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異世界で壊す異界のロジック  作者: 夢暮 求
【第10章 -その手が遠い-】
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太陽を落とせ


 瓦礫の下から飛び出してきた女性はとても大きな純白の翼を左右に広げ、自らが蓄えている光を翼に移して悲鳴と共に光線に変えて発射してくる。そのような突発的な攻撃に即座に反応できない者はこの場にはおらず、各自が避けやすい形で光線を避け切り、反撃のために動く。


 難しくはない。これまで冒険者の経験は着実に積み重ねられ、多少のことでは動じなくなった。死に近いところには相変わらず立っていると思っているが、それでも新米だった頃ほどの無尽蔵の不安からは解き放たれている。この余裕こそが命取りで、冒険者は魔物に油断し狩られていくと聞いている。

 しかしアレウスはその余裕を得る前に終末個体のピジョンに絶望を味わわされている。あのときの判断、あのときの失敗は根強く心に残っている。それでも油断してしまう場面はあっても死に繋がるほどの余裕の獲得には至れていない。強者の余裕を得られない代わりに手加減を捨てた。それが功を奏していると言えば聞こえはいいが、このせいで大抵の人物には初見では実力以下に見積もられることが多い。ウリル・マルグがアレウスの強さに行き着くことに時間を要したのも低く見積もられたことに起因しているはずだ。

 魔物相手にはそれで構わない。それが相手の油断になるからだ。だが人との交渉において実力は絶対の指標だ。味方に協力を求めても軽くあしらわれる。敵対者に向けては強いメリットだが、味方に向けても強いデメリットである。


「勇ましき戦い、散った御霊たちよ。我が声に応じ、再びその命に輝きを宿せ」

 女性の声が砦全体に響き渡り、瓦礫で潰された兵士たちの体から『御霊送り』でよく見る光の粒たちが大地から浮かび上がり、純白の翼から落ちる純白の羽毛が触れると魔力によって形を変えて、光を放つ兵士たちと化す。


「ワタシたち以外にも命を粗末に扱える者がいるってか」

「元より、この手の力は俺たちの手練手管だ。獣人――いや、人間が扱える方が異常だったんだ」

 朽ちて溶けた翼とそこから落ちる粘着質の羽根を持つ者が床に空いた穴から這い出してくる。背格好はアレウスの知るジョージだが、姿にはまるで面影がない。そして彼が這い出した穴は気付けば閉じられている。物理的に空いた穴ではなく魔力で開かれた穴だったようだ。

「そちらが命を利用するなら、こちらは亡骸だ。志半ばで散った者どもよ。我が声に応じ、再びその骸に志を灯せ」

 崩落に呑まれて死んだと思われる兵士たちがモゾモゾと動き出し、意思なき亡骸として起き上がる。


「許されざる光景だな。命と亡骸が争い合うなど」

 マーガレットは呟きながらも足元に落ちていた鎗を拾って、女性が生み出した兵士たちへと挑みかかる。

「せめて私がこの手で葬り、手向けとしよう」

 思考の切り替えが速すぎる。そして適応力の高さも段違いだ。目の前で起こることを“そういうこともあるのか”の精神だけで飲み込む。彼女にとって飲み込み切れないことは、自身の志に反する行為や思考だけなのだ。


「加勢に行くべきか……?」

「マーガレット様に加勢に行くのは悪手でしょう。あの方は手を貸さずとも強いですから」

「俺が死にかけた戦場で憔悴こそしていたが当たり前のように生き残った騎士だ。手なんか貸したら邪魔になる」

 強者は最も戦いやすい状況を自ら作り出すものだ。マーガレットが勇猛果敢にただ一人だけ、先手とばかりに魂の兵士たちへと飛び掛かったのは暗に「一人で戦わせろ」と体現しているのだ。


