表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で壊す異界のロジック  作者: 夢暮 求
【第10章 -その手が遠い-】
491/705

♭-10 クールクース


―数年前、クルスの戦線―


「あなたは私たちとは異とする者。マルハウルドに預けられた忌み子ではありますが、そこに劣等感を抱いてはなりません。なぜなら、私たちの血筋よりもあなたに流れている血はもっと高潔であり、そして素晴らしき者であるからです。たとえその血によって、私たちマルハウルドの者たちが断頭台に立つことになり、血統が断絶されるようなことがあっても、責任を背負う必要はありません。あなたはあなたに流れる血筋に従い、血筋に相応しき人となりなさい」

 クルスは物心ついた頃に母親から常々にそう教えられた。教育はその地方においては最高峰の、それでいて厳しいものではあったがクルスは決してそこから逃げ出すことはなく、着実に自分の力として多くを身に付けていった。


 世間では齢十数歳にしてマルハウルドを掌握した、などと言われているがそうではない。マルハウルド家そのものがクルスに――ではなく、その身に流れる血筋に身を委ねたのだ。嫡男もまた変わりなく、己が命に代えてもクルスを守る誓いを日々、両親に立てていた。


 実際、嫡男が命を落としたのがクルスが騎士候補生としてゼルペスに向かう三年前。死亡した理由はクルスを暗殺しようとした者から身を挺して守ったため。一応は義兄となるその男の死にクルスはひどく悲しんだが義父母はクルスが生きていることに安堵し、嫡男の死を「素晴らしい死に様だった」と語った。

 なんと歪んだ価値観なのだろう。クルスは己が身に流れる血が家を狂わせていることに狼狽し、しばらく勉強も鍛錬も投げ出すほどに精神面をやられてしまったが、最終的に自らの血が狂わせているのなら自らがあるべきところに戻るべきだと結論を出した。この日、クルスは『ワナギルカン』であることを強く意識し始め、王政とそれが起こしている大きな大きな歪みを学び、このままの王国では急速に滅亡へと向かう。そのように思い、自らが国に立つべきだと『革命』を決意する。


 クローンは王国の最大とも言うべき歪みであり、王国を成す最大の兵器である。その機関に立ち入る権力をクルスは有しておらず、どんな方法を取ったとしてもクローンによって『革命』を起こす前に殺される。だからこそ一度だけでもいい。己と同じ志を持つ者たちが奮い立つための一手を模索した。クローンが起こす証拠隠滅能力は凶悪で、だからこそそれを受けても生き残ることができるような、まさに起死回生の――たった一度でも構わない一手が欲しかった。


 エルヴァージュ・セルストーの登場はそんなクルスにとって渡りに船だった。まさか『同一人物』の事故死を目撃した少年がその名を奪い取り、自らの者にしているとは思わなかった。クルスはマルハウルドの資金力と人員を使って少年を捜索し、調査し、そして保護という名目の元、自らの手元に置いた。手元とは言うが、遠く離れた街で自らが用意した家で、その日その時が来るまでの間に最低限度の教育を施しておくだけではあったのだが。


 ゼルペスの騎士候補生に紛れることにしたのは行方をくらますためだ。『マルハウルド家に迷惑を掛けると思ったクルスは自ら出奔し、行方知れずとなった』。そのようにマルハウルド家のある地方都市で噂を流させることで、暗殺者から身を守る。まさか『ワナギルカン』の血を持つ者が地方都市であるゼルペスの騎士候補生として紛れ込んでいるとは思わない。あとはここで機を待つだけ。そう、王国に反旗を翻すための機を待つのだ。


 このことについてスチュワード・ワナギルカンには事前に伝えている。国盗りを行うために、国へと勝負を仕掛ける。スチュワードは『ワナギルカン』の一族にして戦狂いと名高い。そして自らの兄――現国王によって地方に追いやられた身でもある。クルスの勝負を挑戦と受け取り、邪魔をするのではなくその瞬間、その場所で、きっと一騎討ちを持ち掛けてくるに違いない。


