命を軽んじる
%%%
「よろしいのですか?」
「好きにさせておけ。手元に置き続けていても足手纏いになりかねない」
「しかし、あれでも聖痕持ち。聖女の誰かが落命すれば新たな『魔眼』を開眼させるやもしれません」
「あの『魔眼収集家』が興味を失っている。どうやら品位、覚悟、魔力、その他全ての聖女ならば持っておくべき力を持っていないようだ。開眼する『魔眼』も大したものではないと判断したのだろう」
「死の魔法は?」
「そんなもの、あろうとなかろうと僕たちは困らない」
シロノアは『信心者』へ言葉を続ける。
「王国の城を一つ落とし、王位継承権を持つ王女は牢獄で辱められ、死に体。拠点となる場所を取ったのちの城下町での宣教活動に利用こそさせてもらったが、それ以上に面白いことが起こるとすれば……」
「ニィナリィ・テイルズワースの元へ送り込むことですか。しかしあの者、実のところは、」
「実体無き『不死人』。帝国の冒険者の肉体と精神、ロジックを奪い自らの物とした存在だろう?」
「気付いておられたのですか」
「あっちは意外と使えたな。僕たちに寄進しつつも疑惑を掛けられていた多くの処理が面倒臭い貴族どもを暗殺してくれたのだから」
「その報酬が、あれですか? しかし勿体無い。あなた様がお使いになられればさぞや世界にその名を轟かせる力となりましょう」
「神が捨てた力だ。『異端審問会』の僕が持っていては示しが付かない。それに、アーティファクト側が持ち手を選ぶ。“曰く付き”よりも厄介な代物だ。僕が用いる称号持ちの力よりも危険が孕む。そんなもの、使いたくもならないな」
読んでいた本を閉じ、棚に戻してシロノアは窓の外を見やる。
「さて、どうする? 苦しむ友のためにアレウリスに協力するか、それとも自らが信じ仰ぐ神の敵になり得るアレウリスを否定するがために友を見殺しにするか。清らかすぎれば死よりも苦しい選択が待っているとはこのことだな、アイシャ・シーイング」
「『門』を開く手はずを進めます」
「開けるか?」
「なにを今更。異界の穴ですらも引き寄せて開けるこの私が『門』ごとき開けないとお思いで?」
「いいや、その幽世と現世を繋ぐ力は頼りにしている」
「ありがたき幸せ」
「……お前を中心にまた人が不幸になる。お前を中心にまた人が死ぬ。それでもお前はまだ、その道を行くか? そうまでして魔王を甦らせて世界を破滅に導きたいのか? 分からないな」
シロノアは顔を伏せて呟く。
「理空に言われただろう? 対価を求める優しさなど、強さではないと」
*
『不死人』の女――リリスとは夢の中で何度も対峙している。訓練と称して夢の中で何度も死を見せられた。死ぬ直前で目を覚ましていたのは彼女が殺す瞬間に覚醒するように夢を操っていたからだ。
何度も敗北している、夢の中では。
リリスは髪を振り乱しながら爪を振るい、飛刃が辺り一帯へと散っていく。全方位への攻撃ではあるが、避けられずともアレウスと“曰く付き”の短剣であれば、それらを弾くことは造作もない。
「お主に問う。夢とはなんじゃ?」
弾き飛ばして壁や床を切り裂いた飛刃がリリスの爪の動きで反転し、同一の軌道で彼女の元へと返る。無論、その道中にアレウスがいれば身を切り裂かれるのは変わらない。放った気力が放たれても尚、失われていないのだ。
「そんなことを聞いてどうする?」
「いやなに、夢を軽んじている者たちが多いのでな。少しだけ訊ねたくなった」
「軽んじているのはどっちなんだか。夢の中で僕たちを殺せずに今、現実で殺さなきゃならなくなっているだろ」
攻めの姿勢は感じられるが、その勢いは弱い。わざと接近するのを待っているとも受け取れる。しかし、先ほどの嘔吐で肉体にアレウスとリゾラが意図せずにダメージを与えているとするならば、現在のリリスは『衰弱』にも近い状態にあるとも考えられる。
