若 第二話
一日目の夜中
23時過ぎ。
今から山に向かうとなると、警察に見つかれば補導されてしまう。
とは言うものの、最短ルートには交番がある。
遠回りして行くしかないようだ。
「サツに見つからないように…」
若は何度も祈っているようだ。
不幸なことに、若の自転車は修理に出している。足で行くしかないのだ。
少女は窓から警察がいないか確認している。
「よし、行くか。」
少女の手を取り走って向かう。
遠回りの道の途中の学校と公園をチェックポイントとした。
今の所何事もなく公園には着いた。
勝公園と書いてある。
少女がベンチに指を指す。
誰かがいるようだ。
若が近づくと、そこには若の親友が寝ていた。平木 渦真だ。
「お前こんな所で何してんの?」
平木は眠たそうに起き上がった。
「見てわかんだろ。寝てんだよ。」
平木曰く、自転車の鍵を無くしてやっとここまで運んで来れたらしい。
「若こそ何してんだよ。」
「えーとな、」
これまでの経緯を説明し終わり、平木の頭はパンクしていた。
「面白いからついていくわ。」
こうして三人で次のチェックポイント、学校に行く事にした。
学校に着く。全く電気が付いていない学校を見ると、少し不気味なところがある。
少女が地面に指を指す。
鍵が落ちていた。
「っしゃあ!鍵発見!」
平木が大きな声で叫ぶ。
「おい声でけぇよ。」
少女は今度は道の奥を指差す。
誰かが走ってくる。あれは、警察だ。
「逃げろぉー」
「待ちなさい!そこの君たち!」
三人は即座に走って逃げる。
しかし警察は思うよりも速い。このままでは追いつかれてしまう。
「はぁ、はぁ、」
平木は体力がなくなってきたようだ。
「俺、もう、ムリ、」
平木は立ち止まってしまった。
すると少女は、平木は置いて行けと言わんばかりに若の腕を掴んでスピードを上げた。
若は転びそうになるほど少女の足は速かった。
若と警察の姿が段々と見えなくなる。
山に着いた。
「ちょ、ちょっと休憩させてくれ、」
近くにベンチがあるのを見て、そこに座った。
少女も隣に座った。