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異世界で壊す異界のロジック  作者: 夢暮 求
【第14章 後編 -神殺し-】
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14章 後編 設定

*アヴェマリア 本名不明 ラスボス


・世界に転生し、そこで偶々、ヴァルゴの力の一端を食べて異界獣の力を手に入れた元人間。自他共に認める化け物。見た目は麗しい女性で、秘した美しさを持っているが性格は真反対。言葉や文字で表すなら人を殺していないだけのサイコキラー。


・弩級のサディストすら飛び越えているが、喜んで痛みを受け入れるようなマゾヒストを嫌う。またこのサディストという表現は非常に軽くしたもので、実際には傷付く様に対して性的興奮、及び好奇心、同時に「死んでくれたら絶頂出来そう」と考えるくらいには脳の快楽物質の放出の仕組みが他人と明確に異なり、壊れている。壊れた原因は幼馴染みが滑り台で落ちて骨折し、痛がり苦しんでいる様を見たため。このとき、恐怖が全身を包み込み過呼吸となって生命が危ぶまれる状況に陥ったため本能が脳に別の物質を放出することでの対処を求め、それが運悪く快楽物質であった。以後、そういった場面に遭遇したとき、自身をどれほど拒否して抑制しようしても快楽――時には性的な興奮を得てしまうようになり、逃れられなくなってしまった。段々と自分自身への恐怖が芽生えるが、その恐怖すらも快楽を伴うようになり、もはや人として当たり前の人生は送れないのだと多感な時期になって悟る(むしろ多感な時期だから自暴自棄になってしまった)。


・人間性を保てているが、同時に人の悲鳴に包まれているSNSをこよなく愛し、自身から発信はしないが他人の心の悲鳴が綴られた文章をスクショして保存する異常者。親に見つかり家族会議も開かれ、心療内科も受けさせられたが経過観察に留まっている。これはこの女が心療内科医の求めている質問や行動に即さず、反した言動(この場合、サディスティックな要素から外れた言動)を取ることで逃れており、秘匿するくらいには頭が回り、このことに関してだけは非常に知的な一面を持つ。同時に自分自身が人間性など皆無で、化け物と呼ばれても差し支えないほどに狂っていることを自覚しており、それを周知されないように隠すように立ち回ることさえ身に付けている。


・高校時代に段々と狂った行動、思考は高まっていき、様々な自分自身を貶めたり傷付ける行為に走ったりもしたが「自分を傷付けてもなんにも興奮しないこと」を学び、その後、逆に自分自身を傷付けた人物たちに報復することで興奮、快楽を得ている。


・NTR、BSSといったジャンルにおいて三次元はくだらないと割り切ったが、二次元のそれらで嗜虐心を高めるのが好き。このときの感情移入する方向は常に寝取った側、片思いの女性を奪う側なのだが、脳破壊されるのも好きなのでどちらの視点でも楽しめる。


・子供だから、大人じゃないから。まだ世の中を知らないから。それらの言葉で守られたがゆえに増幅し、見た目は人を惑わすほどに可愛らしいが誇張抜きの人格異常者である。高校卒業までに死のうと決めていて、自ら赤信号を渡ろうとしたが白野に阻止され、報復で突き飛ばして代わりに車に轢かせて死なせた張本人。このとき、周囲からは白野が彼女を守ろうとした結果、道路に飛び出す形になってしまったと思われており、監視カメラにおいても偶然そのように見えたことから白野は若者を救ったことを英雄視され、女は悲劇の少女という扱いを受ける。これが非常に不愉快で、救われたことでその人の分まで生きてくださいなどという応援メッセージが毎日のように彼女の元に寄せられたことで彼女のキャパは限界に達する。


・その後、死ぬまでの間に一体どのようなことをやったのかは本人の口からも語られていない。分かることは、死に直すためにただ死ぬだけのことを選んだわけではないだろうということ。自身の嗜虐心を満たすだけ満たして死んだだろうということのみ。


・異常性狂人。話し合いをするとまともな方が気を狂わせる。話している内に段々と彼女の言い分が正しいような気がしてくるくらいには洗脳、先導、教導能力を有する。理想論を語る相手に対して同調するように理想論を語って、自身の狂気に巻き込ませる。気付けば誰もが理想論を語る狂気の信者になる。


