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5.交渉による影響

 1902年による日英同盟の締結。

 出来上がった義体を使い現英国国王への謁見と面通し。大分時間が掛かってしまったが、病弱と表向きは伝わり、本来の事を知っているのはごく一部と王族のみ。伝統的でありながらも最新の大英帝国軍人が着用する礼貴服をきっちりと着こなし、顔も整い中性的で美しいのだが鋭い切れ目の瞳と腰まで長く伸びた光を反射し銀色に輝くホワイトブロンドを揺らしながら赤い絨毯の上をしっかりとした歩む。


「レヴィア伯爵 セレス・ティルア・ウィルム・ヘイズ か。 長い間闘病していたという話であったが、まだ若いではないか」

「死んだという話は聞かぬが、若さからして子に継承したのだろう。 しかしなんとも目を惹きつける」

「一代貴族ではなかったか?」

「法案凍結後に連合貴族へと変更されただろう。 決議を覚えていないのか」


 スタイルや外見は地球人型を相手に外交するため魅力及び扇情的、男性は欲望を出して交渉力を下げ、女性は嫉妬によって冷静さを失わせ、余計な労力と割かせ思考低下を低下させるためであった。デメリットよりもメリットの方がやや多い程度だろう。


「しかし、男性服とはどういうことだ?」

「いや、確かに問題があるわけではないが」


 小声とはいえ貴族たちは初めて見る姿と容姿と服装に驚いてはいるようであるが、王族には先んじて書面で“擬態”として謁見する連絡をしていた。

 貴族会議への初参加と言うことで、ドレスではなく男性貴族が着用するため驚きの表情を浮かべる貴族は多い、されどドレスなど動きにくい服を着るのも、当主たる者がそのような姿と言うのは箔が付かない。女性だからドレス 男性だから貴服ではなく、貴族当主だからこその服装である。

 もちろん前もって国王及び重臣にはドレスではないことに問題はないか、そして服を前もって提出し問題はないかと確認を取り、相応に議論がなされたが当主であるのだから問題はないとされた。

 会議中、女性型義体であるがゆえに幾らか下に見ている貴族もいるようではあるが、歴史上女性当主がいないわけではない事から異議を申し立てるまでではない。

 ここで申し立てるなど貴族として無知を晒すようなものである、形式上の貴族会議は滞りなく進み、いくつかの議題について議決が行われ、ティータイムの時間となり会議は終了となる。得られる情報や繋がりなどを重視すれば茶会に参加すべきではあったが。


「事業についてお話を聞ければと」

「宜しければ紹介したい相手もいまして」


「申し訳ないが、急ぎの職務があるのでこれで失礼させて頂く」


 独り身の女性当主ならば、婿養子を送りこむ事で有能ならば次代を待たずに乗っ取りが出来る可能性が高い。その事を理解しているからこそ、礼を失する行為とはいえ全てを断り早々に引き上げる。

 そもそも主賓として夜会を開くなどまったくせず、運営する仕事などもゴア家から紹介された貴族の次男坊を監視しながらとはいえ、大英帝国内で展開している事業の運営を任せている時点で、ほとんどの貴族は茶会を開く事が無いことも誘っても断られることを理解してもいた。しかし形式上の礼儀とはいえ夜会や茶会に誘った貴族には、謝絶と共に領地の特産品として。

・チーズケーキの缶詰 5種

・甘いフルーツの缶詰 10種

・繊細な装飾が為された大型の缶切り

以上を丁寧に梱包し断りの返信と共に贈呈している。

 贈答品が貧相だと言う貴族もいたらしいが、陸軍・海軍将校を輩出している貴族からは、訓練や遠征で町を離れている間のティータイムには中々好評らしく、正規に販売がないかと後の交易寄港時に報告が挙げられた。