「亡骸を使うのは、こちらが悪にしか見えないけれど」

「贅沢を言うな。手数の不利は押し負ける予兆だ。せめて相手が用意した魂の分だけこちらも同数の骸で対処するべきだ」

「……アンジェラが暴走しているのは私のせいだから、我慢するしかないか」

「それで、どのようにしてあの『天使』を止める? 膨れ上がった力は誰もが無視し切れないほどに強大だ。奴に介入権は常にある」

「分からない。でも、アンジェラは絶対に私を傷付けない……傷付けられないのかもしれない。私が近付くことができればもしかしたら」

 ジョージとエルヴァが抱えていた女性の会話から汲み取れることは少ないが、ともかく女性を上空で光り輝いている『天使』とやらに接近させればいいらしい。

「無茶苦茶を言うな。クルスは牢獄でほとんど飲まず喰わずだったはずだ。歩くことさえままならないのに、どうやって近付くと言うんだ」

「そこは私たちがサポートすればいいだけじゃないですか」

「ただでさえ死にそうな奴をサポートしたら俺たちまで死ぬと言っているんだ」


「あいつら、やっぱりワタシたちに詳しく説明する気はないみてぇだな」

「古くからの友人らしいからな。僕たちが蚊帳の外なのは仕方がないが……クル、ス?」

 当たり前のように呼んでいたために右から左に聞き流してしまいかけたが、エルヴァは薄い赤髪を持つ――恐らくは染めたのであろう髪色だが、その女性をクルスと呼んだ。

「クールクース・ワナギルカン……様?」


「今、私のことを呼んだ?」

 オーディストラ皇女を見たときと同じ感覚が体中を駆け巡る。なにかとんでもないことをやらかしていないだろうかと、会ってまだ十分程度しか経っていないのに考えてしまう。

「無礼講で結構よ。私に(かしこ)まって動きが鈍るというのなら、措いてくれて構わない」

 措いておくにしても、王女を前にしてそれは許されるのだろうか。無礼講でと言うが、鵜呑みしてはいけない。建前だった場合、アレウスはのちに王女の手で不敬罪として始末されるかもしれない。


 不敬で言えばエルヴァが群を抜いているが、切り捨てられていないのだから王女にとっても彼はとても大切な存在なのだ。それに比べてアレウスはそこらを飛んでいる羽虫にも等しい存在に違いない。


「そいつは言葉の裏を読み過ぎる。お前が言ったことに反して、あとで処分されるんじゃないかと怖れている」

「するわけない。助けに来てくれた人に感謝こそすれ、どうすれば罪を与えられるような傲慢さを得られると言うの?」

 エルヴァの助け舟によって肩の荷が下りる。どうやらやらかしても問題ないらしい。だからと言って途端に態度を変えるような不届き者にはならないようにする。


「私だけを見ていれば、苦しみから解き放たれるのに!!」


 再びのどこを狙っているのかも分からない光線が飛ぶ。それそのものは脅威ではないのだが、光線が通った空間が時間差で小さな爆発を連鎖的に引き起こす。爆風と、辺り一帯の瓦礫を吹き飛ばすことで生じるつぶての雨を避けることに集中し、打開策を練る。

 攻撃は可能だ。何度も言うが難しくない。貸し与えられた力を用い、ノックスと協力するだけであの『天使』を落とすことぐらいは容易に達成できる。だがそれでは物事が解決しないらしい。王女を天使の元まで辿り着かせることが達成条件となる。

「クルスのことは任せろ」

「私たちのことは考えないでください。あなたは、あなたたちなら『天使』の注意を惹き付けることができるはずです」

 囮として期待されている。だが、それ以外にアレウスとノックスが取れる手段はない。撹乱はなにも考えずに済む。そして、その手段は二人にとって十八番(おはこ)と呼んで差し支えない。


「行くか?」

「好きなように動け、レイエム」

「当たり前だ。好きなようにさせてもらう」

 ノックスは被っていた帽子を脱ぎ、獣耳をピンッと伸ばし、瞳は黒く染まって爪と尾を伸ばす。軽い『本性化』を行っての臨戦態勢を見て、アレウスも貸し与えられた力に着火する。