・死ぬ前から化け物だったのが、死んだあとに真の化け物になっただけで本質はなにも変わっていない。むしろ死に直したことで、たった一度の人生のはずが転生で台無しになったために神に対して異常なまでに復讐心を抱いており、絶対に殺すと豪語するくらいには恨みを抱いている。


・魔力の糸は因果の力。同じように因果――運命が変わったことで命の大切さと生きることが喜びであると学んだ少年と、同じように運命が変わったというのに命を雑に扱い、死ぬことで全部を終わらせようとした少女の対比。転生した白野に救われた少女、並行世界の『産まれ直し』を果たした並行世界の白野(アレウス)神藤(リゾラ)に救われた少年が転生するはずだった肉体の持ち主のジュリアン。奇しくもジュリアンに転生するはずだった少年は、少女が唯一心を許した少年で、少女の世界線では誰にも助けてもらえずにマンションからの落下物が直撃して死んでしまった存在である。


・化け物ではなく人で在るということ。人は化け物になることはできないこと。化け物と呼ばれること、なることを望んだこと。受け入れたこと。それらが全て少女にとって傷付いた自身を守るための逃避行動だったことをジュリアンに暴かれて、精神崩壊。化け物になりたがった人間であることがバレる。


・世界のロジックにさえ触れる力を得たが、因果の糸を辿ってきたジュリアンによってその野望は阻まれる。彼女は魔王が切り離されても最後まで悪足掻きをしたが、最終的に世界に『バシレウス』という存在を彼女のロジックそのものに縫い付けられ、その存在はハイエルフのように不老であり、魔力がある限りは生き続ける異界獣のように不死となってしまい、死にたくても死ねない状態になる。唯一の死ぬ方法がアレウスへの敗北を認めることへ限定されるが、彼女は絶対に敗北を拒み続けた。


・魔王討伐後、異界獣ではなくなったが異界獣のように魔力を取り込むことで永遠に生き永らえることができるためにバシレウスと同じようにエルフの書庫、その地下に封じられる。彼女は最後にジュリアンとちゃんと話したいと申し出るが、彼自身は「顔も見たくない」と跳ね除け、失意の内に死を願うが、命を断ったところで何度でも肉体が甦るため、永遠に書庫の地下で生きることに絶望する。


・死を美徳とし、生きることをつまらない、くだらないと言い続けた少女への大いなる意趣返しである。死ぬことで償うのではなく生きることが償いとなってしまった。逃避行動であっても生者を馬鹿にし、死者を冒涜し、死生観を放棄した事実は変わらず、そして暴かれても尚、罪と見つめ合うことを拒否した彼女は誰もが赦すことのできない邪悪である。


・彼女が封じられたことによって『異端審問会』は空中崩壊を起こす。次から次へと新たな教祖とも呼ぶべき教導者が現れるも、その誰もが残った信者を統率するに至らず、また大陸中による『異端審問会』に関係した全ての人物を拘束する流れが起き、時と共に集団は形を残さずに消滅する。のちに構成員狩りとも呼ぶべき時期が大陸において一年余りほど続いた。これはメタ的に言えばこの世界における『魔女狩り』である。異端審問を行っていた側が異端審問を受けるという本質とは真逆の事態であったが、ロジックを開くことで虚偽を見抜けるこの世界においては、次第に構成員狩りはたった一年で終息させることができた。


・また、構成員は何人もエルフの書庫、その地下からアヴェマリアを取り戻そうと画策したがそれらは全てレジーナ一派のエルフの手によって阻止されている。



*『距離感皆無(ノンデリ)

・本来の魔王が持っていたアーティファクトが魔王を取り込んだことで彼女が手にした。対象のロジックに入り込み、彼女の望むタイミングで対象のロジックから現れ、背後から忍び寄って刃を突き立てる。ロジックに侵入する瞬間を目視することは不可。ロジックから現れる瞬間は侵入されたロジックの持ち主以外は視認することも感知することもできない。


・このアーティファクトの怖ろしい部分は、発動直後に完全に気配が消えること。どんな技能を持っていても彼女を見つけ出すことはできず、複数人で固まれば固まるほどに侵入できるロジックが増えるために、一体誰のロジックに入り込んでいるかが分からなくなってしまう。唯一、感知できる瞬間はまさに自身に刃が突き立てられる瞬間のみであるため、発動中は常に心臓を握られている感覚に陥る。冒険者ならともかく一般人にとってこの恐怖心は致命的で、刺された瞬間を刺された本人しか分からないため、誰もがその場の全員を疑う状況を生み出し、疑心暗鬼による恐怖の時代を訪れさせた。


