生き写しのようだ
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「アベリアちゃん、夜は外で食べるんだっけ?」
「うん」
「アレウス君には言っておいた?」
「うん」
「……別にどうこう言うつもりはないんだけどねぇ。アベリアちゃん、ちょっとアレウス君に甘えすぎじゃない?」
「甘えてないと思うけど」
「物理的にじゃなくて精神的に、みたいな。口喧嘩をしたいわけでも口論をしたいわけでもないから、落ち着いて聞いてね? アレウス君って、色んなことを我慢して色んなことを許しているところあるでしょ? 節制が身に付いているというか、物事に関しても自分が我慢すればいいことは本当に我慢しちゃう。だから常に謙遜しているっていうか、自画自賛することも少ないっていうか、自己評価が低めでしょ? 褒められ慣れていないのは、そういうところもあるんだよ」
「それは、そうだけど」
「で、あたし思うんだけど、今回の夕食についてもアレウス君はかなぁり我慢していると思う。アベリアちゃんが他の男と食べに行くのを許すって、昔じゃ絶対にあり得ないことでしょ? そこには多分、束縛したくないって気持ちと、アベリアちゃんの交友関係に自分が入って壊してしまいたくないって思いがあるから。なによりアベリアちゃんの成長を考えると、見守るのが正しいと思ってそう。それはきっと物凄く正しいことなんだけど、世の中って正しいとか間違いとかで回ってないじゃない?」
「……アレウスは、私に断って欲しかった?」
「いや、それはそれで自分がなにか言ったからアベリアちゃんは断ったんだと思っちゃうんじゃないかな。一番良いのは、アレウス君がアベリアちゃんに『行かないでほしい』って言えることなんだけどねぇ。そこでアベリアちゃんが行く行かないは措いておいて、気持ちを言うことでアベリアちゃんも気が引き締まるし、アレウス君以外の男に口説かれたってなびかないって強い意志が作られるじゃない?」
「元々、アレウス以外の男の人と物凄く仲良くなるつもりなんてないけど」
「そう思っていても、アベリアちゃんの可愛さとか美しさは世の男性は放っておかないよ。あたしも何度かあったけど、押しが強い人は本当に強い。強引さの塊みたいなところがある。半分、犯罪まがいのことだって平気でやってしまう。男女問わず既成事実さえ作れば、あとはどうにでもなると考える人が実は意外なほど多くいる。だから気を付けてほしい」
「……分かった」
「で、この話がなんでアレウス君の優しさに甘えているかってところに繋がるかなんだけど……アベリアちゃんって基本的にアレウス君は自分から離れないって信じて疑っていないでしょ?」
「うん」
「さっき言ったけど、アレウス君って褒められ慣れていないから物凄く押しに弱いところあるんだよ。強引さにも弱い。心ではアベリアちゃんから離れないって決意していても、口達者な女の子と出会ったら、大変だと思う。リスティと仲が良いのも、しでかしてしまったことを叱ってくれて、果たしたことは褒めてくれるから。認めてくれるのが嬉しいから、アレウス君はビックリするくらいリスティに尻尾を振っているよね。あれくらいならまだなんとかなるけど、あれ以上の人が現れたら、アレウス君が耐えられるかどうか分かんないよ? 略奪愛なんて言葉があるくらいだし……なんならあたしでも、体の接触回数を多くすればアレウス君を篭絡するのは簡単だと思っているくらいだし」
「クラリエやリスティがアレウスを篭絡することについては、私はあんまり嫌とは思ってない」
「え……そうなの?」
「だってそれくらいアレウスが魅力的ってことだから。でも……」
「でも?」
「私は……アレウスの初めてでありたいし、私も初めては……アレウスが……いい」
