第5話
血が飛び散る。
狐の仮面が赤に染まる。仮面の赤とは異なる赤色に。
炎は唖然とした。男が少女に爪で刺されている光景が目の前に映っているのだから。
猫人は赤い狐の仮面の人が何かを喋ろうとすることすら許さんとするかの如く、腹に刺さっていない方の手の爪をグンと伸ばし喉に突き刺す。
仮面の人が必死に抵抗する。猫人の腕を掴み、起き上がろうとする。が、びくりともしない。猫人の能力、[猫化]は、筋力が人の倍になるのだ。敵うわけがない。
やがて仮面の人は動かなくなった。
炎はただ立ち尽くしている。
「お前…」
そう呼ばれて振り向いた猫人の目にはまだ微量の殺意が篭っていた。
猫が獲物を狙う目そのもの。
炎は口を開く。次に発する言葉は…
「すげぇなお前!俺の仇をこうも簡単に取ってくれるなんて!強すぎだろ!」
猫人は普段の姿に戻り、きょとんとした。
「あーでも、この死体どうしようか、」
すると猫人、また猫化して、死体を麓へ投げ飛ばした。容赦無い。
二人は秘密基地へ戻る。
食事を済ませ、横になる。もうすっかり夜だ。
「明日、約束通り従兄弟の家まで案内ができそうだ。おやすみ。」
「おやすみ」
猫人初めてのおやすみだ!今猫人がおやすみと言った!あ、もう二人とも寝てしまっている。
日の出の少し前に、猫人は肌寒さで目覚めた。
冬が来る。一日二日の秋を感じる暇はなかった。
猫人が起きた物音で、炎も起きた。
「まだ日は出てないが、行くか。」
炎は秘密基地を出る。猫人はぼーっとしている。
「おーい、まだ眠いのかー、はやくこいよー」
猫人はおぼつかない足取りで秘密基地を出て、炎へついていく。
やがて二人が去って、残った秘密基地には、朝日が照らされていた。




