赤い鎧
亜人に襲撃を掛けているのは冒険者たちだ。しかしまるで自分たちが襲撃を受けた側であるかのような混乱が続く。色々なところからワラワラと湧いてきては理解してもいない言葉を投げかけ、こちらの心を壊そうとしてくる。それだけではなく個々が全体的に能力が高い。人を喰ったことで高い魔力を保持し、一人の冒険者に対して決して一匹で向かわずに多数で押し寄せてくる。
人数差は覆しようもないため、数匹を倒して怯えさせて下がらせる。これの繰り返しが続く。この牽制ではない確かな恐怖を亜人は感じ取ってはいるようで、時間が経てば経つほどに攻勢は緩んでくる。ただし、あくまで恐怖を抱いている間だけだ。アレウスたちと対峙している亜人たちは常に倒される恐怖に乱されているように見えるが、その後ろで様子を窺っているまだ大量の亜人たちはどこか統率の取れた冷静さを持っている。
観察されている。アレウスが魔物の習性を調べるように、亜人もまた冒険者という生物を調べているのだ。どこが弱点であり、なにが冒険者の恐怖となり得るのか。心を壊すために人間の言葉を使うだけでなく、自らが備えている身体能力でどうやって上回ろうとしているのか。事細かに調べられている。誰一人としてそのようなことを口にすることはないが、アレウスには確信にも取れる予感があった。
『感知の技能を獲得したであろう亜人を探してください。通常の魔物たちよりも統率力の高さが見受けられます』
「たった一匹だけがこっちの動きを把握できるだけだというのに」
それだけで統率力が高まったというのか。アレウスは亜人を追い払うように短剣を振り乱しながらリスティの念話に対し、心の中で呟く。
「“火よ”」
左右の亜人をアベリアが放った火柱で焼き払い、射手の男が尚も突撃する一匹を連続的に射抜いて仕留める。続けざまに火柱を振り払いながら亜人が寄ってくるがこれをオラセオが盾で受け止め、そのまま突き飛ばして転ばせる。その転んだ亜人をガラハが斧で断つ。
「キリがないな」
「こういった持久戦の経験は?」
「見損なわないでくれ。弱音を吐くばかりだが、これでもそれなりに死線を越えてきた冒険者だ」
オラセオは疲れの色を見せない。パーティを立て直してからはその戦闘に危うさはない。実に堅実的な立ち回りをする。オラセオが防ぎ、戦士が続く。そこに射手が助力し、僧侶が補助魔法を唱えて、魔法使いが唱えた魔法で一掃する。全てのパーティの基本ともいえる構成である。目新しさこそないが、基礎が研究され尽くしているからこそ役割がハッキリしていて立ち回りやすい。更に彼のパーティは驕らず猪突猛進もしない。その堅さは一朝一夕で得られるものではなく、各々が所属しているパーティの個性を理解し尊重しているからこそ成り立っている。意図しない持久戦ではあるものの、その地力が今まさに発揮されている。
「にしても後ろ後ろと、ひたすら後ろから」
アレウスは僧侶と魔法使いに射掛けられた矢を弾き、アベリアが彼女たちを陣形の中央に下がらせている間に一気に亜人へと接近して二匹を倒す。ヴァルゴの異界とは違って、この程度の亜人ならば立ち回りさえ気を付ければ難なく倒せる。無傷のままとはさすがにいかないが重傷ではなく軽傷で抑えられる。大怪我を負ってパーティバランスが崩されることが一番の脅威だと知っているため、尚のこと立ち回りも含めて頭も冷静に働く。
「アベリアさんは火属性の魔法以外になにが使えますか? “火球よ、落ちろ”」
「どうしてそんなこと。“火の玉、踊れ”」
「属性を合わせればより強力になります。そろそろ魔法の属性を変えないと亜人たちが慣れる頃じゃないでしょうか」
慣れ。そんなものがあるのかどうかは知らないが、魔法使いが言うように段々とアベリアと唱えて落とされる火球に対して逃げ回るのではなくむしろ飛び込んでも尚、爪や牙を振るおうとしてきている。