そのように思わせることがリリスの策略であったとしても、攻め手を増やすには接近が望ましい。だからアレウスは多少の迷いはあっても距離を詰める。詰めた上で、剣戟を振るう。これは牽制にしか過ぎないのだが、それを読み解いているリリスは牽制に込められている力以上の勢いを爪撃に乗せてアレウスの短剣を打ち払う。
「いいや、夢だからと気にしていないのはお主たちの方じゃ」
この爪撃は何度も見ているから牽制を弾かれてからでもアレウスは容易く避けられる。そして周囲を飛び回っている飛刃も擦れ擦れでかわしつつ、慣れた足運びでリリスの右横を取る。振り向き様に雑に振るわれた爪撃を避けて、短剣を縦に鋭く振るう。
「夢だからと好き勝手に妄想し、夢だからと好き勝手に閉ざす。そこには自身が備えている邪悪さも、自身が無意識に怯えている事象もなにもかもが詰まっているというのに」
「夢は記憶の整理によって起こされる。寝る寸前に見たものに影響も受ける。なにより、夢の内容を毎日のように綴って考察しようものなら気が狂う。人間の脳は夢を夢と割り切ることで正常を保つ」
「しかし都合の良い夢は常々に胸に抱いて後生大事にするのはどうしてじゃ? それは気が狂っているとは言わんのか?」
辺りに妖しい気配が満ちる。リリスの体から放出されている魔力によって生じた薄く桃色掛かった霧が彼女をアレウスの視界から消し去る。
感知の技能で追うことができない。気配消しにも匹敵する魔力による認識阻害だ。
「……僕はなにをやってんだ?」
呟きつつ、感情と状況を整理する。これはリリスの霧によって状態異常に掛けられているからではなく、頭が冷静さを取り戻したことによる疑問であった。
リゾラがヘイロンを殺すのは復讐のためで、アレウスはそれを肯定的に捉えている。だから彼女の追撃を阻もうとしたリリスをアレウスがここで注意を惹き付けた。ここまでは良い。そこからどうして、リリスとの戦闘を続けなければならないのか。因縁はある。『殺してみろ』とも煽られた。
だが、それに付き合わなきゃならない道理はアレウスにはない。
「リリス! 僕は別に連合と争うために来たわけじゃない。イェネオスとニィナを連れて帰ることができるなら、お前たちのやっていることに一切関与しない」
霧の中からリリスが姿を現し、アレウスに奇襲する。単調であったため、これを避けるのは難しくない。であれば奇襲の一撃が避けられたことを考慮した第二撃が真反対の方向から来るのは想像が付く。
予想通り、振り返ったアレウスの眼前にリリスが迫っている。この爪撃を受け止め、弾き、体を蹴って下がらせる。
「なんじゃその腑抜けた言葉は」
「僕は冒険者であって人殺しは専門外だ」
「じゃがその手は既に血に塗れている」
「……ああ」
「ワラワと戦わない理由を探し、ワラワを殺さない理由を探しているだけにしか思わんのう」
霧を爪で払い、突っ込んでくる。身構えるアレウスだったが、正面に捉えていた彼女の姿が短剣と接触した直後に霧となって弾ける。
分身、もしくは幻影。どちらにせよ虚を突かれた。翻ったアレウスの目には何人ものリリスが映る。分身と本物を見分ける術は今のところない。どれが本物の攻撃であるかも、受けてみない限りは分からない。
だが、どの分身も狙ってくる部位は人体にとって致命的となる部位のみだ。連続的に振られる爪撃の嵐を我慢強くアレウスは短剣で弾いて凌ぐ。
「つまらん話はしたくない。ワラワとお主との間には闘争しかないじゃろう? 今更どうしてワラワと戦うことを拒む?」
「聖都が混乱しないようにしたい」
