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1.都入り

(人が多いなぁ)


商人、貴族、兵士に踊り子、多様多種な人間が行きかう様子をエマは馬車の中から悠然と眺めていた。


ここはジェルタ王国の王が城を構える国内最大都市フェランデリア。


各地から人が訪れる活気のある都市だが、以前は差別主義者である前国王の存在により、民達は奴隷の様な生活を強いられていた。


貧しい子供達は溝鼠が走り回る路地裏に身を寄せ合い、美しいドレスを身に纏った貴族達が整備された表通りを堂々と闊歩する。そんな光景が当たり前だったのだ。


その惨状に変革を起こしたのが現国王であり、父である前国王を討ち滅ぼしたリアム王だ。


齢30という若さで自ら軍を率い、悪の根源とも言える前国王に立ち向かった若き王は、今では民達から『英雄』と呼ばれ称えられている。


そしてエマが王都を訪れている理由もその若き王が原因である。



エマは王都から馬車で丸1日掛かる辺境の地の生まれで、今回、王の命により都入りする事となった。


そう、それはひと月ほど前、堅苦しい装いの騎士達が王の命を受け、エマの実家であるカールソン領を訪ねてきたのだ。


彼らが王から預かった言伝は一つ。『各領主の娘を一人、王の側室として王宮へ献上する事。』だった。


つまり若き王様はハーレムを作りたいらしい。


(全く、このくそ忙しい時期に・・・)


いつの時代も白馬に乗った王子様が自分を迎えに来るという夢物語が女性の間で語り継がれている。まさに女性の夢が叶うこの状況を通常の令嬢であれば嬉々として受け入れたであろう。


だが、エマは違う。エマと、そしてカールソン家は国王の要求に不承不承応じたのだ。


カールソン家の治める領地は農業が盛んで、この時期は領主一家総出で収穫をする時期だ。猫の手を借りたいほど忙しい時期に主力メンバーのエマを渡すのはかなり痛い。


しかも、なぜかカールソン家は代々男ばかり生まれ、女子が生まれる事は本当に珍しく、献上できる娘はエマしかいなかった。


(まぁ、子を成さなければその内返されるだろう、華の枯れた女など、王宮に置く意味もない)


エマには自信があった。自分は王に選ばれないという自信が。


なぜならば、男性を惹きつける武器を一つも持ち合わせていないからだ。


男に囲まれて育ったためか、一般女性の様に着飾る事をしない、媚びも売らない(売り方がわからない)、年頃になれば現れるであろう胸部の膨らみは未だに影をひそめたままだ。


薄紫色の髪と髪よりも濃い紫色の目はどこか寒々しい印象を与え、さらに表情が豊かでないためとっつきにくそうな顔をしているとよく言われる。


(運が良ければ好みではないと返される可能性もあるのでは?)


わずかな希望を胸にエマは王宮へと向った。


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