裁かれるために生きている
『不死人』の女は以降、アレウスに干渉することはなく信徒たちの言葉に耳を傾けながらそれらしい言葉を答えとして示していた。聖女ほどではないが信仰を得ているのは確かだ。でなければ聖女の代理であっても壇上の椅子に座っていれば、信徒たちが暴れる。崇拝者にも一目置かれているからこそ代理として仕事が果たせるのだ。
ただし、言っていることに正当性はない。雑な返事を信徒が無駄に勘繰って納得するのだ。浅い言葉を詮索し、熟考し、深みがあるかのように誇大化させる。それが信徒の間で広がり、そのたびにザワつきが起きる。アレウスのように『不死人』の女を事前に知っていなければ、先入観にとらわれた信徒たちの無意味な盛り上がった雰囲気に飲まれてしまっていただろう。
なにせ『不死人』の女には超人的、超自然的な気配がある。それだけで聖女には劣ってはいても求心力の理由になるのだろう。
最後に聖女へ深く深く信仰を捧げ、礼拝が終わる。解散となって信徒たちが大聖堂をあとにしていく。そのさなかで、『不死人』の女は椅子から立ち上がって大聖堂の奥へと消えていった。アレウスはそれとなく最前列から矢の放たれたであろう場所を覗き込んでみたが、やはりそこにはもう誰もいない。錫杖を持った信徒に怪しまれてしまったため、深々と頭を下げてから早足で大聖堂を出た。
大聖堂内の温かさからの夜間の冷え込みは、その温度差に小さくだが声を発してしまう。すぐに体が寒さに慣れてくるものの、寒暖差に体が付いていかない者もいるらしく信徒が用意した焚き火に当たっている者たちが見える。そこに混じってアレウスも体を温めてから帰ろうかとも思ったが、護身用のナイフを取り上げられているため身を守る術が限られてくる。貸し与えられた力を着火させずに打撃格闘術に自身の格闘術に頼るのは心許ない。
大聖堂から内郭へと続く一本道を抜けて、外郭の隠れ家に向かうのだが、最短距離では向かわない。尾行されている可能性も加味して遠回りしつつ、後方の気配を探り続ける。
「姿を現せ」
振り返って、アレウスは姿を現さない尾行者に声を掛ける。
「気配は消しているけど、その呪いに満ちた魔力には覚えがある」
クラリエのように完全に景色と同化するほどの気配消しではないが、アレウスの気配感知には引っ掛からない。だが、その者の抱いている魔力は独特過ぎて魔力感知の技能のレベルが低くともその異常な存在を把握することができた。
「いやぁ困った。このままどこに身を隠しているのか調べようと思ったんだが、まさか見破られるとは」
異常な存在は声を発しながら闇夜から姿を現す。
「国境で見逃し、新王国で協力もしたがそのときはまだまだ未熟者の印象だったが、どうしてこうも雰囲気が変わっているもんなのかね。もしかして、ずっと実力を隠していたか?」
この軽快で飄々とした口調、なにより言葉を並べ立てて話の筋を見えにくくさせる言い回しはエレオン・ノット以外にはいない。そして、魔力を呪いとして纏っているのも彼以外にはノックスやセレナ以外にはいない。
「どうしてお前がここにいる?」
「そりゃこっちの台詞だ。俺はまたウチの姫さんに無茶を言われてね、こうして偵察に来ているわけさ」
「なんで僕を尾行した?」
「見知った相手を見つけたもんで、なにをしているんだと探るのは仕方のないことだろ。身構えなくてもいいぜ? 一応は手を組んだ者同士だ。仲良くしておこうじゃないか」
「そんなこと、お前が一番望んでいないだろ」
そう言うとエレオンは耐え切れずに笑い声を漏らし、乱れた呼吸を整える。
「よく分かっている。まぁそんな邪険にするな。聖女とやらの信徒に堕ちていないなら、俺は別にお前さんを殺そうとはしないさ。ああ、信徒でないのならな」