「あとは土属性だけ。攻撃じゃない補助魔法なら他の属性もあるけど」
「私は水属性と、攻撃に使える木属性魔法は一つだけ。残念ですが、火属性で合わせている方が威力としては安定するみたいですね」
「うん、だけどいよいよ通じなくなってきたら撃つ方角を別々にして唱えた方がいいかも」
「ですね」
全ての生物が本能的に持つ火への恐怖を克服しかけているのだとすれば、属性を変えてもいずれ全ての魔法に恐れず飛び込んでくるようになる。そしてそれは時間の問題のようだ。
「ねぇ、ウチの見間違いじゃなければ後ろから来る亜人はほとんど手負いだよ。他の城門から逃げてきた個体なのかな」
そう言ってから僧侶の回復魔法が戦士の男に飛ぶ。
「正面の城門に数を多く割いてきてんのか。俺たちゃ人気者だな、おい!」
傷を癒やしてもらった戦士がオラセオの横を通り抜けた亜人を両手剣で切り飛ばす。
この城門から入ったのはアレウスやオラセオのパーティだけではない。それこそ同じようにパーティ同士で協力し合って戦っていると考えられる。しかし、それが手負いの亜人が後ろから来る理由にはならない。
「まさかとは思うが」
思うところがあり、ヴェインの傍まで後退する。
「どうかしたのかい?」
「この亜人たちは冒険者の立ち回りを知っている」
「なんだって?」
「陣形の概念を知っているんだ。体を張るのが前にいて、後ろにいるのが補助をする。分かっているから追い返しても追い返しても裏に裏に回ってくるんだ」
前方の亜人も倒しさえすればそれまでだが、倒し損ねた亜人は後退して群れと居住区の家屋に消えることが頻発している。手負いの亜人が再び姿を現わすのは決まって裏手からである。
「俺たちが気を付けるべくは前じゃなく後ろってことかい?」
「前衛が機能するのは後衛の魔法あってこそ。そこを潰せば、あとは前衛を数で押し潰す。信じられないけど、亜人はそういう動きを取っている」
これまでの魔物のほとんどは真正面から破壊を試みてきた。一部の足の速い魔物やゴブリンのような罠を張れる魔物は裏手に回って襲い掛かってくることもあったが、それはあくまで虚を突くための立ち回りである。ほとんどの生物が前に集中していれば後ろが手薄になると本能的に知っての行動でしかない。
比べて、亜人は分かって裏を取ってきている。こうすれば冒険者は苦しむのだと理解した上で前方で傷を負った亜人が裏手から今度は躊躇いもなく飛び出してくるのだ。心の壊し方のみならずパーティの壊し方まで心得ている。だが、ヴァルゴの異界ではそんな動きを取る亜人は一匹も――そうアレウスは考えたが、思えばあのときは複数の亜人とこのように長く戦うことはなかった。だから本能的なのか、それとも知識としてあとから備えたものなのかの判断がつけられない。
「次から次へと、やってらんねぇ! 蜂の巣みてぇに信じらんねぇくらい湧いて出てきやがる!」
「蜂に追い回された経験でもあるのか?」
「馬鹿にすんな」
「していない、オレも似たようなことをしたことがある。見た目以上に巣の中から蜂が溢れ出すのだろう?」
「……ああ、しかもしつこい」
「追いかけ回されて酷い目に遭った」
「あれから蜂蜜をワタシは取りに行かないと決めた」
「ああ、オレも他の上手い者たちに任せると誓ったものだ」
前衛で息が合い始める。ガラハの遅さをノックスが、ノックスの一撃の弱さをガラハが補い合っている。そこにオラセオと戦士を加わるのだ。前線の維持力が凄まじく高いおかげで、後衛の守備を担っているアレウスと射手が奇襲を防げるに至れている。
「そろそろ火属性魔法の使用回数の限界が近付いてきました」
「大丈夫?」
「他の属性に切り替えますが、十回唱えれば私の魔力は尽きてしまいます」
