*シンギングリン奪還戦 設定*
作者による物語設定です。『シンギングリン奪還戦』の内容が過分に含まれるため、ここから最初に読むのはお控えください。
*異界獣 リブラ
別名 『図り知る者』
星座 天秤
異界の罠 『繋がり』
司る魔物 『物質』
帝国が制御下にあると信じて疑わなかった異界獣。一度目の討伐の折、再生不可能な状態にまで追い詰められて自身の異界へと撤退。その後は同様に討伐されかかり、間一髪、異界へと逃げ延びた双子座との縄張り争いを行い勝利し、吸収する。しかしながら肉体の回復を優先するあまり自我が消失し、それが帝国にとって『制御できている』と誤解させるに至った。『勇者顕現計画』においてリブラの異界を用いるため帝国がリブラの象徴である『天秤の意匠が彫られた柄を持つ剣』を施設に投入する。
この施設で多くの冒険者が死に、多くの冒険者が夢を折られる形となったが、リブラにとっては多くの魂と多くの魔力を吸収できる場であったため、それらの刺激と大量の魔力を吸収したことに伴い自我が再生成される。この瞬間、生き残っていた冒険者の一人であるビスターに対話を行い、契約を提案する。彼がその契約に応えたため、以後は自身の異界より誕生した双子の姉妹をビスターに委ね、同時に彼女たちの裏で世界と人間を観察する状態へと入った。
双子の姉妹は異界での子供であるため、生まれながらに死んでいる。そして自身が吸収した双子座の魔力の残滓を注入しているため、『繋ぎ合わさる者』の能力を継承している。ただし人間レベルにまで双子座の魔力を落とし込んだため、本来の能力以下になってしまっている。
長らくビスターと契約して、ずっと観察を続けていたがエルフの動乱によって人間の醜さを再認識する。と同時にビスターが『死』を選択したため、リブラは『生』を選択することで秤の釣り合いを取らざるを得ず、またビスターの魂と同程度の魂を異界へ引き入れるために八割の魂を要求しシンギングリンと共に多くの人間を異界へと堕とした。
しかしながら、実際に堕とした魂の割合は四割程度。残りの四割は世界からの来訪によって回収する予定であった。これは異界に堕とした者の関係者が自らすすんで異界へと堕ちることを待っていたためである。そのためリブラの罠は人と人との『繋がり』となる。『穴』は常に同じ場所に維持して配置し、『助けを待つ者』と『助け出そうとする者』、『妻』と『夫』あるいはその逆、『会いに行けない者』と『会いに行ける者』といったように分類することで、異界に堕ちた者と異界に堕ちにくる者とで天秤の釣り合いを取ろうとしている。よって、堕とした魂の四割は必ず『繋がり』のある者で、堕ちにきた者は必ず『繋がり』を求めた者である。とはいえ残りの四割が世界から異界へと堕ちてくるかはリブラ自身にも分かってはおらず、自身の本質である『平等』に拘った罠の形となってしまっている。そのために非常に魔力吸収効率が悪く、自らの存在の維持のためにも魂の虜囚に関しても決して奪い返されてはならないという問題を抱えている。
この『繋がり』の罠は双子座を吸収したことによって少なからず罠の形が引っ張られてしまっている。そのため、元来の罠は人と人との繋がりを考えない、あらゆる意味での魂の平等性を貫いた罠である。
リブラの異界においては、当然のことながら異界の主であるリブラの決定は絶対である。朝だと決めれば朝であり、昼であると言えば昼である。夜であれば夜になり、睡眠を求めれば全ての者が眠りに落ちる。この時間の配分はやはり全てがリブラが掌握しており、気分次第で世界での一般的な時間の経過を無視してしまう。睡眠は状態異常判定であるため、状態異常を防ぐ手段があった場合はこの限りではない。
シンギングリン奪還戦において、アレウスに異界のロジックを書き換えられたために多くのまだ生きていた人間とシンギングリンそのものを世界へと放出。それらを奪い返されないために世界へと尖兵を率いて顕現する。
・平等の反撃