エレオンはそう言ってから、なにやら急に真面目そうな顔をする。
「奴は――『不死人』は何人いる?」
「一人」
「嘘は良くないぜ、アレウリス・ノールード」
雑に呪いに満ちた『銃』を片手でこちらに向ける。
「知っている限りを話せ。『不死人』は何人いる?」
「…………最低でも三人。両腕を自在に伸ばす男、剛腕を持つ男、そして今日の礼拝で聖女の代理として現れた女だ」
「その女については調べてある。夢に介入してくるらしいな?」
「夢の中で起こったことをあの女の物差しである程度まで現実に変える力を持っている……と僕は考察している」
「原理は分からないが理由があるみたいだな?」
「実際に僕が体験している。連合の収容施設でありながら、あの女に夢の中で鍛錬をさせられ続けた」
「ほう? なるほどなるほど、『不死人』の一人と顔見知りというわけか。だったら、」
「それでも大聖堂の奥には入れない。僕は別に仲良くなったから鍛錬をさせられていたわけじゃない。その女が僕を殺すに値する存在まで高めるために付き合わされたんだ。だから、あの女との接触すればそのまま殺し合いになる」
気に入られてはいるが、それもこれも自分を殺しにくる存在を作り上げるため。その命の奪い合いの果てでアレウスの命を奪うことで至上の快感を得ようとしている。ニィナの捜索を始めてからずっと『不死人』の女には注意し続けていたが、まさか大聖堂の中で再会するとは思わなかった。恐らくそれは向こうも同じだ。聖女への信仰心を失墜させるわけにもいかないから、アレウスに対して手出し無用と信徒に告げるだけしかできなかった。ひょっとするとニィナを見つけられないアレウスよりも彼女の方が現状では歯痒い状態にあるのかもしれない。だが、その状況がなにか好転を招くわけではない。
「顔見知りからの中枢への侵入は不可能か。別にそんな回りくどいことをしなくてもいいか」
「目的は偵察だけじゃないのか?」
口を滑らせた。エレオンは面倒臭そうに頭を掻く。
「まぁ、お前さんに詰められたところで俺は口を割ると思うか? 知らなくていいことまで知ろうとしたら思わぬしっぺ返しを喰らうぞ。過干渉は自分自身の心すら苛ませるからな」
「エレオン、一つ教えてくれ。お前はどこで銃を学び、扱えるまでに至った? この連合には銃以外に一体どんな兵器がある?」
「それは、」
「耳を貸してはなりません」
拳の形をした魔力の一撃がエレオンを打つ。しかし、自身が纏っていた魔力でこの一撃を彼は物ともせず、その場に立ったまま動かない。
「この者はエルフを、森を裏切った者。エウカリス・クローロンに並ぶ大罪人です」
「黄色の魔力……テラー家か? キトリノスは無駄死にしたと聞いているが、『衣』の継承は成っていたのか」
「父上は無駄死になどしていない!」
「馬鹿正直に真正面から脅威と立ち向かって死んだんなら無駄死にだと俺は思うがねぇ。それに比べてデストラとゴーシュ、クリュプトンはよくやった方だよ。俺にゃエルフの誇りなんてもんはないが、あのバケモンのイプロシアをギリギリまで追い詰めたんだからな。まぁ結局死んじまってんなら意味もなにもないとは思うんだがね」
「クラリエ様の親戚を貴様が語るな、エレオン!」
「待て!」
二人の間にアレウスが割って入り、衝突を避ける。
「そこを退いてください! その者の言葉に耳を傾けてはなりません!」
「ここはお互い冷静に行くとしようぜ。そこの辺り、アレウリスはまだ分かっていると見える」
「分かってはいない。僕の知った範囲ではいつも落ち着き払っていたイェネオスがこんなにも激昂している。父親への侮蔑、クラリエの親戚への侮蔑。その二つでも怒るに値するものだろうけど、それ以上にお前がエルフの敵になるようなことをしたんだと窺える」