「……あははっ、そこは心配しなくていいよ。あたしもアベリアちゃんより先にアレウス君を襲おうなんて思ってないから。二人の関係がなかなか進展しないことにヤキモキもしてない。でも、二人にそのときが来たあとはどうか分かんないけどねぇ」
「クラリエも、アレウスとが良いの?」
「まぁ……なんて言うか、そんな感じなのかな。ハーフエルフの宿命だからね……仕方無い。でも、帝国の制度では特例さえ認められれば一夫多妻は許されるからね。あとはアレウス君の倫理観をどう突破するかなんだけど……って、そんな未来の話をしている場合じゃなくて、なんとかしてアレウス君に『行ってほしくない』って言ってもらえるように、夕方までにそういう雰囲気を出すよう頑張ってみるのが大事だと思うかな、あたしは」
*
コロール・ポートのどこかでアレウスはこの女性と会っている。しかし、どこで出会ったかの記憶が定かではない。娼館にいた中の誰かかもしれないが、あの娼館はほとんどの人が崩落に巻き込まれて死んだはずだ。
『鬼哭』と相対した女性だろうか。しかし、あのときに感じた気配よりも小さい。むしろあのときの女性はもっと禍々しく、魔物の気配にも近しいなにかを従えていた。それに比べれば、この女性の気配はもっとずっと健全に感じる。
あのとき、ちゃんと顔を見ることができなかった。そもそもちゃんと顔を見ていたとしても、記憶に残っていたか怪しい。一人の女性の顔を記憶するよりも、状況が激しく切迫していたのだ。それの対処に追われていて、脳の処理が追い付いていなかったのだからコロール・ポートにいた個々人の顔を逐一、憶えているわけがない。
そんなことはどうでもいい。
そう、そんなことはどうでもいいのだ。アレウスの心臓は強く高鳴っている。
どうして、この女性はアレウスが夢の中で見た『神藤リゾラ』に顔立ちが似ているのか。さながら夢の中からそのまま出て来たかのようだ。
「私になんの用?」
「あ、いえ、さっきも言ったように人違いで」
「本当に人違いだった?」
含みを持たせる言い方で、アレウスは更に混乱する。
誰かに夢でも見させられているのだろうか。ここまで瓜二つとなれば、もはや生き写しとしか言いようがない。欠落した記憶の部分を目の前に現れた女性によって補わされたことで一時的に、似通っていると思い込んでしまっているのかもしれない。
アレウスは忘れ去った恋心と、それがどういうわけか再び湧き上がっている薄気味悪さ、その二つの感情に苛まれる。
「僕は、あなたとどこかで会いませんでしたか?」
「……なにそれ? 口説いているの? このままどこかに連れ込みたいとか?」
「違います」
即答しておかなければ、不審者と思われてしまう。
「コロール・ポートで、会っているような気がするんですけど」
「……会ってはいるかもね」
「やっぱり」
「でも、私はあんたのことをちゃんとは知らないし、あんたもあたしのことをちゃんとは知らないんじゃないの? それでよく、声を掛けることができたわね」
「それは、ええっと……なんと言うか、似ているところがありまして」
「誰と?」
「夢の中の、人と」
「…………く、くくくっ、あははははははっ。なにそれ? どんな口説き文句よ」
笑われて当然だ。アレウスは口走ってしまったことに恥ずかしさすら感じてしまう。
「あんまりあたしと関わっちゃ駄目だと思うよ」
一通り笑い終えたのち、女性は言う。
「まぁ、ほぼ初対面の人に声を掛けたんですから、それはその通りだと思うんですけど」
「そうじゃないわ。あたし、到底、まともな生き方をしていないから。あんたが思うほど綺麗じゃなくて汚いし、あんたが思うほど正しくもなくて間違っている」
「それがなにか?」
「なにがって、普通じゃないでしょ?」
「そんなことを言ったら、僕だって普通じゃないしまともじゃない。平坦で平穏で平和な人生を送ることができたなら、僕だってそうしたかった。けれど、産まれてすぐにというわけではないですが、そんな人生を僕は送ることができなかった。つまりなにが言いたいかと言いますと……自分だけを不幸だと思ったら、大間違いだということです」
