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異世界で壊す異界のロジック  作者: 夢暮 求
【第14章 前編 -国外し-】
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14章 設定

【アルフレッドとニンファンベラ】

・片方はシンギングリン街長の甥っ子、片方は修道院に保護された子供。接点というべき接点はほとんどなかったが、街長の仕事に興味本位で付いて行った先の修道院にてアルフレッドはニンファンベラと出会う。とにかく逃げ隠れを繰り返す彼女にアルフレッドは『かくれんぼ』をしているんだと勝手に思い込み、躍起となって彼女を探す。やがて彼女を見つけられなくなって、当時は修道院というものをよく知らなかった彼は『彼女はもう帰った』と考えて街長に連れられてその場をあとにした。しかし、修道院からニンファンベラが行方不明になっていると連絡があり、街長は「自身が顔見せに行ったタイミングで子供が失踪するなどイメージの損失に繋がる」と言って、深夜の大捜索が始まる。これを盗み聞きしていたアルフレッドは『あのときに帰っていなければ』と急に湧いて出た責任感に駆られて家を抜け出し、修道院での捜索を開始する。最終的にニンファンベラを見つけることはできたが、修道院の一つの部屋に閉じ込められる。その原因はニンファンベラが仕掛けた罠が作動し、二人揃って出られなくなるという両者にとっても予想だにしない展開であった。その後、発見こそされたが二人揃ってお叱りを受けただけでなくアルフレッドは街長から疎ましく思われ始め、徐々に距離感が遠くなって行った。


・父母から指導を受けてアルフレッドは成長こそするものの、将来の街長という仕事には忌避感があった。それは街長の統治、政策が自身が思っている以上に私情を挟み込んでおり、シンギングリンにとって正しい統治とは掛け離れていたため。反発こそしなかったが心の底から嫌っており、そんな折に訪れた村で彫金細工を見て、その加工技術に心を奪われる。その後、無理を言って師事してもらうこととなり父母の元からアルフレッドは離れることとなった。この頃からニンファンベラとの交流も薄くなり、十年という空白が生じるようになる。ニンファンベラは修道女としての立ち居振る舞いを学び、神への祈りや奉仕の毎日を送っていたものの、行動力に乏しく人見知りが激しいこともあって表舞台には出られない。しかし仕事は人並み以上にキッチリとこなすその集中力をクルタニカに見込まれ、当時のギルドマスターであったビスターに引き抜かれる形でギルドの事務員としても働くようになる。その仕事ぶりは他の追随を許さず、ギルドの細々とした事務作業から大掛かりなものまでほぼ全てにニンファンベラが関わっていないものはないとまで言われるほどになる。


・シンギングリンが異界に堕ちた際、ニンファンベラも同様に異界に堕ちている。しかし毎日を同じように繰り返しているニンファンベラは歯向かう姿勢もなくビスターやリブラにとっては脅威ではなかったため放置された。彼女自身もまさか自分自身諸共、シンギングリンが異界に堕ちているという感覚はなかった。その頃、アルフレッドは異界に飲まれるシンギングリンに巻き込まれはしなかったものの、ニンファンベラと二度と会うことができないという絶望によって腑抜ける。シンギングリンがアレウスたちの手によって取り戻されても、ニンファンベラはもう死んでいるかもしれないという想像が邪魔をして、前へと踏み出すこともできず、事実と向き合う勇気もなかった。それらはアレウスとクルタニカの介入によって解消され、互いが互いを尊重し過ぎていたがゆえに疎遠となってしまった十年の溝はあっと言う間に埋まることとなる。


・白騎士襲撃後、アルフレッドはシンギングリンの街長代理を務めると共に彫金細工の修行も並行する。これはニンファンベラがギルドマスターに就いた影響が大きく、成長した彼女に並び立てる男になりたいという気持ちもあった。しかしそれ以上に私情を挟みこそしていたが伯父が愛していた街を見捨てるのは忍びなく、自身に手腕があるかどうかはともかくとして、住民たちのひとまずの安堵を与えることこそ重要と考えた。アルフレッドが街長代理となったことでギルドや冒険者との間にあった連携の悪さは解消され、命を賭して街を守る彼らに正しい評価と報酬を与えることのみならず、復興のために商業と建設業における報酬の一時的底上げも行っている。一部の貴族から不満こそ出たが、シンギングリンは貴族に比べて圧倒的に平民が多いため、貴族の声を多く聞くよりは平民の声を聞くことをまずは意識している(完全に貴族の物言いをシャットアウトしているわけではない)。

 ニンファンベラと比べられがちだがアルフレッドもまた出来る男である。だからこそニンファンベラの作成した依頼書における不備の指摘――同時にそれを修正せずにアレウスたちに出した彼女の異変を真っ先に察知することができた。