「……小憎たらしいガキかと思えば、勘が鋭い。これだからヒューマンの成長は嫌なんだ。嫌でも自分がエルフなんだと自覚させられる。人格の熟成がエルフよりも早熟で、成長も早い。欠点は死ぬことも早いってところだけってなもんだ」
「イェネオス、騒ぎになる前に魔力を解け」
「……分かりました」
彼女が纏っていた黄色の魔力が雲散霧消する。
「エレオンはなにをやった? いや、エウカリスに並ぶ大罪人と言うほどなんだからなにをしたかはなんとなく分かるけど」
「それは、」
「獣人にエルフの森への入り方を教えてやったんだよ。エウカリスは自分一人の手でやったと思い込んでいたみてぇだが、実は違う。事細かに教えてやったのはこの俺だ。そんなわけでエウカリスは気兼ねなく親友とも呼べるほどの主人を毒殺できそうだった。デストラが止めたせいで、その計画もおじゃんになっちまったみたいだが」
エレオンが自ら罪を自白する。
「どうした? そこのキトリノスの娘さんが言いにくそうにしていたからこっちは自分から言ったまでのことだ」
「貴様! それで我らが森がどれほどの被害を受けたと!」
「知らねぇよ、そんなもん。愛する妻のいねぇ故郷なんざ俺にはあってもなくてもどうだっていいんだよ。そうすることで妻を売った連中を炙り出せないものかと見張って、ウリル・マルグがキングス・ファングと同様に怪しい動きをしていたところまでは突き止めた。そんでもってウリル・マルグは王国の王位継承権を持つ王子であることにも辿り着けた。ああでも、ウリル・マルグはもう死んじまったんだけどな」
「死んだ……?」
アレウスの中ではウリル・マルグはまだ生きているものだと思っていた。その事実をすぐには消化できずに困惑する。
「ああ、自分の義理の兄貴に殺されていた。その一瞬を突いて、俺はその義理の兄貴――マクシミリアンを殺そうとしたが、返り討ちにされちまったんだよ。王国内じゃ大々的な葬儀が行われていたぞ? 国民感情は戦争憎しに向いて、国威発揚に利用されていたけどな」
「惑わされないでください。こんな大罪人の言葉を信用するに足りません」
イェネオスに諭されるが、アレウスは深呼吸をしてからなんとか脳に入ってきた情報を処理し切る。
「言っていることを嘘と捉えるには、生々しすぎる」
「アレウスさん!」
「落ち着け、イェネオス。言っていることが真実だからって信じるわけじゃない。ヱレオンは自分の罪を自白した。それはエルフの中では大罪人と呼ぶに値するほどのことだった。あいつがエルフの森を窮地に追いやったことは間違いなく本当のことなんだろう?」
「……はい」
「ウリル・マルグが死んだかどうかも調べればすぐに分かることだ。嘘とするには、もう少し分かりにくい嘘をつくべきだ。でも、エレオン? 僕には分からない。自分の妻がいないからって、森を捨てるだけでなく自らに罪を背負った意味が」
「俺に連なる家系は全部を没収された。家名も言わずもがなだ。たった一人の大切な者を殺された復讐を果たす化け物なんざ、自由の身でなければなにもできない。全てを失っているからこそ、全てを奪う覚悟ができる」
「森に獣人をけしかける以外にもできたことをどうして貴様は!」
「それほど大きなことをしでかさなきゃ、俺から大切な者を奪った連中は動かないんだよ。分かるか、キトリノスの娘さん? ここまでやってようやく俺はマクシミリアンが俺の大切な者を奪った黒幕であるところまで突き止めることができた。ここまでやらなきゃ掴めなかったことだ。ここまでしないと尻尾を掴むことさえできなかったんだよ」
「でもそのせいでクラリエ様は!」