リブラは均衡を司る。尖兵が受けた傷は同様の事象を持って人間へと返す。詠唱された魔法は同様の事象を持って人間へと返す。攻撃魔法と回復魔法問わず、また物理攻撃においても必ず平等に痛みを返す。
・平均化される痛み
リブラは世界に現れた際に周囲一帯を自身の魔力で支配する。尖兵であるビスターに降りかかるあらゆる痛み、傷を支配した範囲にいる者たちへと分散して与える。実際に傷を与えられているわけではないが、傷を受けたのと同等の痛みが、ビスターの受けた傷と同じ部位に生じる。簡略して説明するなら『痛み分け』。支配した範囲に存在する者たち全てが平均化された痛みを受ける。その分、傷を受けた側であるビスターは痛みと傷の平均化によって回復する。
・“最悪なる死”
即死魔法。錬金術師である尖兵のビスターが習得している魔法であるため、行使が可能。精神を一時的に輪廻へと飛ばし、死にも等しい苦痛、死すらも忘れてしまう快楽、死んでもいいと思える幸福といった方法で精神が世界に残る魂を輪廻側へと引っ張ることで、肉体に死を与える。屍霊術師は魂を『人』と同程度に扱うが、錬金術師は『物体』として捉えている。この差異が、即死魔法の威力の増減となるが、リブラがビスターの魔法を増幅させているため、恐らくは人間が唱えられる即死魔法以上の効果が広範囲に及ぼされた。しかしながら、この『輪廻』については本当に存在するかどうかは定かではない。
・均衡する魂
戦闘は常において有利不利を引き起こす。しかし、リブラはそれにすら介入し、自身に歯向かう魂に見合った数だけの魔物を異界から呼び出す。歯向かう者の力量に等しいだけの魔物を呼び出すため、実質的に人間よりも魔物の方が圧倒的な数になる。リブラの異界は『物質』の魔物を有するため、ゴーレムや物質と合成されたゴブリン、スライムや果てにはラヴァゴーレムといった非常に『硬い』魔物と戦うことになる。
・知識
冒険者を長らく観察し続けており、更に異界で冒険者を喰ったこともあって、技能や魔法の大半をリブラは知っている。知っているがゆえに反撃ができ、知っているがゆえに対処が可能である。『原初の劫火』や『冷獄の氷』といった継承者の力にも対応可能。異界から世界へと持ち出された物と言う異界獣の主張を裏付けるものかどうかは不明。
ただし、知らないものについては対処が不可能である。ジュリアンの『糸』や、ガラハの妖精の粉を用いた爆発への対処は一切できなかった。特に妖精は異界には存在しないため、ほぼ対処が不可能である。また、『原初の劫火』は知っていても“貸し与えられた力”――『種火』をリブラは知らない。そのため『超越者』の攻撃は半分理解しており、半分理解できていない。よって、軽減はされるが攻撃が通る。
それでも、斬撃や剣戟においては対処が可能であるため、秤を壊されるような一撃を受けることはないはずだが、アレウスとガラハの攻撃は通った。
これは対処可能な力(クルタニカの付与魔法)に対処不可能な力(『種火』の一撃)が混ざったことで相反する力が同時に訪れ、それはリブラの掲げる『平等』の名の下に通さなければならなかった。
ガラハに関しても対処可能な力(アベリアの付与魔法)に対処不可能な力(妖精の粉)が混ざり、やはり『平等』に通す必要があった。
・最期
秤を片側だけ破壊されても、リブラにとって肉体的な損傷はほとんどないに等しい。そこから巻き返すことさえリブラには可能であった。しかし、人間の醜さだけでなく世界があまりにも平等からかけ離れており、それが自身の力だけでは矯正不可能なところまで来ていることに呆れ、絶望し、諦めた。同時に悪足掻きとしてビスターの体を用いて暴れ回ろうとするが、長らく契約していたビスターにすら最期の最期に裏切られてしまったため、やはり人間の醜さに嘆くこととなる。
そんな醜い人間がどれだけ均衡を図ろうとも立ち向かい続けてくる姿に根負けし、こんな醜い世界に留まり続けることを嫌うだけでなく、異界から世界を矯正することすら不可能だろうという判断で、最終的に自らの命を放棄した。その際、象徴である『天秤の意匠が柄に彫られた剣』が世界に残った。