「へぇ? 今までそういう口説かれ方はしたことがないなぁ」
「別に口説いているわけではなくて、不幸自慢は自分で自分を貶めることなので、相手にどうしても話さなきゃならないとき以外は隠しておいた方がいいという話を……したくて」
「ええ、言いたいことはそこまで説明しなくたって分かっているわよ。だからあんただって私の言ったことを説明させないで分かってくれたらいいのに」
「えっと?」
「口説かれてあげようってこと」
「だから口説いているわけではなくて」
「あんたにその気はなくても、私はあんたをちょっと気に入ったってこと。まぁ、心配しないでいいわ。あんたってアベリアと一緒にいたでしょ?」
「アベリアを知っているんですか?」
もしかしたら、アベリアが異界に堕ちる前の知り合いかもしれない。
「知っているって言っても、冒険者として、ね。割と有名でしょ? アレウリス・ノールードとアベリア・アナリーゼ。ギルドに寄ったら嫌でも耳に入ってくるわ」
「あなたも冒険者?」
「いいえ、私は……シンギングリンには観光で来た……でいいのかな。んー、情報収集でもあるんだけど……個人的に調べておきたいことがあって、来るのは二度目って感じ。まぁ、私のことはいいとして、あなたたちのことを耳にすることは多かったわ。以前まではアベリアの方が有名だったらしいけど、最近だとアレウリスの名前が挙がってからアベリアの名前が出て来るみたいな」
「それは、初耳です」
評価が覆ったのではなく、アベリアと並んで立つことができるくらいには評価されていることを知り、心が躍る。
「私には名乗らせたのに、あんたは知っているだろうからって名乗らない感じ?」
「すみません、不注意でした。アレウリス・ノールード……『アレウス』と呼んでください」
「『アリス』じゃなくて?」
「アリスは、女性のイメージが強くてあまり……」
「そう? 割と男性でも使われていると思うけど」
「僕個人が嫌なので」
「なら仕方無いわね。それじゃ、改めて私も名乗らせてもらうわ。リゾラベート・シンストウ。さっきも言ったように『リゾラ』って呼ばれるわ。よろしく、アレウス」
手を差し出され、アレウスはその手を握ろうとする。
が、触れるか触れないかのところでアレウスの手は止まる。
「どうかした?」
「……いえ、申し訳ありませんが握手は……僕が手汗を掻いているので、嫌な思いをさせてしまうのではないかと」
「私は気にしないけど」
「僕が気にするんで」
アレウスは手を引っ込め、信じられないほどに強く脈打つ心臓を落ち着かせることに努める。
今の手に触れていたら、どうなっていたのだろうか。
握手はできることならしたかった。しかし、手を近付ければ近付けるほどに心臓の鼓動が早まり、生存本能が警鐘を鳴らしたのだ。握手を求められて握手をしないなど、失礼極まりないが、生存本能ばかりは信じる必要がある。疑って掛かれば、場合によっては死が待っているのだから。
「……面白いわ」
「面白い?」
「夢の中の人と似ていたからとか、不幸自慢に対抗してくるとか、握手を拒むとか。あんたが私の予想より真逆のことをしてるのよ。だから面白い。捻くれているとか素直じゃないとか、そんなところかもしれないけど、嫌いじゃない。それじゃアレウス、行きましょうか」
「え、あ、どこに?」
「あんたがしたいこと。私となにがしたい?」
「……買い物」
「買い物?」
「あ、いえ、予定表や伝言ボードを買おうと思っていて」
「ふふっ、今の台詞で『買い物』って答えるのも嫌いじゃないわ。じゃ、あんたのしたいことにちょっとだけ付き合ってあげる」
「別に付き合わせたくて声を掛けたわけではなく」
「いーから、ほら、男が女に誘われているんだからブツブツ言わない」
