45.2003年 国連多国籍軍大規模投入
対テロ戦争はもはや米国だけで対応できる規模ではなくなり、何よりも“米国に圧力をかける為に欧州各国にテロ行為を行う”という手法を取ったのが原因であった。攻撃する為の大義名分と民意の後押しを受けて各国は正式表明と共に参戦を決定、物資の集積と人員派遣について米国との話し合いが進む中、英国連邦も民意と共に会議が成されていた。
各国が役割を決める中、諜報という意味ではミグラント国は英国から要求され、英国は米国から情報を要求されていた。ダイアルカーナの主要幹部の居場所など必要な情報、はっきり言ってしまえばミグラント国は完全に把握している。
次のテロ標的も襲撃対象もすべてであるのだが、それはこの星の住む者達がすべきことであり基本的に関与すべき範囲ではない。民間人への無差別テロを防ぐ程度はしていたのだが、それも標的とされるまでの間であった。
「米国内におけるパイプラインの爆破部隊が壊滅した。 情報流出はミグラント国によって行われたようだ」
「邪教徒たる奴らを排除し神の意思を世界に広めるのだ」
「神の意思を理解せぬ邪教徒に神罰を!」
「「「神は偉大なり」」」
ミグラント国を標的とするという会議が為され、そして決定された事だ。宗教の違いというよりは煩わしくテロを邪魔する存在だからこそ標的と認定した。すでに宗教を理由として戦いではなく、組織としての敵対行動である。
その会議さえ諜報機によってリアルタイムに監視されており、HITAKAMIの方針の変更と共にいままで得ていた情報を英国陸軍に提供、主要幹部4名の居場所判明により英国連邦部隊は強襲作戦を実行した。
「標的は現在C地点から、地下トンネルのある病院へ移動中。 作戦は継続し現在機甲部隊の増援が向かっている。 合流し対象を排除せよ」
英国部隊の情報が洩れているらしく、標的は急ぎ車両に乗り元居た建物から目的地である小さな病院へと移動していく様子を捉えていた。正確には漏れているというよりも英国駐屯地は常時監視されており、そこから重装備の部隊が出て行ったことから推測として危険と判断され退避を行っているに過ぎない。
移動先は小規模な町病院であり一応の医療機関として最低限度動いているが、実際には地下道に繋がっているれっきとして武装施設であり、そこから町を出るまでいくつか経由できる長い地下トンネルが掘られている。
主に小銃火器や物資搬入にも使われているが、目的は人員の移動であり時折井戸の横穴に繋げられた空気穴があるだけの薄暗く5kmを超える長いトンネル。
小型諜報機を要いてトンネルの途中にある弾薬一時備蓄庫に着火、トンネルに入り移動中であったために出てきた煙に撒かれ、町病院へと戻るがすでに包囲を完了していた英国連邦陸軍と鉢合わせとなった。
「武器を捨て降伏せよ!」
捕縛などできるはずもなく返答のない即座に銃撃が始まり、小さな病院という建物と装甲車両を盾とした戦闘が始まる。
周辺は支援が入らぬよう別の分隊が展開し、万全に固めることで支援が来ないようにしている。増援として傭兵組織レーヴァンも加わり、周辺地域に被害が出ないようにとの安全配慮行動や物資のバラマキによる懐柔である。
迷惑と手間をかけたとして燃料や食料などを提供し、もし銃弾の跳弾による被害を受けたのなら修理費の倍に値する食料品・燃料・布類・医薬品を渡すと言っている。市民を敵に回さない為の予算は潤沢に用意した英国連邦のいつもの手段であった。
「撃て!」
FV510歩兵戦闘車が搭載する30mmラーデン砲の焼夷榴弾が町病院の壁を破壊し炎をまき散らす。隠れていたテロ組織員を一緒に粉々に粉砕、絶叫さえなく数名が消し飛ぶように死亡するがそれでも降伏することなく応戦を続ける。
もちろん捕縛されたところでまともな情報収集は行われない。表向きは法に則って対処されるが、米国でも英国でもない場所ならば 法 は適用されない。それが分かっているからこそ、捕縛されるより戦死を選ぶのだ。遠く響き渡る激しい銃撃は一時間にもわたり、町病院にいた組織員は幹部を含めすべて射殺された。
それからダイアルカーナの動きは少しだけ鈍るが、筆頭であるフィリング・ホーン・オロクは変わらず無事であることから新たな幹部の選出と共にテロ及び襲撃は継続され、今回の一件によって警戒はさらに厳重となる。
一か所に留まる期間を極端に減らし通信機も使わず、特定の伝令や書面の命令など手を変え品を変えるなど通常ならば捕えるのに苦労するだろう方法であった。
米軍司令官は今回の英国による強襲作戦成功に嫉妬のようなものと焦りを感じ、筆頭であるフィリングを探している。そして米軍を主力とした有志連合軍は筆頭が都市にいるように判断しているが、実際には都市を離れ山岳地帯へと居場所を変えている事に気付いてはいない。
しかし位置を特定しているもののあまり意味がない。テロと宗教が一致している場合組織を潰してもいくらでも再建されてしまう。それこそ同様の思想を持つ一兵一家族残らず殲滅しない限り、組織を攻撃した対象を憎み何度でも再興してくる厄介な相手なのだ。