・『平等』
ビスターが語る思想のほとんどはリブラの語る思想に等しい。正しい平等とはありとあらゆる状況、環境、思考といったものが同様でなければ成立しない。すなわち、世界どころか人間もすらも同一個体でなければならない。しかしながら、それでも精神や魂までもを一つにすることはできず、常々に使う側と使われる側、虐げる側と虐げられる側が生じる。どれだけ能力が等しくとも、必ず同列に人間は並ばない。
であれば、人間そのものを『固定』することこそが平等であるとリブラは考えた。全ての人間が等しく同じ時間を繰り返す。『同じ日々の繰り返し』。これであれば富豪はいつまでも富豪だがそれ以上の私腹は肥やせず、貧民も貧しいままだがそれ以上の貧しさに苦しむことはない。全ての者が決められた時間に起き、決められた食事だけを続け、決められた時間に眠る。常に、変わらず、平等に、同じ日々を繰り返す。これをリブラは自身の『平等』の本質だと語った。そして異界であればこれが可能となると主張した。
しかし、当然ながらこの主張は歪んでいる。世界は異界のように同じ食事を摂り続けることはできないし、世界からは食料だけに限らず様々な物が自発的に生産しない限りは消費され続けるだけである。なにより不平等がなければ平等すら語られない世界では通用しない理論である。
*ビスター・カデンツァ
・シンギングリンのギルド長。幼い頃から変わり者と言われ、誰もいないところで話をする、突然、ワケの分からないことを言って泣き出すといった面があり、同世代の子供たちは近寄ろうとしなかった。それを副神官――当時は一介の神官であった彼に才能であると評価されたことで少しずつ自己の能力を認識し、冒険者を目指すことになる。ビスターは誰もいないところに話しかけていたのではなく、霊体や魂と干渉していた、そして霊体や魂に悪口を言われて泣いていた。少年になった頃にその力を少しずつ伸ばし、屍霊術師として登録される。当時はまだ小さなギルドでしかなかったシンギングリンで依頼をこなし、仲間を増やしていき、体術や剣術の習得にも励み、前衛にもなれる後衛職としての役割を担うようになった。
『勇者顕現計画』は帝国からギルドへと通達されたものだが、ビスターは自分こそが『勇者』になるに相応しいと信じて疑わなかった。自身の評価が高すぎることもあったが、実際、当時のシンギングリンではそれなりに名の通った冒険者であったことに変わりはない。また、『勇者顕現計画』は彼のように自分こそが『勇者』に相応しいと思う者たちが集うところであり、自然と彼の周囲にはそういった『勇者』を目指す冒険者が仲間となっていた。
・『勇者顕現計画』において、『教会の祝福』を封じられ、多くの冒険者が犠牲となる。ビスターの仲間たちも例外ではなく、その死に様を、その死に際を見つつもビスターは前に進み、必ず『勇者』になるという強い決意があった。だが、この計画は帝国が提示したものであるにも関わらず頓挫する。帝国が制御下にあると思っていたリブラの暴走によって、思いもよらぬ形で生存者が数名にまで減ってしまった。加えて、帝国首都のギルドが「『勇者』一人を生み出すために、帝国全ての冒険者を犠牲にするつもりか』と訴えたことにより、中断が望ましいという判断になったのだ。
つまりビスターは『勇者』として生きることも、計画の中で死ぬこともできなくなってしまった。死に損ない、生き急ぐこともできなかった彼の精神は少なからず打撃を受けた。そこに暴走したリブラが契約を求めてきたために、憔悴しきった彼はそれに応えてしまうことになる。
ビスターの思想は半分が本人のものであるが、それ以外のほとんどはリブラによって植え付けられたものである。それでもそういった思想が表面上に出ることはなかった。彼は死に損ないこそしたが、自分が『勇者』になれなかったのなら、『勇者』の登場を支えることを目指し、ギルド長へ就任するとシンギングリンのギルドは一気に発展していくこととなる。