 まさにこの考えは的中した。スチュワードは拝謁しにきたクルスの言うこと全てを大きく笑い飛ばしながらも「良かろう」と言い切った。ここから彼による補助もあって騎士候補生として紛れ込むことができた。リッチモンドもマーガレットもスチュワードの決定に不満を漏らすことはなく、そしてクルスに対して一切の特別扱いはなく、時に鍛錬は苛烈を極めることとなった。


 ただし、ここまで想定内だったクルスにとって唯一の想定外があった。エルヴァージュ・セルストーがゼルペスに来ており、更には同じ騎士候補生として凌ぎを削っていることだ。当初は騎士候補生の数が多く、その名を耳にすることもないためその事実に気付くことはなかったが、自身に次いで彼は頭角を現し始めた。そうして耳に入っても尚、クルスはなにかの間違いだと考えていたのだが、リスティとエルヴァの模擬戦闘を見てようやく現実に思考が追い付いた。


 街で起死回生の一手まで飼い殺す予定だった少年の性格や容姿について、クルスは聞きかじった程度にしか記憶に置いていなかったために確信できるものはなかったはずなのだが、クルスはその模擬戦闘で自らが保護した少年であると確信した。

 華やかな世界で生きていたわけではなく、泥水を啜るような世界で生き抜いてきている。騎士候補生のほとんどは地方の貴族の出身である。自らの家名に華を持たせるために騎士の資格を手に入れようと躍起になっている中で、少年だけはそこに渇望している様子はなく、ただ生きることだけの渇望があった。

 苛立った。どうしてこんな想定外のことが起こっているのか。

 どうしてこんなことになっているのか。

 だから思わず槍を彼に投げた。危うく起死回生のために飼っていた少年を殺すことになりそうだった。そう、その訓練用の槍には確かな殺意を込めていた。

 エルヴァはその槍を避けて、ただこちらを見ていた。恐らく本人は避けたとも思っていない。クルスが寸前でギリギリを狙うように手元で軌道修正を掛けたのだと。

 そうではない。エルヴァは僅かに横へと動いた。それこそ彼が元より備えている生存本能がもたらした無意識の回避である。クルスが学べていない、必死に生きようとする者だけが手にすることのできる究極の反射神経を持っていた。


 身が震えた。自身の持っていない物をエルヴァは持っている。そのことだけで、クルスはエルヴァに興味を示した。なぜなら、彼はあらゆる騎士候補生の中で最大の異端児だったからだ。どこの流派とも知れない身のこなしで、ワケの分からない独自の足運びで、時折、死に物狂いで勝ちを拾いに行く。知りたい、知らなければならない。なぜならクルスは生存本能を剥き出しにして、国を盗りに行かなければならないのだから。


 エルヴァと、そしてリスティとの日々は充実したものだった。自らの使命を、決断を忘れてしまいたくなるほどに運命的なものを感じた。特に魔物に殺されかけたとき、身を挺して守りに入ったエルヴァのことを女として本能的に『カッコいい』と思ってしまった。

 クルスの身の回りにそんな男は、義兄以外にいなかった。逆に言えば義兄に少しばかりの敬慕があった。それは子供ながらの恋慕にも似たものだったがエルヴァに対して感じたのは間違いないほどの恋心だった。


 悩んだ。どうにかして、エルヴァを自らの物にできないかと。起死回生の一手として用いれば、彼をそのまま死なせることになる。なぜならクローンの『エルヴァージュ・セルスロー』とは、そういう風にできている兵器だからだ。己自身が助かったとしても、彼はクルスが起こした全てを知って、動くことさえままならなくなるだろう。裏切り、と感じるに違いない。決して裏切っているわけではないが、クルスが抱えている物を明かさなかったことを彼は激しく恨み、憎むだろう。