 水の衣の全てを蒸発させないように、自身が起こす炎の全ては短剣を握る右手に込める。炎の噴出による跳躍も足裏にだけ絞ればカプリースがもたらしたであろう水の護符の効果を切らすこともない。


 アレウスとノックスが同時に駆け出す。


「行きましょう」

「もう少し様子を見てからでも」

「いや、あの二人は『天使』に特効だ」

「どうして?」

「どっちも神様を信じていない」

「アンジェラに介入の権利こそあるけど、神を信じていない二人に起こす攻撃は減衰する」

「そういうわけだ」


 そんなことは突撃する前に言っておいてもらいたいところだ。辛うじて聞き取れたのは習得している技能のおかげであって、冒険者でなければきっと聞こえていないし、どうしてエルヴァがアレウスに攪乱を任せたのか不明なまま立ち回るところだった。


 光線は無造作であっても、多少は狙いすましていて王女たちの方面へと飛んでいたがアレウスとノックスの方面にはそれほど多くは飛来しなかった。やはり二人には『天使』は介入権はあっても攻撃の対象にし辛いのだ。

 浮遊している『天使』から見て右方向まで詰めて、飛刃を放つ。攻撃に反応して『天使』が翼から複数の光線を放って飛刃を弾き、辺り一帯に連鎖的な爆発を生じさせる。狙いは正確ではないが、生じる爆発が厄介だ。回避するにしても爆風を浴びてバランスを崩される。


「天に仇名す無知蒙昧な者たち。あなたたちみたいなのがいるから、クルスが穢される!」

 光の鎗を手にして、投げてくる。これはあまりにも狙いが極まっている。このままではどう避けても鎗に体の一部を持って行かれる。だから炎の噴出による跳躍で強引に避ける。ただし、光の鎗が地面に接触した途端に炸裂して起こる魔力の爆発は受けざるを得ない。水の衣が熱を軽減してくれたおかげでどうにか軽傷で済んだ。

「魔力の炎……ではないのか」

 ズキズキとした痛みを肌に感じている。魔力で起こす火に耐性があっても火傷した。ならばあれは『火』に分類されていない魔法なのだ。体に受けているのは熱による痛みに違いないが、属性が異なるからこそアレウスに有効となっている。

「空から落とせるか?」

 呟き、疑問を感じながらノックスは上空の『天使』に負荷をかける。しかしその負荷をものともせずに『天使』は空で浮遊したまま、彼女を見る。

「悲しき『闇』の末裔よ。この世の全てを照らす『光』に足るだけの力はもはやあなたたちにはない!」

 両手に光の鎗を携え、『天使』が力む。

梵天(ブラフマース)()投げ鎗(スピア)!」

 投擲された二本の鎗は――もはや鎗ではなく光線にも等しき軌道で、更には光線にも等しく速度でアレウスたちのいる近場の床に突き立って炸裂する。

 避けられるわけもなく、目の前が真っ白になるほどの凄まじいまでの光がアレウスたちを包み込む。


――化け物が化け物を殺した、それでいいじゃないか。

――どうして被害者の私が苦しまなければならないの?


 垣間見た景色に、垣間見た声。それらは光の収束と共に掻き消えた。眼球が光で焼き切れただろうと思っていたが、この身のどこにも痛みも怪我も見受けられない。ノックスもなにが起こったのか分からないという顔で、辺りを見ている。


「私が信仰する神々の力が届かない……!? いえ、それだけではない」

 ここでハッキリとアレウスは『天使』と目が合ったのを自覚する。

現世(うつしよ)幽世(かくりよ)の向こう側を……見ることができたと言うの……? ただの人間が? いえ、ただの人間じゃない。『超越者』だから……いいえ、『超越者』の中でもこの人間は、」

 全てを語る前に『天使』にエルヴァが迫る。その手には石造りの鈍器を握り締め、脳天をかち割るほどの勢いが込められている。『落上』による跳躍での間際の接近だった。虚を突かれた『天使』だったが、翼を自らを守るように折り畳んで、鈍器ごとエルヴァを跳ね除けた。