リゾラの言葉でアレウスは呟きを中断し、彼女を連れて歩き出す。
「それにしても、冒険者らしくない買い物ね」
「そうですか?」
「冒険者って言ったら武器や防具を買うイメージだったけど」
「普段は生活に必要な物を買ったりしますよ」
「そうなんだ?」
「いや、むしろ冒険者って生活用品を買わないイメージがあるんですね」
「超人って感じがする。食事も一週間くらいは摂らずに済みそう」
「それは人間じゃないですよ」
「ああ、そっか。冒険者も人間なんだった」
気付きを得たかのようにリゾラは呟いた。
極々、普通の人たちが抱く冒険者のイメージは彼女のそれとほとんど変わらないのだろうか。もしそうだとしたら、最終防衛として村や街を守れなくとも、人々は冒険者に寄り添ってくれる、というのは幻想に過ぎないのかもしれない。崩壊した村で死体運びをしていた際も、冒険者への非難は強かった。たとえ責任が村人にあったとしても、守れなかったのなら冒険者のせいなのだろう。力不足を認めて謝罪しても、きっと冒険者を許してはくれなくなるのだろう。
たった一度の失敗が、二度と信用を得ることのできない亀裂を作る。失敗の許される世の中なのは、冒険者やギルドの間でのみ成立しているとすれば、あまりにも世間は冷たい。だが、その冷たさについて強く否定もできない。なぜならアレウスだって、知らない人には心の全てを見せはしないのだから。
「リゾラさんは」
「さん付けはしなくていいから。あと敬語も禁止。私は敬われるほど高尚な人間じゃないから」
「え、あ、分かった」
クルタニカにも敬語はやめて欲しいと言われていて、それはなかなか難しく、未だに混同したりしなかったりと曖昧になっているのだが、どういうわけかリゾラに対してはすぐに敬語をやめる気になってしまう。
言葉に呪いでも込められているのだろうか。ならば、夢の中に出て来た女の子に容姿が似ているのも説明が付く。
「今、私のことを危険人物だと思わなかった?」
「思わなかったと言ったら嘘になる」
「そりゃそうよね。女の一人旅なんて怪しまれて当然。でも、気に入った相手を呪ったり魔法をかけたりなんてしないわよ。少なくとも、今日ぐらいは」
「今日ぐらいは、か」
まるでアレウスよりも強いかのような台詞だ。しかし、握手をしようとしたときのあの言いようのない怖気は、確かに強者から放たれる威圧にも近いものだった。
「ええ。明日には敵になっているかもしれない。そういう世の中でしょ?」
「だからって見知った相手とそんなすぐに戦えるほど僕は覚悟ができてない」
「だったら覚悟をしておいた方がいいかもしれないわ。裏切りは常に意識しないと」
「それは同感だ。信じられる相手以外、常に裏切りは考える」
「私はいつも疑心暗鬼だから、仲間を作るのも嫌になったけど、あんたはそうじゃないんだ?」
「最初はそうだったけど、段々と仲間を信じるのも悪くないかと思い始めた」
「冒険者になって変われた、と」
「そう捉えてくれても構わない。でも、冒険者になればなんでもできると思ったらそうじゃなかったから、最初は拍子抜けだったし、ついでに何度も死に掛けた。全部、自分の実力不足のせいで」
「高みを目指すからこそ、無茶をして、苦しい思いをするんでしょ? 私には分からないけど、冒険者は『至高』? を目指すものなんでしょ?」
「それは僕にとっては、通り道だよ」
「通り道?」
「僕は異界を壊したいんだ。物凄く馬鹿みたいな目標だけど、あるときからそうするって決めた。決めたけど、意外と冒険者にも制限が掛かっていて……『至高』に辿り着けば、制限はほとんどなくなる。そうすれば、異界の調査だって自由にできるようになる」
「……『至高』になるってことは、相応に強くなるってことでしょ? あなたにそれだけの実力があるの?」
「今は無い。でもいつかは、その実力を得る。絶対に……異界は壊す」
「そう。あんたにも信念めいたものがあるってことだ?」
