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異世界で壊す異界のロジック  作者: 夢暮 求
【第8章 -シンギングリン奪還-】
404/705

紐解いて


 ジュリアンが痛覚で訴えかけることで少女は本能的に防御と回避を取る。そこをアニマートが追いかけて杖で殴りにいく。互いに祓魔の術を駆使しているが、祝福を受けている少女は力ずくで跳ね除け、アニマートは『蜜眼』で魔力として吸収する。それでも、祝福によって肉体的な面で強化を受けている少女の方が僅かに押している。

 “束縛”で繋げようにも、そう何度も詠唱を続けることはできない。ジュリアンにも魔力切れはある。そう、器自体はさほど大きくはないのだ。魔力を生成する能力だけが高いために、大半が器の外へと流れてしまう。これを回収する方法をジュリアンは知らない。

 勿論、魔法を使う者としての基礎となる魔力回復の技能は習得しているが、瞑想のように時間を取らなければ微々たるものになる。だが、アニマートと少女は外部から魔力を補給しているように見えるため、ジュリアンが知らないだけでなにかしら方法はあるのだろう。


 一際、大きな鐘の音が響いた。祓魔の術にある“鐘の音”が起こした音色かと思ったが、どちらもそんな初歩の魔法を唱えている様子はなく、アニマートを打ち飛ばした少女が距離を置いてから空を見上げ、なにかを悟ったかのように涙を流す。


「リブラの下僕に成り下がってから、異界でようやく力を取り戻し、巡り合えたというのに……『異端』を街から遠ざけるために離れ離れになるとは」


 踏み締めた地面が割れ、呼吸と同時に放たれた拳は空気を押し出し、波動となってアニマートの真横を掠めた。

「『異端』の力を封じたジェーンが死んだ。これもエルヴァージュ・セルストーの手助けのせいか」

「あの新王国の王女を殺すことだけに全てを賭けている軍人の戯言なら頭に響きはしましたが、あれにいかほどの意味があるんですか?」

 そういえばジュリアンの脳内にもエルヴァの声が届いた。しかし、あれにどんな効果があるのか、いまいち実感がない。指揮を執っただけにしては命じ方が独特だった。

「あれは王国の限られた者のロジックにしか刻まれない『指揮』の技能。神を信じない者たちが連なり、牙となるための力。神を信じない者たちにとっては邪悪な力」

「へぇ、詳しいんですね。ですが、関係ないことを語ったところで何一つとして状況は変わりませんよ」

 アニマートが横眼でジュリアンを見る。

「あなたも、“束縛”の魔法を唱えるたびに自傷行為に走るのはおやめなさい。確かに役立ちますが、神がお与えくださったその体をいたずらに傷付けるものではありませんよ」

 それは信仰心を高く持つ者なら誰もが口走ることだろう。しかし、役に立つ方法がこれしかないのならジュリアンは何度だって自身を傷付ける。杖を持つ手とは逆側の腕は鋭利な石のつぶてで切り裂き続けて、もうボロボロだ。回復魔法を唱えもしたが、元通りになるまでアニマートと少女の戦いが中断されるわけがなく、回復速度を上回る速度で傷付け続けていたために、未だ回復の兆しがない。

 そもそも回復魔法が苦手で、加えて自分で付けた傷だ。他者に傷付けられれば神様は手を差し伸べるが、自傷した者へは冷たい。この二点の理由が回復速度の低下に拍車をかけている。

 それにしても、見ているだけではなくなにかをしろと言ったアニマートから忠告を受けるのは予想外だった。役に立っているのならなにも言われることもないだろうと思っていた。


「許してほしい、もう一人のジェーン。けれど、もう一人の(われ)が死んだことで、我らは“繋がり合う”ことができる」


 気迫には質がある。にわかには信じがたいが少女――ジェーンが発する気迫は先ほどよりずっと重い。色で表現するならどす黒い。清廉潔白にして悪を憎み、罪を許す。、そういった神官が抱え込むべきあらゆる清らかさからかけ離れた色のイメージに、一種の薄気味悪さがあり、ジュリアンは気迫にあてられたのか吐き気に見舞われる。