「今のは……なんだ?」

 アレウスが見た景色は、言葉はなんだったのか。ノックスまで無傷なことにも説明がつかない。しかし、依然として状況は変わっていないのだからそのことについては後回しにするべきだ。


「クルス……今のは『二輪の梵天』ですか?」

「神から与えられた『アーティファクト』。だけど、アンジェラが持ってから質が落ちて……梵天じゃなくなって、日天なんだけど『アーティファクト』としての名称は『二輪の梵天』のまま」

「そりゃそうだ。創造神が持っている力を天使ごときが質を保存し続けられるわけがない」

 ジョージが会話に入る。

「だから私もアンジェラがあんな技を持っているのは初めて見た」

「それも今の一度切りで終わりだ。運が良いもんだ。『超越者』の二人に投げられていなかったら俺とリスティ、あとはあそこの女騎士は消し飛んでいた」

「どういう意味ですか?」

「今のは異なる世界で死んでいる者には()かない」

「私はてっきり『超越者』だけが無効化するのだと」

「あながち間違ってはいない。『超越者』になれる者はその大半が異なる世界で死んでいるからな。例外として挙げるなら、」

「イプロシア・ナーツェ」

「分かっているようだな。この年月、無駄に胸と尻を大きくしたわけではないんだな」

「その無駄なセクハラは忘れたままにしてくれていればどれだけよかったか」

 リスティが今にもジョージを刺し殺しそうなほどに剣に力を込めている。だがあそこまで拒否を示しているのならアレウスが会話に入る余地はなさそうだ。


「どうでもいいことだが、和気藹々としている場合じゃねぇことぐらいは分かっているよなぁ?!」

 『天使』に跳ね除けられて着地し、『落上』の魔法で跳躍して再度、攻撃を仕掛けに行きながらエルヴァが叫ぶ。

「とっととこの『天使』を落とせ!」


 その語気の強さ、そしてマーガレットの獅子奮迅の戦いを見て気を引き締め直す。アレウスとノックスは再び『天使』を撹乱するために二手に分かれ、短剣による飛刃と爪による飛刃を別のところから繰り出す。そこには『火』と『闇』の魔力が込められており、エルヴァを翼で跳ね除けてすぐの『天使』には物理ではなく魔力としてその肉体を引き裂く。

「介入の権利が薄い分、こっちの攻撃も薄そうだな」

 飛刃では切り傷程度で済んでしまう。貸し与えられた力を使っているが、アレウスの考えていた威力と乖離している。この一撃でガルムなら両断する。それぐらいの威力を込めたがただの切り傷で済まされてしまっている。ノックスもまた自身が考えていたような威力で『天使』には伝わっていないことを痛感しているらしい。だが、二人目掛けて光線が降ってくるため留まれない。再び一所に集まって、『合剣』も検討しようとしたが、まるでそのことを読んでいるかのように光線の精度が上がっている。アレウスとノックスは二手に分かれてから合流が叶わず、別々のところから撹乱することしかできない。


「私だけの言葉を聞き続けて、クルス!!」

 魂の兵士がマーガレットを取り囲むも、その一部がクルスに迫る。リスティの鋭くも素早き刺突の一撃が一番手前の兵士を貫き、更に魔力を送り込んで剣から抜かれる形で兵士が刺突を繰り出した直線状に吹き飛ぶ。一列に並んでいた兵士が軒並み巻き込まれるも、左右から次から次へと魂の兵士が現れ出でる。それを亡骸の抑え込みに掛かり、その両者に『天使』が光線を浴びせて消し飛ばす。