・『小さき者』
ビスターは屍霊術師としての技能を応用できないかと常々に考え、『勇者顕現計画』における多くの死を目の当たりにしたことも加えて、魂の研究を始める。死ぬまでその研究が成果を見せることはなかったが、死んでリブラの尖兵として正式に加わったことでようやく大成する。それこそが『小さき者』である。小瓶の中から飛び出した生命体は紛れもなく魂の形を持っており、彼の傷や痛みを肩代わりし、彼に忠実に従ってくれる。ただし、この魂は異界の魂の虜囚をその名の通り材料としており、『小さき者』も元は人間である。
・嫉妬
アレウスの登場はビスターにとって大きな誤算だった。『勇者』とは、神に愛された者として現れるはずである。自分は神を愛してはいたが、神には愛されなかったと諦めていたためだ。『産まれ直し』という存在は『異界渡り』より以前から観測していたが、彼もまた『産まれ直し』であることをビスターは見ただけで看破した。最初の審問において、その直感は正しいと確信を持った。
しかしながら、あまりにもアレウスの成長は著しかった。目に見えた活躍はアベリアの陰に隠れてしまっていたが、ビスターには彼の成長が恐ろしくてたまらなかった。勿論、顔に出さずにはいたが他の冒険者とは一線を画す観察力と向上心は、いつか『勇者』を目指していた自分自身と重ねるようになる。だからこそ嫉妬の感情を抱きつつも彼の成長を喜び、遂に自分たちの時代で世界が動かせると信じていた。それがエルフの動乱に伴い不可能であると知り、不死人の凶爪に自らの生を捨てた。
尖兵となってからのビスターはこらえていた感情の全てを解放し、ありとあらゆる悪意に染まりつつ、自らの狂気を振り撒くこととなる。神を信じていない、愛してもいないのに世界を変える勢いを持つアレウス。神を愛そうともしないのに『産まれ直し』という存在であるアレウス。神を嫌っているのに『原初の劫火』の『超越者』となったアレウス。神を恨んでいるのに、導かれるように才覚を表すアレウス。
それは己が信じていた『神を信じ、愛していれば、必ず神は応えてくれる』ということを完全に否定されていた。それどころか神を愛してもいない、世界を愛してもいない『産まれ直し』という“完全に異世界の存在”にどうしてこうも優秀な力が宿るのか。どうして世界は世界に産まれし者に才能を与えてはくれないのか。彼にとってそれは大きな絶望だった。
・ノック
ビスターにはロジックを開く力はないが、ロジックをノックすることができる。ロジックへの干渉能力の一つだが、書き換える力よりは効果が薄い。ロジックをノックされた人物は一時的に気を失い、動けなくなる。その際に起こった全ての出来事はその人物の記憶には残らない。気絶する時間は抵抗力によって変わるが、それほど強くはなく短くて数秒、長くて一分程度。調子さえ良ければ五分ほどとなる。ビスターはこれを用いて多少無茶な要求も通しており、シンギングリンの発展に一躍かっている。リブラの尖兵となってからは失効。死者はロジックを持たず、関われないことに起因していると見られる。
・位置転換
魔法陣を敷いた地点に自分自身を置き、人間及び対象物に持たせたタリスマンによって位置を入れ替える。タリスマンは護符のような形状をしていなければならないわけではなく、衣服などにビスターが魔力を注ぐだけで成立する。そのため、街長を黙らせるための襲撃においてはヘイロン、シエラやリスティの着ていたドレスにタリスマンが仕込まれていた。これは魂と魂の入れ替えである。肉体は魂に引っ張られるという哲学的、及び錬金術師の基礎知識から成り立つ技能。
尖兵となってからはタリスマンを不要とし、リブラが支配した範囲限定で位置転換が可能となった。しかし、死んでいるために魂を持っていない。魂を持っていないのであれば、別の魂との位置転換は不可能である。そのため、位置転換できる対象が『無機物』に限定されてしまった。