地球においても宇宙歴になる際に地球統合国家が生き残る為に、損害覚悟で宗教を統合作戦を実行し統合されなかった全てを消し去るまでの抹消戦争が続いたことからもわかる。宇宙という広大な他の知的生命体国家相手に、宗教という倫理観の違いで殺し合いなどしている余裕などなかったのだ。
それ故に現在出来る対策は一つ、宗教を理由に殺人・暴力・差別を肯定する対象全てを抹殺する。だがそんなことできるはずもなく、国家そのものを隔離状態にして距離を取るしかないのだ。
その国にいる間は何もせず関与せず外部に害を与えれば閉鎖度合いを増し、国境も人の流れも物資も連絡も全て塞いでいく。自ら軟化するまで、そして害を与えるたびに閉鎖・隔離度合いを増し、最後は物理的な壁などで完全に隔離してしまう。
人権派など理想論を語る者達も、自ら被害に遭えば口を閉ざすように所詮はその程度の意識、連中はいつもただ社会と法律の邪魔でしかないためそれ以外の方法は難しい。
アフガニスタン政府との政治交渉そのものは英国に任せつつ必要物資の備蓄を進めながら諜報を続け、一区切りとなるよう今回の原因となった組織壊滅のためだけに人員の顔と名を全て提供した。情報の入手元を大分怪しむもそもそも諜報機関が情報の入手手段を答えるわけもなく、米軍の諜報機関は歯噛みしながらも正確な情報に有志連合は頭を抱えながらも作戦を立て行動をするのだが。
「現在判明した情報はこれだけです。 一度に仕掛けなければ再び伏せると思いますので、作戦実行に際しては同時多発的に行うべきかと」
「情報漏えいを抑えつつ各地への攻勢準備を行うには10日はかかるな」
「一体どこに諜報員を伏せているのか。 可能であればその方法を知りたいものですな」
「いえ、貴重な諜報員ですのでそう多くの情報は得られません。 当面の間は伏せるため続報は期待できませんね」
英国諜報部員は作り笑顔で伏せつつ、情報源を決して知られぬように介している。全てがミグラント国というわけではなく、同宗教の穏健派が気付かれぬよう危険な過激派を照会し英国情報部に情報を流していた。宗教の教義や信仰心は大事ではあるが、教義の解釈の違いだけで自らが惨殺されたくはない。
米軍は得た情報をもとに確実に組織の人員を潰しながら、武器弾薬保管庫など破壊と奪取も同様に勧める事で作戦そのものは順調に推移している。
米軍の侵攻と共にいくつか大規模な拠点を潰したことで武器の製造工場を確保、完全ではないものの武器の製造力を喪失させることに成功した、のだが問題が発生した。
正式なライセンス許諾を受けていない非合法生産とは言えAK47は当然のようにあり、その中には流出したと思われるM16自動小銃やM1919ピストルなどもあることから早々に問題となった。英国が仕込んでいた裏の武器商組織は大物の管理は出来ても、自動小銃や拳銃ともなると流石に対応は出来るわけもなく自前の工場で作っているとなればなおさらでった。
そして20年前の型とはいえとても頼もしくも 日本製 の工作機械がいくつかあったことが問題となった、日本のどこにでも中古機材を売り払う企業スタイルはどうしようもない。とはいえ随分古く調べれば日本製以外の部品もそれなりに存在し、予測されるのは鉄材スクラップとして販売されたものを修理・改造して銃器の製作していたのだろうとわかるのだが、そもそも英国・米国製等の工作機械がほとんどない時点でお察しである。
60~70年代に先進国がやらかした事で規制されている中、現在でも日本政府は大して調べる事もなく企業に責任を丸投げし売り払っていた。国際会議場で日本に問う事となり、製造機器についての海外売却についての法令整備への圧力がかける事となる。
「どういうことかね。 日本はテロ組織にまで工作機械を提供する 協力国家 なのかね?」
「企業の責任、などという言葉で済ませるのなら、貴国の民間企業による海外販売について相応の制裁なども考えなくてはなりませんが」
「それは、ですね。 対応をするために一度持ち帰り閣僚会議を経てからの回答にさせて頂きたく」
湾岸戦争の一件など一時期日本は国際社会で疎まれ、3年ほど前にようやくそれ以前と変わらぬ対応をされるまで信頼を回復した。呼び出された国連大使は冷や汗を流しながら回答を国に急いで伝えるも、今後は工作機械などの中古・スクラップ販売についても“適切な販売”を行うように強く求められ、否と言えるわけもなかった。
中古販売やスクラップ業者などは法整備に対して妨害や抵抗を試みるが酷く締め付けられ、成立と共にかなりの数が倒産などしていくことが予想され政権の不安定化は確実、だが手札を持っている米国に対して何かが出来るはずもない日本は再び混乱していく。
英国 BAEシステムズ
チーフテン戦車Mk9の正式化に伴い、近代化改修作業が最終段階を迎えていた。
・TMS用 900hpエンジン トランスミッション
・TMS用 ホルストマンサスペンション
・120mmライフル砲L33(中古良品)もしくは新品
・TMS用 FCS
・メクサス M型増加装甲
TMSのコンポーネント流用で価格を抑え低率生産と共に完成品はベトナムへと売却される。ただし、ベトナムが購入できるのは30台から50台、改修生産されたものを購入できる程度の予算しかない。他のチーフテン戦車はMk9に改修された後、他の連邦国家において平和への重石として配備が行われる。