1902年 夏

 義体がある為に交渉や面会を希望する者が増えてしまったが、今までよりもスムーズになったとは言える。交易物資をロンドン港に輸送した際に行われた交渉。

 軍務大臣などと共に交渉を行う為に停泊している船を訪れていた。


「では、そちらの船舶や兵器などを売らぬと?」


 時折借り上げるチャーター船を可能な限り調べ上げるも、船体構造を真似られる鋼材など存在せず、ウォータージェット推進など分かるはずもなく、艦内設備のLED電灯や大量の水についても、この20年で何一つ理解できていない事、英国の技術者達はメモや写生した中で何とか取り入れようとして失敗していた、このことは探査機によって確認できている。それ故に船舶から兵器類も優れていると予想し、そこから売却要請となっていた。

 英国の要求は当然なこと。2000年以上先の兵器でなくとも、宇宙歴以前の火薬に依存しているが故に、手軽に制作できる西暦後期の兵器だけでも世界支配など容易いことだろう。

 しかし未開惑星保護条約に該当するため技術の供与や製品の売却は不可能。

 

“進んだ惑星文明が未熟な惑星文明に高度な技術供与をしてしまうと、技術だけが発展し精神が未成熟のため最終的に自滅してしまう”


 惑星内での国家バランス崩壊による文明停滞と破壊、そして程度によってはその未熟な精神のまま外宇宙に影響を広げる可能性があることから禁止されていた。

 過去には、不法に搭乗型人型作業機械を大量販売した惑星があり、結果国家バランスが崩れ作業機械を兵器に転用し世界大戦までに至ってしまった実例がある。銀河司法裁判によって機械を供給した惑星国家の全技術回収と全住民の絶滅処分が下され、その惑星や住民は跡形もない。

 そして販売を受けた惑星においては全技術の強制回収及び破壊、そして火薬の無い文明程度からの再出発が下され実行された。


「こちらが売却するのは鉱物資源及び食料のみ」


 大英帝国に属しているからと言っても、全ての技術を国家の為に公開・供出せよ、などという法律はない。あくまで各貴族や個人が有するものであり、それをどうするのも個々の権利であり保証されている。もちろん英国の国王の直々の命令となれば拒否する事は難しくはなるが、そのような事を繰り返せば貴族からの信頼を失うために滅多な事では命ずることはない。

 渋顔の軍務大臣の達ではあるが。


「以前から提案されていた戦地傷病人の輸送に関して、赤十字への支援として受け入れる。 あくまで本土への輸送までであるが」


 一方で拒否だけでは交渉にはならず、互いに妥協も必要となる。傷病人であるならば戦地近い港から本土への輸送を請け負うとした。ただし、これは赤十字への協力と言う形で明確に軍事行動とは距離を置く形となる。

 これからは宇宙軍の指令に従う以上、英国政府だけに関わり続けるわけにもいかない。この星全体に対して行動を起こしている対象、彼らの思惑通り第一次と第二次戦争が起こったとしても、同じ規模戦争や被害が出ぬようにある程度干渉できるだけの影響力を保持するために。




 歴史が動く事件が起きる、その時期が近付いていた。


《そろそろ接触をしなければ、手遅れになってしまう》


 大英帝国との定期交易を終わらせ、ロンドン港から出港し干渉できる状況を調べる。現年代から歴史上もっと近く、世界に影響が大きいのは サラエボ事件。

 介入するにせよ、自由に動きが取れるのは歴史が同様に進むなら1920年の国際連盟発足後、それまでは英国の謀略と共に行動しながら防ぐ方向になるのだが、猶予11年では出来る事は限られる。

 さすがにサラエボ事件の要因ともなるバルカン半島の紛争までには関与は出来ない。余りにも複雑な事情が絡み合い、どこと関りを持とうとも火種に着火してしまうだろう。

 干渉するならば独逸帝国が最もサラエボ事件に関して発言力がある。


《やはり独逸帝国が有力となるか》


 大まかに現在の独逸帝国は、ビスマルク体制によって周辺地域は平和になったものの独逸帝国の政治不和で内政は乱れ、ビスマルク失脚とヴィルヘルム2世によって政治および内政を纏める為に民衆の総意から周辺国との軋轢は広がり、一方で民意と共に国内は安定、そしてオーストリア=ハンガリー帝国に影響力を持てるだけの資本を投入している。

 独逸帝国へと赴き交渉をする中で問題となるのは、農業工業ともに産業として問題はなく、科学技術も発展している当時の独逸帝国に物資において影響力を発揮するのは若干難しい。

