56.裏切り
2018年10月 ベトナム国境防衛戦
昔からの契約に則り香港を安定化させ、ベトナムまでの海岸線を米国から英国は制圧を任任されている。つまり海岸からの物資支援を完全に断つようにとのことだ。作戦そのものは順調に推移できるだけの戦力と物資供給が成され、着実にベトナム国境線周辺地域へと制圧地域は拡大している。
その状況で宗国軍の一部がベトナムとの国境線を向かい始め、退避のつもりなのかとベトナム側は判断し部隊に警戒だけをさせていたのだが、ベトナムとの国境線近くに配置されていた宗国陸軍の3個師団が国境線へと近付き、ベトナム陸軍の警告も無視し国境を突破した。
宗国軍は00式戦車を先方に攻撃を仕掛け、ベトナム陸軍の保有し運用しているチーフテン戦車Mk9が砲撃を受け炎上している。
「冗談だろ……。 不可侵条約を国連を通して締結しているんだぞ!」
「上にすぐ連絡しろ! 不可侵条約が破られ侵攻を受けていると!」
宗国とベトナムは戦争状態にはない。あくまで国連有志連合に参加した各国であり英国連邦も全てが参戦してるわけではなく、各国それぞれに参戦や不参加を表明しており、ベトナムは安全のために中立を宣言し、宗国政府も公式に認めている。攻めないが攻める事もなく協力もしないが敵対もしないと、手間暇をかけて条文が作られ国際連合の場で公式に締結もしている。
ベトナムも条約に従い英国連邦の駐軍も一時的に停止し撤退済み、空港なども対宗国戦には使用許可はだしていない。いまはベトナム軍しか存在せず平時より格段に軍事力が低下し中進国程度の軍備しか持たないベトナム正規軍のみなのだ。
人口の問題から国民の生活向上を重視し軍備に割り振れる割合も少なく、平時は国境線沿いに配備と訓練に費やされている部隊。そして侵攻してきた宗国軍とほぼ同等であるだけに、最悪の事態を考慮しほぼ全軍を宗国との国境線近くに配備していた事が不幸中の幸いであった。
最初のチーフテンMk9が炎上すると同時にベトナム軍も応戦を開始、榴弾砲の撃ち合いによる互いの歩兵を狙うだけではなく国境を越える偵察車両、歩兵戦闘車に兵員輸送車、そして戦車である。
後方で連絡を受けた司令部は予備戦力を出すべく大慌てで英国連邦軍へと連絡を行い、予備保管している中で使用可能な物を引っ張り出し、そして人員を前線へと急行させる。
「3号車! 3号車 応答しろ!」
「だめだ! 貫通しちまってる!」
撃ち込まれた125mmAPFSDSはチーフテン戦車Mk9の増加装甲を貫き、砲塔内部へと達し戦車兵を殺傷してしまう。
ロシアから正式にライセンス購入した125mm砲と弾を宗国で発展させ、その貫通力はロシア陸軍採用品と同等にまで達している。第三世代戦車という枠では00式戦車は紛れもなく範囲内に属しており、第二世代を近代化したチーフテン戦車とはベースに差が大きくある。
そもそもクウェート及び湾岸戦争においてT-72の125mm砲相手にチーフテンは敗北している。単純な均質圧延装甲では現実的ではないほど装甲が分厚くなければ耐えられないAPFSDS弾、チーフテンの基礎装甲は複合素材ではないのだ。
その威力はチーフテン戦車に取り付けられたドイツ製メクサス爆発反応装甲で減衰したとしても、装着しているのはM型であり距離によっては貫通されてしまう。
「敵戦車への振り分け完了!」
「各車撃ち続けろ! 侵攻を許すな!」
チーフテン戦車Mk9の120mmライフル砲はチャレンジャーⅡで使用されていたL33型という最終生産仕様であり、FCSの近代化と共にその火力は第三世代戦車と同等と言える。チャレンジャーⅡの全数がチャレンジャーⅢへと改修され、その過程で取り外され品質が良い物を改修費を下げる為にチーフテンMk9へと転用しているため決して質が悪いわけではない。
120mmライフル砲から撃ちだされたAPFSDS弾は00式戦車の装甲に阻まれるも、二台のチーフテン戦車の連続した砲撃はほぼ同箇所の00式戦車の砲塔正面への着弾と共に稼働を停止し擱座したようであった。
しかし迫りくる20台もの00式戦車に対してチーフテンも同数の20台、性能で劣りほぼ一撃で大破し退く事が出来ない死の防衛ライン、それでも後退すれば都市ランソンへと到達する国道周辺を死守する以外他はない。
