ジョーズは何が起きたか分からず、事態が飲み込めない。肝心の依夜に至っては足が小刻みに震えていた。


 けれども、詞御は二人の様子は敢えて無視する。

 今は、取り付けた約束を遂行することが先決。と、考えていると、ルアーハからの思念通話がジョーズを除く二人とセフィアに聞こえるように周波数を合わせる。


『見事で鮮やかな戦いじゃったのう、詞御殿。生死を見極めての手加減。そうそう出来るものではない。じゃが、上位ならば殺しても問題ないはず。其処を教えてもらえぬか。依夜の為にも』


 使い手は兎も角、ルアーハの的確な疑問に詞御はつつがなく答える。


『確かに脅威度は上位だから、生死問わずは合っている。が、此奴に依頼した闇の者たちは多い。それらを一掃しないと、また何処かで悲劇が起きる。それを避けるためだ』


 詞御の言葉にセフィアはノーコメント。詞御がそうするのが分かっていたし、何より依夜の成長の為にはルアーハの質問が当然の事だと理解していたから。


『なるほど、理解したわい。にしても、御氏が習得している戦闘技術には舌を巻くぞ。よほど鍛錬を積んだのじゃな。見事な手際じゃった。学ばねばならぬぞ依夜や』

『ルアーハ……』


 相棒たる俱纏のルアーハに叱咤激励を貰った依夜。気付けば先ほどまであった身体の震えは止まっていた。


『さて、これからどうするつもりじゃ、詞御殿?』

『始末屋は支部に引き渡し、その後は彼らに任せるさ。今すべきことはジョーズの頼みを遂行すること。その為に、彼が所属していた組織を壊滅させる。悪鬼の巣窟は綺麗に浄化しないと、ね。その時は力を借りるよ、ルアーハに依夜』


 名を呼ばれてビクッと反応する依夜。

 正直いって、自信が無かったからだ。でも、それでも詞御が頼ってくれた。その期待に報いたい、とも強く思った。詞御の言葉は力をくれる、と依夜は改めて実感した。


 故に、


『分かりました、詞御さん。わたし頑張ります!』


 その言葉を訊いて、


(まずは第一段階は乗り越えたか。問題は山積しているが、一つ一つ登ってもらわないと。キョウコさんの意思を無駄にしない為にも)


 以前、依夜から聞いたことは忘れていない。

 依夜が進むべき道を叶えて上げるのも自分の役目と決心したのは自分自身なのだから。


「少し女王様と話をしたい。許可を得る必要があるから、奴らを一掃するには、ね」


 そう言うな否や、詞御は“あらかじめ”教えてもらっていた秘匿回線を開き、自身の思念と繋げる。

 その間、他の面々は詞御の話が終わるのを待つしかなかった。が、それも、ものの数秒しか掛からなずに、詞御は背後を振り向かずに依夜たちに言葉を掛ける。


「では、現地に向かおう。後部座席は狭いけれど、そこは我慢してくれジョーズ」

「あぁ……それは問題ない。けれど本当に乗り込むのか? アジトにも戦闘系の倶纏

使いもいるはず。流石にこの始末屋ほどの驚異度の階位はいないと思うが、他勢に無勢だ。危険すぎる」


 ジョーズの言葉に肩をすくめる詞御。

 その態度は、『何を今更』というニュアンスを返すのみ。詞御の中ではもう攻略法の算段がついている。

 あとは、粛々に作業を遂行するだけなのだから。

 その時、詞御の携帯端末に一通のメールが届く。


(さすが女王陛下。仕事が早い。許諾証も得た事だし、思ったよりスムーズに行きそうだ。あとは――)


 詞御が思案した途中に、ルアーハから秘匿念話が飛び込んでくる。


『詞御殿。依夜に気を使って配慮してくれるのは分かる。多少の失望感を抱いているのも理解しておる。だからこそ、依夜には沢山の実践経験を積ませないといけない。“戦い”に少しでも慣れてもらわればならぬからな』


 詞御の胸中をルアーハに察せられ、少し驚く。

 が、同時に依夜の事をよく見ている、と感嘆する。


『だいぶ荒療治になるぞ、ルアーハ。今の依夜には一つ一つ段階を進めていく必要があると思うが。心が折れる可能性もあるぞ?』

『そこは儂がカバーする。キョウコ殿の遺志を引き継ぐなら、この程度の戦闘はこなしてもらわねばならぬ。故に、遠慮は無縁じゃ、詞御殿』


 長年見てきた依夜の倶纏たるルアーハの言葉。

 それを受けて、詞御も腹を括った。かなりスパルタになるが、依夜の成長の為だ。

 詞御の浄化屋のスタイルで行こうと心に決めた。


「時間が惜しい。行くぞ」


 駐車場へのアクセスをして、自身の助手席に依夜。後部先にジョーズを乗せて、地下駐車場から目的地に向けて車を走らせるのだった。

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