【白騎士】

・『勝利の上に勝利』を重ねる騎士。黒騎士、赤騎士のように発生した魔物。人型の魔物が馬の魔物に跨り、弓矢を携えている。頭部には冠を持つ。魔物が魔物に跨ることは珍しいことではないが、白騎士の場合は『サジタリウスの弓矢』を奪い合っている関係にある。どちらかが倒れればどちらかが『サジタリウスの弓矢』を奪い取って強化される。馬の魔物ならばケンタウロスとなり、人型の魔物であれば魔人めいた出で立ちとなる。しかしながら彼らは二心同一体であり、一方の死が片方を強くしても時間経過で死んだ片方は蘇生する。肉体は離れていても、同一の魔力を有しており、さながら蘇生は受けた傷を再生するがごとくであり、どちらも白騎士であり肉体は二つあるようで実は一つとも言える。


・空中に魔法陣を配し、矢の雨を降らせて攻撃する。この矢は鉄製の鎧すら簡単に貫通するほどで、浴びればまず命はない。また白騎士は射掛けた矢や魔法陣の矢で傷を受けた対象をマーキングしている。このマーキングで対象を捕捉し、攻撃する。視力、視界は共に無いに等しい。また、マーキングは気配消しによって共に感知できなくなる。


・思考力を持っており、自身が劣勢であるか優勢であるか理解している。同時にマーキングの弱点も自身の弓矢における弱点も心得ており、アレウスにはそこを突かれて人型の魔物が倒れるに至る。しかしその先にある『サジタリウスの弓矢』による強化が彼らの思考には含まれておらず、その意外性と飛び抜けた疾走力、そして自身を追い立てることによってアレウスという“冒険者のパーティにおける最重要人物”を狩るという使命に注力し、そのあらゆる障壁を貫く矢によってアレウスを甦るとはいえ殺すに至る。


・正体はレストアール・アース。『魔物研究』の果てに『合力』と『サジタリウスの弓矢』を用いることで彼自身と魔物、『サジタリウスの弓矢』がロジックで混ざり合って完成した。人間であった頃の記憶は残っておらず、イニアストラの命令を聞くことだけを遂行する化け物となってしまった。そもそもレストアール自身も望んで白騎士となったわけではなく、イニアストラに呼ばれて不意を突かれた。皇帝陛下に呼ばれては断ることもできず、訪れた瞬間にその身を魔物化させられた。このことをオーディストラは把握できてはいないが、皇帝の命令で皇女の拘束に現れた軍人たちの異様な出で立ちからエルヴァは状況を危険と判断し、帝城のバルコニーから共に転落する形で消息を断つ。

 このとき、『初人の土塊』の力を使って落下死を防ぎ、その後に娼館へと身を隠した。娼館の主たる老婆とはエルヴァが帝国で軍人になってから同僚や上司に無理やり連れて行かれた際に知り合う。老婆はエルヴァが娼館を利用しているように工作して、こういった誘いの全てを凌がせている。その代わりエルヴァは軍人として名を上げてからは積極的にこの娼館に部下が利用するように勧めるなどの忖度を行っており、互いに協力関係であった。そのことは逃走中の二人に対しても変わらず、老婆は当たり前のように二人を匿う。その本質は皇女から娼館を排斥されないように恩を売ることと、エルヴァに更なる義理立てを要求するものである。これらがなければ老婆はそもそも二人を匿っていない。知己の間柄ではあっても腹の内は互いに晒していないのである。


・イニアストラと共に戦場へと向かう最中にアルテンヒシェルとオーネストに阻まれる。自身が率いるキメラの統率を取りながら戦い続け、二人を追い詰める。しかし、イニアストラの詰めの甘さによってオーネストに人、馬の両方に死の魔法を掛けられてしまう。互いに持ち合わせている心臓の、その心音への恐怖から激しく混乱し、しかしその心音に立ち向かう決意を持ったことでお互いの心臓を刺し違える形で貫き、絶命する。片方が生きていれば再生するもう一方の存在という二体一対ではあったが、同時に討たれるという形で消滅する。しかし、『サジタリウスの弓矢』は『異端審問会』に回収されており、合力についても研究され尽くしているため再誕を彼らは目論んでいる。



【百合園】

・『ダムレイ』、『赤い月』といった気候や現象に分類されるものの、実際には魔物の総称である。しかしながら現象に区別されるのは数十年に一回のペースでしか発生せず、その発生も各地を転々とするため。そして非常に短命であり、発生から数ヶ月で全ての草花が枯れる。しかし百合園で咲いた百合は極めて高純度の魔力を秘めており、抽出すれば大量のマジックポーションを作り出すことができる。調合師や商売人にとっては垂涎物の存在でもある。だからこそ多少の危険も承知の上でギルドや商人から依頼によって百合の回収が求められることが多い。


