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第1話

 彼女が連れて行かれてから十年。彼女と同い年の俺も、二十歳になった。


 彼女の噂は何も聞かない。一度街へと行ったが、彼女に会うことはできなかった。だから、元気でやっているのかどうかも分からない。


 俺にできるのは、彼女は元気でやっているようにと祈るだけだ。


 月の女神のように、白銀の長くてさらさらな髪を持ち、金色の、猫のような瞳は誰よりも優しかった。

 笑う時、いつも髪がさらりと揺れた。金色の目を細めて笑う姿は、誰よりも美しかった。


 幼馴染みの彼女は、俺に向かっていつも笑いかけてくれていて、俺も彼女も、お互いのことを想い合っていた。


 誰よりも優しい彼女だからこそ、綺麗に笑えるのだと、ずっと思っていた。

 あの優しさはずっと、永遠に変わらないのだと思っていた。


 そして、そんな勘違いをしていた中な俺は、彼女が、あんな目に遭っていると、全く思っていなかった。


「使えない屑を返しに来てやったのだ。ありがたく思え!」


 俺が狩りを終え、獲物を持ったまま森から帰ると、村が騒がしかった。


 村の広場に人だかりができており、俺は何があったのか知るために、人混みを掻き分けながら前へと進む。


 俺への連絡が来なかった、ということは緊急の用事、誰かが攻めて来た等ではないのかもしれない。しかし、この村を守るものとして知っておく必要があった。


 村のみんなは、最初に顔を顰めたが、俺だと分かった瞬間に前へ背を押し、進めさせてくれた。


 一番前の、村長の隣に立つと、村長は一瞬だけ俺の顔を見て安堵した。


 村長の隣に立ったことで、ようやく全てが見える。


 皆が囲んでいたのは、家紋や旗がついた豪華な馬車。この紋章を俺は間近で見たことがあった。俺が王都へ行った時、城の中で見たものと同じだ。彼女のことを聞いても答えてくれなかった輩と同じ紋章。


 その紋章が描かれた馬車の扉は開かれており、中で人が偉そうに立って叫んでいる。手で耳を塞ぎそうになったが、そうすると不敬罪だの何だので罰せられてしまうので渋々抑えた。


 馬車のすぐ下、地面には、傷みに傷んでしまった銀色の、見覚えがある色が蹲っていた。しかし、助けに入ってはこの村の人々を危険に晒してしまう。だから、俺は手をきつく爪を立てて握りしめた。


 痛みで理性を引き留めるために。馬車の中で偉そうにほざいている男を殴らないようにするために。


「……は」


 俺の口からは、震える息しか出ない。痛みと怒りがぶつかり、痛みが勝っているからこそ動かないでいられる。


 俺たちを見る、偉そうな人間は侮辱しか籠もっていない目が降り注ぐ。


「使えぬ屑は送り返したからな!」


 にやにやと、いやらしい笑みを浮かべて、偉そうな奴はどこかに去っていった。


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