宗国軍も3個旅団とはいえ地方軍であり、幸いなのは偵察・攻撃ドローンなどの数は少ない上にUAVなどは配備されておらず、戦闘ヘリも持たないことであった。それでも僅かでも退けばランソンの都市部に到達出来てしまうため撤退は一切許されず甚大な損害、小隊単位で全滅してもなおベトナム軍は抗戦を続けている。
「榴弾の支援来ます! 戦車部隊の撤退支持を!」
「戦車は下げさせるな! 退く気配を見せると00式が突貫してくるぞ! AT-4をありったけ用意させろ!」
榴弾が降り注ぎ、宗国の歩兵部隊を薙ぎ払い侵攻を推しと止める、英国連邦から買いこんでいたアボット105mm自走榴弾砲、旧式ではあるものの整備されながらNATO共通弾薬である105mm榴弾への対応改修され、ベトナムでは使われ続けている。
宗国で運用されている155mmや122mmの自走榴弾砲に射程で劣る為何両も応射で破壊されてしまう。ただ、それでも軽量であるために迅速な行動が可能であり、105mmであることから砲弾も軽く装填しやすい。
被害を出しながらも国境線を越えた歩兵部隊や装甲車両相手に撃ち続け、そして応射が届く前に陣地転換を行いながら命懸けの砲撃戦は継続される。
侵攻が始まり3日
強行突破を図る宗国軍に対してランソンへと至る街道の防衛にあるベトナム軍、20両の擱座したチーフテンMk9と18両の00式戦車が並ぶ地獄絵図、そして周囲にはベトナム兵の死体が複数横たわっており、なんとしても突破されまいと命を捨ててまで歩兵殺しの歩兵戦闘車や装甲兵員輸送車へ歩兵部隊で攻撃を仕掛け続けていた。
ベトナム軍の必死の防戦により宗国の歩兵戦闘車から兵員輸送車まで破壊したのだが、それでも破壊しきれず防衛ラインを抜けようとする00式戦車が1両残存していた。
最後尾であった事と、機関不調で現場整備を行っても20kmにも満たない走行速度の為進軍が遅れていた事が幸いであり不幸であった。もうベトナム軍に前線で戦える対機甲戦力兵器は残されていない。
機動に長けるが装甲に不安があり火力で劣る残存のセンチュリオンMk14とMk15では難しい。最終防衛ラインとしてランソンの町の外郭に配備はされているが、もし現在の防衛ラインが突破された場合、民間人の大規模な避難が必要となってしまう。
そのような事をベトナム軍としても許容できるはずもない。募った決死隊、擱座したチーフテンに身を隠した歩兵支援部隊による攻撃、応射を受ければ榴弾により部隊は甚大な被害を被ることを覚悟した反攻作戦。
「全部隊準備完了です」
「まだだ、まだ引きつけろ」
個人携帯対戦車無反動砲 AT-4、貫通力は決して高くないが軽量かつ携帯性に優れ価格にも優れる。前線では対戦車誘導弾などとっくに撃ち尽くしており、他に方法はなかった。
「いまだ、撃て!」
チーフテン戦車の残骸の陰から兵士達は身を乗り出し、3発撃ちだされ00式戦車にAT-4の弾が1発着弾しても当たり所が悪く効果は薄く、噴煙が収まり始めると砲塔が旋回し応射として12.7mm機関銃の掃射によって逃げられないよう動きを縛り、125mm榴弾によってチーフテンの残骸に隠れていた歩兵部隊を薙ぎ払った。直撃ではないものの至近距離での爆発による衝撃と炎は歩兵を殺傷してしまう。
離れた建物と歩兵戦闘車の残骸の陰に身を伏せていた他部隊からの攻撃も続き、次々と撃ち込まれ6発が着弾したところでようやく00式戦車が擱座した。当たり所の善し悪しもあるが、たった一両を仕留めるのに補佐を含め一分隊以上の損失を被った。
00式戦車の車内から戦車兵が脱出していくことから十分な防護設計に対してAT-4では装甲貫通力不足、それでもなお、国民を守る為ベトナム陸軍は足りない装甲兵器の数を兵士の血によって補い耐え続けていた。兵器が不足している状況で侵略を受ける、つまり対価となるのは全て命なのだ。
宗国からランソンに向かう国道ではなく、途中で分岐し西部ドンダンへ向かう事を選んだ部隊が居た。ドンダンそのものは宗国との条約締結に伴い、両国ともに住民の退避が行われ犯罪者以外は表向きは存在しない。宗国側では兵士が秘密裏に存在していたが、対世界戦の為に全兵士前線へと送るために総員を移動させていた。
現在ドンダンは戦力及び人口の空白地点となっている。