「私はあなた以外の言葉も聞き届ける。だって、それが国の上に立つ者の仕事だから」

 言いながらクルスが走り出す。

「私にはあなたが必要。でも、あなた以外も必要なの」


「そんなの私は認めない! 私を一番にしてくれないと、だって私は天からの御使いだから!! それに!! 堕天使と手を組むなんて、私は死んでもイヤよ!!」


「誰が手を組むと言った」

 跳ね除けられたはずのエルヴァが三度、『天使』の真横に迫る。

「俺たちは話し合いをするだけだ。話し合って、わだかまりを解くことができたらそれで終わり。協力関係を結ぼうなんて微塵も思っちゃいねぇ。だからまずはお前がクルスの話をちゃんと聞け」

 鈍器に気力が満ちる。

壊剣(かいけん)()、」

 翼で守りに入るが、振り抜かれた鈍器は『壁』や『盾』の魔法にも近しき防護壁に構わず叩き込まれる。

「“殻砕き”」

 三度跳ね除けられるはずのエルヴァの鈍器は翼が生み出す防護壁を気力によって打ち砕き、守られていた『天使』が一撃を浴びて地面へと落ちていく。それをクルスが地上で受け止めた。

「どんな怪力だ?」

 その横にエルヴァは着地し、息を吐く。消費した気力の代償ではなく二度跳ね除けられたことで体に返ってきた負荷によろけて血を吐いた。

「アンジェラには重量がないから」

「重量がないならワタシの負荷も効かないな」

 ノックスが『本性化』を解く。


「落ち着いて、落ち着いて……アンジェラ。私はあなたに選ばれた責任を果たすから。大丈夫、自分の宿命は……変えられないことぐらい、分かっているから」

 魂の兵士が崩れ落ち、亡骸の兵士も地に伏した。


「それじゃ、俺は先に帰らせてもらう」

 ジョージは翼を背に隠す。

「殺す機会じゃないのか?」

「……馬鹿言え、殺せる状況か? 俺の宿願も変わりはしないが、今じゃないことぐらいは分かる。お前たち人間のわだかまりが解消されてからでも、俺は構わないんだが……天上の使途様はどうやらそうもいかないらしい」

 エルヴァに好機だと言わんばかりに急かされたが、ジョージは空気を読んでかそれとも気が変わったのか。どちらにせよ、その状況に値せずと判断したらしく、帰り支度を始めていた。


「あとは新王国の基地まで逃げ切るだけです。言うだけなら簡単ですが、なかなかに大変な道のりになると思いますが」

 リスティがクルスと『天使』、そしてエルヴァを見て微笑む。

「あなたたちと一緒なら、可能になると信じています。それに、アリスさんとレイエムさんもいらっしゃいますから」

 その微笑みがアレウスとノックスにも向く。

「勿論、そこにいるセクハラ男と、クルスさんに抱かれている『天使』も。きっとクルスさんを助けるためなら、ほんの一時ぐらいは距離を置きつつなら、なんとかなると信じています」

 そこのところはエルヴァと王女以上のわだかまりがあるだろうとアレウスは思っているため、全てがリスティの言う通りにはなりはしないだろう。


 それでも、一段落付いた。そう思っていいのだろうか。


『“我らが愛国者よ、告げる”』

 どこからともなく声が聞こえる。

『“太陽を落とせ”』

 リスティとエルヴァが即座に動いてクルスを守れる立ち位置に付く。


「エルヴァ?」

「ああ、今のは第一王子の『指揮』だ」

「太陽は、恐らくクルスさんのこと」

「『二輪の梵天』という名前だが、クルスは日天の力を持っている。それを『太陽』と呼ぶのなら」

「ええ、第一王子の狙いは『超越者』であるクルスが持つちか、」


 マーガレットの鎗がリスティの腹部を貫く。


「…………え?」


「その場において、全ての者が悲しみの涙を流す者。俗に言う“みんなの太陽”を落とす。クルス様を殺せばエルヴァとリスティに連なる者は泣き悲しむが、そちらの帝国の冒険者と獣人はきっと泣くに至らない。では、誰を死に至らしめれば皆が悲しみに暮れるのか。答えは簡単だ。そうだろう、リスティーナ・クリスタリア?」

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