「笑わせんでくれ。競売所が襲われた時点で聖都は既に混乱しておる」
一人、二人と切り払うがどれも靄のように掻き消える。感知できない以上、本体を探すのは困難だ。カプリースと戦ったときも分身を用いてはこなかった。分身ではないが何人もの影武者をさながら自分自身であるかのように振る舞わせ、死地へと飛び込ませたウリル・マルグのようだ。
自衛としての分身か、それとも猛攻を行うための分身か。恐らくは扱い方の違いがそこに出ている。
全てを攻撃だけに注いでいる。受ける傷を軽視することでの反撃すら許さない。それはきっと、死んでも甦る冒険者以上に『不死人』という種族が命を軽んじているからできる芸当だ。リリスたちは甦ることの重さを知らないのだ。恐怖もなければ、死んで甦ることすら当たり前と考えている。
「お前たちには『衰弱』がないな?」
猛攻を凌ぎ切ってから問う。
「なんじゃそれは?」
どうやら当たりだったらしい。『衰弱』状態がないのであれば、死の恐怖を克服している。
「死にに行くことに恐れがないのなら」
アレウスは呟きながら爪撃を弾きつつ後退する。
「その命になんの価値がある?」
前方に短剣を振り抜き、灯されていた火炎を放出する。ただの霧であればこれで蒸散するのだが、炎で押し退けただけで霧は滞留し続けている。やはり霧は霧でも、水分を内包した霧ではないようだ。
「価値など生き続けておれば勝手に付いてくる。死を繰り返そうと生きてさえいればそれが命の価値となる」
「死があるからこそ命は尊く価値ある物になる」
「いいや、それは間違いじゃ。お主たちは不死を求め続けている。なんじゃったら不老さえも求めておる。死があるから尊いのではない、死があるからなんとしてでも価値があってほしいという願望が起こした紛い物じゃ。本当に命に価値があると呼ぶのであれば、不死を捨てよ、不老を捨てよ。あるがままを受け入れよ」
「『不死人』がなにを言う」
「ワラワたちの能力を、特性を、生き方をズルいなどとは思うまいな? 栄華を極めているヒューマンがエルフの長寿を、ドワーフの怪力を、ガルダの飛行を、ハゥフルの水中呼吸を、獣人の自由を欲しがっていながら、まだ欲しがるか?」
火炎で揺れ動いた霧が再び辺りを包む。リリスの分身がアレウスを囲い、全方位から一斉に攻め立ててくる。天井擦れ擦れまで跳躍して包囲を飛び越えるも、着地した先にはリリスが待ち構えており、再び短剣と爪が激突する。
「逆に予言してやろう。ヒューマンが不老不死を手に入れれば、命は無価値となる。命が儚いなどとは決して口にせんだろうな。領土の奪い合いも起きはしないが、無法となる。法を犯したところで死なんのだからなぁ、一人一人が好き勝手に生き、好き勝手に大地を蝕み、好き勝手に世界を滅ぼす。それでも死なんのだ。しかしてそれはもはや人間と呼べるのかのう?」
リリスの後方に歪みが生じ、アレウス目掛けて魔力の塊が飛んできて炸裂する。さすがに、短剣の火炎だけではどうしようもなくアレウスは貸し与えられた力を着火させて、魔力の爆発を炎の障壁で防ぐ。
「だったら、ずっと死なないお前たちは人間じゃないとでも?」
「そのように蔑み続けてきたのはお主たちのような命に価値を見出しておる者たちだったぞ?」
周囲を飛び交う飛刃がアレウスに収束する。全てを火炎で弾き返し、短剣に炎の熱を抱かせて目の前のリリスへと切り掛かる。
「届かんぞ?」
目測を見誤ったわけではないのだが、リリスに剣戟が届かなかった。当てるつもりで振るったが当たっていないのなら、霧がアレウスの感覚を乱れさせたのだ。