気配の中に自身の気配を潜ませる。気配がない物体にも気配を潜ませることが可能であるため、表面上は気配がなくとも中から突如として現れることができる。アレウスの気配消しの応用で起こすのが残像移動であるなら、こちらは瞬間移動に限りなく近い。『門』の極小版とも言い切れ、魔法ならばテレポートと表現される。
・知らない力
リブラは知らない力に対処ができない。尖兵であるビスターもまた同じであるが、『平等』の力によってある程度の融通が利く。ビスターが習得していない魔法や技能は無効化される……とアレウスは推測したが、それでは赤星がビスターに直撃した理由にはならない。実際は“ビスターを効果範囲に入れていない力は無効化される”のである。赤星は攻撃魔法で、ビスターを対象としていたために無効化されなかった(そもそもリブラが知らない魔法であったことも要因としてある)。
・最期
狂気のままにリブラの尖兵として戦い抜いたビスターであるが、最後の最後の反抗し、やはり自ら死を選ぶ。だがそれは自分本位で、自分勝手な選択である。己が欲望と嫉妬のためだけにシンギングリンとその人々を巻き込み、その多くの魂を愚弄した罪からの逃避を、決して怨霊や呪いは許さなかった。輪廻に還るような真似はさせない、その強い強い怨讐によってビスターはリブラが死んだことで崩壊が始まった異界へと引きずり込まれ、その生涯を終えることとなる。
それでも、リブラという異界獣に観察されながらも自らが目指し、進めてきたことには間違い以上の正しさがあり、現にシンギングリンは彼のおかげでギルドも、そして街も大きく発展した。その功績に嘘も悪意はない。
*双子
『審判女神の眷属』としての姉妹だが、実際にはリブラから双子座の魔力を授けられた偽りの眷属。彼女たちの裁定は常にリブラの秤によって行われていただけであり、断じて『審判女神』によって行われていたわけではない。しかし、その裁定によって生き様を正しい方向に導かれた者もおり、やはりここに悪意も嘘もない。
双子の姉妹であるため、その総数は四人。アイリーンが二人、ジェーンが二人となる。それぞれがリブラの視覚と聴覚を司る。ただし、完全にリブラに屈服、服従しているわけではなく、ある程度の自由意志を持つ。『繋ぎ合わさる者』の別名通り、一人が死ぬほど強くなる。それでも感情が芽生えていたために、最後の一人は聴覚を失い、視覚の半分を失っているリブラには聞こえないだろうという判断でアレウスに多くを語り、戦っているように見せかけて殺される選択を取った。
『聖拳』の冒険者として登録されている二人は常に意気投合しており、感情もほぼ同一。多くの魔法を唱えることこそできないが、悪魔退治においては『双子座』ゆえに意識せずとも『異常震域』への対応が可能であるため、絶大な力を発揮していた。
元から死んでいる。生まれながらに死んでいる。そのため、人の悪意を嫌う以上に人の優しさに弱い。優しい人にはとことん付いて行く。彼女たちにとって、一番最初に優しくしてくれたビスターは特別な存在。死んでいる命に手を差し伸べてくれたその優しさに、異界の怨讐によって輪廻に還れなくなったビスターの魂に触れ、
消滅するそのときまで傍に居続ける選択を取る。
*『指揮』
今回の戦いにおいて活躍した技能。王国出身の者しか保有せず、エルヴァージュとクールクース――新王国の王女の『指揮』は特に効果が高い。天使と呼ばれる者とリスティも有しているが、その効果は決して高いわけではない。
主に神を信じていない者への強化の補正が強く出る。しかし、状態異常耐性などに行う『指揮』は冒険者や一般人を問わず、神を信じる者に対しても一定の効果を有する。神を信じていないアレウスと相性は抜群だが、常に使用者の声が脳内を駆け巡るため、煩わしい。状態異常耐性の『指揮』は即死魔法すら軽減する。ただし、行使のたびになにかしらの力を消費しているため、多用はできず、即死ほどの魔法を軽減すると使用者に多大な負荷が掛かる。