「良いのでしょうか。 命令違反及び無断離隊など……」
「かまわん。 ベトナムには英国の駐留軍はいない。 まともにやっていては東から迫る英国軍に攻撃される。 命令に従っていたところで死ぬだけだ。 自由にやろうじゃないか」
宗国軍の部隊からも離反し、00式戦車1台に歩兵戦闘車が2台、兵員輸送車とトラックが3台が向かっている。ドンダンの一部を占領し物的材料を取引として安全を確保するつもりであった。
宗国離反部隊の前に立ちはだかるベトナム軍は残っていない。ただし英国連邦軍所属 ベトナム部隊だけは少数が残っている。
ベトナム軍から抽出され普段は英国連邦軍の所属として諸外国での対応や訓練を行う為ベトナム軍の指揮下にはない。彼ら彼女らは英国連邦軍の引き上げに伴い、連邦軍司令部が念のためにと長期間の休暇とベトナム国内での教導を理由に500人が滞在している。連邦からの命令受けた事で保管庫へと輸送されていた武器を運び出し、前線での救援及びドンダン防衛へと向かっていた。
ドンダン抗戦
戦力の空白地帯であるが為に、さらなる条約を破り宗国が制圧をする可能性を考えられ、即応できる戦力を送り込む予定だったが、離反部隊との予期せぬ不意の遭遇戦、山間の狭い道であるために先手を撃ったのは非対称戦の経験に優れていた連邦軍属ベトナム軍であった。
チャレンジャーⅠ戦車が2台、120mmライフル砲から撃ち放たれたAPFSDS弾は00式戦車の正面装甲に阻まれるが、さすがの00式もほぼ同格と言われる第三世代戦車であるのならば速度を落とし真正面からの撃ち合いになる。
応射として放たれた125mm滑腔砲のAPFSDS弾がチャレンジャーⅠの砲塔正面装甲に弾かれた。基礎装甲の上に増加装甲として新型チョバム・アーマーが装着された上で弱点と言われていたTGSⅡの位置も変更され、Mk4としてシステム面を含め大幅に近代化改修されたチャレンジャーⅠは砲塔周りのみチャレンジャーⅡに近い。しかし00式戦車の125mm滑腔砲によるAPFSDS弾を受けたチャレンジャーⅠの装甲が破損し耐えられてはいるが何度もという訳ではない。
「戦術連携状況に問題なし」
「敵戦車1台、歩兵戦闘車及び兵員輸送車を後方で確認」
それでも戦車同士で戦う状況で他方向に意識を向けている余裕など持てない。それを可能とする戦術統合システムを生かすためには、宗国側も戦車や歩兵戦闘車など複数かつ連携システムを搭載した部隊を編成するほかない。離反部隊では連携そのものが取れておらずシステムもまともに稼働していなかった。
戦車及び装甲車両同士の戦いが始まった最中、重装備の歩兵部隊が対戦車火器を持ち攻撃ポイントへと移動している。ベトナム政府の予算ではなく英国連邦からの共同資金、非常時に備えてベトナムの英国連邦軍基地には数日間は本格的攻勢に耐えられるよう物資が備蓄されており、運び出した対戦車誘導弾 NLAWを歩兵部隊は装備していた。
戦車同士の撃ち合いに介入するように、歩兵部隊から最大射程で連続して撃ちだされた2発のNLAWは00式戦車の上面に着弾し完全に動きを停止、後部弾薬保管庫にも被害が出たのか非常解放部がはじけ飛び爆発的な炎が上がる。
「敵戦車擱座、砲弾を多目的榴弾に変更し掃討を行う」
「NLAWの残弾に余裕あり。 装甲車両への攻撃を続行する」
そして装甲車両を狙って次々とNLAW 対戦車誘導弾が撃ちだされ、戦車を含めた装甲車両は擱座、離反部隊は降伏を選ぶことが出来た幸いな数名だけが捕縛されるに至る。
英国連邦軍
非常事態として宗国への攻撃を行っていたマルチロール戦闘機 タイフーンを対地装備へと変更し派遣。
命令が下されると共に攻撃が行われ部隊は空から空対地誘導弾によって戦車や装甲車両への攻撃を行う。卓越したパイロットはマウザー BK-27 27mm リヴォルヴァーカノンを使用し、対地攻撃後降下しながら直接射撃を行うなど、徹底して国境を越えた宗国軍への攻撃を行う。
5日間続いた英国連邦から緊急増援によりタイフーンを含めた戦闘機部隊が国境線の警戒と、監視を始めると宗国の軍が国境線を超える事はなくなった。英国連邦空軍の一部は予備戦力として日本の航空自衛隊基地を複数間借りしていたのだが、正式にベトナム空軍基地へと駐機場所を変更し宗国に向かっていた連邦陸軍部隊の一部をベトナムの駐軍部隊として一旦配備が行われた。