「今までの我と思うな」

 爆ぜるように跳ねて、アニマートに迫る。ジェーンの動きに合わせてアニマートは動けているが、杖が空振る。捉えたはずのジェーンの姿が消えている。確かにそこにあった気配は陽炎のように立ち消えて、彼女の真後ろへと移っていた。

「残像」

 呟きながら翻るアニマートだったが防御が間に合わず、両腕で繰り出される連打を浴びて地面に沈む。起き上がろうとしたところを踏み付けられ、骨が折れるような耳障りで、聞き心地の悪い音が響く。

「“癒やし続けて(ヒーリング)”」

 肺に残っている空気を出し切る前に、そして肺が潰される前にアニマートは継続回復の魔法を唱える。

「回復魔法を唱えたということは、六枚の障壁は今ので突破が可能なようだ」

 踏み付ける足に尚も力を込める。

「そして、こうして地面と挟み込む形ならば、障壁があろうと関係ないな」


 『盾』や『壁』の魔法は物理や魔法の攻撃を軽減する。場合によっては完全防御まで果たす優秀な補助魔法だ。ただし、現在のアニマートが陥っているような状況においてのみ弱点が露呈する。

 あくまで外部からの衝撃には強いだけで、圧迫には弱い。魔法は奇跡に御業ではないのだ。どれだけ障壁が固くとも重力、物体、その他の力による圧殺には無力となる。


「そして、貴様」

 アニマートを踏み付けたままジェーンが軽く拳を打つ。拳圧を真正面から受け、ジュリアンは腹部を抑え込んでうずくまる。

「貴様の場合は糸を繋げられなければいい。もしくは繋がっている間は傷付けなければいい。こうしてみれば、対処はどちらも容易だ」

 ぶつけられた拳圧が弱かったのは、魔力の糸が自身に繋がっているか否かの判定が未だ曖昧だからだ。ジュリアンは鈍痛に苦しみながら、彼女の弱気な一発の理由をそう推理する。

 だが、それを知ったからどうしろというのか。ここからアニマートを助けに行くのはあまりにも無謀だ。いや、無謀を越えた自殺行為だ。足手纏いになるくらいなら足切り目的で死ぬ覚悟はある。だが、この場合は無駄に命を投げ捨てる行為となる。無策のまま近付けばジェーンに殴り殺され、そののちアニマートが圧死する。それは簡単に想像できる最悪の結末だ。

「ふふ、ふふふふ……ふははは」

 踏み付けられていながらアニマートは笑う。

「なにがおかしい?」

「あなた、『蜜眼』を甘く見過ぎていませんか? 私は見つめるだけで魔力を吸い取れる。触れている魔力も吸収できる。あなたの足は私の背中を踏み締めている。つまり、“あなたは私に触れている”!」

 途端、ジェーンは寒気でも走ったのか全身の毛を逆立たせ、怯えるようにアニマートから離れた。

「まったく、人は踏み付けるものではありません。誰にそんな行儀の悪いことを教わったんですか?」

 なんともなかったかのように彼女は起き上がり、外套の汚れを払う。


 いや、実際になんともなかったのだろう。彼女の継続回復はジュリアンのものと比べれば信じられないほどに高度で、ジェーンが踏み付けたことで生じたあらゆる外部、そして内部の傷は癒やされ続けている。自傷でもないため、回復速度もある。


「継戦能力が高いことは認めるが、所詮は神官と見習い一人。前衛のいない貴様たちのどこに勝機がある?」

「地味に効いていらっしゃいますよね?」

 アニマートはジェーンが左腕をしきりに右手でこするようにして(いた)わっているのを見て指摘する。

「初めはさほど気にしてもいなかったみたいですけど、段々と右の拳から威力が落ちているのが分かりますよ。あの子の糸によって起こる痛覚共有は相手側に限ってのみ蓄積する。しかも、本人もあなたも気付いていらっしゃらずに、魔力の糸で繋げてもらったことすらない私が気付く。面白い話だとは思いませんか?」