・百合園ではユニコーンという魔物が姿を見せることが多く、また男性では百合園を視覚で捉えることができないどころか入り込めば妖しい香りによって幻覚を見せられてしまって極めて危険であるため女性冒険者による採取が望ましい。ただし、女性であっても香りに当てられてしまうことはよくあることで、危険が僅かに薄まるだけに過ぎない。ユニコーンに限らず非常に多くの魔物が魔力を求めて集まるのだが、最終的には一部の大型の魔物の縄張りにされることが多い。また、百合を採取されたり人間に侵入されたことを百合園は感知しており、日に日にその形容を変質させる。百合園という清らかな言葉からは想像の出来ない鬱蒼とした密林へと変貌することもあり、それが採取の難度を高めている。



【バジリスクとコカトリス】

・帝国では石化の瞳を持ち、毒の牙を持つ大蛇をバジリスクと呼んでいるが、王国側では石化の瞳と毒の吐息、尾に毒蛇を有する巨大な雄鶏をバジリスクと呼んでいる。発見者が両国で異なることと情報の行き違いによって明らかに個体として異なる容姿を持つ二体が同一の名称で呼ばれるという稀有な問題を引き起こしていた。しかしアベリアはアレウスが新王国で読み漁っていた魔物の記録を共に目にしていたこともあり、自分たちの前に現れた魔物がバジリスクではなくコカトリスであることを看破した。だが、看破はしたものの石化も毒も対処が難しいだけでなく、コカトリスを討伐するにはあまりに戦力に欠けていたこと、そして採取すべき百合を戦闘によって全て失ってしまいかねない点から逃走することをパーティ内で決定とした。


・今回のコカトリスは奴隷商人が魔物を従える奴隷を連れていたことによって、百合園に訪れた女性冒険者を誘拐するために仕掛けた罠であった。そういったことに常に注視しているリゾラ、そしてアレウスの調査で奴隷商人の存在が判明し、アベリアたちの救助へと繋がる。そのときにリゾラはコカトリスを服従させることも昔は考えていたが「広範囲に危害が及ぶから」という理由で現在は服従させずに討伐した。



【イニアストラとティルフィストラ】

・前皇帝の世継ぎは一人ではなく二人、それも双子であった事実は帝城内のみで知られていることで、決して外に漏らされることのなかった過去の話である。イニアストラは世継ぎとして育てられ、ティルフィストラは影武者であり替え玉でしかなかったが、兄であるイニアストラはそんな弟を見捨てることも放っておくことも決してしなかった。前皇帝もイニアストラの態度から徐々にティルフィストラへの態度を軟化させ、伝手でアルテンヒシェルを指導係として任命し、ティルフィストラに正しい生き方を学ばせていた。ただし、兄と違って弟は決して帝城の外に出ることは許されなかった。


・前皇帝崩御ののち、イニアストラはティルフィストラの支えもあって皇帝として戴冠してからも国民の支持を受ける。唯一、国民を不安にさせたのは婚約相手――女王となるべき女性がハーフエルフであったこと。ヒューマンとハーフエルフでは世継ぎはよくて一人、二人まで。しかしそんなことよりもイニアストラは自身の感情を優先させた。そのことをティルフィストラに咎められることもあったが、兄の決定を弟の彼がそれ以上に言うこともなかった。それよりも世継ぎを期待する国民の声に反してなかなかそういった行為に耽らない兄を憂うことさえあった。そのためティルフィストラは自身の娘を一時的に世継ぎとして公表することで国民の不安を解消させることを進言。イニアストラはこれを受け入れ、ティルフィストラの娘――オーディストラがイニアストラの娘として国民に公表される。その数年後、イニアストラの伴侶は子を身ごもるも出産は難航。出血量から『母親を取るか』、『子供を取るか』、『母子ともに死ぬか』の三択に迫られる。立ち会ったティルフィストラは世継ぎを優先したい気持ちもあったが兄の選んだ伴侶が自身の決断で死ぬことはあってはならないと判断し、母親の命を優先するように医師に伝える。しかしティルフィストラの意に反して彼女は自ら胎を裂き、血塗れの子供を自ら取り上げると、その産声を聞いてから絶命する。その凄まじい最期と、誕生の前から紛れもなく『母』であったことを思い知らされた。


・雪山に訪れたイニアストラとティルフィストラだったがその日は想定外の吹雪に見舞われ、雪崩が起きる。巻き込まれこそしなかったが二人揃って侍従や付き人、近衛兵たちとはぐれてしまう。どうにか洞穴へと逃げ込むが、ティルフィストラに比べてイニアストラは手足の凍傷が酷く、弱り切っていた。死は間近に迫っていることをティルフィストラは信じたくはなかったがイニアストラの言葉で決意し自身が兄として帝国を強くすることを誓う。その際にイニアストラの子供は権力争いにおいて必ず悪用されると見られ、本人の希望も汲んで没落貴族であるアナリーゼ家に預けられることとなった。

 ティルフィストラはイニアストラと名乗り、結果的に自身の実の娘であるオーディストラとの日々を過ごすこととなるが禁じられていた『魔物研究』の封を解き、静かにそのときを待ち続けていた。