英国連邦軍が元より駐軍するために設備も燃料や弾薬の備蓄もある。再び正式に駐軍部隊を配置するには連邦議会の承認が必要であるのだが、現在ベトナム共和国は侵略を受けたとして判断され、英国連邦が所属国家を守る義務を持つ為非常時部隊の配置までなら可能であった。
「連邦法に従い、非常事態支援部隊の駐留を行います。 連邦各国には予備役保管されている兵器から供出を願います」
「では、ミグラントからは保管しているチーフテンMK9を40台出しましょう。 運用に使用する弾薬と燃料は通常通り」
「カナダ陸軍からは保管しているクーガー偵察車とピラーニャ装甲兵員輸送車を出せるよう動きます。 売却かスクラップか会議中でしたので問題ないでしょう」
「牽引式榴弾砲でしたら少し予備がありますので、購入予定品10基をベトナムへ輸送を願います」
その非常事緊急支援部隊には英国本土軍及びミグラント国軍も含まれており、太平洋上のミグラント国から輸送艦隊を派遣し、予備役保管されていた物資の輸送を行う。弾薬類や燃料だけではなく、破壊されたチーフテンMk9の補充車両など緊急支援が必要であった。
そしてカナダ陸軍が予備役保管していたクーガー偵察戦闘車からピラーニャ2装甲兵員輸送車もあるなど、二度と連邦国家へと侵略をさせないと、途上国からも少ないながら兵器や医療品の提供が成されるなど、連邦軍は二線級や予備役保管兵器とはいえ完全充足の旅団編成を行うつもりであった。
それでもだ、追い返した事で戦死者の回収が行われ、兵士の家族であった者達は生き返る事はない。
「防衛戦によって死亡しました。 現時点での報告は以上となります」
メッセンジャーである連絡兵からの通達と書面を受け取り、その場で泣き崩れる親族達。
戦死慰問金は出る。失った兵器の補充は出来る。しかし失った人命は補充できない。2個旅団が壊滅に近い損害を負った事で3000名近い人間が死傷したのだ。
ただし、それも宗国と結んだ条約を信頼し、連邦の駐軍を撤退させたベトナム共和国政府の判断であり、人口と経済規模の問題で連邦内の低価格とはいえ、配備できる装備も軍人へとなれる人口割合も限られる。どうしても大国が持つ人口の数の力というものには、一国だけでは抗うのは難しいのだ。
この星の英国とて人口は少ない為に軍人の割合は少なく、英国軍は先進技術の塊である高性能兵器を装備しある程度補っているが、軍事力の主力という意味では英国連邦軍なのだ。地球であるならば融通の利かないNATOであるが。
そして英国連邦に所属している限り、英国連邦軍という巨大な軍事組織の一員であり、戦力であり守られる立場でもある。英国連邦に所属している国家が、色々な思惑があってもなお連邦を抜けようとしない要因の一つでもあった。
ベトナムと宗国が締結していた条約の違反、例えそれが一軍の暴走だったとしても、それは条約を違反したことに変わりはない。捕えられた将校から得られた情報は英国連邦から世界へと回され、元々一部の軍が国家間戦争から逃れる為に、ベトナムの一部を実効支配し安全を得ようと独断行動であり軍事的侵攻ではなく宗国政府による軍の統制はもはや崩れている。
ミャンマーやタイは国際連合軍などが参戦の為に不快ながらも駐軍していたために侵攻せず、条約により脆弱な軍のみであったベトナムを狙ったということだ。
日本
世界に条約を破った宗国軍は先進国軍の駐軍の無く防備の弱い場所へと侵攻をしたと、のちのちの安全保障において有利になりえるよう先進国各国の軍備力と兵器の先進性を発表した。
防衛・軍備に関わる問題など先送りにしたい日本の一部政党や子飼いのメディアは取り上げる事はなかったが、海外メディアやネット情報などからあっさりとバレてしまい、自衛隊の防衛体制や予算などで政府は意見書などが届けられる。
自衛隊では自国製の新型が配備はされているものの、バージョンアップなどが先進各国に比べると遅れている事を、軍事に詳しい極々一部の日本国民以外はほとんど知られていない。自国開発・生産できる事は最先端技術を保有する国家以外ではまずできない事なので技術は優れてはいるのだが、自国防衛に関して予算配分をしたがらない政治的な問題であった。国家予算ではなく政党と議員の事情・私情であることを気付かれては困ると日本政府はのらりくらりと誤魔化し無視をし続けようとした。