 ただし今なら付けこむ隙はあるにはある、独逸帝国は義和団事件を解決し膠州湾を租借地と言う名の植民地としたが、その為に海軍は遠洋輸送船を往復させ物資や陸軍兵を燃費の良くない石炭による蒸気船で行う。船舶用の石炭はいくらあっても充足していると言える事はないだろう。


 何よりも石炭シンジケートと呼ばれる集団によって、世界的に不景気でありながら独逸帝国内の石炭価格は高騰し続けているという問題が起きていた。近隣国家と比較しても余りにも高過ぎるほどに。

 石炭代替HVコークスならば船舶用としても高炉用としても使える、問題があるとすれば当時の平均的石炭コークスに比べて高温に達し長時間燃焼することから、設備などが耐えられるかどうかではある。

 一旦メガフロートに擬態を戻し、建造の終了しているいくつもある船舶の中から該当船を選び物資を載せていく。

 向かう船舶はウェーブ・ピアーサー型高速三胴船 ストラー、ではなく、新たに建造した

 セルフアンローダー付きばら積み貨物船 カルヴノ

全長 199m

幅 32m

速力 15ノット

最大積載量 58000トン

船外ベルトコンベア長 18m


 貨物室の船底からベルトコンベアで全ての物資を船上まで運び、船上からはアーム式ベルトコンベアで陸上まで運び出せる。現状でクレーン船と共にこれが素早い荷下ろしが可能となる。

 満載までHYコークスを積み込み太平洋から独逸帝国へと就航、自治領とは英国に属していることから外交権はないに等しいものの、許可さえ取れれば他国に製品輸出をすることに何ら問題はない。許可を取る為の根回しや輸出品目の許可や税金など手間がかかるだけに過ぎないのだ。




 独逸帝国 ブレーマーハーフェン港

 交易交渉に訪れると英国から連絡を入れていたものの騒ぎになるが、構う必要なく先に寄港契約していた港へと接岸を行う。

 船を降りると交易担当官と共に港で働く労働者達の顔役などに簡略化した書面、荷下ろしに関わる大まかな賃金をまとめた紙面と、貿易売却価格が載った物を一緒に渡す。

 現在独逸帝国内で流通している石炭の25%程度の価格、意図して複数人に渡す事で石炭シンジケートが関税や私的理由などによって暴騰させた場合、その事を民間人達が知る為に。


「担当との面会は明日となっております。 こちらで宿を用意しておりますので」


 翌日となるものの、問題なく外交官と交渉の場は設けられていた。


「いや、翌日まで船内で留まらせて頂く。 宿は結構だ」


 宿を断ると船内に戻り眠る事のない休息を取る。歓待など受け入れても仕方なく、必要なのはしっかりと交渉が出来る事、前もっての港湾担当官との探り合いなどで多額の権利や儲けなど求めても居ない。

 港湾担当官は大分気分を害しているようだが、気持ち付けの金品など渡すつもりはなく交易担当官ではないのだ。個人的な接触を持つ必要性はなく、こちらは貴族だと言うのに擬態に下卑た視線で体を見る男など相手にしても仕方ない。

 港湾労働者の顔役達の方が貴族相手と言うことで、妙な難癖を付けられぬように警戒し視線や行動には気を付けていた。貴族を見慣れ過ぎている港湾担当官の悪癖と言ったところだろう。

 翌日、貿易交渉を行う港に面した外交用の屋敷へと案内され、外交室にて再度価格の掲示と共に交渉が始まる。


「現在独逸国内で流通している石炭価格の25%で売却を行いたい」


「それは、なるほど大分価格は低いようですがね」


 価格崩壊を招くほど安価ではあるが、国内で石炭価格の高騰によって軍民問わず苦労しているのは間違いがない。市場を壊さぬようある程度の関税は掛けられたとしても、こちらが売却する量は限られるためそこまで影響はないだろう。


「問題ない品質かどうか見極める必要性を考慮し、サンプルとして船舶・高炉・家庭用に各1トン提供させていただく。 各使用環境でテストしなければわからないこともあるでしょう」