 アベリア・アナリーゼはイニアストラの実子であるが本人はそのことを知らず、アナリーゼ家もまたそれを知らせてはいない。なぜならばアナリーゼ家は自らの強欲と目先の金のためにアベリアを奴隷商人のテッド・ミラーに誘拐させる手筈を整えていたためである。このことはイニアストラとなったティルフィストラの耳に当然届いており、アナリーゼ家はその血に連なる全員が処刑されている。



【アルテンヒシェル・フロイス】

・ノア・フロイスの末裔であるアルテンヒシェル・フロイスは音楽と歌声、詩吟に心を奪われた吟遊詩人。全国を行脚する歌手を目指していたがアレックスに誘われてパーティに加入する。夢を志半ばで閉ざしたのではなく、アレックスと全国を駆け回れば名が売れて、いつか歌手として大成するだろうという思惑があった。これらは恐怖の時代を象徴する魔王を討伐した時点でなにもかもが白紙となってしまっており、パーティが解散してからは禁足地と呼ばれる誰も足を踏み入れたことのない未開の地に居を構え、毎日のように星詠みを行って過ごすようになる。職業は吟遊詩人でありながら魔の叡智に触れており、イプロシアには遠く及ばないが『上級』に所属する魔法使いや僧侶を凌駕するほどの魔力でもって魔法を詠唱することもできる。『精霊の戯曲』を全て習得しており、常になにかしらの精霊と交流していたため、どの土地であっても必ず精霊が過度に力を貸してくれるため難度の低い魔法すらも高難度の魔法にすら変貌する。こういった点からもはや『精霊の戯曲』を用いずとも常々に唱える魔法が『精霊の戯曲』と等しいため、次第に本人も行使することをしなくなった。


・弟子としてアニマート・ハルモニアとジュリアン・カインドを取っている。特にアニマートの一度の詠唱で二重にも三重にも同じ魔法が使える多重詠唱はアルテンヒシェルが自らの歌声と共に伝授したもの。ただし、アルテンヒシェル自身がこれを魔法として使えたことは一度もなく、アニマートだけの技能として成立していた。ジュリアンには魔力の糸の使い方を教えるだけに留まらず、怠惰な生活を送る自分自身の世話もさせていたが、教えるにつれて本人の上達となにより向上心から自身の手元に置き続けることは逆に価値観を狭めると判断して途中からアレウスにほとんど任せている。


・『魔物研究』はノア・フロイスが死ぬまでの間に行っていた研究で、しかしながら完成することのなかったもの。この研究に必要だったのは合力(ごうりき)と呼ばれる力で、ノア・フロイスの時代にはその力は存在しなかった。また、研究を続ければ続けるほどに自分自身が人道から外れた道へと歩んでいる恐怖心からノア・フロイスは研究を封じ、その後の一切を禁じた。この禁と封をイニアストラが解いてしまったことで『魔物研究』は再開され、更にはこの時代にアレウリス・ノールードという合力を持った少年が産まれ落ちていたことから、頓挫していた研究が進むこととなる。イニアストラは極秘に『異端審問会』に命じてアレウスの肉片を回収させ、それらを用いて白騎士やキメラを完成させるに至った。これらの出来事一切をアルテンヒシェルは自身の血族における汚点と捉え、更には自らの責任として昔から見守ってきていた皇帝を討つことを決意することとなる。


・オーネストは犬猿の仲。ただし、戦闘においてはなぜか調子が合う。口論は絶えず、いつも二人は騒がしい。罵ることもあるが本意ではなく、その内ではお互いの才能や生き方を羨んでいた。アルテンヒシェルのアーティファクトである『愛憎悲喜の(エモーショナル)精霊劇団(シアター)』は特にオーネストに対して用いることが多く、歌劇に憧れ続けたアルテンヒシェルの遠い遠い羨望の感情から織り成される歌劇団の主役を彼女はよく張った。

 尚、勢いでオーネストがアルテンヒシェルに死の魔法を唱えたことがあり、ここが仲違いの原因となっている。これ以降、アルテンヒシェルはオーネストを嫌悪するようになり、星詠みなどで各地を監視している際も常々に彼女に復讐として魔法の砲撃を撃てるように空に魔力を蓄えていた。

 ティルフィストラに対しては見守る意味も込めており、本来なら彼の危機に放つ魔力であった。彼がイニアストラを名乗るようになってからも守護星として置いていたが、最期において彼を焼失させる砲撃として放つこととなった。



【オーネスト・フォン・ダッテンベルグ】

・王国の名家に産まれた淑女。神への祈りと清貧を愛しつつ、奉仕の心とノブレス・オブリージュの精神を忘れず生きていた。しかし、その日々は本人にとって強固な縛りであり、毎日の行いに一切の迷いも苛立ちもありはしなかったが、自分らしい生き方からはかけ離れていると常々には思っていた。それは父親に勝手に婚約者を決められたときに感情として爆発し、家を出る。その後、放蕩していたが神への祈りを絶やすことはせず、月夜に体を清めている際にイプロシアに見つかって、そのときは持ち合わせていた淑女らしい感情が先んじて短刀で死のうとするが彼女に止められてパーティ加入を要求され肯くこととなった。