・ロジックに侵入された本人は、現れた瞬間を視認できるが時間が間延びしたように体を思うように動かせない。時間の延長を魔法によって行っているのではとも思われたが、これはアレウスが行っている『盗歩』にも近いもので、『間』を盗むことによって体感時間が間延びし、思うように動けていないのではなく思考が彼女の登場に追い付けず、肉体が本能的に身動きを取っても『間』に合わないから。しかし、その仕組み、原理さえ見抜いてしまえばルーファスの『闇歩』から『盗歩』を体得したアレウスだけが“『間』に合わない”のであれば“『間』を盗む”ことによって唯一、対応することができる。


・本人は魔王から自身の物にしたことで強化されたと自負しているが、実際には人間の尺度までアーティファクトがその範疇に含まれてしまったため弱体化している。魔王のアーティファクトは必中であり、刃を突き立てられた対象は絶命する。『勇者』のパーティは絶命寸前でオーネストとイプロシアの回復魔法を追い付かせるという荒業で乗り切ったが、通常、どんな冒険者であってもこれを防ぐ手立てはなく、それゆえの恐怖の時代をこのアーティファクトが体現していた(いつ、どのように、誰が死ぬのか分からないため)。また魔王のアーティファクト名は『心の叫び(スクリーム)』。


・しかし、彼女の『距離感皆無』は刃を突き立てるまでの方法までは同じであるが、突き立てた対象が決して絶命しない。突き立てても当面の間は生きている。それは彼女を狂わし続けている“相手を痛めつけることへの快感”が歪ませた結果で、どのように彼女が意識して深々と刃を突き立てても即死することはない。また、既に掠り傷であっても傷付いている対象のロジックに入り込むことができない。ここも本来の魔王のアーティファクトとはズレている部分で、恐怖の時代にはそんな制限はない。



*ラスボスのキャラクター性への筆者のイメージ

・まず第一に物語のラスボスとなるため、基本的に人間じゃない価値観や感覚の持ち主であること。共感できることではなく共感できないことに価値を見出しており、人としてなにかが欠けている。


・読み手からしても気持ちが悪く、どう考えてもこいつは絶対に悪い奴という動機付けが欲しかった。そうなると人が人として嫌悪する事柄は他者を傷付ける行為を自身の興奮に転化できる部分になってくる。欲望のためなら人すら利用し、人殺しすら辞さないという絶対的巨悪。言うなればスマホの十連ガチャのためだけに分かってて犯罪に軽々しく手を染めてしまうような化け物感。


・このキャラクターは人を傷付けることに快感を得る。強烈なサディストなのではなく、そうすることでしか興奮を感じられない。そういった間違ったスイッチの入れ方を脳が作ってしまっている。本人ですらそれを自覚しており、だからこそ化け物であることを自称し、他人からそう呼ばれて認められたことに喜びを覚える。


・なぜなら人ではなく化け物と呼ばれることに安堵したから。人であったなら自分自身の悪逆非道を許せないが、化け物であったなら受け入れられる。そのためこのキャラクターは化け物と呼ばれたかった。よって、それらを全てを暴かれてしまえば、自分自身の壊れた心と向き合うことをせずに承認欲求だけが肥大化しただけの負けず嫌いの女性に過ぎない。


・SNSの功罪における罪の終着点。対立構造やSNSでのやり取りでの勝ち負け、負けを認めずに言葉を続ければ必ず勝てるという謎の勝利宣言。自論を論破さえされなければ負けてないとか言う負けず嫌い。論破されてもそれに反論しなければ敗北してないみたいな謎理論。それら全てを真に受けたタイプ。人の良いところではなく悪いところばかりに着目して、相手が怒れば「そこまで怒ることないじゃん」とか言ってしまうノンデリ。それらが織り成すのは大人になるまでに死にたいと考える短絡的過ぎる悲観性。SNSの悪いところばかり見過ぎて未来なんてロクなもんじゃないと思っているがゆえに距離感など気にせずに人の心に拒絶されようとも入り込もうとする。