分身との猛攻が再び始まる。動きはそこまで複雑ではない。一手一手を慎重に見極めていけば、どの分身からの攻撃も避け、防ぐことができる。むしろ貸し与えられた力を使っても避けられなければ、それはもはや異界獣にも等しい。まだ辛うじて人間と戦っている感覚はある。ただし、夢の中での戦ったときには人間らしさは欠片もなかった。それをまだ感じられないのであれば、彼女はまだ本気を出してはいない。
「どうして手を抜いている?」
「お主がワラワの言葉に惑い、囚われ、思うように立ち回れていない様を見るのが滑稽じゃからじゃ」
左右の爪撃を避け、前方のリリスが放つ蹴りを短剣で受け止め、振り返ったところに見えたリリスには短剣をそのまま振るう。悲鳴を上げるが、分身だったらしくすぐに霧となって消えた。
「殺されたいから手を抜いているのか?」
「いたぶって殺すのが趣味でのう。特にお主はいたぶっていたぶって、いたぶり抜いてから殺したい」
「……馬鹿にするな」
そう発してから、意識を集中させる。呼吸を整え、今までの調子の一切を捨て去って凄まじいまでの火力を発揮しながらリリスたちの合間を駆け抜け、爪を避けながらその体を短剣で引き裂き、分身全てを掻き消す。
「馬鹿にできるほど僕は弱くない」
「ほう?」
再び生じた分身の群れへと飛び込みながら身を回して振るう剣戟が炎の輪となり、波紋のように一気に広がり切って分身を上下に分かつ。
本物と思われるリリスは天井近くの宙に浮いており、アレウスを見下ろしている。
「僕がこのような手合いと戦ったことがないとでも思ったか?」
「思ってはおらんよ。しかしな、小僧? ワラワが分身を扱い、合間に魔力を撃ち込むだけの小ズルい女と思うにはちと早い」
リリスの背後で歪みが生じ、軟体生物のようにドサリと人間が床に落ちる。そこからヨロヨロと立ち上がり、霧が持ち上げた剣を握り締める。
「夢とは無謀であっても抱くもの。届かんと分かっておっても抱くもの。捨て去れない未練であり、叶えたいと思う願望じゃ。ワラワは喰らい、貪り、この身の糧としてきた」
異彩を放つ剣士にアレウスは緊張を強める。
「分かるか、小僧? このワラワが作り上げた肉体に集約された夢の原点が」
「……『勇者』」
「正解だ。冒険者であれば誰もが夢見る“大いなる『至高』の冒険者”。その中でも憧れが最も強い『勇者』への憧れ、目指し続けた者の夢を喰らい、それに吐き出した」
剣を構えたと思いきや、もう既に左脇腹は切り裂かれており、剣士もまた後方に立っていた。すぐに炎で癒やすがその最中にも剣士は目にも止まらない速さで周囲を駆け回り、アレウスがたじろぐほどの速度で剣戟が放たれ続ける。
「敵わんよ……勝てん。お主には大勢が抱いた夢幻に手も足も出せ、」
「“火天の牙”」
アレウスが振るった炎の剣戟は獣の下顎のように床を這いながら全てを炎で引き裂きながら剣士に直撃する。そして剣士を消し炭にしながらも尚も突き進み、油断し切っていたリリスの全身を炎で焼き、縦に断ち切った。
「ほう……夢幻の『勇者』を越えておったか。そこらにいる者どもの夢ごときでは『勇者』の本質に届いておらんかったか。凡人が超人を理解しないまま憧れるのは世の常よな」
死にに行くというのに微塵も恐怖を感じることもなく、また未練がましく泣き叫ぶこともせずに呟く。
「この技も夢の中よりは強くなっておる。とはいえ、見せてくれたのはありがたい。次はこうは行かぬぞ?」
「僕と殺し合いをしたかったんじゃなかったのか?」
「お主がワラワを殺し切れておらんだけだ。まぁ甦るまで待て。言うても次の逢瀬はすぐじゃ。お主は死の魔法を解くために聖女様の元へ行かねばならんのだから。いや、逆かのう? 聖女様から逃れねばならんのか? ふふ、どっちを取るのかのう」