・冒険を続けるに連れて段々と淑女らしい生き方がバカバカしくなり、口調が乱暴なものとなる。特にアルテンヒシェルにその点を指摘されると次の日は更に荒っぽくなるということを繰り返して今の口調となった。加入した時点では打撃格闘術は習得していなかったが、清め切った肉体は完成されており、イプロシアとの稽古をひたすらに続けることで体得する。「主よ」と声にするだけで彼女は全身を祓魔の力で満たし切るだけでなく、打ち込んだ拳が対象の内部で炸裂する。


・神力を右手に保有。『昔から手癖が悪い』とは彼女の口癖だが、これは自身が盗もうと考えてもいないのに右手に知らず知らずに小銭が舞い込むことが多かったため。『悪しきお金は正しき者の手によって清算される』を字で行く現象で、家を出た彼女が決して死ぬことがないようにと神が介入した結果である。最終的に金銭が舞い込む右手にオーネストは満足せず、自らに飛来する悪しき力を握り込む右手へと神力を変容させた。その際、手足の指を数本、神に捧げている。


・単騎において異常なまでの戦闘力を有する。特に一対一では負けなし。魔王を前にして陣形が崩れ、仲間たちが立て直しを図る中でもオーネストだけが戦って時間を稼いだこともある。しかしながら複数との戦いにおいては途端にその強さに陰が落ちる。守れるものを守る。目に映る全てを守ることを心掛けているオーネストに自身と戦わずに暴れる魔物の動きは無視できない。そちらに思考を使ってしまい、目の前の戦闘に集中できないという性格と思考、神への誓いによって作られた大きな弱点を持つ。それもアルテンヒシェルのアーティファクトで軽減することが可能だったが、白騎士とキメラの軍隊を前にしてはほぼ相討ちという形にしかならなかった。


・『聖女』

 オーネストは『勇者』のパーティに加入する前から聖女であり、『魔眼』を持っていた。『聖痕』の位置は右手の手の平。『魔眼』の名称は不明。『勇者』やイプロシアにすら伝えていない。しかし、オーネストは武器を持たない相手に対してのみ行動を先読みするような動きがよく見られたため、その制約上でのみ働く先読みの眼であったのではないかと推測される。


・『心音恐怖症』

 オーネストが持つ死の魔法。指定した対象に『心音恐怖』の状態異常を付与する。通常の魔法での解除は他の死の魔法と同様に不可。オーネストは対象の指定が苦手であり、度々、狙った相手に死の魔法を打ち込めないことがあるため本当に間近に迫った敵にしかこれを使えない。この状態異常を付与された対象は自身の心音に対して異常なまでの恐怖心を抱き、鼓動のたびに震え上がる。大抵は恐怖で混乱し、戦う気力さえ失うが、中には心音に立ち向かう者もおり、この者の結末は自ら心臓を止めるという強烈な最期である。

 尚、アルテンヒシェルに冗談で死の魔法を唱えているが、しっかりと解除している。ただし根に持たれている。上記の理由から間近に迫った対象にしか使わないとしているオーネストがアルテンヒシェルに使ったという点はアレックスやイプロシアの間では「アルテンヒシェルに密着するほど近付かれて狼狽えて間違って使った」というのが事実なのではないかと語られていた。


・羨望

 自身が抱く羨ましいという感情は暴力的なまでの願望、それでいて欲望以外のなにものでもないと思っており、アルテンヒシェルに対して感じるそれらを激しく嫌悪していた。それは自分自身の才能云々を飛び越えて、彼自身にしかない才能への羨望だったためでもあるが、彼自身が彼自身にしかない才能を軽んじ、疎ましく思ってさえいることに対しての言葉に言い表すことのできない暗い感情があったため。

 だからオーネストは羨望の対象になるのを嫌って僧侶や神官の高位の役職に就くことを嫌い、連合に奴隷と共に身を隠していた。この奴隷とはリゾラたちと別れる際に契約を切って、解放している。


・容姿

 見た目は麗しい女性であるが年齢は軽く五十から六十を越えている。これは冒険者のロジックが起こす肉体の全盛期を維持する働きが作用しているためとも言われているが、アルテンヒシェルは声音で自身を老人ではなく青年期の姿に見せかける魔法を体得していたりと確実性がない。そのため容姿が維持されていたことに対する答えは『神の使徒として選ばれたため』以外にはない。



【ヴィオール・ヴァルス】

・『異端審問会』の構成員にして『信心者』と呼ばれていた男。痩せこけており、髪の毛も細く、骸骨のような姿が特徴。普段はフードを被ってそういった容姿を隠しているが、興奮状態に入ると脱いでその姿を晒す。アレウスの身に起こる多くの事態の根本たる原因を作っていた原因の一人。


