若 第四話
5日目の放課後
猫人の耳に珍しい音が入った。
四つ全ての耳に。
それと同時に地面が小刻みに揺れている。
5日目の夜
平木と若はバイクで秘密基地へ向かった。
いつもよりも、静かな夜であった。
中に入るとそこには誰もいなかった。
猫人はどこにいったのか、辺りを探しても見当たらない。
すると平木は、何かを思い出したかのように奥へ進む。その時の平木は、よく分からないような顔をしていた。
そしてその答えはすぐそばにあった。平木は小型カメラをこっそり仕掛けていたのだ。
平木は一つ息を吐く。
「こんなところで防犯カメラが役に立つなんてな。」と。
間違いなく盗撮目的であったが、今はそれどころではなかった。一刻も早く、猫人を見つけなければならなかった。
カメラを確認すると、謎の連中が猫人を気絶させ、バイクで何処かに連れ去ったことが分かった。かなり改造されたバイクだ。
幸運な事に、道路にそのバイクの跡らしきものが、まだ残っている。
その跡を辿り、山を超えた辺りで、見慣れない村が見えた。
一見誰もいないように見えた。廃村だろうか。
村から少し離れた駐車場にバイクを止め、下に見える村へ歩く。
入り口のような所を通り抜けて、さらに奥へ進んだ。
村の一番奥に着いた所で、倉庫らしき所から物音がした。引っ掻くような音であった。
若はそれが猫人の仕業だと思い、その倉庫に向かった。
引き戸を開け、中に入ると、猫人が柵の奥にいた。捕まっていたのだ。しかし、よく見ると、内側からでも開けられるほどセキュリティが低い。
猫人はまだ眠っている。
猫人を担ぎ、その場を去ろうとした時、「ゴトン」と音がした。
「そこにいるのは誰だ!何をしている!」
太い声とともに足音が近づいてくる。
急いで引き戸を開けると、目の前には松明を持った男性がいた。
平木は迷うことなくその男性を蹴った。
男性はうめき声をあげる。
「あの方に、あの方に伝えなければ…」
あの方とは誰のことだろうか、引っ掻くような音の正体はなんだったのか。
若は様々なことに疑問を持ちながら、その場を離れた。倉庫に火が移っているのを知らずに。
若と平木は、もう周りが見えないほど走ることに集中していた。
猫人の耳には確かに、村の住民が騒いでいる音が入った。
バイクが見えた。逃げ切れる。そう思った瞬間。
「若!避けろ!」
若が振り向く。そして何かが一瞬にして通り過ぎる音がした後に、腹部を見る。
明らかに血が滲んでいる。
横に倒れた後、村中に叫び声が響いた。