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最強の竜騎士団長は、すべてが妹♡至上主義!  作者: 黒いたち
第一章 兄とは妹を守るために存在する
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妹に贈呈しよう

 せまる黒刃がエリオットを切るより早く、竜の尾がギルバートを強打した。

 いきおいで飛ばされたギルバートが、翼を拡張(かくちょう)させて止まる。

 

 金の瞳が竜をとらえ、ギルバートの姿がかき消えた。


 息をのむ間に、いきなり血飛沫が舞った。

 咆哮(ほうこう)した竜が暴れ、その体に視線をすばやくめぐらせる。


 腹と足に一太刀ずつ。

 いずれも軽傷だが、固い竜の(うろこ)を、やすやすと斬られるとは思わなかった。


 集中するが、速すぎる気配に対応できず、エリオットは歯噛みする。


 竜が悲鳴のような声をあげ、また血が飛び散った。


「やめてくれ!」


 エリオットがさけぶ。


 ギルバートが、返り血に(いろど)られた、残忍な顔で(わら)う。

 竜の心臓部に、ピタリと照準(ひょうじゅん)を合わせた。


「竜の心臓は、不老の妙薬。妹に贈呈(ぞうてい)しよう」


 これから起こるであろう惨劇(さんげき)に、エリオットは動悸が止まらない。

 傷だらけの竜が、この攻撃をよけられるはずがない。

 地上までの目測は、五階建ての騎士団本部と同等か。

 凶刃に(つらぬ)かれるか、落ちるかの二択だが、運が良ければ生きている。


 長いような一瞬の間に、エリオットは刺し違える覚悟を決める。 

 愛竜が惨殺されるくらいなら、(おのれ)が盾になることで竜が逃げのびられるという、万に一つの可能性に()けたかった。


 エリオットは、手綱(たづな)を離し、ひび入った槍をかまえる。

 ギルバートが動いたと同時に、竜の背から飛びだした。 


 重力をしたがえ加速した勢いのまま、つきだされる黒刃を、上段からたたきおとす。

 あまりに軽い音を立て、白銀の槍がへし折れた。  

 ちらばる破片が、雪のように白く舞う。

 

 ギルバートの手から剣がこぼれ、目を見開いた彼の動きが止まる。

 その一瞬に、エリオットはすべてを賭ける。

 割れとがった槍を、ギルバートの翼に向けて、渾身(こんしん)の力で投擲(とうてき)した。


 槍が、ギルバートの片翼を大破させたのを見届けて、エリオットは目を閉じた。




 直後に背中を打ちつけ、エリオットはその感覚に不審をおぼえる。

 あの高さにしては、軽いうえに、早すぎる。


 目を開けたエリオットが見たのは、乗り慣れた愛竜の背中だった。


 竜はグルグルと低く(うな)りながら、高度が下がるたびに飛翔を試み、その場に留まろうともがいている。


「おまえ……俺を、助け……」


 主を背に受けとめた竜は、ひたむきに次の指示を待っていた。

 待機(たいき)の姿勢に、エリオットの目頭が熱くなる。

 一度は離した手綱を握り、首をたたいてねぎらうと、竜はキュルリと喉を鳴らした。


 直後、別の竜の咆哮(ほうこう)が聞こえた。

 見上げると、ギルバートの残った片翼に()らいついている。

 ギルバートは牙をむきだしに、するどい爪をふるう。

 騎乗するレスターが、必死で対抗していた。


 もがくギルバートの上に、最後の竜の影が降る。

 

「団長、申し訳ありませーーん!!」


 ゼノが聖水をかかげて、上空から襲いかかる。

 限界まで目を見開き、ギルバートめがけて、バケツごと聖水をたたきつけた。


 噴煙(ふんえん)のような蒸気が上がり、鎧が、翼が、またたく間に溶解(ようかい)していく。

 ギルバートの背中より、黒い影が離脱した。

 浮遊力を失ったギルバートは、落下をはじめる。


「確保!」


 エリオットの指示に、レスターとゼノがあわてて竜首を転ずるが、それよりも先に、エリオットの竜がバクリとギルバートを()んだ。


「えらいぞ! かじってもいいが食うなよ。腹を壊す」


 ねぎらいの言葉に、竜は得意げに喉を鳴らした。

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