・転生後にそれ相応の歳月を経ているがヴァルゴの力を取り込んでいるため若い姿のまま。しかしながら思考は歳月に影響を与えておらず、転生前の価値観がそのまま彼女の感覚となっている。

 彼女のノンデリ――或いは物事を斜めにしか捉えていない考え方というのは大抵の大人は耳を貸さず、離れるものだが一部の人々には驚くほどに刺さってしまう。こうして彼女の思考回路に特別性を見出した人々が集うことで『異端審問会』は誕生した。

 特に異世界においては彼女の話すことが真実か嘘かを見極める判断材料が乏しいことで、構成員の勧誘は彼女を神格化している内容であるため、心が弱っている場合は強烈な引力を受ける。これは人が苦しい状況に立たされたときに無宗教であっても神様に祈りを捧げて今、この瞬間の苦痛を取り除いてくれと願い、それを叶えているかのような全能感を受けてしまうから。彼女自身にカリスマ性があるのではなく、彼女の言葉に惑わされた人々がカリスマ性を与えている。



*シロノア

白野(しろの) 乃蒼(のあ)はアレウリスの異なる事象の起きた時間軸からの転生者である。即ち、神藤 理空が身を挺して子供を救って溺死してしまったあとに死んで転生した存在。アレウスのように乳幼児の頃から言語を習得することができず、魔力を操ることにも苦労し、異世界の苦しみを味わい続けた果てでヴィオール・ヴァルスに御子と呼ばれ、『異端審問会』に加わる。そこで彼はアヴェマリア(ヴァルゴ)によってロジックを書き換えられて異世界の言語を習得し、魔力を十全に扱えるようになった。これが彼が死ぬまで機能していたのはロジックに書き込んだというよりは焼き付けられたから。結果的にこのロジックに文字を焼き付ける力はシロノアが使えるようになる。


・アレウスの本名は乃赤(のあ)だがシロノアの本名は乃蒼(のあ)であり、漢字が違う。


・彼の生き様はまさに若さへの嫉妬。神藤 理空を喪い、彼は経験するはずだった多くの青春を損なった。どれほどに捻くれた女の子であっても彼にとっては好きで大切な女の子であることは確かで、その喪失によって彼自身はその後の人生から彩りが奪われてしまうことになる。彼が死ぬ以前より抱いていたのは年を取るごとくに過ごすことのできなかった青春、過ごしてきた幼少期の想い出の色褪せる恐怖心。無限の時間があるかのような、無限に生きているような感覚が消えていくこと。


・年齢を重ねれば大人になることを強制され、働くことが生きることだと決定付けられ、自由に生きているようで自由に生きられていないような束縛感と、自分が思い描いた大人とは遠く離れた現実の自分との乖離。なによりも、子供の頃には出来ていたことが大人になったら出来なくなっていること。子供の頃なら笑って許されることが大人になるとみっともない、おとなげないと言われるようになる事実。なりたくてなったわけでもない大人になったことで、夢より現実を見ることの方が多くなった結果がシロノアの行動理念を作り上げている。


・言ってしまえば「自分が味わえなかった青春を味わっている奴らが許せない」という極端で単純なまでの嫉妬と、過去への執着である。それらが行動理念として存在し続ける限り、彼の歪んだ正義は覆らない。だからこそシロノアが力を貸す対象は若者ではなく、時代に対して老いていることに嘆く者たちへと向けられていた(キングス・ファング、ビスター・カデンツァなどへ主に協力)。


・彼は冒険者への憧れからではなく、自身の肉体の老いを阻むために冒険者のロジックを手に入れている。また、ギルドが名付けた二つ名や称号、そして与えられた本人の名前を知れば『冥剣技』として称号持ちの冒険者が得意とする戦法を模倣するアーティファクトを保有している。しかし、このアーティファクトは模倣する対象が死んでいることが必要条件にあるため、ルーファスの『魔剣』を欲した以上はルーファスを殺す必要があった。

