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異世界で壊す異界のロジック  作者: 夢暮 求
【第14章 前編 -国外し-】
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捜索


『回復して早々に頼ってしまうのは申し訳ない限りなのですが』

「そのくだりはギルドに行ってからもう済ませていますよ」

 目覚めて一日が経ち、完全に崩壊していた胃腸の調子も驚くほどの回復を見せ、本調子ではないにせよ活動すること自体に不便を感じることはなくなった。固形物を食べてもお腹を下すこともなかったため、朝食後にリスティに顔を見せるためにギルドへと訪れた。


 少しばかり事態がややこしいことになっていた。アベリアたちが一日経ってもシンギングリンに帰還してこないのだと言う。百合園までの距離を考えると昨日の夜までには帰ってきてもおかしくないらしい。しかしながら百合園で魔物と一波乱があったなら野営で一日休息を取ることも考えられたため、アレウスは焦っているリスティを宥めて正午までギルドで過ごした。

 それでもアベリアたちが帰ってこないため、いよいよなにかがあったのではないかということでリスティに頼まれてアレウスは彼女たちの百合園までの足取りを探ることとなった。妙なことにリスティの担当者としての繋がりが働いていないらしい。地図を開いてみても彼女たちの現在地を特定することはできず、見失ってしまっている。かと言って全滅したのであれば教会から相応の報告が上がってくる。それがないのであれば、彼女たちはまだ生存していると考えるのが自然であり、もっともな結論となる。


 担当者と冒険者の繋がりを断つ方法は赤騎士や白騎士から散々に見せられたが、それらは人智を越えていた。あれほどに無茶苦茶な方法ではなく、もっと単純な方法で――ロジックを書き換えるなどで消し去ることができるのならば、その力を悪用できる人物たちによって彼女たちに危機が迫っていることになる。


『いつもより焦っていませんね』

「焦るもなにも、アベリアたちをどうこうできるような連中はそうはいないでしょう。安否不明である以上、急いではいますが気持ちは急いていません。それより、『接続』の魔法はまだ維持できますか?」

『距離的にはまだ問題ありません。一時間は話すことができます。ただ、この体制はあくまで魔物の“周期”やパザルネモレのような緊急事態における方法なのでいつでも出来るわけではありません。『天眼』のように万能ではないことをお忘れなく』

「分かっています。一時間経たずに切れることがあれば、僕もまた彼女たちのように担当者との繋がりを断つなにかと遭遇したと判断してくれると助かります」

 そしてアレウスも『接続』の魔法が切れれば、すぐ近くに担当者との繋がりを断つことのできるなにかがいると分かる。


 なにかではない、恐らくは人物だ。アレウスの中では魔物ではなく人間であるという確信めいたものがあった。


「百合園は性質上、男性冒険者は入れない。パーティを組んでも、そこに入るのは女性冒険者。つまりは男は女性を送り出すことになります。もしも手を引かれて男性冒険者が入っても香りで幻覚を見せられ、気付け薬などの効果が一切利かずに魔物へと寄ってしまうらしいですね」

『ええ』

「それってつまり、百合園周辺にはほぼ女性冒険者しかいないってことになりますよね」

『……まさか、人(さら)いですか? いやでも、合理的ではあります。ただ二十年前の百合園発生時には女性冒険者が行方知れずになるようなことは全く……』

「冒険者を狙った人攫いが二十年前にはいなかっただけで、もしかするとここ数年では起きている可能性があります。ただ、百合園の発生の記録は発生地点が全国各地であるためにバラけていて、発生の情報は入ってもその際にどのようなことが起きたかまでは調べようとするとそれこそ全国各地のギルドを行脚することになります」

