#72:魔王ディーノ②~魔王を辞めた青年の新たな門出~
「よぉ~っし、畑も順調に育ってて何よりだな!」
「おーい、畑仕事お疲れさん!」
元魔王であるディーノは魔王を辞職して以降、新たな魔王を立ててセヴンの自宅の数メートル離れた先の隣人として住む事になった。
「先生!珈琲仕入れたので飲みに来ますか?」
「おっ、だったらシアンも呼んでいいか?」
魔王ディーノは頷き、先に自宅に戻る。セヴンは自宅に戻り、彼女であるシアンを連れてディーノの住処にお邪魔した。
「結構緑豊かなのね」
「昔から野菜や植物等が好きでしてね。魔王国では気候も違うし魔力による空気汚染で充満しているんで野菜とかは育ちにくいんですよ。なので自力で育ててみようかと長年思ってまして」
魔王との対決を果たした新生勇者パーティー達は先週日、王国に戻り護法者の職を得ている勇者シロウ以外は元の場所に帰還した。
セヴンはそんな彼等の帰還を見送った一人でもある。
「そう言えば・・・シロウも冒険者になってやっと路銀を得たらしいぞ?自宅で暮らす事になったら野菜や動物を育てる教えをお前がやってみたらどうだ?」
「そうですね・・・彼が隣に越して来たら一緒にやって見たりします」
軽食をもディーノは基礎から作り、三人で食事を終えた。
「そう言えば・・・そろそろユウカ達は卒業を迎えてる頃合いだろうな~」
「そう言えば・・・あのお嬢さん、向こうでは学生さんでしたっけ?各国でも彼女達の世界と同様に学校を創れば良いと俺は思うんですよねぇ~」
ディーノはそう言う。
実際とは言え、学び場が無いこの世界には娯楽も多くはない。
だが資金運用が一番難しい所である。
「あの王国の王子たちも一応家庭教師から教えて貰っているらしいからなァ~」
「でも念の為に学び場は必要だと思いますね。今度シロウさんにも話をしてみましょう」
数日後、二人の自宅の真ん中に引っ越して来た元勇者のシロウは三人から話を持ち掛けられた。
「成程、実は魔王討伐の褒章の授賞式の時も貴族や平民との均等な関係について愚痴を零していたのを聞いてまして。自分から国王に打診しても良いですかね?」
「良いと思うぞ?他の国からも色んな生徒を募集するのも良いし」
「ついでに優秀な教師も必要ですね。先生、俺の方から三名程魔王国から派遣するよう連絡取って見ます」
彼等の行動が功を奏した結果、念願の学校建設が許可された。
そして入学させるに関して入学する生徒の年齢制限も設け、更には特別な形での待遇方法も設けられた。
「【ロードリア中央学園】か・・・中々良いと思います」
「そうか!良かった良かった!では優秀な教師も揃った事だから後は王族や貴族や平民から募集をするとして・・・」
「ロードロア国王、王族と貴族には使用人も必要だと思うぞ?」
案外、国王もノリノリで計画は順調に進んでいった。
そして、学園が創設でき、さらには予定された全校生徒数百名にも上り、今年から4年程に掛けて色んな学びを王族自ら率先して増加しつつあった。
「む、ユウカ殿が来たのですか?先生」
「あぁ。後、シロウがウチの配下と付き合う事になってな」
ディーノは前勇者であるユウカの事を気になり、自ら彼女を誘う事が増えた。
「む?暫くこの世界に住む事にしたのか?」
「えぇ、向こうの世界とは違ってモノは少ないけど・・・住み易さは保証出来ると思うの」
ユウカとはその日付き合う事になったディーノ。
彼等も距離が縮まりつつあった。
「今では各国も魔族に対する認識を改めたらしいです。先生」
「そう言えば・・・俺の配下の時もそうだったな・・・やっぱフレンドリーな方が人間ってのは性に合うかもな?」
セヴンの言う通り、暫くは彼等は魔族を“敵”としてではなく“好敵手”として競い合う事が多くなったと知られる。
「さてと、今回も新鮮な野菜がいくつか採れてるんで持って行きます?」
「おっ、それじゃあお言葉に甘えて~♪」
ディーノが育てた野菜は他の田舎の農家の育てる野菜より実りもよく、色んな田舎から派遣される程有名になった。
『ディーノ様、お久しぶりです』
「おっ、ラグーンか。久しいな?」
セヴンがディーノの採れたての育てた野菜を持って行った後に元宰相であるラグーンが久しぶりに連絡をしてきた。
『実は各国で勇者達も新しく作られるらしく、新生魔王軍が新たに試練官として名乗り上げたそうです。新聞にも載ってるみたいですよ?』
「そうなのか。分かった、俺も新聞を読んでみるよ」
連絡を終えた彼は早速、今朝方に届いた新聞を開いてラグーンが言っていた所を見つけて確認する。
「ほほう、先生が考えたやり方よりもさらに新しくなっている・・・彼等が成長するのは元魔王として嬉しい限りだな~」
そしてとある日、正式に前勇者ユウカと元魔王ディーノはディーノの自宅で同棲を始めたのであった。
他三作品もございます。
良ければぜひご愛読くださいませ。
・「オメガ~追放者の絶対支配~」
・「シヴァ~精霊達に愛された精霊魔導皇~」
・「ジョーカー~長生きな転生者、実は最恐の大賢者~」




