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3.理不尽なご令嬢

穏やかな春の日和に、美しい庭園で女同士の戦いが繰り広げられていた。


「国王様からは正式に招待を頂きました」


エマは売られた喧嘩を相手にせず、ただ令嬢の質問に答えたのだが、自らの攻撃を軽く受け流されたと感じた令嬢はさらにヒートアップする。


「本当かしら?招待を頂けなかったご令嬢もおりますのよ?その中には私の知人で、貴族であれば誰もが知るスイーツを作る領地のご令嬢もおりました。貴方の様な田舎者が招待されて、その方が除外されるなんて間違っていますわ!」


(やはり呼ばれていない領地もあるのか、基準はなんだ?)


「それは国王様のお考えですので、私の様な者には測りかねます」


令嬢の挑発に乗る事なく淡々と返したのだが、その態度が令嬢のプライドを傷つける。


「その態度は何ですの!?失礼でしょう??クラウディンを知らないの?あなたの様な田舎者が立ち入ることすら出来ない気品ある町なのよ!?自分が格下だと自覚なさい!」


クラウディンを領地に持つ令嬢は赤い髪をきつくカールさせ、黄色い瞳が猫のように吊り上がった少々傲慢そうな女性だった。


(興奮しているな・・・これ以上目立ちたくないし、面倒だ・・・とりあえず謝ればいいのか?)


この場を早く収めたいと考えたエマは取り敢えず謝罪の姿勢をとろうとした時・・・


「何事ですか?」


騒ぎを聞きつけた一人の騎士が声を掛けてきた。


「あ・・・いえ、これは・・・」


先程までの威勢はどこへ行ったのか、騎士の介入によりクラウディン嬢の顔色は失われ、動揺を隠しきれずに目が泳ぎ出す。王が開いてくれた宴の席で問題を起こしたとなれば、王宮内での立場が危ぶまれる。それを避けたいのはエマも一緒だった。


「わ、私は・・・「申し訳ありません、少々話が盛り上がりまして、今後は場の空気を乱さぬよう気を付けます」


声を出せなくなった令嬢に代わり、これ以上のトラブルはごめん!と素早く頭を下げる。


「そうでしたか・・・・今回だけは見逃します。ですが、また何か問題が生じた際には、会場内に配備されている騎士にお声掛けください」


含みのある言い回しをした騎士は恐らく状況を薄々と把握したのだろう。『危害が加えられそうになれば騎士を頼れ』と遠回しに伝えてきた。


「はい、そうさせて頂きます」


二人のやり取りを聞いていた令嬢は去っていく騎士には怯えた視線を、エマには恨みがましい視線を投げつけた。


「こほん、私はエミリア・クラウディン、ああ、貴方は名乗らなくて結構、覚えたくもないから、いいかしら?私は国王様の子を生み、王族と同等の地位を手に入れるわ、その時に知ればいい、貴方が軽視した相手がどれ程高貴な存在かを。では、失礼致しますわ。」


それだけ言い切ると美しい一礼を取り流れる様に去っていった。


(一応助けたのにな、、、まぁ関わる事は二度とないだろう)


王の計らいにより、令嬢達には一人一室、部屋が与えられるという。王から帰還命令を頂くまで部屋で籠城する予定のエマは、先程の令嬢を記憶から抹消する事にした。


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