『百合園という記録を確認し辛い魔物を利用しての人攫い…………そうなると、相手はテッド・ミラーですか』

「563番目は消え去っても、他のテッド・ミラーは残っている。そしてテッド・ミラーは誰もが人攫いであり奴隷商人」

『ですが、アベリアさんたちが奴隷商人ごときに(おく)れを取るようには思えないのですが』

「そこは僕も同意見です。一番の謎はそこですから」

 アベリアたちを無力化して攫う。そんなことが出来るとはアレウスですら思えない。ましてや『原初の劫火』と『冷獄の氷』、そして『初々しき白金』の『継承者』がいるのだ。『不退の月輪』の『超越者』までいる。そんな相手に一体誰が有利に立てるというのか。

「誰かが人質に取られたとか?」

『考えられません』

「ですよね」

 もしも穴があるとするならば、アイシャとニィナであるがどちらも精神的には弱い面はあっても人質になるくらいなら死ぬ覚悟ぐらいは平気でしている。改めて考えても誰も足を引っ張ったり、パーティにおける弱点となる部分とはならない。


 アベリアたちが張ったのであろう野営地点に着く。


「保存食は…………残ったままか」

 鞄の中身は奇跡的に動物に荒らされておらず、まだ保存食が残されている。野営を行い、軽い食事を摂ったのだろうが百合園での依頼を終えてからここに戻り、本格的な食事を摂るつもりだったことが窺える。

「焚き火の熱は……一日経っていたらさすがに、か」

 誰かが直後まで利用していたような残り火も熱もない。彼女たち以外の誰かが野営地点を使わせてもらった可能性は薄い。なにせ鞄を荒らしておらず、食べ物に手を付けていない。こんなにも食事や睡眠を摂ってくれと言わんばかりの状態でありながら鞄も焚き火も無視して時間を潰すのは非合理的である。

「足跡……痕跡…………技能が本調子じゃないから、ちょっと分かり辛いな」

 痕跡を探る技能を習得してはいるのだが、『衰弱』から回復して早々であるからかどうにも鈍い。気配消しや感知の技能はしっかりと使えているため、しばらく使うことがなかった技能が上手く働いてくれないようだ。こうなると罠感知も若干怪しい。

『そこから歩いて二十分ほどで百合園――つまりはアベリアさんたちが消息不明となった場所となります。アレウスさんには恐らく見えないかと』

「アベリアたちの痕跡を辿りつつ進みますけど、百合園の傍に近付いたら教えてください」

 男性冒険者が百合園に侵入して無事で済んだという話はアレウスが知っている上ではない。そのためリスティに伝えてもらわなければ、百合園に踏み入りかねない。

『ですが不思議な話です。どうして男性には見えず女性には見えるのか』

「百合は女性(じょせい)(せい)の象徴みたいな花ですから。そして純潔、無垢、純真。どうして魔物が女性限定で可視させ、侵入を許すのかまでは分かりませんが」

 百合園の生態は一切謎。魔物と呼んではいるが本当に魔物かすらも不明で、しかしながら世界に魔物が現れ出した時期から発生し始めたために魔物であるとされているだけだ。魔力で育ち、種を残さず枯れ落ちる。ただの植物ではなく、時を経て再び世界のどこかに発生する。その性質がある以上はアレウスも魔物に違いないとは思っている。

「本体が見えれば少しは研究も進みそうだけど」

 百合園の本体は一体なんなのか。それさえ分かれば断定が可能となる。


 とはいえ、今回はそれを探りに来たわけではない。アレウスは足跡を探りながら慎重に進む。


「ここで一度、足を止めています」

『丁度、その辺りから百合園が見えていたのかと。草木が見えませんか?』

「寒冷期の景色しかありませんが」

 どこにも草花は見えない。やはりアレウスの目では百合園を捉えることはできないらしい。

「すみません、ちょっと休んでいいですか?」

『私が無理を言ってしまっているのでそれは構いません』

「心配で終わればそれでいいとも思いますが……野営地点に帰ってきていないので、どうにもその線は薄いみたいです」

 アレウスも若干ながら焦りがある。だが体が付いて行かない。やはり体力の回復にもっと時間を費やすべきなのだ。回復して早々に準備運動代わりにリスティの頼みを聞くべきではなかった。