 このとき、アニマートに地獄を見せたのは暴走したルーエローズの行いであり、その後にシロノアはアニマートを穢した構成員をデルハルト以外『魔剣』で切り殺している。まさにこの瞬間に彼はルーエローズへ向ける感情が無駄であること、彼女から向けられている感情を心の底から気持ち悪いと思い、ただの駒として扱うことに決めている。これは人々を虐げることが『異端審問会』の目標ではなく、全ての冒険者をこの世から消し去ることが目標であるため。そこを履き違えていたルーエローズに幻滅しただけである。


・シロノアはアレウスと思考がほぼ同等である。そのためアレウスの甘さはシロノアも有している。だからこそシロノアはその甘さを捨てることで、逆にアレウスは甘さを拾うと踏んで常に先回りするかのように阻み続けた。

 だが終盤に至ってアレウスは自身の甘さをシロノアが読み取ることで先回りしていることを知り、甘さを囮にして『異端審問会』を誘き寄せるだけでなく、シロノアの計画を今度は先回りして阻むようになった。これに対してシロノアは可能な限り対処しようとするが、覚悟を決めたアレウスの思考を彼が読み取ることはもはや不可能であり、王国決戦で対面しての戦闘までもつれ込むこととなる。


・剣術や足運びといった冒険者としての技術力は全てアレウスが上回っていたため、シロノアは精神面でアレウスを揺さぶるために沢山の言葉を並べ、更には『冥剣技』を敢えて彼の知る人物のもので対抗する。だが、それでも揺らぎながらもアレウスは戦い続け、敗北が迫る中でアヴェマリアが登場し、今までの認識の誤りを知る。

 彼女にロジックを書き換えられ、アレウスを絶望へと落とすために仲間たちの戦いを見せ付けるが、逆に仲間たちが強大な敵に立ちはだかれながらもこれを一蹴。逆に勇気付ける結果となってしまい、自身が転生してから、或いは転生する前からのありとあらゆる劣等感を吐露し、リゾラによる挑発も相まって状況は逼迫。ゆえにアレウスと最後の一太刀を放ち合うものの、完全敗北する。そんな彼にリゾラはこの世界で起きた彼への理不尽を慰めるような言葉を並べるが、最期には神藤 理空への想いや虚無感や劣等感をそのまま抱え込みながら彼女の死の魔法で融け死んだ。


・『青騎士』の糧として一時的に復活を果たすが、その思考は全て『青騎士』に抑え込まれていたためアレウスの問い掛けにしか反応することはなく、またロジックを開いたアレウスと精神世界で会話を交わすが、どちらも許し合うことはなく、また分かり合うこともないことを改めて理解し、『青騎士』の消滅と共にシロノアもまた完全消滅した。尚、『青騎士』と戦った周囲一帯は幽炎とも言える疫病と世界を腐らせる力が放出されていたため、水は流れず土は育たず、草木は生えず生命は産まれない死の荒野と化している。これは魔王を討伐以後もずっとそのままである。



*アレウスとシロノアは、


 大人になるしかなかった少年:大人になり切れない大人

 努力:結果

 復讐心:嫉妬心

 甘さ:厳しさ

 前を向いている:後ろを向いている

 絆:組織


 といった感じで対立させている。



 ルーエローズ・ルーエ

・『異端審問会』の『聖女』にして『魔眼収集家』としてギルドに指名手配されている。一人称は『ぼく』であるが、性別は女性。体の至るところに包帯を巻き付けており、顔も一部隠れているが容姿は整っており、髪型一つで性差を感じさせない中性的な顔立ちをしている。行動力の化身であるが、それらは全て『魔眼』や『聖女』が関わっていないと100%発揮することのできない気分屋。『聖痕』の位置は右大腿部。


・構成員を支配するのではなく欲望を与えることで堕落させた張本人。ヴィオールやアヴェマリア、シロノアですらやらない非情なことを平気でやらせ、そして実行する。それらは全て神への強い復讐心と自身が虐げられ続けてきたことによって人間という存在そのものへの仕返しである。アヴェマリアのせいで『異端審問会』が狂ったのではなくルーエローズがいるから『異端審問会』が狂った。特に婦女暴行やロジックの書き換えの横行は全てルーエローズの導きによるもの。


・この世界において兄弟姉妹が同じ家に暮らすことは稀なことで、ルーエローズも例に漏れない。アンソニーのようにストリート暮らしをしていたわけではないが、彼女が妹と離れ離れになり生き方を変えざるを得なかったようにルーエローズは家族と姉に見捨てられて商家に売られている。そこで給仕係として育てられるはずだったが、給仕長からの虐待によって身も心も壊されて救いを請うた執事には「汚い」と一蹴されて感情が完全に負の方向へと堕ちる。この時期にイプロシアの接触があり、同時に『聖痕』が体に生じた。