「知ったことじゃないと言っているだろ!」
「二人とも、少し黙って」
言い合う二人がその気配を読み取り、姿勢を正す。反射的なものだったのかエレオンはすぐに崩すがエウカリスはずっとそのままで動かない。
「久し振りだねぇ、エレオン?」
クラリエが景色から現れ出でて、彼に問い掛ける。
「クラリェット・ナーツェ…………はっ、こんなところで会うことになるなんてな」
エレオンは強気な態度を取り続ける。
「イプロシア・ナーツェは『神樹』を奪ったんだろう? デストラはお前の命を救い、傍に居続けたがゴーシュは敵を騙すためとはいえ命を狙ってきたはずだ。そんなエルフの森を混乱に陥れたナーツェの血統がどうして無罪放免で俺は大罪人扱いなんだろうな」
「あなたが大罪人なのは森を窮地に追いやり、あたしの命を危険に晒したから。その事実がある限り、あなたどころかエウカリスもずっと大罪人扱い」
クラリエは足元の石を軽く蹴って飛ばす。
「エウカリスは悔やんでいたよ? あたしを殺そうとしたことを後悔し続けて、異界に堕ちたあたしをなんとしてでも脱出させようと生き様のほとんどを燃やし尽くすくらいに」
「だから? 俺も悔やめと? お前さんたちが特別扱いされているのに、どうして俺が悔やめると言うんだ?」
「あたしが裁かれるのは、先なんだよ。あたしには『白衣』がある。『勇者の血』が通っている。お母さんにとって、あたしという存在は必ず計画の邪魔になる。あたしはね、お母さんを止めるためだけに裁かれずにいる。お母さんを止めたら、あたしも大罪人の仲間入り。特別扱いなんてされないよ。ちゃんと裁かれる。いや、裁かれなきゃ駄目なんだ。エウカリスの罪が霞むくらいにあたしたちの家系の罪は大きすぎるから」
「そこのアレウリスが裁くのを止めるだろうさ」
「ううん、それだけはやめて欲しいかなって思ってる。だから今の今まで言ってなかった。だからアレウス君は驚いてなんにも言えなくなっているでしょ?」
クラリエは自らの母親を殺してから、エルフに裁かれようとしている。きっとそれは死罪だ。
アレウスには理解できない。
そんなにも、
あまりにも、
怖ろしいほどに、
自らの死が寿命や天災ではない形で確約されているというのに、
こんな風にしていられるクラリエが、アレウスには理解できない。
「一度だけ神域であたしと話したことがあるよねぇ、エレオン?」
「忘れちまったよ、そんなこと」
「あたしは忘れてないよ。あなたみたいな愛妻家をあたしはあなた以外に知らない。だからさぁ、その復讐もあたしは認める。復讐のために必要だったことも全部認める」
「クラリエ様?!」
「あたしは、だからね? エルフのみんなが認めたわけじゃない。あなたがすること成すことは、あなたの復讐のためには必要な要因だったというのなら、あたしだけはあなたを許す」
「許す…………? なにを、言っているんだよ。俺は、別に……理解されたい、わけじゃない」
エレオンの声が震え出す。
「俺は誰かに理解されたいなんて思っちゃいない!」
「だろうねぇ。あなたの全ては、愛する奥さんにだけ捧げ続けられたもの。だから……だからこそ、あたしは許すんだ。だって、心の底から愛する人を奪われるのは、世界の終わりに違いないから。世界なんていらないから、愛する人だけを甦らせてほしい。それができないのなら、愛する人を奪った者の命を奪いに行く。それがたとえ、神様であっても……違う?」
エレオンは膝から崩れ落ちる。
「あなたにはあなたの道理があって、あたしにはあたしの道理がある。森には帰らず、あなたはあなたの道理を貫いてほしい。たとえそれで、世界が壊れてもあたしはあなたを許す。あたしがお母さんを止めるまでの間だけだけどねぇ」