 だが、聞かなければならない理由もあった。アベリアたちを心配する気持ちはアレウスにもある。決して無視などできない。正午までに帰ってくるだろうという予想も外れた。だからこそ今、こうして足取りを追っている。


 深呼吸を繰り返す。考えられるのは道に迷っているか魔物の攻撃で重傷を負って動けなくなっているか。リスティとの繋がりが断たれているのは百合園の特性によるものとするならばある程度は合点が行く。

 最悪なのは奴隷商人絡み。その場合は救出に向かわなければならない。だが、焦ると肝心なところで体が悲鳴を上げる。大事なのは体力を保持しつつ、最悪の場合が現実であるのならアベリアたちの居場所を突き止めて救出すること。


 もう既に彼女たち自身で解決できているのならそれはそれで良い。心配させた分だけ帰還後、数日の療養中にワガママを言わせてもらおう。


『そこからもう間もなく百合園です。立ち止まった方がよろしいかと』

「分かりました」

 足跡を追い続けた結果、再び彼女たちが立ち止まったであろう地点でアレウスも足を止めた。ここから数歩でも前に進むと百合園に入ってしまう。そうなれば幻覚を見せられて魔物の餌食となる。

「百合園が見えない上に、百合園に潜んでいるであろう魔物すら見えない……か」

 一体どういった理屈で成り立っているのだろう。認識阻害の魔法めいたものなのだろうか。

「認識阻害……認識阻害? リスティさん、担当者との繋がりって認識阻害の魔法でどうこうできませんか?」

『あまり聞いたことはありませんが、可能かもしれません。要は姿や気配が見えないように装うことですから、その魔法を掛けられれば一時的に私が捕捉できなくなるかもしれません』

「滅多なことではない?」

『世に知れ渡っている認識阻害の魔法においても担当者と冒険者の繋がりは断たれないとされています。キトリノスさんたちのキャラバンにアレウスさんたちが接触した際はさすがに私の方でも捕捉が困難になりましたが』

「可能ではある、か。それもエルフの認識阻害の魔法よりも高度? あり得ない」

『ええ、あり得ません。ですが、私たちの常識が覆されている可能性も視野に入れなければなりません』

 ここからの足取りは辿れない。恐らくは百合園に入ったのち、中で活動して、ここ以外から出た。入った足跡はあっても出て行った足跡はない。ならば出て行った足跡がある場所を探すだけだ。

「百合園の範囲ってどのくらいか分かります?」

『こちらでは一応ながらに把握できていますが、アレウスさんには見えていないのでお伝えするのは困難かと』

「地図は、僕に渡してくれたものと同じものですか?」

『はい』

「そっちになにか大きさの指標になる物ってあります? インク瓶や羽根ペンなどでも構いません」

『ええっと、待ってくださいね』

 実際にインク瓶や羽根ペンで示されるとアレウスでは把握できなくなってしまうので、それ以外を求めたいところだが背に腹は代えられない。

『アレウスさん、ギルドでよく紅茶を飲まれていましたよね?』

「それはリスティさんが淹れてくれるから飲んでいただけなんですけど」

『そのときのスプーンの大きさって分かります?』

「大体は」

『スプーンの掬う部分――半円状の部分を横向きに置いたぐらいあります』

「僕のいる場所は半分割――半円状の半径ぐらいですか?」

『そうです』

「……結構広いし大きいな」

 しかも綺麗な円を描いて広がっているわけではないらしい。

 感覚的なもので地図に印を付けておくが、自身が思っている以上には大回りした方がいいだろう。

『もし百合園に入りそうになったら早めに私が引き止めますので』

「ありがとうございます。じゃぁ周囲を見て回ります」

 百合園の大体の範囲は分かった。インク瓶や羽根ペンで測られるよりはまだ記憶に残っている物で示してもらえてよかった。

「一苦労だけど」

 右回りか左回りか。どちらから始めるかと悩んだがアレウスは左回りで調べることにする。なにか痕跡があったからではなく、悩んでいないでさっさと動いた方が速いから。結果的に右回りの方が良かったと思うかどうかは考えないこととした。