・『聖者』

 ヴィオールは神に選ばれた聖者である。聖者は聖女と違ってこの世界に存在できるのは一人までで、ヴィオールが聖者になってからは誰一人として現れていない。ヴィオールが『異端審問会』にいることで多くの信者が取り込まれたのは言うまでもない。魔力は澱み切っているが清められた体は健在で、打撃格闘術による戦闘が彼本来の戦い方である。尚、冒険者が甦る際に使われる『聖骸』と『聖者』には一切の繋がりはない。『聖骸』となるのは神官や僧侶のような神職に就いており、心の底から自らの肉体を魂が落ちたその後も神のために、人のためにと願った者であって、決して『聖者』としての力が宿らしめた者たちの骸であるわけではない。


・『ラビリンスでの一件』

 アレウスがラビリンスで遭遇した枯死した男が見た人物。それでいてロジックを広め、そこに寿命を刻むことでその年齢に達するまで死なないという呪いとも言うべき書き換えを行っていた人物でもある。アレウスはラビリンスから本を持ち帰っており、その解読を行うことで彼の名を看破するに至った。


・『全属性耐性』

 聖者にはどんなものも通用しない。火を渡れば焼かれることもなく、氷で凍傷することもない。風に吹かれても飛ばされず、水に満たされても溺れない。彼が纏う魔力は全ての属性を無効化、或いは軽減する。彼を前にすればほとんどの魔法使いが打つ手なしとなるが、アレウスは『盗爪』の獣剣技で纏っている魔力を削り、膜を薄めるに留まらず穴を空けるができたためアベリアの魔法が通ることとなる。


・最期

 バシレウス、イプロシアのロジック研究及び不老不死の研究における最初期の実験を受けたヒューマン。ただしイプロシアとは面識はなく、バシレウスを一目見た瞬間にその神性を帯びた風貌に「神はこの世にいるのだ」と呟き、以後、神の御使いとしての日々を過ごすようになる。果てしない歳月の中でバシレウスが生み出したロジックを教導隊の一員として大陸中に広めた。ラビリンスと化した都市においてもヴィオールは神の御使いらしくロジックと不老を与えており、それらは全て己が使命として布教をやめることはなかった。中でも直感、或いは本能、もしくは妄想から生じた『神に選ばれた御子の降臨』がいつか起こることをあらゆる地で語り、布教しており、シロノアをその神子(御子)と信じて疑うことはなかった。

 不老の書き換え、ロジックの存在を認めてはいるが冒険者のロジックと呼ばれるノア・フロイスが発明したロジックの変容は認めていない。それは神が与えしロジックを人間ごときが醜く形式を変えたものであるという考え方を持っているため。

 カプリコンを幻想のシンギングリンに呼び出すが、同時に帰還したアレウスの奇襲を受けて異界へと堕ちる。そこで自身が聖者であることやどのような力であっても自身を傷付けることはできないと高を括り、アレウスを蔑んでいたがそういった一切を吹き飛ばすほどに成長を果たした彼の手によって魔力の膜は剥がされ、アベリアの魔法を浴びる。魔法による痛みから縁遠い日々を、年月を送り続けていたヴィオールにとって肉体から伝えられる痛みは耐え難いものがあり、思考が乱れる。そうして『魔物研究』、屍霊術師の技能を用いて対抗しようとするものの急造の魔物はアレウスに通用せず、追い詰められる。

 アレウスに様々なことを問い掛けられるが、死を目前にしてヴィオールが語るのは神の御使いであることや、自身の生い立ちといった身の上話しかせず、ラタトスクの異端審問を起こるべくして起こったと発言したため、復讐心を抑え切れなくなったアレウスの手で葬られた。


・『穴』の支配者?

 ヴィオールは異界の『穴』を呼び寄せる力を持っていると考えられている。だからこそアレウスはヴィオールを討つことが『異端審問会』の極端な移動力や、異界獣の被害を減らすことに繋がると考えた。しかしながら、聖者でありながら神が拒む『穴』を呼び寄せるとは到底考えられないため、ヴェインだけがこの点について腑に落ちない感覚を抱いている(報告はしていない)。



【カプリコン】

・異界獣でありアリエスとタウロスを喰らっている『悪魔』の権化。頭部はアリエスとタウロスを喰らったことで複雑化してはいるものの獣の頭骨のようにも見え、眼球があるべき穴から赤黒い光点がただジッと世界を、人間を見つめる。


・『呪詛』

 古の時代に使われていた呪言とも魔法とも異なる言葉。一度だけでは効果はほぼないが、複数受けることでその後に唱えられる魔法の影響を強く受けることとなる。解除、解呪の魔法でも祓うことはできず、古の時代に使われていた『祓除』の魔法でようやく解除することができる。これは『呪詛』ののちに唱えられる魔法に対しても同様。しかしながら『祓除』の魔法はエルフですらも解呪と解除の魔法が完成してから使わなくなったほどの古い魔法で、現代まで伝わっているとしてもごく一部に限られる。そして習得していても祓魔の力は血筋が求められるため、クルタニカの『祓除』よりもヴェインの方がより強く効果を及ぼすことができた。

