第3話
小鳥の鳴く音が聞こえる。
男は大胆に身体を起こし、目を瞑ったまま数秒間静止した後に、ゆっくりと立ち上がった。
大きく伸びをして、半目開きで少女を見る。
少女はまだ眠っている。
「少し、散歩でもしてくるか。」
そう独り言を言って秘密基地から出る。
今日は快晴、夏の終わりかけであることもあって、気温も丁度良い。
ここの山は一周できるようになっていて、散歩をするにはもってこいの場所であった。
男が清々しく山を周っていると、麓の方で声が聞こえてくる。
「もしもし、報告です。子供二人が人鬼を匿っていた場所が分かりました。はい。はい。夕方…承知しました。」
せっかくの散歩日和が台無しである。
男は秘密基地へ戻り、少女を起こした。
「そろそろ調達の時間だ。起きろー。」
「ん〜おはよう」
猫人初めてのおはようだ。おはようと言った。
猫人は寝ぼけながらも男について行く。
日が出ている内は男しか盗みを働かない。猫人は荷物持ち役。でも共犯である。
一仕事(犯罪)を終えた帰りに、男はこれからのことについて話した。
「お前は明日、俺の従兄弟の家に行く。一応俺も一緒に行くが、念のために地図を用意してある。」
渡された地図は鮮明に書き記されていて、左上に 中野と書かれていた。
「中野っていうのは俺とその従兄弟の苗字だ。事情は話してあるから、難なく受け入れてくれると思う。多分。あ、因みに連絡手段はケータイではなく公衆電話だぜ。」
聞いてない。てか今時公衆電話なんてあったんだ。珍しい。
秘密基地が見える頃には日は殆ど沈み、星がいくつか空に浮かび上がっていた。
秘密基地の入り口に近づいたあたりで、中から声が聞こえた。
「なんだいねぇじゃん。ここにお目当ての人鬼がいるって話だったのに。夕方まで待って損したわ。は〜あ、帰るかー。」
猫人と男は身を潜める。
小鳥が移動する音
「ん?そこに誰かいるな?出てこい。」
確かに小鳥の移動する音だったが、不幸なことに見つかってしまった。
猫人と男は秘密基地から出てくる声の正体と対面する。そしてわかった。
声の正体は、組織の一員であった。
「あれ、お前、ホムラだな?中野 炎。君の隣にいる少女はお目当ての人鬼さんじゃないか。一石二鳥。おい、そこの嬢ちゃん。このお面に、見覚えはあるかな?」
言って、赤い狐のお面を取り出した。
あの時に見た、若を刺した、狐の仮面。