「それにしても、本当にこれっぽっちも見えないんだな」

 どのように頑張っても百合園をアレウスは捉えられない。目を凝らしても寒冷期特有の寒々とした光景しかない。特に寒風が体を容赦なく冷やしに来るため、この時期からしてみれば草花の生い茂れる夢のような空間があるのかと疑ってしまう。


「……車輪の痕……か」

 痕跡探しの技能もこれだけ長く使用し続けているからか、徐々に調子が戻りつつある。見逃しそうな車輪の(わだち)をパッと見ただけで視認できた。

「あとは馬……まぁ車輪だけあって馬の足跡が無いはおかしいか」

 確実にここを馬車が通った。人の足跡はない。ここで乗降が行われた痕跡はない。ならば轍の行方を追うべきだ。片方は地図で見ても百合園に沿っているが、もう一方は百合園から離れている。そして、轍は二重に途中から変わる。

「行き来したな。なら、まずは百合園に沿っている方か」

 確信を持ちたい。だからこそアレウスは百合園に沿った轍を進む。結果的に左回りで正解だったが、あのときの選択は直感が働いたわけではない。単純に左を向いていたから左回りにしただけだ。運が良いと思うべきか、それとも彼女たちにとっては不運だと思うべきか。運気について素直には喜べない。

 しばらく歩き、どうにも普通の足取りとは思えない複数の足跡を見つける。急いで百合園から出たのだろう。あちらこちらにアレウスの知る靴の大きさの足跡が見える。

「そして、この場所で倒れている」

 土と砂が僅かに避けている。倒れている痕跡は六人分。

「この七人目の足跡を僕は知らない」

 靴の大きさからして男性か。だが男性と同じくらい足が大きい女性もいる。その辺りはまだ断定できない。確かなのは、倒れている六人を見物するように近場に足跡があり、その人物は丁寧に一人一人を轍の方へと運んでいることだ。

「重量が掛かって、ここに停めていた馬車が作った車輪の痕は深くなっている。あとは馭者役がいるな。だから実行役とで二人一組だ。テッドに従っているのなら、また異なるヘイロンか?」

 女性であれ六人を馬車に乗せて、幌の重量が上がった。だから轍が深くなった。この付近の土はどこもかしこも若干ぬかるんでおり轍は残りやすく、確定と言える。

「痕跡は、消せないよな。六人を運んだ痕跡は消せても、轍ばかりは消せない。だからもう全ての痕跡を残しているんだな。そしてすぐに捜索に来ないと高を括っている」

『冒険者ですからね。二、三日帰りが遅くなってもギルドとしてはまだ待てる範囲です』

「担当者との繋がりを断ったのが仇になったか? それとも認識阻害の魔法を掛けた結果、そうなったか?」

 どちらにしても、リスティが早期にアベリアたちが危険なのではと思わなければこの人攫いを追うことはできなかった。

「最悪の予想が当たるのは嬉しくないな」

『マズいかもしれません』

「リスティさん、一旦なんですけど『接続』を切ってもらえますか?」

『え、はい。でもこちらからは常にアレウスさんの地点が見えるようにはしておきます』

「お願いします」

 『接続』が切れた。何度か「あーあー」と声を発してリスティからの返事がないことへの確認を行う。


「リゾラ」


 そう言って、広がっているであろう百合園へと振り返る。

「……なに?」

 しばらくして声が返ってくる。

「ちょっと力を貸してくれないか?」

「それよりなんで私の残滓がここにあると思ったの?」

「百合園は性質的に女性冒険者に限定される。つまりは冒険者を狙っての人攫いも起こり得る。ただの奴隷商人は冒険者なんて攫わない。つまり、この人攫いはテッド・ミラーだ。君のことだから、女性しか近寄らないであろう百合園には魔力の残滓を置いているんじゃないかと思った」