「ウチの回復魔法も限界かも」
僧侶の額には汗が見える。この寒空の下で、相応に体に熱が溜め込まれているのは疲弊の証と言える。
「ヴェイン」
「分かっているさ。でも、俺が唱えるのは回復魔法よりこっちが先だ」
なにやら鉄棍で地面を叩いてから難しい詠唱を始めていたが、アレウスの催促に返事ができる状態にはあるらしい。
「もう唱える勇気は出てきたのか?」
「できていないさ。頭の中でずっと亜人たちが呟いた怨嗟の声が響いているせいで、いつもの俺だったらスラスラと唱えられるのにこうして手こずっている」
「ウチも同じ。僧侶にとって最悪の魔物だよ」
「亜人を討つ力に寄与したくないとまで思ってしまう。でも、寄与できないのならせめて……アベリアさん! 『沼』の魔法を後ろに頼む!」
「分かった」
肯き、アベリアが詠唱に入る。
「この場の全てのパーティは僕たちよりも城の方へと詰めてほしい!! 後ろから来る亜人たちの足止めをするけれど! このままだと巻き込んでしまう!」
意図を察したアレウスが叫び、その言葉に呼応して全てのパーティが亜人たちを押し退けながら城の方角へと一気に詰める。
「“愚者の重石”」
「“沼に、沈め《スワンプ》”」
城門から続く大通り後方全域が泥沼となり、亜人たちの足を取る。その泥沼を飛び越えようとした亜人たちは見えない圧力に頭上から叩き付けられて泥沼に強制的に落とされていく。
「これ、『愚かなる重力』?」
「もうちょっと簡単にしたものだよ。異界獣のときは広範囲に効果を及ぼさなきゃならないから沢山の神官や僧侶たちの魔力が必要だったし、神への赦しも請わなきゃならなかった。でも、今回は範囲を絞ったし……なにより神が与えし重しではなく、俺が与えた重石だから――って、止まってくれアレウス!」
アレウスが泥沼に入ろうとしたのをヴェインに制止される。
「魔法をかける相手を条件付けできていないから範囲に入れば全員が重石を受ける」
「重石……?」
「原理は酸素供給の魔法なんだ。範囲に入った生物に強制的に酸素供給の魔法にかける。あとは、分かるだろ?」
ヴェインが考案した魔法の一つであるそれは水中では自在の歩行を可能とするが、地上では歩くことさえままならないほどの錘となる。
「でも、空気は与えない。泥沼でそのまま沈んでいてくれ。そして俺の魔力が尽きる頃には力尽きてくれ……」
泥沼の亜人たちはもが苦しんでいる。脱出してくる気配もない。
「凄い! こんな魔法をあなたが? ウチにも唱えられるようになる?」
嬉々として訊ねてくる僧侶の頭をオラセオが小突く。
「なんで! 前衛らしくちゃんともっと前に出ていてよ!」
「そうは言うが、奴らが引いてくれているからな」
前を見ろとばかりに視線を送ってくる。
あれほど群れを成していた正面の亜人たちが蜘蛛の子を散らすように逃げ去っている。
「裏には……回る気配がないな」
感知の技能で亜人の動きを探るが、逃げた亜人たちがアレウスたちの後方へと回り込む動きを取っていない。
「攻勢を中断したのか……? ヴェインの魔法を見て、不利と察したってこと……か?」
だとしたら、統制を取る亜人には知能があることになる。
「魔の叡智に触れられるのが人間だけとは、実に惜しい。こんなにも面白い魔法を見せられて、真似することも模倣することもできないのだから」
「誰だ!?」
言うと共にアレウスは声のした方向へと腰に提げていた護身用の短剣を投擲する。
「反応が良い。投擲にも無駄がない。だが、なにもかもがそれでも遅い」
声は屋根の上からしていたが、気付けばアレウスの真横に立っている。
「貸し与えられた力を見せてくれないか? でなければ、」
横に立った者にアレウスは短剣で切り掛かる。しかし、その剣戟よりも前に放たれていた剣戟を防ぐに留まる。
「死ぬぞ?」
