第1話
一日目の夜。
猫人は仰向けになっていた。
一人の男をぼんやり見つめて。
男は手を差し伸べたが、猫人は一人で立ち上がった。
男は気まずそうにしている。
猫人はそんな男を無視して、崖を登りだす。
「お、おい!危ねぇぞ!」
猫人は気にせず登りきり、男を置いて来た道を戻る。
男は置いてけぼりにされて、少し寂しそうであった。
秘密基地に到着した時には、朝日はとっくに上がっていた。
秘密基地の中には平木が用意してくれた沢山のお菓子が詰まった袋が一つ。
猫人は泣いた。
出会ってから別れるまで、短い時間だったはずなのに、確かに猫人には芽生えたものがあった。
猫人はまた数日間動かないでいた。
お腹が空けば余りのお菓子を食べた。
一週間に一つ。
常人であれば餓死してもおかしくないが、猫人は痩せ細ってすらいない。
三年経ってやっと袋の中が空っぽになった。
「お腹すいた…」
秘密基地には誰も来ない。と思っていた。
落ち葉を踏む音が聞こえてくる。
「ひらぎ!」
猫人が咄嗟に出した言葉がそれだった。
「ひらぎ?んな名前の奴知らねえぞー」
出て来たのはあの半月の夜に出会った男だった。
猫人は下を向いた。
「お前、人鬼だろ。」
猫人は頭にクエスチョンマークを浮かべた。
「あーわからないか、お前は人とは少し違った人種なんだ。」
猫人には理解が及ばなかった。
「とりあえずこいよ。俺の右腕になってくれ。」
猫人はついていくことにした。
商店街に着いたと同時に、
「そこで見てな、食糧調達の仕方をよ。」
男は駆け出して、店内に入っては、売られている食べ物や飲み物、金目の物を掻っ攫って行く。
忍者を見ているようだった。
「泥棒だ!今度こそ捕まえろ!」
商店街にいた人々は待ってましたと言わんばかりにそれぞれ武器になりそうな物を取り出して、男を追いかける。
しかし男は俊敏で、颯爽と姿を消す。
猫人は持ち前の動体視力で男を追いかける。
商店街から離れた所で、男を見失ってしまった。と思ったその時、背後から男が現れた。
「よし、秘密基地へ帰ろう。」
男は余裕そうであった。