そんな状況の中で英国が動いた。
「緊急速報です。 日本の政治家による汚職情報について、英国から日本の警察機構に情報提供が本日午前に行われました」
英国が長らく抑えていた情報の一部、日本国内にある英国の小さいネットメディア企業を通じ、与党野党を区別せず、政治家の大多数に関わる事を速報としてSNSやネット新聞やニュースとして公開を行った。
政治家の売国行為・外遊を名目とした税金を使用した海外豪遊・天下り先での勤務実績なしでありながら多額の給与と退職金・自らに献金する事での税金逃れ。名目としていた増税金の末端まで流れる詳細な配分と主な使用履歴など、秘密対談の会話内容や署名など諜報組織が得ていた詳細な証拠の概要を公開すると共に日本の警察組織に対して物的な情報提供。
そして引退した英国国際裁判官及び検事の経験者から、報道番組やネット番組の中で情報の概要について対話が成され、先進国ならば最低でも刑事罰による公職追放は確定するでしょうとまで判断を下している。
コアなネットメディアであり読者や視聴者は少ないものの、長い間信頼性が高い情報だけを発信し続けてきたことから、始まりは鈍いものの情報は全て信用されSNSによって日本国内に急激に広まった。
「おいおい、これ本当かよ……」
「なにこれ、税金で何してんのこいつら」
「俺達の血税を何だと思ってやがる!」
日本らしく無許可のデモや暴動などは発生していないものの、政敵による該当者への揺さぶりに議員辞職要求がかつてないほど届くなど無視を出来る状況ではくなった。
政治的に混乱する日本を見ながら、英国外交部は静かにため息をついていた。
「何をいまさら混乱しているのやら。 我々が何度も警告していただろうに」
「汚職もほどほどにだ。 国民の許容を越え貪ればいくらでも首を絞められる。 馬鹿な事だ」
「対処しなかった彼らの責任。 我々が関知する必要はない」
「まったくだ。 我々は犯罪者の情報を公開し警察組織に提供した。 それだけのことであり日本政府の問題だ」
英国は防衛協力協定の一環として英国政府の外交部からやんわりとだが、日本政府の汚職情報を元に防衛に関わる装備の更新を行うよう何度となく警告を発していたのだが、長らく警告だけであった為に情報を持っていないと汚職を控える事も装備更新をすることもなく高を括っていた。
英国として珍しい善意の忠告まで無視した日本の現政府組織に対して、ベビーフェイスを被る利点などなくなり軽い悪意の牽制を行ったのだが、世論への対処を失敗し与党と二つの野党が消滅、三か月ほど政治的混乱を起こしたのち英国と関わりが深い政党が臨時の与党及び首相となる事となった。
あくまで英国王室と日本皇室が極めて友好な関係を結んでいるだけで、日本政府と英国政府はそこまでではない。事あるごとに憲法を理由に国際連合所属国家としての責任から逃れ、理由を付けてはNATOへの協力を拒む。NATOは近隣のロシアとの兼ね合いがあるとしても、G8の一角としていい加減責務を果たし各国の労力を背負えとどの国も思っているのだから。
米国も政治の混乱には有力な親米政権となるよう介入を試みたのだが、英国はGHQハーフの一件を使用し米国の介入を防いだ。今は人権団体及び女性権利団体の発言の勢いが米国で非常に強い。当時の娼婦問題はともかくとしても、子供を認知せずに大量に日本に放置し、その後の対処を英国がしたなどと知られてしまえば、各団体が大騒ぎを起こす事は明白であるため沈黙を選択した。
1945年当時の政府や政党が正式にそのような人間は存在しないと握り潰し、正式な書面まで米国に籍を置き嘆願した女性軍人に送り付けて拒絶した。その書面のオリジナルを英国が保有しているのだ、今回の取引で英国から秘密裏に米国に回されオリジナルは焼却されたが、コピーとなる為真偽不明情報となる情報はいまだ英国は保有しているだろう。
カナダを除いてはあくまで中進国や途上国家群をまとめた連邦の宗主であり、世界に対して米国ほど発言力を持たない国家だと油断していた。元は米国さえ植民地としていた、底知れない悪意を持つ英国政府だと米日は認識を改める事になる。