 それでもクルスは明かさなかった。

 明かせば戦乱にエルヴァを巻き込むからだ。巻き込むくらいなら、全てを知って死んだ方がいい。もっと苦しい思いをさせてしまう。それは絶対に駄目だ。自らのワガママで生かし、自らのために苦しませる。好きな相手に苦しんでもらいたくない。純粋な乙女心が、死なせた方がいいという狂った決断をくだす。


 ただ、クルスは全ての決断と決意が形を成す前に夭折(ようせつ)するところだった。リッチモンドはエドワードという知り合いが確実に王国の息の掛かった軍師であると伝えてくるだけでなく、もしものことを案じて避難部隊に配属されるように進言したことを教えてくれた。だが、その避難部隊に連合は容赦なく攻撃を仕掛けにきた。


 まさか王国の陰謀によって殺されるのではなく、連合の無慈悲な行いによって命を落としかけるなど――いや、クルスはそこで命を落とした。

 避難民を瓦礫から守るべく取った行動で、己自身が瓦礫に呑まれた。避難民を誘導している騎士候補生が瓦礫に呑まれたところで誰一人として助けに来ることはない。その救助活動が更なる犠牲者を増やすからだ。

 辛うじて即死は免れたが、いずれ消える命であることは意識が朦朧としている中でもハッキリと分かった。なぜなら顔の左が瓦礫によって潰され、ロクに動くことさえままならない状態だったからだ。脳にもなにかしらの損傷があるに違いなく、たとえ生き残ったとしても己が信念を果たすことは不可能に近い。

 だったらもう、死んでいい。

 薄れゆく意識の中でクルスはそう願い、そしてその願いは聞き遂げられたかのように目の前を白い光が包み込んだ。これは最期の微睡(まどろ)みであり、最期の夢。天から降りてくる純白の翼を持った女性の姿もただの幻想に過ぎない。


「可哀そうな人間。自分の出生の全ても知らないままに死ぬなんて」

 そう呟く天使は目に見えない力をもって、クルスを潰していた瓦礫を素手で押し退けた。

「その死を受け入れる? それとも受け入れない? もしも受け入れないと言うのなら、私があなたに()いてあげる」

 女性はそう言って、あまりにも近い距離でクルスに問い掛ける。

「あなたに憑かせてくれたら、私の持つ魔力があなたの体の全てを癒やしてくれる。けれど、私を憑かせる代償としてあなたの命を一度貰う。とても悲しいけれど、天使は一度死んだ人間にだけ優しく微笑むの。だから一度…………あら?」

 天使を(うた)う女性はクルスをジッと見て、クスクスと笑う。


「なぁんだ。あなた、一度死んでいるのね。なんのことだか分からないって顔をしているけれど、だったら、あなたのロジックに触れてみようかしら」

 女性の手がクルスの頭部に触れる。


 途端、見たこともない景色、見たこともない記憶、見たこともない死の瞬間が流れ込む。同時にそれが自分自身がこの世界に産まれ直す前のものであることを強制的に理解させられる。

「死んでいたことを理解できた?」

 訊ねられて、(うべな)う。

「けれど、可哀そうな人間にもう一つ残酷なことを言うんだけど、私はこの世界で一度死んでくれないと納得ができない天使なの。だから、」

 天使の手がクルスの胸部を貫く。

「二度目の死を、私からあなたに与えてあげる。ああ、そんな顔をしないで。私が持つ『二輪の梵天』は、死んだ人間にこそ意味を持つ力。一度死んだだけの人間よりもずっとずっとあなたに素晴らしい力を授けてくれる」

 息ができない。いや、もう息をしていないのだろう。


 心臓を貫かれて、それでもまだクルスの思考が残っている。こんな奇妙な感覚は、今まで感じたことはない。そして刺された心臓が再び熱を持ち、脈打ち、体中に血液を流し始める。


「凄いわ。一度で良いところを、死にそうだったからどうせならと二度目の死を与えてみたのだけれど――少しばかり悪戯をしてしまったのだけれど、本当に死を乗り越えてくれるなんて」