「百合園は枯れて次にどこで発生するか分からないのに?」

「そこなんだけど……君、百合園に魔力を置いていないかい?」

「へぇ、そういう視点を持つんだ?」

 リゾラの幻影はアレウスに感心する。

「百合園は完全に枯れているようで、実は魔力を残しつつ移動して再発生している。だとしたら百合園に魔力を忍ばせることで、君は百合園の位置を常に追える」

「正解。でもそこまで分かっているなら私が力を貸すまでもなくない? なに? あの間違いを犯した日のことが忘れられない? あのケダモノみたいな日のことが……まぁ私も忘れられないけど。まさか私の方が先にバテるなんて……」

「その話題には触れないよ。リスティさんとの『接続』は切れていても、あまり大きい声では話せないから。あと、質問に答えるなら君がいないところでテッド・ミラーをどうこうしたら怒りそうだったから。未だに世界に蔓延っているテッド・ミラーを君はひたすらに殺し続けているはずだ」

「……そうだね、それで合っている。テッド・ミラーは根絶やしにしなきゃならない。実際さ、私も困っていたんだよね。せっかく百合園の傍にテッド・ミラーが現れたのに、私は百合園に残滓を置いているから百合園から幻影を出すことができない。でも、あなたが来てくれたからあなたに魔力を引っ付けることで動けるようになるわ」

「なんでアベリアたちを見捨てた?」

「私の魔力を彼女たちに引っ付けたら私の残滓が負けるのよ。『原初の劫火』、『冷獄の氷』、『初々しき白金』、『不退の月輪』、そして完全憑依が可能な『不死人』。絶対に無理。あり得るとしたら獣人だったけど、そっちも双子の妹の方が反応しそうで嫌だった。こんなことでまた獣人の頭を悩ませたくはなかったし」

「なら、力は貸してくれるんだな?」

「ええ、言ってこないようだったら私から頼んでいたところ。まぁ、あなたもあなたで魔力を引っ付けると私の残滓を焼き尽くしそうな気配があるんだけど」

「『衰弱』から回復した直後で本調子じゃない。あとアベリアから炎を充填してもらえていないんだ」

「だったら問題なさそうね」

 リゾラの幻影はアレウスの傍に寄り、そして消える。

「そうだ、リゾラ? 君に一つ聞いておきたいことがあって」

「なに? 長ったらしい話をしている暇はないんだけど」


「君はもう一人の自分がこの世界にいる実感はあるかい?」

「もう一人の自分? え、なに? あなたも『奏者』にその手の話をされた感じ?」

「そうだけど」

「あの人の言っていることは事実なんだろうし、あなたがなにかしらもう一人の自分を感じ取っているって言うんなら信じることもできるけど、私は今まで一度もない」

「一度も?」

「そうよ。一度ももう一人の自分を感じたことなんてない」

 ここまでハッキリと言うのだ。リゾラが嘘をついているとは思えない。

「聞きたいのはそれだけ?」

「え、ああ。そうだけど」


「なら行きましょう。薄汚い計画をぶち壊して現実ってものがどれほどにあいつらにとって逆風となっているか教えてやりましょうか」

 張り切るリゾラに対し、アレウスは彼女の言葉について考えている内に応じるタイミングを逃す。

「産まれ直す前からそういうところがあるからイラっとするのよ」

「辛辣過ぎないか?」

「辛辣にさせているのはあなたの態度であることを理解して」

 相変わらず容赦がない。アレウスはそう思いつつ、轍を辿るようにして肺に負担を掛けない程度に走り出した。

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