#19:【怠惰の人馬】ベリヴェラ、自分が自分である為に・・・
とあるその魔物はふと、過去を思い出した。
『この俺に・・・貴方の力を?』
『あぁ、それと俺が所持している指輪も守っておいてくれ。必ずだ』
その魔物は自分を救ってくれた主の為に懸命に尽くした。
だが、こんな日が来るとは思わなかったのだ。
『トリニティア様!一体どうゆう事ですか!!!』
『ごめんなさい・・・私にも詳しい事は』
『・・・っ!』
その魔物は主が死んだのを切っ掛けに散々暴れ回った。
その魔物を討伐しようと躍起になる冒険者も、はたまた国々の騎士達も。
所かまわず傷付け傷付きながら暴れ回り―――
『くそっ!俺がもっとしっかりしていれば・・・っ!!!』
あの日、自分を慕っていた人が突然目の前から居なくなる。
死を知る者は恐れを成すのだ。
だがあの方はそれを知ってもなおやったと言うのかっ?!
『(怠惰の指輪は決して主人を忘れぬ形見・・・なのに・・・なのに・・・・)』
何故だろうか?こうもこの指輪のお陰で段々と冷静になり――――気付けば指輪の名の通り
少しずつ己の情熱がほとぼりを覚めてしまった。
だが、自分が自分である為に・・・
『(あの方に慕われた頃の様にッ!!!俺はッ―――)』
「オラッ」
『ぐっ・・・・・っ』
気付けば本気を出したこの俺を圧倒的な力で捻じ伏せた。
やはり――――あの御方の面影を感じる。
すぐさま両手を上げ―――
『参った・・・参ったわ、挑戦者。貴方の勝ちよ』
「そうか」
彼がそう言いながら片腕で汗を拭く。
俺達の決闘を見ていた子等は驚きを隠せないでいた。
「流石ね、あそこまで押し返すなんて」
彼の彼女が来てそう言う。
俺は頷きセヴンに―――
『勝者の証として・・・あげるわ、コレ』
「有り難う」
俺は首に掛けていた指輪を取り彼に差し出す。
そして指で奥の扉を指し
『貴方の目的の物があそこにあるわ。取りに行きなさい』
「分かった」
そして彼が大罪者の宝玉に触れて―――
少しよろめいて来たが意識を取り戻した。
「待たせてすまない。行こう」
彼の言葉にそこらに居た彼女らが頷きその場から去る。
一人の男がその場に残り
「ベリヴェラ殿、貴方に一つ聞きたい事がある」
『何かしら?メガネボーイ』
彼は眼鏡をくいっと人差し指でズラし
「実は――――」
メガネボーイの口から出た言葉で、私は少し微笑んでしまった―――
※この作品以外にも2作品(曜日毎に)投稿しています。良ければぜひご愛読くださいませ。
・「オメガ~追放者の絶対支配~」
・「シヴァ~精霊達に愛された精霊魔導皇~」