全てを言い切って、細剣での刺突で攻め立ててくる。その速度にたまらずアレウスは短剣に熱を込め、火を起こす。
「……貸し与えられた力ではないな? 紛い物に興味はない」
短剣の炎を細剣が切り払い、起こる火の粉の全てを物ともせずにアレウスの懐に入ってくる。
「見せないと言うならば、見せないまま死んでくれて構わない」
刺突が腹部を貫く寸前、短剣に溜め込んだ炎を着火させて吹き飛ばす。
「紛い物であっても、これほどか。少し見誤っていたか」
「お前は…………なん、だ?」
「さぁ…………なんだろうな?」
その言葉の端々にはこちらへの嘲笑が込められており、細剣の切っ先が地面を擦る。
細剣が火花を浴びて炎を纏う。
「それは」
それはまるで、アレウスが貸し与えられた力を着火させて短剣に炎を収束させたときのようで――
「『原初の劫火』、その貸し与えられた力。そんな風に見えてしまったのだろう?」
「なんでお前が『原初の劫火』を知っている?!」
「知らないわけがない。それとも、知っていたらなにか不都合でもあるか?」
怖ろしい。
アレウスはここまで話をして気付いてしまった。
この鎧の人物――いや鎧の魔物と会話が成立している。こんなことは通常ではあり得ない。そして『原初の劫火』も知っており、アレウスには炎を纏ったところまで見せてきている。
「いや、見せ物はここまでとしよう」
炎を消し去る。どうやら観察していることを気取られたようだ。
「分析されては困る。人間どもはどいつもこいつもこちらの手の内を晒そうと躍起になる。だから、私は隠そう。これ以上は見せない。見たいと言うのなら、更に多くの死骸を積み重ねてみせろ」
アレウスの視界から消え去る。気配は追えない。
「……赤い、鎧…………」
鎧を纏っていて容姿までは確認できなかった。しかし、冒険者ではない。アレウスの感知の技能は鎧に対して魔物と伝えてきていた。
「なんだった……んだ?」
手が震えている。これまで幾度となく強者へ立ち向かってきたが、これほどの震えはラブラと戦ったとき以来だ。
「すまないけど、大変な状況なのは分かっているし相談にも乗る。だからアレウス、泥沼の方はどうだい? あんまり魔力を使い潰したくない」
「あ、ああ」
ヴェインの魔力を『重石』の魔法だけで使い切らせてはならない。泥沼に沈んでいる亜人たちの気配に意識を集中させ、一匹また一匹と気配が消えていき最終的には全ての亜人が倒れた。
「もう大丈夫だ」
そう教えるとヴェインが魔法を解き、額の汗を拭う。
「ひとまずは乗り切ったんだな、ひとまずは」
戦士が両手剣を背負うようにして納めてアレウスを見る。彼にも突如として起きた事態が小さなものではなく大きなものであることが分かっているようだ。
「ワタシが気配を読めなかったなんて」
「僕もだ」
アレウスは射手に視線を向けるが、首を横に振った。
「どうやら気配消しの技能を持っているらしい。偵察に行ったときの亜人とは姿形がまるで違った。そうだろう?」
射手がそれらの結果から赤い鎧の技能を分析し、偵察時に見た亜人ではないことの確認をアレウスとノックスに取る。二人が肯いたのを見て、口元に手を当てて考え込む仕草を見せる。
「弱ったな……あの鎧はちゃんと意味が通じるように言葉を話していた。あれで耳まで良かったら冒険者が立てた作戦も、戦っている最中に発する言葉の全ても理解して、亜人を動かせる」
「鎧を着ていて耳が良いとは思えないが、もしそうだったら僕たちに勝ち目はほとんどない」
「ああ、けれど……戻れない。戻ろうと思えばいくらでも戻れるけれど、亜人を放置して撤退はできない」
「そうだな」
射手にアレウスは同意する。
「僕の感知は鎧を魔物と判断した。この技能が嘘偽りなく真実を告げているのなら、人の言葉を理解する魔物を放置することは亜人以上にできない」