 有無を言わせたところで、こちらのやる事は変わらず押し通す以外することはない。交渉など値段の引き下げと輸入量の増減のみ、利権の調整など独逸帝国側で勝手にやれば良い。

 まずはサンプルの使用テストしながら交渉を続けると話が決まり、最終的な交渉は二週間を目途に終わらせるとして初日は終えた。翌日からは荷下ろしが始まったのだが。


「荷を下ろす。 全員下がる様に」


 石炭の専用の荷受け場などない為、接岸した先にセルフアンローダークレーンを向け地面に次々と投下、それを港湾労働者たちが袋や箱に詰めて運んでいく。

 一週間のテスト、そして国家として輸入を受け入れるかどうかの検討猶予、とはいえそれだけではこちらの予定通りに進まない、義体を利用し港湾労働者達に声をかける。


「諸君、普段とは異なる荷下ろしと迷惑をかけた故に、荷運びと梱包作業に従事した者達には1トンほどコークスを配布する。 そちらで自由に分けて持っていくように」


 港湾労働者たちに無償で提供する代替HYコークス、彼等一般人が使用する事で品質は確かになり噂も広がる、上下関係があるとはいえ100kgから1kg程度まで分けられ、暖炉や料理に使う者や売り払う者など様々だろう。

 さらに貿易輸入価格を知るその者達が、輸入石炭が正規に販売されたときの高騰を知れば、石炭シンジケートは噂に振り回されることになるだろう。所詮は噂、されど噂がある以上権力者はお互いの接触と影響を控え、そしてそれは介入する隙となる。

 権力者とは政治家でもある時代、暴力と金だけでも保てはするが、他貴族から誹りを受けるような真似をどこまで耐えられるか、実に見ものである。


 それから三日後、目敏い貴族の中で石炭シンジケートは港近くを担当している、比較的中間の役割を持つ者が情報を掴み三日後には港湾まで早馬車で駆けつけ、輸入者として利権を得るために交渉の場に立っている。


「では、卸価格はこれで間違いがないと?」


 女性型義体であるためにいくらか下に見ている素振りは若干あるが、大英帝国の伯爵と言う立場の存在に不敬な態度はない。それで十分、見た目や性別による差別など当然、それを引け目とするか強みとするか、重要な事はそれだけである。


「売却条件は一つ、既存流通網には卸値の3倍以上では販売しない事」


 石炭シンジケートが取り仕切る中の難題、それでも既存価格25%の輸入ならば、既存価格の半額で売ったとしても差額は全て儲け、石炭シンジケートの一部から離反者がでないまでも裏切る者が出る事を期待した価格。


「私一存では決めかねてしまいます。 当方が所属している派閥から有力者をお呼びしたいのですが」


 当初は石炭シンジケートの一員として利権を守るために、海外貴族であるため圧力は無理でも石炭シンジケートで独占し価格を統一する予定で張った。その為にまだ若干若手とも言える中間的人物を交渉に立ち、その価格から一つ欲が出ていた。




 ブレーマーハーフェン港周辺を担当する石炭鉱業会社

 会議室では幹部、石炭シンジケートに属する者達が集まっていた。


「現価格の25%か。 なるほど3倍で売ったとしても儲けは大きいか」


「これは機会だ。 利用すれば一気に力を得られる」

「しかし上層部の連中が何をしてくるか」

「だが! このままに現状に甘んじていては決して地位は向上することはない!」


 低価格な輸入石炭の質は良く、担当している地域での採掘量と合わせれば石炭シンジケートを二分できるだけの量となる。

 代表者達は石炭シンジケートはすでに上層は固められ席が流動する事はない事を知っており、大きな功績をあげたとしても上に持っていかれるだけで、中級層などはほとんどが歯噛みしているような状態であった。


「ここで動く。 そうしなければ先などないだろう」


 かなり無理をすることになるとはいえ、資金をかき集められるだけ集め独占輸入による利益の確保、ブーメルハーフェン港周辺の石炭鉱業関連会社と共に独立し石炭シンジケートは二分された。後に国内石炭と共に輸入コークスも取り扱い、既存価格より3割程度安価に売り払う為に一気に市場を荒らす事になる。

