#71:魔王ディーノ①~役割を担った天才~
「魔王様、そろそろ勇者御一行が四魔の最後の一人と対峙する頃合いです」
「そうか、お前は無害な魔族達を連れて避難を。勇者達は弱き魔族を無暗に殺したりはしない。行け」
魔王の側付きである宰相は承諾しその場から離れる。
「先生以来だな・・・勇者一行がここへ挑戦しに来るのは」
魔王ディーノ、魔王国の主にして大罪の神セヴンスを師に持つ。
魔王が誕生されたのは彼が美徳の女神カナンと付き合っていた頃にまで遡る。
「え?各種族が?」
「あぁ、お前さんにしか出来ん事だ。やってくれるな?」
各種族による戦争は頻繁にあったものの命を失う者達が多すぎてはいずれ弱体化し、滅んでしまう運命でしかない。
そこで彼は魔王を創造する事にしたのだ。
ただ魔王を創っただけでは味気が無い。
「それなら彼を貴方の領で鍛えたら良いんじゃないかしら?義父様もすぐ許可降ろしてくれるだろうし」
「そうだな・・・やっておくとするか」
彼は1年を機に魔王を鍛え上げた。
「ぜぇ~はぁ~ぜぇ~はぁ~・・・ありがとうございます。先生」
「おう、これでお前は各種族共に対等に戦えるはずだ。アイツ等には生きる目的の本当の意味を教えてやりな!但し殺しはせずに返り討ち程度に留まれよ?」
だがしかし、思った以上に魔王の力が強すぎたせいでか、魔王は世界を支配をし続ける結果となった。
「ふむ、勇者が来たか」
「魔王!覚悟!!!」
魔王はゆっくりと立ちあがり
「良いだろう。勇者とは一対一の真剣勝負を引き受けてやる」
魔王は多岐に渡る魔法の才華を放つ。
一つは召喚魔法、一つは強力な闇魔法、もう一つは先見の魔法。
彼はセヴンとして転生した大罪の神をたったの“魔力”だけで本人か否かを見分けれる。
「サポートには俺が入る。無理はするなよ?ユウカ」
「うん・・・行くよ!!」
「ふっ、かかって来い!!栄光なる勇者よ!」
支援魔法を勇者シロウ=カリベが発動し、二重にも三重にも重ね掛けをしている。
勇者ユウカ=シオンはそのおかげで魔王とほぼ互角の戦いをしている。
「(ふむ、及第点と言った所か)」
「はぁ~ッ!!!!」
魔王ディーノは彼女の努力と勇気を認め一撃一撃を受けた。
「ふっ・・・流石先生の教え子だ」
「・・・?」
彼が久しぶりに負けたのは先代の勇者アランパーティーでの事。
魔王は勇者を支えているセヴンの正体に早速気付き勇者パーティーの絆の深さを知る。
「ぐぅおっ?!」
「・・・魔王ってこんなに弱いのか?」
勇者アランがそう言った事で彼等は本当の強さをまだ自覚していないと築いた魔王ディーノは自分の師であるセヴンに近付く。
ここでセヴンが魔王が自身の教え子だとは記憶を失っている事で半分は信じていた。
「なら、支援魔法で強化した俺自身と特訓を始めようか」
「また宜しくお願いします。先生!」
魔王としてはディーノは努力家であるが為、殆どのイメージとはかけ離れている。
だからこその魔王としての自覚と役割を把握している。
故に天才でもあるのだ。
『そうか、分かった。またあの爺さんの所に行って来る。ご苦労だったな、ディーノ』
「えぇ、先生も・・・お疲れ様です」
魔王はお人好しでもあるが故にちゃんと気に掛けるところは最後までやる。
そして彼は不死の命を受けている為、死なないのだ。
「さて、彼等を呼び戻すか・・・」
魔王ディーノは彼等を呼び戻し、新たな魔王を選定する。
「いいね?魔王とは常に魔族以外の種の力量を図り、成長を促す為の役割を担っている。決して半端な覚悟は持つなよ?」
「はっ、有り難うございます!」
新たな魔王が誕生した事により、また次期勇者パーティーが来るまで魔王軍も新しく変わり、今まで以上に鍛え始める魔族が増え始めた。
「さて、俺は先生の下へ行き近隣に住む。お前はどうだ?ラグーン」
「私も実は田舎町に憧れていましてね。退職金も頂いた事ですし農業で働きつつ自然豊かな暮らしをしてみたいかと」
二人は魔王国から離れて別々の道を進んでいった。
「な、ななななな・・・なぜここに魔王が居るんですか?!」
「ん?・・・あぁ、ディーノはもう魔王を引退したぞ?今はただの近隣に住む好青年だよ」
新生勇者パーティー御一行は聖天の神との約束に従い、二人の勇者の関係上で勇者ユウカのみ次元を超えて行き来する事が可能となった。
「王手!」
「ん?・・・しまった!?」
因みに魔王はめっぽうにも新生勇者達の元の世界のゲームとやらにはまだまだ弱かったのであった。
他三作品もございます。
良ければぜひご愛読くださいませ。
・「オメガ~追放者の絶対支配~」
・「シヴァ~精霊達に愛された精霊魔導皇~」
・「ジョーカー~長生きな転生者、実は最恐の大賢者~」




