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異世界で壊す異界のロジック  作者: 夢暮 求
【第7章 -四大血統-】
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坑道を進む

 『蛇の目』があるのは幸運だった。熱源感知のおかげで深くまで洞穴に入らずとも子供がいるかいないかが分かる。合わせて感知の技能によって、見落としていても気配で判断できる。

 坑道の逸れたところにある洞穴は別方向に掘る前に行う地質調査と地盤の確認だ。鉱石に当たるかどうかは掘ってみなければ分からない。だが、少し掘った段階で取れる岩石に鉱石の成分が含有されているかどうかは指標になる。とはいえ、掘り過ぎれば単純に崩落の危機があるために、常に木材での補強を行うために大体の作業は並行して行われ、日が沈む前に坑道から出て、点呼して解散となる。

 懐中時計はまだ昼過ぎを示している。アレウスは食事を摂っているが、子供たちが食べ物を持ち込んでいるかまでは分からない。体力的にも日が沈む前の発見が望ましい。発見さえすれば、脱出が明日になっても構わない。ただし、発見が明日になれば子供の生存の可能性は低下する。

「ただ、子供だって頭が悪いわけじゃない」


 人数に比例して、賢しい子供は紛れ込む。頭の出来不出来で人付き合いを変える年頃なら、まず坑道には入らない。もし入って崩落で出口が塞がれたとしても、奥までは行かずに出来る限り出口に近い場所で待機するはずだ。それができていないのだから、年齢としてはアベリアよりも低く、十歳前後。五、六歳なら親の言い付け通りに坑道には近付きすらしない。


「目を離さないとは限らないけどな」

 実際、子供を狙った犯罪の大抵は親が目を離した隙に行われる。数秒で姿を消すこともあるのだから、怖ろしい話だ。

 だが、今回はそういった犯罪者は関わっていないだろうと、アレウスは痕跡を探りながら考える。足跡に統一性がない。規則正しく歩いているような足跡が一つもないのなら、先導者がいないのだ。子供を狙って坑道に誘い込んだのであればその者の足跡は一回り大きく、道を知っているために崩落があろうと冷静で、子供たちを統率して一定の歩幅を維持し続けるだろう。そういった類は一つも見当たらないので、子供たちだけでの近場での大冒険を考えたことで不運に起こってしまった事故だと分かる。

「往々にして男の子の方がパニックやヒステリーには耐性があるなんて言われるが、思考が早熟しやすいと言われる女の子の方が一時的に冷静に物事を見る視野を持つことだってある。男の子が最初に学ぶのは勇気じゃなくて蛮勇だからな」

 強い者に勝てないと分かっていても挑みかかる。弱くたって強い者に勝ちたいと意固地になる。坑道への冒険を提案したのは男の子だろう。もしも子供たちの中に女の子がいたのなら、よけいに冒険を強行しやすい。


 だって、カッコイイとこを見せたいから。


「でも、マセた女の子はこの事態に呆れてシラケて、右往左往する友達を見て、パニックになるでもヒステリーになるでもない。騒いだってどうにもならないと、目で見て分かってしまうから」

 アレウスがランタンの灯りを少し進んだ先に見えた横穴に向けると、そこでうずくまっている女の子を発見する。

「君は僕の独り言が坑道内で反響して聞こえていたと思うけど、どっち側の子供かな?」


「…………そういう人の心を見透かしたような態度を取るから大人は大っ嫌い!」

 泣き腫らした痕――はなく、横穴から出てきた女の子はアレウスに反抗的な態度を取り、衣服に付いている土埃を丁寧に手で払い落とす。

「何人で来た?」

 反抗的になれるのなら心配は無駄だ。

「六人よ」

「六人?」

「二人は外で居残り。だから、私を抜いたらあと三人」

 平静を装っている。声は震えているし、両足も立っているのがやっとと言ったところだ。虚勢を張りたがっているのかもしれない。

「どっちの方向に行ったとか、」

「分かるわけないでしょ」

「だろうな」

 おやっさんから受け取った古い地図と自身がマッピングしている地図を照らし合わせて、方針を決める。

「君を入り口に連れて行く。岩の隅を掘って隙間ができているから、君なら通り抜けられる」

 一人ずつ確実に救助していくのが望ましい。子供を連れて歩くのはアレウスも体力を使ってしまう。共倒れになるくらいなら、着実な前進を選ぶべきだ。

「嫌」

「外にはギルドの人が待っている」

「嫌」

「別に君が悪いと言っているわけじゃない」

「いーや!!」

「……なるほど、君が悪いのか」

 言い当てられたことに女の子は明らかな動揺を見せ、遂には項垂れた。

「君がこの不運な冒険の提案者か?」

「私、は、悪くない!」

「崩落は君のせいじゃないが、あと三人が坑道内で迷子になっているのは君のせいだ」

 子供にしては珍しく、『君は悪くない』という言葉よりも『君が悪い』という言葉を求めている。責任感が強いのだ。

「提案、したのは私じゃない。私じゃないけど……提案に最初に乗ったのは、私……だから。私が賛成したら、みんな、賛成するしか、ないから」

「提案した子と賛成した君で二人。外で待っている二人を除いて、あとの二人も賛成したってことか」

「それは、私が……行く、って言ったから」

「なんだ? それぐらい男の子に気に入られているのか?」

「は? そんなわけないでしょ。私がなんであんな奴らに好かれたりしなきゃならないのよ。嫌いよ嫌い。でも話は面白そうだったから」

 一々、態度の変容が激しい。子供ながらの喜怒哀楽さだ。真面目に付き合ったところでアレウスが疲れるだけだ。適度に気を抜いていれば、気付いたときには機嫌も元通りになっているだろう。