 この魔法は古の時代よりあるため、途中からバシレウスとイプロシアの手によって生み出された『ロジック』に状態異常として付与されるのではなく、対象の魂に付与されるものである。だからこそ古の時代より魔を祓うために使われた古の魔法が必要なのだ。


・『石と化せ』

 文字通り、対象を石化させる魔法。バジリスクやコカトリスが持つ石化の眼ではなく、詠唱した際に『呪詛』が掛けられていた全員に影響が起きる。そのため範囲は広範囲ではなく超範囲。『呪詛』がカプリコンの思っていた以上に遠くへと届かなかったことで被害が最小限に抑えられている。石化すると言っても『呪詛』を一回唱えられた程度では筋肉の硬直程度で済み、これらで心臓が止まることもなく、ただ動けないだけ。とはいえ祓魔の術を受けるまでは強靭な魂を有している者でもなければ動くことは難しい。また、『呪詛』を二重三重に唱えられ続けると足先や指先から段々と石と化していく。このときに心臓と肺が石化するのは一番最後であり、この世界で『石化』の状態異常が嫌われ、怖がられ、受けた者の大半が立ち直れない原因となっている。


・『合祓・聖十字斬』

 アレウスの獣剣技とヴェインの祓魔の力の合わせ技。祓魔の力を受けて白蛇となった気力の刃が対象に咬み付き、貫き、内部へと至る。そして内部で蓄えられた祓魔の力を一気に放つことで対象を内部から十字に聖なる魔力で焼き払う。『悪魔』に特効。特に権化とも言うべきカプリコンには古の時代より続く祓魔の力は想定を超えるほどの威力となったようだ。


・頭骨

 カプリコン討伐後に肉体は全て塵と化したが、骨格標本のように頭骨のみが残った。リスティが獣人たちにお願いをして、シンギングリンに回収して保管している。


・ヴェインの覚醒

 ヴィオールが異界で死亡したことで、世界から『聖者』が消えた。このことから新たな『聖者』の誕生を世界が道理として選出する状況となったが、早々に世界はヴェインを『聖者』と認定した。それはヴェインのひたむきな神への信仰心とどのような人物に対しても変わらない奉仕の心を持っていたため。命からがらに復活して早々に溢れ出る祓魔の術を用いてカプリコンを拘束し、聖女であるアンソニーすらも敬うほどの力でもってアレウスの技と魔法を合わせ、カプリコンを討伐した。



【“祝福の目覚め(アゲイン)”】

 本来、肉体の損傷に伴って意識は希薄となり、やがて意識の消失と同時に魂も消失する。しかし稀に魂が肉体の損傷や死を理解していない状況が起こる。この際、魂はやがて死を認識して輪廻へと還ることになるのだが“祝福の目覚め”はそんな魂に呼び掛けて再び肉体に宿らしめる魔法である。この世に存在する唯一の蘇生魔法であり、唱えられるのはアイシャ・シーイングただ一人。それでもこの蘇生魔法は死の瞬間に立ち会わなければほぼ蘇生は不可能で、かなり厳しい条件を孕んでいる。今回はヴェインの死の瞬間とアンソニーの死の瞬間に居合わせることができたために奇跡とも呼ぶべき御業を発揮したが、極限状態の戦闘においてこの魔法を頼っての特攻は不可能で得策ではない。また、アイシャは父親よりこの魔法について語られこそしなかったが、使用する対象において条件を付けている。彼女は父の教えを堅く守る心の持ち主でもあるため、その条件から外れている対象にこの奇跡の魔法は届かない。たとえば復讐心で動くアレウスやアベリアは受けられず、殺し合うと決めているエルヴァとクルスも対象外で、野心家のカプリースなどには唱えたところで作用しない。



【国外し】

・シロノアが行った帝国を主だった国が外す作戦。本人は新王国に、他にも遣いを出して帝国が『魔物研究』の完成体を戦場に出しようものなら、その事実を糾弾して全ての国が帝国に制裁を課す流れを作っていた。その際に一部の人物のロジックに干渉し、本来ならあり得ない行動を起こさせて確実に協力を得られるように遂行している。


 ニンファンベラの依頼書の不備

 クルスがマクシミリアンの遺体を確認したこと

 エレスィが疑りもせずにレジーナの元に女性を連れてきたこと

 ドワーフにガラハが死んだと触れ回らせたこと


 これらは全て『異端審問会』、もしくはシロノア自身がロジックを書き換えることによって起こさせた行動である。この真意はシンギングリンに他種族を集め、人と人との繋がりなど一部の人間がいなければ弱々しく簡単に千切れ、不和を招くことを証明するため。

 だが、この国外しを逆手に取られ、そしてシロノアの思考をアレウスが読んだことによって作戦ではシンギングリンにはアレウスは来ないはずだったが現れ、同時に王女と皇女の殺害やレジーナの殺害を防がれてしまう。

