表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の竜騎士団長は、すべてが妹♡至上主義!  作者: 黒いたち
第一章 兄とは妹を守るために存在する
1/33

本日、もっとも重要な式典は、妹の入学式。以上だ。

挿絵(By みてみん)


入団式(にゅうだんしき)? なぜ俺が出席せねばならん」

「団長だからです」


 執務室しつむしつに、尊大な舌打ちがひびく。

 黒い本革の椅子にふんぞり返り、行儀悪く机に足を乗せているのは、二十代始めの青年だ。

 艶のある蜂蜜色の髪をかき上げ、涼しげな碧眼(へきがん)を憎々しげに歪めている。


 四年前から王立騎士団の竜騎士団長を務める、ギルバート・ブレイデンである。

 彼の態度の悪さは今に始まったことではないので、副団長であるエリオットは、気にせず続けた。


「ですから、明日の休暇(きゅうか)は認められません」

玉璽ぎょくじが押してあっただろう」

「国王を(おど)すのはおやめくださいと、先月も申しあげましたが」

「アンジェリカのために最善(さいぜん)を尽くして、なにが悪い」


 アンジェリカとは、ギルバートが溺愛(できあい)する、年の離れた妹だ。

 まったく悪びれたところがない態度に、エリオットは思わずため息をついた。


 前方からなにかが飛んできて、エリオットは、とっさに首をかたむける。

 間一髪(かんいっぱつ)でかわしたそれは、背後の壁に突き刺さる。

 小さな影しか見えなかったので、振りかえり確認すると、それは羽ペンだった。

 

「貴様、なんだその態度は。いいだろう。とくべつに先週のアンジェリカの、使用人(メイド)への慈愛あふれるエピソードを披露してやろう」

「結構です。深夜まで残業している身には、(こた)えますので」

「待て、いま何時だ」

「ちょうど日付が変わったところです」


 多忙を極める竜騎士団の、団長と副団長は、明るいうちに帰宅できたことなど、数えるほどしかない。


「こうしてはおれん! アンジェリカの晴れ姿を脳内に焼きつけ、学院まで護衛し、式典での一挙一動を(あま)すところなく見届けなくては!」


 (おも)い。

 エリオットがげんなりしている間に、ギルバートが扉に向かう。

 その腕を、エリオットはすかさず捕獲(ほかく)する。


「離せエリオット。不敬罪(ふけいざい)で牢にぶちこまれたいか」

「貴方こそ。反逆罪(はんぎゃくざい)での極刑をお望みですか」


 いま(のが)すと、彼は絶対に入団式に来ない。

 つかんだ手に力を込めると、ギルバートがつぶやいた。


「術式展開」  


 ギルバートの腕から、電撃のような魔力が駆ける。

 エリオットは、たまらず手を離す。

 直後、エリオットを囲うように、透明な壁が出現した。


 魔力の箱に閉じ込められたエリオットは、唖然(あぜん)とたたずむ。

 油断した。

 というか、王立の建物内は、魔術が発動しない仕組みではなかったのか!?


「こんなこともあろうかと、カーペットの下に魔術陣(まじゅつじん)を書いておいて正解だったな」

「そんなことをする暇が、あったんですか」


 魔術陣は、難解な古代文字(こだいもじ)を正確に書き写す必要があるため、一朝一夕では完成しない。

 手間に比べて威力は弱いが、確実に発動させたいときに使用される。


「よく聞け、エリオット」


 凛とした声音に、エリオットはハッと顔を上げる。

 目の前には、威厳(いげん)に満ちあふれた、団長然としたギルバートの姿があった。


「兄とは妹を守るために存在する。つまり、本日、もっとも重要な式典は、妹の入学式。以上だ」


 騎士団の制服をひるがえし、ギルバートは颯爽(さっそう)と執務室をあとにする。

 言っている内容は、まったく意味がわからなかった。


 エリオットがあらゆる手段でようやく魔力の箱から脱出した時には、空が白みはじめていた。

 寝不足と疲労の中、昇る朝日に、エリオットは固く誓う。


 ――あいつ、絶対に、連行(れんこう)してやる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