「……………………連合で奴隷ばかりを見るのは、聖女がそれを容認したからだ」
しばらくの沈黙ののち、エレオンが語り出す。
「容認してすぐに上流階級の連中が奴隷の売買を始めた。たかがそんなこと、と思うだろう? でもな、上流階級の気風は中流階級や中流崩れには精神的に効果的だ。自分もまた上流の仲間入りをしたい。そのように思えば中流階級が奴隷を買い始めるのも時間の問題だった。そうやって徐々に徐々に下へと流れて、今や一般的に奴隷を持つことが当然のような風潮が作り上げられた。それまでも奴隷を飼っていた連中もいたが、連合での速度は異常だった」
「一年足らず、だったか?」
「ああ。最初の一ヶ月で貴族連中が流行を作り上げた。流行の始まりはいつだって影響力の強い者からの発信だ。今回は物ではなく者だっただけのこと。帝国でもよくあることじゃないか? 流行りは貴族の気まぐれから。流行りは貴族への憧れと、知人友人への見栄っ張りから。それが伝播して、全体へと流れていく。数年後にはどうしてそれが流行ったのかすら分からなくなるクセにな」
「連合の奴隷売買は気まぐれではなく狙って起こされたことなのか……?」
「そうじゃなきゃこの広まり方は異常だ。もう一年経てば、連合の国民のほとんどが奴隷になってしまうほどの加速性を持っている。その奴隷たちを束ねるのが、一部の連合の実権を握る貴族たち。そして、その貴族すらも束ねる聖女という形だ。連合は国民を総奴隷化することを企んでいる」
「どうしてそんな無駄なことを。資産の没収をするだけなら奴隷にしなくともできるでしょう」
イェネオスが疑問を呈す。
「国民を全て奴隷にしてしまえば、戦争の駒として出兵させられる」
「そうだね、アレウス君の言うことが連合の狙いなんだと思う。だからあなたはこの機に乗じて、仇敵の動向を探りたいから現状の連合のどの程度まで狂っているかを調べていた」
「王国を攻めてくれるんなら放置、それ以外なら介入。俺がやりたいことはそれだけだ。姫さんには介入しすぎるなと言われているが」
「だったら、あとちょっとだけ協力してよ、エレオン。あたしたちはニィナちゃんを探してる。でもその足跡を辿ろうにもあたしたちは自由には動けない。だからあなたに頼らせてもらう」
「……俺は大罪人だぞ?」
「うん、あたしも全部が終わってから裁かれる大罪人。手を組むのは嫌だけど、なにか分かったら教えて」
「…………あ~ぁ、これだから嫌なんだ。これだから、出会いたくなかったんだよ。なにか分かったら教えてやるが、そいつが俺にとって邪魔な存在なら問答無用で始末する。あくまで情報を得たら提供するだけだ。今更、同胞とつるむ気はこれっぽっちもないからなぁ」
そう言いながらエレオンは闇夜に消える。
「アレウス」
「なんだ?」
「あたしさ、死ぬまでの間にアレウスとの想い出が欲しい。言っている意味、分かるよね? はぐらかしても分かるように言い直すだけだけど」
「そりゃ、そこまで言われたら分かるけど。でも、」
「ニィナちゃんを見つけて連合から無事に帰れてからね。今すぐにとは言わないから」
よろしくねぇ、とクラリエはアレウスの肩を叩いてからイェネオスの手を引いて、隠れ家の方へと走りつつ闇夜に消えた。
「母親を殺すためだけに生かされている、とか……なんなんだよ」
アレウスは頭を抱えながらうずくまる。
「そんな……そんなんじゃ、ないだろ。親子って……家族って!」
苛立ち。
どうしようもない苛立ちがあった。
「あのときも思ったけどさぁ! なんで親子で殺し合うんだよ……!」
どうしようもできない現実に打ちのめされて、
アレウスはクラリエがいない世界のことを考えたら、
自然と涙が零れ落ちた。