 また、地図での詳細な確認ではなく見えてきた街並みをシンギングリンと思い違えてしまい、ヴィオールやルーエローズが誘い込まれてしまった点もシロノアの想定外である。

 この想定外はカプリースの水魔法、『不死人』の協力及び『夢路』の力、ジュリアンのアヴェマリアと同様の魔力の糸を操る力によって引き起こされており、この結託がアレウスの入念な復讐心から生じたものだとシロノアはまだ知らない。



【『魔眼収集家』、ルーエローズの狙い】

・シロノアが起こすアレウスを除いて起こる他種族間の不和を見届け、更には現れるであろう『星眼』と『竜眼』を強奪することを目論んでいた。フェルマータの『竜眼』はすぐに奪い取ることもできたが未熟で成長途中のその『魔眼』を取ったところで自身が望むレベルの力にはなり得ないと考え、逆にロジックを書き換えることで聖女たるアンソニーを惑わせるために利用する。また、古の時代より『竜眼』を使いこなしているヴィヴィアンがいたため、フェルマータを捨て駒として使うことについても躊躇いはなかった。

 しかし、アンソニーだけならまだしもリゾラの登場やシロノアの計画であれば本来現れることのなかったアレウスの帰還も合わさって目論み通りに行かなくなり、『魔眼』を強奪することを諦めて幻想のシンギングリンを『滅眼』で破壊したのちに撤退――したかのように見せかけて本物のシンギングリンに先に帰還していたアルフレッドとアンソニー、フェルマータとジュリアンを狙う。それらはなんの手柄もなくシロノアの元に帰りたくなかったためで、このときには『魔眼』の強奪よりも殺害することに意識が向いていた。

 たとえ子供であろうとも歯向かったものには死の魔法すら行使するルーエローズは決して後悔もなく、そして迷いもしない。絶対的な悪意に塗れている。『聖痕』の位置は うなじ。持っている『魔眼』は『滅眼』。


・“神との誓約(デスサイズ)

 ルーエローズが持つ死の魔法。本人は一般的な――魔力に重点を置いた立ち回りをする聖女にとって特効と自負している。指定した対象に『誓約』の状態異常を付与して強制的に対象を対象自身の精神世界へと連行する。その後、ルーエローズの魔力によって“神”が送り込まれ、その“神”と精神世界での殺し合いが行われる。勝てば状態異常を解除し現実世界に復帰するだけでなく二度とルーエローズの死の魔法を受けることはなくなる。敗北すればどんなに心や魂が拒んでも自死する。

 精神世界における戦闘では“神”が条件を指定する。これはルーエローズの死の魔法の範疇には含まれておらず、送り込まれた魔力が織り成す“神”が持つ一時的な自我によって決められる。聖女には甘く、罪人には厳しい。しかし大抵は魔力と魔法の使用不可を指定する。このため魔法主体の聖女は太刀打ちができず、たとえ信仰心を武器として戦う打撃格闘術を習得していても、そもそもの魔力を体中に満たすことができないため並大抵の聖女はこの“神”に屈してルーエローズに目を奪われ続けた。これを乗り越えられたのはアニマートとオーネストのみ。前者は負傷してしまったため、直後にルーエローズに『蜜眼』を片方だけ奪われることとなった。後者に関しては全くの無傷だった。

 冒険者ではあるが、まだ活動実績のない十三、四歳のジュリアンに唱えた。アンソニーも死の魔法が招く惨劇での被害者に対して思う感情が薄いが、ルーエローズもまた子供に用いることに躊躇いがなかった。ここから一時、リゾラがエイラに冤罪を掛けられそうになるが、彼女が真摯に無実を主張したことで誤解は解け、同時に彼女はルーエローズを倒すべき相手と見定めた。


・『星眼』

 アンソニーの過去は不明であるが、フェルマータを見た瞬間にかつてないほどの庇護欲に囚われ、必ず助けなければならないという使命感を帯びる。これまで死の魔法問わず子供すらも殺めたことは幾度となく、穏やかな口調の割に平気で惨劇の要因たらしめた彼女であったがフェルマータを助け出したいという感情はとにかく強く、周囲一帯にすら影響を及ぼす死の魔法を唱えることも、彼女に拳を振るうこともせず抱き寄せ、ルーエローズに植え付けられた恐怖心を払うことだけに自らを徹した。たとえ身を鉄の破片で貫かれようともそれは変わらず、たとえ死んでしまおうともその想いは変わらなかった。アイシャの蘇生魔法がなければ『星眼』も幼き『竜眼』もルーエローズに奪われてしまっていただろう。

 『一番星、煌きの星』はいわゆるバシレウスとイプロシアの持つ魔法の『火星』を見ることを習得条件としている金属性の魔法。『赤星』や『紺碧の星』などと同様に炸裂してつぶてこそ放たないが、回転して金属片を辺りへと放出する。『星眼』の力を足しているため魔力供給が断たれても綻びて瓦解せず、込めた魔力が無くなるまで作用し続けてしまう。

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