 『聖女』見習いとなったことで扱いが一気に変わるが、給仕長と執事は納得せずいつまでも「子供の妄言だ」と主人に訴え続けていた。主人はこの訴えを退け続け、常にルーエローズの味方であったが、あるとき給仕係が持ってきた紅茶に毒が盛られたことで喉を壊し、話すことができなくなったことで、ルーエローズは世の中の無情さと抗うことの無意味さを知り、『聖女』として覚醒。給仕長と執事を死の魔法で断罪し、商家の旦那のロジックを書き換えて自分のことを忘れさせて姿を消した。


・『異端審問会』に拾われてからはしばらく大人しくしていたが、壊れた心の不安定さと慕っていた商家の旦那をすら裏切った二人のことを殺しても思い出してしまい、段々と癇癪を抑えられないようになっていく。それを発散するために構成員を度々殺し、恐怖で支配したのち神官たちの暴走を招く。


・『魔眼収集家』としての名が知れ渡ったのは『聖女』を徹底的に殺し始めてから。それは見習いであっても構わず、ルーエローズはコレクション感覚で『魔眼』を奪い、手にし、殺し続けた。この時点で人の感性から外れているのだが、彼女にとっての『魔眼』集めは昆虫標本を作るために昆虫採集をする人間のそれに近い。つまり、ルーエローズは昆虫と人間の命の重みを同列に置いており、自身が『魔眼』を手にするためなら人間を殺すのは仕方がないという思考回路を持っている。ある意味でアヴェマリアよりも残忍であり残虐性に富んでおり、彼女であってもルーエローズの狂気は理解できていない。


・異常なまでにシロノアに執着しているが、ルーエローズが商家の旦那に続いて唯一、心を許すことのできる異性であったから。包帯で傷付いた肌を隠している自身をシロノアは気味悪がることもなく接し、対等に扱ってくれていたことだけで懐いていた。それはシロノアのカリスマ性によるものではなく、どちらかと言えば心の壊れた彼女にとって自身に加害の感情を抱いていない彼のみが安らげる相手だったからだろう。


・アニマートに行った仕打ちは完全にルーエローズの暴走によるもの。アヴェマリアもシロノアもそこまでは求めておらず、ヴィオールやクリュプトンも同様。唯一、そのときはまだ存在が判明していなかったドラゴニア・ワナギルカンのみが彼女の行いを称賛していた。この一件でシロノアはルーエローズへの対応を変え、またアヴェマリアもルーエローズを「扱い辛い駒」と見るようになる。本人が意識していないだけで、シロノアは彼女を何度か死の危険を伴うような場所へと送り込んでいるのだがほぼ無傷で帰って来てしまうため頭を悩ませていた。


・ルーエローズはシロノアに言われたわけでもないが、シロノアに『認められているし選ばれた』と思っている。そこをリゾラに刺激されて、感情の制御に乱れが生じる。これがジュリアンに死の魔法を用いるという凶行への足掛かりとなる。リゾラはこれに大きな責任を感じ、彼女の打倒を決意させる。リゾラが自分自身のためではなく人のために人を殺すと思わせた。

 決戦の地である王都でルーエローズは集めていた『魔眼』を駆使してリゾラとアンソニーを追い立てていき、最終的に死の魔法をリゾラに掛けることに成功するが、彼女なりの死の魔法への対策、そしてわざと死の魔法を唱えさせるために手を抜いていたことを知り、更にはそこから埋まることのない圧倒的な力の差を前に再び神へと恨みを叫び、稲妻の鉄槌を受けて絶命する。


・しかし、王都は異界に呑まれていたためにルーエローズは魂の虜囚として復活。アレウスに敗れたシロノアが所持していた魔石をリゾラの前で奪い去り、アヴェマリアの元へと届ける。その際にアヴェマリアに殺されてしまうが吸収はされず、完全に存在が消える。しかしルーエローズにとってシロノアのいない世界に興味はないため、この消滅は本人の望んだことだったと言える。