 潰れた顔の左半分が信じられない速度で回復していく。失った臓器、脳の一部、その他全てが治癒されてクルスの体にあった傷の全てが塞がれた。

「いっ、た……!」

 ただし左眼に凄まじいまでの激痛が走った。瞼を開いた直後に感じた光が眼球を焼いたのだろうかと思うほどの鋭い痛みだった。しかし、恐る恐る瞼を開き直してみても左眼の機能は損なわれていない。潰れていた眼球が再生を果たした合図だった。そのように思った。

「あらあらあら、二度目の死を与えるとこんなこともあるなんて」

 女性はクルスの左眼を眺める。

「『聖痕』も無しに、『魔眼』に目覚めるなんて……素晴らしいわ。可哀そうな人間と侮ってみたけれど、あなたの力が私の力と共鳴し合っている証拠だよ」

「力……?」

「そう、あなたは力を得たの。ええと、クールクース・マルハウルド――いいえ、クールクース・ワナギルカン。長いからクルスと呼んであげるね? 私は……アンジェラと呼んで? 私はあなたの知らない全てを知っている。けれどその全てを語ることはできないの。私が語ることができるのは、あなたが未来で知るべき全てだけ。あなたに関わる全てだけ」

 クルスは体に力を入れ、立ち上がる。先ほどまで死に行くだけの体だったというのに健康体そのものだ。疲労感すらない。

「……だったら、教えて」

「良いよ」

「私は……エルヴァージュ・セルストーとどうなるの?」

 女性はクルスに手をかざし、未来を読んでいるような素振りを見せる。しかし、その余裕ぶった表情が徐々に徐々に崩れていき、手をかざすのをやめて目を見開き、激しい激しい感情表現を全身で表す。


「駄目よ、駄目…………駄目! あなたとその男を、引き合わせることは絶対に許されない。許しちゃいけない。許せるわけがない……!」

 クルスには分からない未来を見て、女性は勝手に叫ぶ。

「安心して、クルス。あなたを蝕む全てから私が解放してみせるから。あなたはエルヴァージュ・セルストーに注意すること。絶対に一度も気を許してはいけないわ」

 けれど、と女性は続ける。

「未来の一部で、私は垣間見た。私の宿敵が立っているところを……だから、しばらくは泳がせてあげて欲しいの。あなたたちは離れても、別れても、必ずまた未来のどこかで巡り合う。そのときに私はあなたを救いに行くし、同時にあなたの前に現れたエルヴァージュ・セルストーと、その男が連れて来る宿敵をこの世から追い払ってあげるから」

 とてもではないが、信じられるに足ることを言っていない。しかし、ここで機嫌を損なわせると彼女にクルスは殺されるかもしれない。いや、さっき殺されたばかりだが、殺し直されるかもしれない。だから、ここは彼女を利用するために信じているフリをすることにした。


 それからクルスは避難部隊から後方支援に回されて、二人と再会することとなる。左眼だけ自身の蒼い瞳と異なり、蛍光色になってしまっているため、負傷したことにして眼帯で隠すことにした。


 その後に基地で起きたことは、事前にリッチモンドやマーガレット、果てには帝国軍人にまで根回しをしていたことで想像以上の形で覆すことができた。起死回生の一手を用い、生き残り、王国の非道を知る者としてやがての挙兵に至る。


 これらはスチュワードの耳に入り、改めて対話の席を設けた。リッチモンドとマーガレットを借りたこと、そしてこれからも二人を借りることを告げると老人は高らかに笑う。

 スチュワードは「貸すか貸さないかは勝ってからにしてもらおう」と言った。「ゆえにワシとの(いくさ)において二人を使うことは許さん。無論、ワシも使わない。お主が従わせた帝国軍人は自由にするがいい」とも。

 それでは戦力差は明らかであることを伝えても、「血沸き肉踊るのであれば死すらもワシにとっては最高の喜劇」と言い切ってみせた。元来の戦狂いが、もしくは戦場に立ち過ぎたがゆえに(タガ)の外れた感覚が、スチュワードに絶対的不利な状況であってもそれを己が力だけで覆す楽しみに置き換わってしまっていた。