「だとして、なぜ我にそれを気付かせる?」

「気付いたところでどうしようもないことだからですよ。だってあの子の魔法は不可避。必ず繋がり、必ず断ち切る動作を入れなければならない。けれどそのたびに痛みが生じ、糸を切ったときに……あなた側に残された魔力の糸が単純に魔力の塊としてあなたの内部に襲い掛かっている。これも最初は大したことではなかったんでしょうけど……ふふふっ、積み上げられていますね。あなたの内部で、徐々に徐々に魔力が練られなくなっている」

「だったら我は奴を殺せばいい」

「だからどうしようもないと言っているじゃありませんか。“即死”。あの子から受ける痛覚共有と魔力の積み重ねをあなたが受けずに殺す方法はそれだけ。それに拘り続けると、どうしても方法は単調なものになる。そして私は、その単調なものについては全て読み切る自信があります。となれば、先に私を殺す方法がある。でも、ここまで戦って実感していらっしゃいますよね? 私は簡単に殺せる相手じゃない。だからって私に構い続けていると彼の魔力の糸が何度もあなたに痛みを、魔力を積み重ねていく。これって、本当に私たちの方が不利に思えますか?」

 杖が地面を打ち、『蜜眼』が怪しく光る。

「詰んでいるんですよ。あなたの弱い弱い脳に分かりやすく説明すれば、左に行けば右に邪魔され、右に行けば左に邪魔される。これって、本当に私たちよりあなたの方が有利な状況でしょうか?」

 事実――とは思えない。アニマートは言葉でジェーンの気持ちを折ろうとしている。そして感情を逆撫でして、小さなミスを誘おうとしている。しかし、本当に彼女の言う通りだとしたら、どうだろうか。

 この戦いの果てに本当に勝ち目があるのなら、ジュリアンはエイラの母親を助けることができる。


「我が詰んでいる。なるほどな、確かに『神愛』の言う通りかもしれない」

 ジェーンの両手に魔力が収束する。

「ならばその勝算を打ち砕く」


「なんだ……なにをする気だ……?」

 威嚇のためだけに魔力を収束させるわけがない。あの魔力は必ず、なにかのために使われる。

「我らは二人で一人、四人で二人。我らの意識は、力は、繋がり合い、やがて一人へと収束する。それこそが『繋ぎ合わさる者』たる我らの力!」

 魔力を両手を重ねることで一つにまとめる。

「我らが信仰をもって、貴様たちを祓い飛ばす!!」


 アニマートがバランスを崩しながらもジュリアンの傍へと走り、杖の先端を地面に叩き付け、それを姿勢維持のために用いながらありったけの魔力を溜め始める。

「私の傍を離れないでください。死にたくなければ、の話ですけどね」


「朽ちて散れ!! “罪滅星(つみほろぼし)”!!」


「祓魔の上位……いや、最上位魔法……?」

 上位や最上位の魔法は行使する者によって発動の体系が変わる。それは各々の魔力が産まれながらにして持っている特性であり、同時にジュリアンの魔力の糸のような個性である。そのため、一概に最上位の魔法だけが他の全ての魔法を凌駕するとは言い切れない。

 詠唱した者の技術が劣るなら最上位は中位の魔法にすら劣り、技術が確固たるものとなっていれば中位の魔法は上位や最上位の魔法すら越えていく。


 ジェーンの放った“罪滅星”という名の魔法は、一見してただ彼女の前方へとゆっくりと放たれた光の玉。ただし、魔の叡智に触れている者ならば誰もがそこに込められている魔力量に恐れおののく。