・アヴェマリアとは違う方向での邪悪。彼女は目的達成のために『異端審問会』を作っただけで、そこに狂気を加える気はなかったが、ルーエローズが狂気を加えてしまった。アヴェマリアが自己中心的な加害であるのに対し、ルーエローズは全体へ及ぶ加害を平気で行う。それどころか女性の尊厳破壊、男性の理性崩壊を蟻の巣を潰すような無邪気さで行うため、構成員は『聖女』が命じるならばと先鋭化せざるを得ない状況にあった。しかし、ルーエローズがいなくとも自然と先鋭化が進んでいたことは確かであったため、言うなれば彼女は『異端審問会』が抱いていた邪悪を急加速させた存在と言える。


・『聖女』から『魔眼』を奪ってはいるが、その死の魔法までは奪うことができない。また、物理的に奪っている様子もあれば魔力によって吸収するように奪い取ることもできるようで、それらが彼女にとってのアーティファクトであった可能性はあるが、誰も彼女がアーティファクトの名を口にしたことはないため知らない。しかし、奪った『魔眼』を行使できるのはルーエローズが正しく『聖女』として目覚めているからとしか言えない。現に『聖女』でもないリゾラがアニマートから『魔眼』を奪ったとき、その力を十全に発揮できるようになるまで時間を要し、死の魔法に関しても元の持ち主であるアニマートが『魔眼』に遺した魔力に認められるまで行使できなかった。



*ドラゴニア・ワナギルカン 『魂喰らい』又は『魂喰い』

・初代国王にして征服者。大陸全土にその名を轟かせ、抵抗する者たちを実力のみで捻じ伏せた。さすがに国を与えなければ大陸全土を支配されてしまうと考えた者たちによって国が興され、それが王国の始まりとなる。王としての素質というよりも暴君としての素質の一面が強く、どんな交渉事であっても力で証明されなければ納得せず、自らを屠るほどの力を持つ者を前にしなければ側近の言葉さえも聞く耳を持たなかった。その圧制は凄まじいものであったようで、王国にドラゴニア・ワナギルカンについての文献はほとんど残っておらず、焚書(ふんしょ)されている。


・彼が唯一、その実力を認めたのが初代テッド・ミラーであり、彼の手によってドラゴニアは初めて魔法というものを知る。その素晴らしい力をテッド・ミラーだけが持つのは勿体無いと考えたドラゴニアは「どうすれば誰もがテッド・ミラーになれるのか」を考え始め、その心理をイプロシアが汲み取ったことで『同一人物(クローン)』研究が始まってしまう。テッドは宮廷魔導士として最期まで仕えることとなるが、この怪しい実験については知らされておらず、まさか王宮で働いていながらドラゴニアたちによってロジックを盗み見られているとは思いもしなかった。


・考え方が邪悪に寄りすぎており、自らを君臨者として信じてやまず、自らが王でなければ誰が王であるのかとまで豪語する。ゆえに国一つを与えられたところで満足は出来ておらず、いずれは大陸全土を支配することを計画するだけでなく、自らの王の血が大陸中に巡ることを望み、見目麗しい女たちが集められて後宮となる。このとき他種族からも攫ってきた女性を後宮に入れている。性豪であったわけではないが、究極の使命感だけで女を孕ませ続けており、当時の王国における後宮は『女が死んでも入りたくない場所』とまで噂されたほどである。


・実力、策略、そして知性。暴君であれ思考は闘争において全てを上回り、自身を王から降ろすことができるのは王政を良しとしない民草か、自身の一族より現れた自身を上回る子孫でなければならないと考えている。王とは孤独であり、王とは“全”を求めるもの。王が討たれるときは自身が求め続ける“全”を上回る“全”を持った者。だからこそドラゴニアは民草を虐げ続け、自身が王として死ぬ瞬間を待ち続けているが、一向にその時が訪れないために誰がどう見ても邪悪の塊のような人間性となっていった。


・しかし、ドラゴニアにも逆らえないものがある。それこそが“老い”である。ドラゴニアは自身の強すぎる力を神が奪おうとしていると考え、老いに逆らうように王国の領土を広げるために戦争の真っ只中に身を投じる。老いても尚、ドラゴニアを上回る者は存在せず、だからこそ『老いた我を殺せぬ者たちが大陸の支配者になるなど言語道断』と唱え、暴虐の限りを尽くす。