 裏では交渉会議など凄惨な事が起きる事が予測されるが、それでも元より石炭シンジケートは歴史上長くはもたなかった、国としての対策に戦争そして仲間内での争い、それがほんの少し早まっただけに過ぎない。


 約束の二週間、結果としては条件を受け入れる事で定期交易とし、ブーメルハーフェン港の石炭鉱業会社が一括して流通から販売まで請け負うと契約が為された。


「それでは、こちらの契約書は双方が保管と言うことで」


「間違いなく。 今後良き取引を」


 相応の利益となるのだが独逸帝国側の条件としてマルクで支払いを行うが、そのマルクは9割が独逸帝国内の間伐材と企業への株式購入や投資に割り当てられ、さらに金銀貨幣類の持ち出しがないという事で了承が得られた。残り1割も独逸帝国国内の銀行に貯蓄され、マルクを使用するのも独逸帝国内と限られる。

 仮ではあるが独逸帝国は無償に近い形で石炭を得られることになる、石炭シンジケートや関与していた商会や貴族はかなりの損害を負い、取引相手は危険な目にあうだろう。

 だがそれを理解したうえで出世と利益の為に交渉を得たのだ、こちらは別の用がある為、お手並み拝見と言ったところだろう。


 別件、1903年、その時にアドルフ・ヒトラーと接触するべきタイミングとなる。可能であれば妹であるパウラ・ヒトラーと共に、こちらの意見を一旦思考する程度の交友関係を得てはいたい。

 父親が病死し実家に戻るタイミングで、望んでいた美術関係に進めるよう支援し、学業についても中立かつ優秀な者によって最低でも当時の高等段階はクリアしてもらい視野を広げてもらう。

 社会性を学ぶために学校を必須とするタイプと、家庭教師でも十分なタイプがいるが、相応に優秀であるが故に凡人な教師では反感を得るだけであり、彼を説得できる優秀な教師でなければ能力を発揮できる事はない。

 一方で妹は時代としても標準的である知性を持つ事から、美術工芸品などを扱う店で働くなど、特筆した才能を発揮したと記録はない。とはいえ、酷似した歴史を歩んでいるとはいえまったく同じではなく、何かしら才能はあるかもしれない。


《適切な人物は、一人いるが少々口に問題がある。 しかし知性及び教育に関しては十分であるか》


 エリザベス・ブラックウェルの教え子の一人に優秀でありながら医学に通じるユダヤ系の女性がイギリスに居る。

 少々口が悪い為に方々の面で冷遇されてはいたが、紛れもなく優秀であり自らを売り込みに来たことから、技術者確保を兼ねて孤児院に派遣している教育者の一人として雇っていた。孤児をただ集め養うのではなく、しっかりと性根まで教育し成人となった時立派な労働力となる様にとのことであった。

・口が悪い

・口調が強すぎる

・教育方法がおかしい

などいくらか同じように雇っている教育者から報告が上がっている。

 一方で指導中に決して暴力は振るわず、子供から恐れられているはいるが殴られた・棒で叩かれた・鞭で打たれたなど孤児院からの報告はない。それなりに疑い交易等担当している者に確認させたが、恐れられてはいるが嫌われてはおらず報告に偽りはないと来ている。

 さらに勉学ではなく最低限の作法まで教えているらしいのだが、人物眼も良く適切に教える事で事実教え子の中には役人や商人として元孤児とは思えない仕事に付けた者もいる。

 口調が悪いという点はあるとはいえ、紛れもなく稀有であり優秀な教育者として評価を上げるとともに給料を増やしていた。

 その人物眼と行動力から予定していなかった、各子供に合わせた覚えの良さや性格から教える内容に優先度を設け、職人・役人・商人・軍人などに大分類し卒院時に向けた教育を施していくことになる。ただし犯罪行為を是非とする性格ならば、容赦なく子供の頃から断罪し程度によっては大人の法に照らし合わせ死刑さえ求めさせた。

 一方で人格共に特別優秀であるならば、卒業時に能力をレヴィア伯として保証する書状と相応の職場に付く準備費として5000ポンドを持たせる事を約束し、最初の一人目は領事館に務める見習い書記官に採用された。



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