「あなたの信仰が私たちを焼き切ろうとするのなら、私の信仰はあなたの力が及ぼす痛みを救済しましょう」

 これまでの戦いの中で何度か『蜜眼』は光って見えたが、今この瞬間が一番強く輝いているように見える。

「無駄だ!! 貴様が大詠唱で文字通りの障壁を張れることは知っている。だが、貴様が詠唱を始めたところで我の魔法は貴様に至る!」


「“光よ(リヒト)守護の神となれ(トゥテラリィ)”」

 アニマートの前方に光の玉を跳ね除けようとする分厚い光の障壁が、局所的に張られる。

「馬鹿な……その魔法は大詠唱でしか発動しないはず」

「確かに大詠唱のような結界を形成させることはできませんでしたが、あなたと私たちの間を遮断する壁ぐらいにはなりますよ。魔法の常識は人の生き様と同様、前を歩むことで進化します。そう、着想が私に可能性を与えてくださいました。大詠唱と呼ばれる魔法群、それらを通常の詠唱程度まで抑え込んで発動するとどうなるか。結果は、見てお分かりでしょう?」


 光の玉が光の障壁に触れる直前に、生き物のように大口を開き、その身を崩しながら大量の閃光が針のように散って数千、数万にもなって障壁へと突き立てられていく。


「……驚かされはしたが、所詮は人の手による障壁。我らの魔力には太刀打ちできそうにないな、『神愛』よ」

 障壁にヒビが入り、一部が割れる。

「我らの力に貴様は届かなかった」

 閃光の針が多少の停滞を起こしはしたが、崩した障壁を越える。

「なにを頭ごなしに物事を見ていらっしゃるんですか? この私が、唱えた魔法ですよ?」

 崩した障壁の先に、二つ目の障壁が待ち受けている。

「まさか、あの分厚さは」

 ただ強固にするために分厚く障壁が張られたわけではなく、大詠唱にも近しい魔法の障壁が“六枚”張られたことでの分厚さなのだとジュリアンは気付く。

「アニマート・ハルモニアは“神に愛されている”。彼女の詠唱は一度で六度の詠唱を意味する……」

 彼女がシンギングリンで(うた)われていた言葉を、今度は頭の中ではなく口から零れ落ちさせる。


 ただし、『蜜眼』からは血の涙が流れ出している。当然だ。通常であれば言葉を重ね合わせるようにして成す魔法を、その工程を素っ飛ばして発動している。通常以上に魔力が必要となり、急速に吸い上げられることで器である体が悲鳴を上げる。


「そこで見ているだけでは、困るんですよ。私はあなたの魔法に期待している。あなたの動きに期待している。だから見捨てず、このように守っている」

 二枚目の障壁がジェーンの魔法によって破れる。

「蓄積された痛み……いえ、積み重ねた魔力。どうしてあなたの魔力の糸が不可避で繋がり、彼女の体に留まり続けるのか」

「僕にこの状態で繋げろと言うんですか? それは……」

 とてもではないが難しい。いくら不可避とはいえ、障壁と閃光の針を擦り抜けて糸を繋げられない。たとえ伸ばすことができても、どこかで阻害される。ジュリアンの魔力が二人の魔力に及ばないことで消失が起きてしまう。

「彼女は言っていましたね、『繋ぎ合わさる者』と。私は、あなたの魔力はその逆に位置していると考えています」

「逆……逆?」

「あなたの蓄積された魔力を、あなたがどうするか。彼女の中に残されたあなたの魔力は、ただ彼女の魔力の練成を妨害するためにあるわけではない。ええ、ただ体内で暴れ回るだけではないと、私は思っています」