しかし、戸惑いはある。鎧が細剣で起こした炎の力だ。
魔物のほとんどは魔法を使えない。冒険者を喰って魔の叡智に意図せず触れて使えるようになる魔物もいるが、自身の魔力を消費するということはその分、存在し続ける寿命を縮める。それすら分からないままに魔法を唱えて死ぬのが魔物だ。そのため、常になにかしら魔力を吸える状況下でなければ滅多に見ない種である。
それこそ異界獣でなければ、存在を維持したまま魔法を唱えるのは不可能だ。
「……ヴァルゴ?」
鎧と言えば異界獣のヴァルゴを思い出す。だが、あの赤い鎧はヴァルゴほどに大柄ではなかった。むしろもっとしなやかな女性のような――いや、魔物に雌雄はないのだからそう思うだけなのだが。
「とにかく休もう。休めるときに休まなければ、次の城門を叩けないぞ」
困り果てているアレウスにオラセオが声を掛ける。
「君のおかげで俺たちは俺たちらしい戦いができた。まず君たちから休んでほしい」
「ありがとう……じゃぁ、亜人に襲われても対処のしやすいところに移動しよう」
オラセオの提案を素直に受け入れ、アレウスたちは亜人の気配を探りつつ移動を始めた。
「みんなには負担を掛けてしまった。本当に申し訳ない」
「頭を下げることじゃない。ヴェインの慎重さは僕たちにとって最後の防波堤だ」
自身よりも慎重な人物がいることで、アレウスが大胆な戦闘を行えることもある。
「まだどうにも気持ちの整理が付かないけれど、この状態でもやれることはやるつもりだ」
それで、とヴェインは続ける。
「ここから先はどう攻略する?」
「リスティさんたちが立てた作戦の通りなら亜人を掃討したパーティたちが集結後、第二城門を突破する」
「ああ、それは事前に聞いている。けれど事態が少しだけ変化した。アレウスはこのままで問題ないと思うかい?」
「思わない。だからリスティさんが言っていたように索敵の技能を持った亜人を早めに倒したい。赤い鎧は僕に攻撃を仕掛けたけど、僕以外は無視していた。それに、死骸を積み重ねろと言っていたから赤い鎧は出しゃばってはこない。出てくるなら、第三城門以降」
「第二城門を通った先のところで索敵の亜人を倒せれば、ってところか」
アレウスの意見を聞いてヴェインはやや唸って悩む。
「誘い出す……誘い出す、か。亜人にとっての想定外を起こせば……」
「想定外なら起こせるんだけどな」
「本当かい?」
「でも、他のパーティが賛同してくれなきゃできない」
「その交渉をしてほしい……だろ?」
ヴェインの言葉に肯く。
「苦労はするけど、まぁなかなかに楽しいよ。人と話すのを嫌っていたら僧侶なんて務まらないからね。ただ、」
「ただ?」
「報酬としてなにか面白い話をしてもらおうかな。二人だけで話すときでいいからさ」
「僕にとって面白い話でもヴェインにとっては面白くない話かもしれないぞ」
「いいんだよ、それで。面白くない話を聞くのが面白いんだから」
この聖人にも近しい考え方は一体どこから生じるのか。そしてこの好青年を手玉に取れるエイミーにもう少し優しくしてくれないものかと心の中で思う。
「オラセオ」
休める場所を探す彼に声を掛ける。
「僕たちから先に休んでいいと言われたけど、魔力を回復させることも考えて僧侶と魔法使いには同じように休んでもらいたい。足りない見張りの分は僕が補うから」
「それは……そうだな。その言葉に甘えさせてもらおう。いざと言うときの魔力切れはパーティにとって大きな痛手だからな」
僧侶と魔法使いがアレウスに僅かに頭を下げ感謝の意を伝えてから、アベリアの方へと歩いていく。まだ休む場所は見つけられていないが話したいこともあるのだろう。
不安は尽きない。それでもアレウスたちは城下町の奪還をやり遂げなければならない。