・老いがドラゴニアの命を尽きさせたとき、耐え忍んでいた者たちがその魂を『御霊送り』にて封印する。このときに送った先は輪廻の循環ではなく『幽世』であり、ドラゴニアは新たな命として転生する権利を奪われた。そんな魂を拾い上げたのが『聖者』のヴィオールであり、以降、『魂喰らい』としてヴィオールに従うフリをする。


・従属を示していたのはヴィオールの魔力だけでドラゴニアは魂として存在を保てていたため。つまり、ヴィオールがいなくなればドラゴニアも消える。ドラゴニアがヴィオールの反感を買えばやはり存在が消滅する。この主従関係から外れるためにヴィオールに従いつつも自身に馴染む肉体を求めた。その一つがクォール・ビジェの体であった。幼いながらも秘剣習得のために鍛え上げられた肉体はドラゴニアにとって非常に満足の行くものだったが、彼にとっては幼すぎた。かと言ってアンドリューの肉体は重すぎる。王族決戦においてはユークレースやマクシミリアンの肉体を欲したが『勇者』の乱入によって邪魔されてしまい、クォーツの死体から離れることで消滅を免れている。


・計画通りにはいかなかったため、仕方なく『異端審問会』が捕縛したアンナ・ワナギルカンの体を拝借した。魂と王族の肉体が揃ったことでドラゴニアはほぼ完全に覚醒し王国にて戴冠する。『異端審問会』がアンナ・ワナギルカンから『同一人物』の研究について白状させるために行っていた拷問が彼女の精神を壊してしまっていたため、ドラゴニアはその肉体の全てを掌握するに至る。このとき、アンナ・ワナギルカンが受けていた拷問はかつてドラゴニアが作らせた拷問器具。王国の闇として葬り去られているはずのもので、アンナ・ワナギルカンは個人的な嗜好のためにこの設計図を用いて現代に甦らせており、皮肉にも自らに使われることで地獄を見ることとなった。


・だが未だヴィオールの主従関係を排除出来ていないがためにドラゴニアはハゥフルの特性を利用してピスケスの異界へと赴く。このとき既にピスケスの異界はオエラリヌが支配していた。それを承知の上でドラゴニアはオエラリヌの前に立ち、一対一の激闘の末にオエラリヌを下してその身を吸収し、あらゆる種族や見た目に化けることのできるドラゴニュートの能力でアンナ・ワナギルカンの見た目を捨てて元の自分自身の容貌を手に入れるだけでなくピスケスの異界の支配者となることでヴィオールの主従関係を破壊した。


・最終決戦ではクールクースとエルヴァージュと戦う。その際にクールクースの出自を語り、王に届かない王など必要ないと二人をやはり力で捻じ伏せ、圧倒する。その果てで未だ『天使』を孕ませていない好奇心からドラゴニアはその毒牙を伸ばすが、エルヴァージュがこれを阻止。そしてクールクースは身近な存在が究極の危機に晒されたことで『聖女』として完全覚醒を果たし、アンジェラの祈りによって『二輪の梵天』を『二輪の日天』へと変化させる。その『超越者』となったことでドラゴニアを追い詰め、最後にはエルヴァージュとの合技でドラゴニアは死に際の言葉すら吐くこともできないまま塵となって消滅する。


・王国における王族の呪いは数多の女性に種を植え付けなければならないという使命感に駆られるもの。これはドラゴニアが死して尚、世界への欲が消え去ることがなく、怨念として残り、それが呪いとして顕現したもの。全ての王族の長子、または戴冠するしないに関わらず王の器を持つと呪いが認定した者は男女を問わず色欲に囚われる。これを打破するために王族たちが考えたのが子孫のみではなく養子、養女を外部から受け入れるという手法。決してワナギルカンの血を継いではいないがワナギルカン家として記録し、認めることでいずれ外の血が王族の血を凌駕してその治世を正すことを願った(王族の呪いは王族の血にのみ反応するため)。クールクースは養女でありエルヴァージュの本名はアデル・ワナギルカンで、『巌窟王』の息子。そして『巌窟王』は『天使』に見初められた王族で神の加護を受けており唯一、呪いから逃れた王でもある。その息子たるエルヴァージュもまた呪いに支配されることはない。

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