リリスの体は炭となって燃え尽きた。薄桃色の霧が晴れ、誰もいない懲罰房の中間階層をアレウスは見渡す。
「エルフの巫女様」
虚空に向かってアレウスは声を発するが、返事はない。それどころかエルフの巫女からのアレウスへの言葉もない。リリスに眠らされた直後に『森の声』での繋がりが切られたのだろうか。だとしても彼女側から再接続するだけで済むことだが、それが出来ないのであればアレウスという接続先を探しているが見つけられていないのかもしれない。
「いや、『天の眼』を持っているのにそれはあり得ない。だったら、星詠みに変化があったんだな」
今、アレウスと接続していないのなら別の誰かと繋げている。クラリエは『森の声』を聞けないため、絞られるのはイェネオスかエレオンとなる。
階段を駆け下りて、最下層の懲罰房に辿り着くがイェネオスの姿は見られない。牢屋には既に息絶えている多くの人間の全裸死体があった。どの死体にも痛め付けられた痕跡がある。男も女も関係なく、酷い仕打ちが行われていたことが手に取るように分かる。
「これが、国のやることか?」
ここにいるのは奴隷ではない。奴隷になれなかった者たちである。聖女に、或いは奴隷商人に忠誠を誓うことを拒み続けた末に息絶えた者たちなのだ。服従しなければ死ぬだけ。その選択肢のない未来は悲観と絶望しかない。
「聖女は……信仰は未来を明るく照らすものじゃないのか?」
少なくともヴェインはアレウスにそのように説いていた。敬虔なるヴェインが思い描く神様よりも聖都を掌握している聖女の信仰はあまりにも醜い。
ともかくも懲罰房にイェネオスはいない。ジュリアンの師匠が事前に詠んだ星の導きの通りなら、隠し階段を使って脱出している。そして待ち伏せているアベリアと接触しているだろう。
アレウスは階段へと引き返し、聖女信仰の不条理さに煩わしいほどの怒りを携えながら地上階へと出る。
「そっちも終わった?」
休憩でもしていたのかクラリエが起き上がり、アレウスに訊ねる。
「星詠みの通り、イェネオスは懲罰房にいなかったよ」
「そっか、じゃぁ外でアベリアちゃんが止めてくれているはずだし助けてくれるはず」
「クラリエ? 『不死人』だけど」
「うん、こっちも一戦目は終わった。でも、殺し切れてない」
クラリエが交戦した『不死人』の死体は転がっているが、彼女は「殺し切れていない」と言い放った。つまり、リリスと同様に当たり前のように死を享受したのだ。
「でもさ、どこでどんな感じで甦るのかな。次があるからってあんな感じで死を受け入れるの……変な感じ。本気を出してないし、出そうともしてなかった」
「出す必要がないのかもな。甦ることが当たり前だから、生に縋りつかない。本気で命を守りに行かないから、本気で目の前の敵を仕留める気分を抱かない」
「でもさ、ここであたしを仕留めるのって結構重要な役割だと思うけど……」
しかし、リリスはアレウスを仕留める気概だけは感じた。本気を見せる気配もあった。しかし気配だけで素振りには至らなかった。
「本気を出すことを恥と捉えているのかもしれない」
「負ける方が恥じゃない?」
「奴らにとっては当たり前なんだよ。死んで学んで、次に殺して勝つ」
「あたしたち冒険者も反面教師にしなきゃねぇ。あ、でもアレウス君は違うっけ」
「おかげさまでいつも全力だよ。さっきも全力で技を出しちゃったから、余裕を持って撃てるのは一回。全部絞り出したらなんとかあと一回だ」
「でも引き返す気、ないでしょ?」
「当たり前だ」
クラリエは分かり切っていた返事を聞いて満足し、短刀を納める。
「じゃ、行こっか。首魁が待っているだろうところまで」
歩き出したクラリエと共にアレウスは大聖堂の最奥を目指す。




