#43:エンシーザーとディーンガーディ
殆どの顔見知りの者は親しみを込めてシーザー、ノティス家から敬愛を込めてエンシー、そう呼ばれている男が居る。
エンシーザー=ノティス公爵、グレイガードの実父で顔と性格が一致しない程で家庭や自分の部下には優しく自分だけに厳しい、そんな人だ。
「そう言えばエンシー叔父様って確かディーン様とは同期なんですよね?」
「ふむ、懐かしい名前を聞いたもんだな」
グレイの父親であるエンシーザーはそう言って顎髭を優しく撫でるように触る。
グレイ曰く自分が認めた相手と仲良くなった時に浸る際に必ずやる癖だと言う。
グレイの実家にお邪魔した時に俺の兄との話が出たのだ。
「エンシーは当時、天才児と揶揄された彼に少なからず興味を持っていたからねぇ」
「そうなんですか?」
エンシーザーさんは「そうだよ」と言う。
グレイは俺に耳打ちで
「(そう言えばお前の兄貴って王国随一だっけ?)」
「(あぁ、引退した身だけど多くの貢献をしたって事で公爵にはなってるけど当時はものすごく強いって再三、親に教えられたからな俺は)」
そんな俺の返答にグレイは納得するように頷く。
エンシーザーさんは「少し当時の話をしよう」と言って手に持っていたワイングラスを置く。
「そうだな・・・兄さんは当時憶えているか?俺がヤンチャだった時の事」
「あぁ、覚えているぞ?父上と母上も手を煩わせていたからな」
まだエンシーザーさんが35歳の時、当時15歳だった俺の兄ディーンガーディ兄さんと合同で訓練する時に出会ったらしい。
「当時の帝国は力を象徴を現していてな、王国は知を象徴していた。王国が最強だと言う事も知っていたし・・・何よりディーン殿が王国を導いてたと言うのが気になってね」
そして兄に模擬で挑んだ結果、力だけでは勝てないと言う程にまで追い詰められて初めて負けを認めたんだとか。
「その日以来私は気になってね、休みを貰った日は必ず彼の下へ赴いて試合を申し込んだり帝国のぐんと合同で宴会を開いたりしたんだよ」
エンシーザーは当時、このような事を言っていた。
「あ、そう言えば・・・」
「どうしました?シーザー殿」
「一つ聞きたいんだが・・・ディーン殿は婚約とかはされていないのか?」
ディーンガーディは当時己の知一筋で磨き上げていたり自分の事と実の弟であるセヴンとで手一杯だった為、長らく恋人の一人や二人は考えておらず申し込みがあれど大体断って来たのだった。
「婚約・・・あぁ、最近弟や自分の仕事にだけ打ち込んでいましてね。余り恋人を作ろうって気にはなれないんですよ」
「そうなのか」
そして今現在は――――
「今じゃセヴン君を連れてくる程にまで暇になったと聞くし、何よりも信用のおける人を騎士団のリーダーに任命して引退したと聞いた時はものすごく驚いたよ」
「あの時は本当に忙しそうに動いてましたからね、冒険者になる報告をしたのは仕事や引継ぎが終えた後に報告してその後は冒険者になりましてね」
俺は冒険者になってから今に至るまでの説明をした。
エンシーザーさんは途中途中で何度も驚いたりしていた。
話の途中でカルティさんが
「それより・・・この後はどうするんだい?」
「伯父上、それと父上。俺・・・またセヴンの所で活動する事にしたよ」
グレイがそう答える。
昨日一泊した時に俺の元を訪ねて来て
「えっ3人いんの?!そこに?!」
「あぁ、パーティーは組む予定は無いがそれぞれソロ活動したりしているよ」
その話が切っ掛けで王国に自分も移る事にしたらしい。
「俺は騎士団に入るよりも冒険者の方が性に合ってるからな」
「そうか・・・実は俺も騎士団を引退しようと思ってな」
「そうなのか?」
エンシーザーさんがそう言うとカルティさんが聞き返す。
「あぁ、もう歳だしな。王国みたいに若い世代に任せた方が新しく切り開けるだろ?近々皇帝陛下にその話をするつもりだよ」
「おー、それなら俺の店手伝ってくれよ!」
話は色々纏まり、準備をしようとしたが――――
帝国の騎士が一人颯爽と馬を使い駆けて急いで来た。
「エンシーザー様!緊急です!」
「どうした!?」
どうやら次の目的である塔型の【傲慢の洞窟】にて異常事態が発生したらしい。
「傲慢の洞窟・・・次の目的地だから行った方が良いな」
「そう言えば確かアランが向かってるんだってのを聞いたな」
アランを途中の所で合流して一緒に攻略した方が早いな・・・
「さっさと行こう、俺等以外に攻略出来る人は居ないしな」
「だな・・・場所案内してくれ」
「はっ、分かりました!」
帝国騎士と共に馬に乗って行く事にした。
「俺ら二人行ってくるから父上、後の事はお願いします」
「分かった!気を付けて行って来い!」
グレイの実家を背に急いで最後の大罪者のダンジョンに馬を走らせて向かう事にした。
※この作品以外にも2作品(曜日毎に)投稿しています。良ければぜひご愛読くださいませ。
・「オメガ~追放者の絶対支配~」
・「シヴァ~精霊達に愛された精霊魔導皇~」