「リゾラにも?」
「私はさっきも言ったけど、高尚な人間じゃないわ。でも、高尚な人間じゃなくても、信念を抱いちゃ駄目って理由はないから、常に頭の中にはそればかりが思い浮かんで仕方がない」
「復讐か」
「なんで分かったの?」
「僕も、一部の相手に復讐を果たしたいとずっと願い続けている。そして、そのためにはやっぱり冒険者になることが必要だった」
「……私は、私自身の手で復讐しなきゃならないのよ。そのために各地を渡り歩いて、情報収集をしているわ。その活動にあんたが関わらないって言うなら、もしかしたら敵にならないかもしれないわ。だって、そんなの互いの復讐という目標においては無駄でしょ? だとしても、私は知らない内にあんたの復讐の目標に土足で足を踏み入れるかもしれないし、あんただって私の復讐の邪魔をしてくるかもしれない。なんでも前向きに捉えるのは、最悪の展開が生じたときに困るからやめておいた方がいいわ」
リゾラは微笑んでいるようにも見えたが、同時に復讐すべき相手のことを思い出して憎さを募らせたことで感情を制御できなくなって笑みを浮かべたようにも見えた。
「ともかく、さっきは握手をしなくて正解だったわね」
「やっぱり……」
「こう言っちゃなんだけど私、アベリアのことが嫌いなのよ。なんならアベリアと一緒にいるあんたのことも嫌いだったんだけど話してみたら案外、そうでもなかった。そこだけは信じてほしい」
「アベリアのことが嫌い?」
「多くは語らないわ。これは一方的な嫌悪だから、アベリアに聞いても分かりゃしないわ。だから、あんまり詮索しないで。じゃないと、握手をしなくたって、握手をしたときと同じことがあんたの身に起きるかもしれないから」
「……分かった」
リゾラにはアベリアを嫌悪するだけの理由があるが、その嫌悪以上に復讐したい相手への嫌悪が強い。そっちが片付くまでは手を出さない。そういう意味だとアレウスは受け取る。
ならば、このシンギングリンにいたのも必然なのだろうか。わざと、アレウスに声を掛けてもらえるように動いていたのだろうか。
定かではないが、詮索になるのならまだ訊ねるときではない。
「買い物に付き合ってくれたあとも、また会う機会を持つことはできないか?」
なんとかしてアベリアへの嫌悪を払拭したい。彼女なら分かってくれるのではないかと期待してしまう。
「なに? 私に惚れた?」
「えーあー……違うと言うとあれだし、でも違わないとも言えないし」
「まっ、そんな感じでしょうね。分かっていたから、腹が立ちもしないわ。多分だけど、あんたと話す機会はまたあると思うわ。でもその機会は、私が決める。あんたじゃない」
「僕から接触できる状況にないんだな」
「ええ、それは絶対にない」
やはりリゾラは自信満々に言い切る。強がっているわけでもなく、本当にアレウスより強いのかもしれない。
「それにしても、予定表や伝言ボードを買っている暇、本当にあるの?」
「あると思っているから買いに行くんだけど」
「じゃぁ気付いていないんだ……」
「なにに?」
「エルフの森でなにかが起こっているのよ。ハイエルフが崇拝する神樹の恵みが失われつつあるわ。このままだと、あんたたちが大事にしている『身代わりの人形』すら、効力を失うかもしれない。それぐらい、大きなことが起こっている」
「森と言われたって、エルフは様々な国で森を持っている」
「それらを束ねた大森林地帯があるわ。地理に詳しい人に聞いてみたら? 私は冒険者じゃないから関われないし、『身代わりの人形』なんて使ったことがないからあんまり気にしないけど、あんたたちにとっては大変なことなんじゃない?」
「……ありがとう。あとでギルドの方で確認してみるよ」
だが今は、リゾラとの一時を過ごしていたい。
それが恋とは掛け離れていても、どうしても会いたかった女の子に似ているのだから。