 このゼルペスを巡る戦いは最終的にクルスが勝利することとなる。その途中、エルヴァとリスティの邪魔が入ったものの計画にズレは生じなかった。ただし、クルスに憑いた天使が「殺せ殺せ殺せ」とひたすらに訴えかけてくる場面においてトドメを刺すことに躊躇いつつも致命傷を与えた。そのせいでエルヴァが冒険者として『教会の祝福』を得ていること、そして王国ではなく帝国で受けていることに気付かず、逆に死なせてしまうことで足取りが掴めなくなってしまった。

 もしもこのとき、天使の言葉に乗らずにエルヴァに致命傷を与えずに捕虜にすることができていたならば、彼との間にあるわだかまりは解けていたかもしれない。しかし、後悔したところでその機会が戻ることは永遠にない。


 案の定、スチュワードはクルスに一騎討ちを持ち掛けてきた。戦狂いとはいえ、彼は既に老いている。この老騎士に苦戦するはずもない。そう思っていたが、老騎士は老いを感じさせないほどの動きでクルスを撹乱し、少なくとも二度は死線を潜らされた。首筋の一撃と腰部への刺突。偶然とも言うべき拙い足運びが見せる揺らぎがなければ、その二撃によってクルスは死んでいた。


 敗北によって倒れた老騎士は、老いて死ぬのではなく戦って死ぬことに喜びを感じていたようで清々しいまでに綺麗な顔で死んでいった。


 ただし、耳障りなことを言い残した。


 「ワシからの贈り物はどうだったかのう? 楽しめていたなら、なによりじゃが。遠くに置いておくなどつまらんことをするでない。どうせなら傍に置いて、その混沌を味わう方が人生の足しになるものだ」


 そこでクルスはエルヴァをゼルペスに連れてきた元凶がスチュワードであることを知った。そして、「リッチモンドは忠誠心の塊じゃが、マーガレットに心を開くのは幾分か待つべきじゃな。あれが持つ才気は、ワシの範疇を越えておる。隙の一つも見せるでない。言葉の一つも信じるでないぞ」とも。


 あなたのせいで私は、と怒鳴るクルスを見てスチュワードは笑う。奇しくもその様は、死にかけのエルヴァが自身に向けた笑いと似ていた。


「名も無き少年について、なにも知らん者どもが起こしている戦乱の狂気を、やがては渦巻いて王国の闇を払う光となるのであれば……それもまた、面白いことだと思わんか?」

 どういうことかと訊ねても、スチュワードは事切れていて返事をすることはなかった。


 北進は予定通り、マーガレットが裏切った形で止められた。これは自身の挙兵とスチュワードを倒したことによって増長した軍が無茶な進軍をさせないために一手だ。無謀な北進によって多数の兵士が犠牲となれば、すぐに王国軍はゼルペスに攻め込んできて潰される。その前に確かな地盤を形成することの方が重要だった。


 クルスはマーガレットに連絡し、すぐにクルスはエルヴァの出自を探った。しかし、彼女の調査をもってしてもエルヴァの出自に関することはなに一つとして分からなかった。どこで産まれたかすら分からない以上、手立ては一つもない。


 大きな謎を残しつつ、クルスは新王国を宣言するしかなかった。


 その後、エルヴァが帝国軍人になったという精神的な嫌がらせもありはしたが、ある程度は上手く事が進んでいた。


 思考を乱したのは、エルヴァが連合に捕らえられてから。そして彼が脱走して、また足取りが掴めなくなってから。


 ウリルの領地を狙ったのは、新王国と睨み合っている王国軍の虚を突くため。裏を掻いて、油断しているところを仕留めるつもりだった。だが、そこに王位継承権第一位の王子の入れ知恵があった。撤退し切れずに捕まるしかなかったのも、ウリルの策略ではなく第一王子がウリルに与えた策略によるものだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