#32:海上公共国クレイス
「んでだな、この通りを真っ直ぐ行けば―――」
長く続く道に徒歩で行く時、野盗に襲われていた行商人を助けたのでついでに海上公共国クレイスへの道のりを教えて貰い、行商人用の馬車に乗せて貰った。
勿論襲ってきた野盗を捕縛した後に。
「何だお兄さん、海上公共国に行くのかい?」
「ん?・・・あぁ、そうだが?」
野盗の頭と思われる眼帯の女はしかめっ面をして溜息を吐く。
「格好からして・・・冒険者かい?」
「いや、正式にはギルドの調査職員だ。・・・と言うより、目的地には何かあるのか?」
それとなく聞いてみた所―――
今現在海上公共国クレイスには嫉妬の大罪者レフィアンがヤケクソになって次々と休む暇も無く己の部下を連れて人々を襲っているのだと言う。
「そこらの弱い半魚族を軍隊連れしたり、海底龍を使った騎龍隊とかも使って半壊しに襲ってるんだよ」
「成程、その軍隊を退ければその人達は安心するんだな?」
彼女・・・リィアは頷き、ついでに野盗になった理由も明かした。
「アタシ・・・元は向こうで踊り子として資金稼ぎしたんだけどね」
「半魚族か」
リィアは頷いた。
襲撃と言えば先日の聖都での強欲の洞窟から出て来た魔物達による襲撃とほぼ似たような感じだ。
「片目と片足をやられてね」
「そうか、それで片脚だけは義脚なんだな」
彼女の姿を見て痛々しく思ってしまう。左足だけ魔力で補える事が出来る特殊な義脚となっている。
仕事での事故で義足、義脚、義手、義腕等々を専門店で利用し仕事を引退する人が居たりする。
実際、前の職場にてそう言った冒険者が多くみられる。
「・・・(そう言えば聖都に万能の人が居たけど・・・いや、だからと言って贔屓にして貰ったら困る人が多く居るな・・・そうだ)」
俺はリィアに家にメイドとして働いてみないかと打診してみた。
「メイド?」
「あぁ、申し分ないが君の子分達もウチのメイドとして働いてくれるなら上のお偉いさんに指名手配書を取り下げて貰えるように頼めれるけど」
俺のその言葉にリィア達4人が驚き
「ちょ、良いのかい?!アタシ等にそんな施しをして」
「お兄さん・・・その制服からして【火の鳥】のギルド職員かい?胸につけてるその証を見るにそこの調査員だろう?」
行商人のその問いに俺は頷く。今居るギルドは国王にも期待されているギルドだと言う事。
その国王とは別の大罪の洞窟の攻略前に謁見済みで顔見知りである事を教えた。
「国王の顔さえ立てて貰えれば海上公共国での指名手配も王族同士の話し合いで合意して貰えるぞ?」
そう提案するとリィアが泣きながら頷き
「アタシを・・・アタシ等を宜しく頼む!ご主人様!」
彼女がそう言って頭を下げると残りの3人も続けて礼をした。
取り敢えず彼女達には安全を確保する為に顔と姿を隠してもらう事にした。
「・・・・思ったより被害が大きいな」
到着した頃には大分あちらこちらの建物や屋台の方が被害が大きかった。
俺は取り敢えず先に宿の確保を優先し、行商人とそこで別れて彼女達を宿に待機させてから王族に話を聞きに行動した。
※この作品以外にも3作品(曜日毎に)投稿しています。良ければぜひご愛読くださいませ。
・「エンディミオン~最強先導者伝記~」
・「オメガ~追放者の絶対支配~」
・「シヴァ~精霊達に愛された精霊魔導皇~」