「爆弾のように破裂させる……?」

「そのような魔法を求めているのなら、きっとそうなるでしょう。ですが、あなたの魔法は“糸”。糸は紡ぎ合わせる以外に、まだ一つ……ある」

 三枚目、四枚目の障壁が崩れる。アニマートが姿勢を崩しかけるが持ちこたえる。

「あなたの生き様が、魔法を昇華させる。『異端』のようになりたいのなら、前に進みなさい。前に進める喜びは、前に進む恐怖に勝る」


 自分の生き様。自分のやってきたこと。自分が見てきたこと。


 見ているだけで失った。見ているだけで失いそうになる。辛うじて、なんとか持ちこたえても、いつだって失う恐怖が感情の裏側にある。

 だからいつだって、見捨てられる心構えをしていた。そうしていた方が、繋がりを断ち切ることができるから。

 けれど、後ろ髪を引かれるような思いが、いつもあって、結局はジェーンが言っていたように“(えにし)”に拘ってしまう。


 ジュリアンは意を決して走り出す。正面へ向かうのではなく、斜め前方――障壁の横側を目指す。正面からの魔法の発動ができないのなら、斜めから狙えばもしかしたら届くかもしれない。


「“束縛せよ”!!」

 杖から魔力の糸が伸び、ジェーンを目指す。

「繋げられたところで、どうにもならないだろうに。痛みと貴様の魔力、その両方があっても我の魔法は揺らがない!」

 五枚目の障壁が破れる。


 ジュリアンが垂れ流している魔力も糸を成し、彼の唱えた糸に複雑に絡み合って、一本の太い糸になってジェーンと繋がる。


「捕らえた」

「言っただろう! 繋がったところで、」

「ずっと、心に残してもらいたがっていた」

 死に様が無駄死にでないことを祈り続けたのも、誰かの心に残りたがっていたからだ。

 自身の糸が相手と不可避で繋がることが、なんとかして相手の心や記憶に自分を刻み込んでもらいたいという感情を表しているとするならば。

 断ち切られても魔力を残すことが、記憶に留めてもらいたい気持ちと連動しているのならば。


「“さよならを(アスタ・ラ)告げる(・ビスタ)”。君は僕の記憶を残さなくていい」


 うねるように魔力の糸が激しく蠢いて、彼女の体から凄まじい勢いで糸が“抜け出て行く”。


「な、んだ……一体、どうなって……いる?!」

 ジェーンの体はジュリアンの糸と繋がった部位から“ほどけていく”。一ヶ所から、二ヶ所、三ヶ所と増えて、彼女の指先が、足先が、腕が、足が、さながら毛糸玉を引っ張ったときのように止め処なく魔力の糸となって流れ出ていく。

「君の中に残っていた僕の魔力ごと、君を紐解いていく」

 しかし毛糸玉がそうであるように、紐解かれていく魔力もまた無限ではない。


「我が……魔力となって、消えて……いく……」

「人間ではありませんから」

 アニマートは最後の障壁に掛けられている閃光の針の力が弱まりつつあるため、声を発する余裕を得る。

「あなたは人間ではないですから。人間なら魔力が空っぽになるだけですけど、あなたという存在は限りなく魔物に近しい。魔物は魔力の残滓。であれば、あなただって体のほぼ全てが魔力に違いありません。体を構成する魔力まで引きずり出されては、なにも残りませんね」

 ジェーンの体はほぼ全てが紐解かれ、残った頭もまた糸によってほどかれて、消えていく。

「ほどけた魔力は糸のまま辺りを舞っているようですが、それほど驚いていらっしゃるということは、再構成は不可能なようです。祓い飛ばせなくて、残念でしたね」

 わざとらしく、消えかかっている少女の嫌がる言葉を発する。


「……死に場所として、ふさわしくない。そのように仰るのでしょうか、ルーファス君や神様は……」

 ジェーンという少女が完全に魔力の糸としてほどかれ切ったのち、アニマートが天を仰ぎながら呟く。

「まぁ……死のうとしても、あの程度の子に殺されるのはちょっと……ってところでした。それに『糸の子』が想像以上の成果を上げてくれたおかげでしょうか。まさか本当に、自分の魔力の始まりに触れられるとは思ってもみませんでしたが」

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