「探検とか冒険に興味があった?」

 坑道となれば(けわ)しい方の『探険』な気もするが、彼女たちにとっては調査程度の気持ちだったかもしれない。

「でなきゃ来るわけないじゃん」

「話が堂々巡りしてしまうが、なんで君が最初に賛成したら他の子も賛成するようなことになるんだ?」


「……私、貴族だから」


 その一言に気が滅入りそうになった。

「親が爵位持ちか」

「お金で買った爵位だ、って毎日のように嫌がらせされるけど」

「でも貴族は貴族だろ」

「生粋の貴族連中は誰も私たちのことなんて貴族って認めてないけど」

「古くからの血統や貴族の中には腐ってしまっている連中もいる。相手にしたってなんにもいいことはない」

「……お父さんと同じことを言うのね。爵位を買ったのは不動産で大儲けをして、お金が余っていたからよ」

「不動産王か。お金が余っているなんて羨ましいね」

「爵位を買ったのは、貧しい子を救うためだって。貴族という肩書きがないと、耳すら傾けてくれない人が多すぎるからだって」

「だったらお金で爵位を買った父親はなんにも悪いことをしていないな。腐った貴族の代わりに、君の父親が貴族の責務を全うしているんだから」

 地位に対して責任は比例する。その責任を背負い、高貴たる者として正しく振る舞う。それが真に貴族と呼ばれる者たちだ。中には富と名声だけの中身が空っぽな輩もいるのだが、平民であるアレウスたちがそれを指摘することはできないどころか、罪に問われることさえある。道徳観は人に教えてもらうだけでなく、親から学ぶ。親が腐っていれば、その子供もまた腐る。その子供が親になれば、当然ながらその子供もまた道徳観が欠如する。

「なんかムカつく……私よりお父さんのこと知っているみたいな」

 あまり子供扱いせずに接していたのだが、この反応だとどうやら間違っているらしい。


 子供心は分からない。幼少期こそ、誰かと一緒に遊んだ記憶はあるものの、その先はずっと独りぼっちだった上に遊びとは正反対のところで生きていた。


「貴族なら尚のこと坑道から出てほしいんだけどな」

「そんなことしたらお父さんがまたなにか言われるじゃない。私が平民の子たちを見捨てたのは教育がなっていないせいだ、って。そんなことも分かんないの?」

 一々、人の神経を逆撫ですることに長けている。子供に言われると腹が立ってしまうのは、アレウスが大人になり切れていないせいもあるのだが、単純に女の子の言い方の問題もある。年上に敬語を使うように教育されていないのか、と言いたいところだが、父親を尊敬している彼女に対して言ってしまえば、父親を貶していると受け取られてしまって逆効果になってしまう。


 こうやって、会話の合間に分析するような態度を見せるのもあまり良くないのだろうか。


「残り三人がどっちに行ったか分からないか?」

「みんな私より先に行っちゃったから分かんない」

「……君より先か。なら、最初に君を見つけられたのは運が良かった」

 アレウスは地面に木の棒で目印を付けてから、二つの地図を照らし合わせつつ、マッピングしている方にも印を付ける。

「ここまでの分かれ道で、残りの子が逆に行っていた場合、探索する範囲が膨大になるところだった」

 女の子がここにある横穴に身を寄せることになったのは、彼女を置いて三人が先に行ってしまったから。そうなれば、この通路を進めば発見できる。古い地図に既に通過した分かれ道の、アレウスが選択していない方向の通路の全てにバツ印を付けて、見やすくする。

「まず休憩所に向かう」

「休憩所? そんなのあるの? あるならさっさと言ってよ」

「言ったところで、そこに食べ物があるわけじゃないし、椅子や机も劣化していてきっと使い物にはならない」

 この坑道が全盛期として使われていた頃には落盤事故に備えての食料や水もあっただろうがどれも食べられたものではないだろう。とはいえ、ランタンや燃料はあるかもしれない上に通路よりも広く掘られた休憩所では気を落ち着かせやすい。

「地べたに座れっての?」

「さっきまでそうしていただろ」

「それはそうするしかなかったからそうしていただけ!」

 子供の扱い方が一番厄介かもしれない。

「ツルハシも錆びているだろうな……」

 もしそのまま使えても、柄の部分の木が腐っていれば危ない。しかし、幸いなことに柄の替えとなる木の棒は至る所に転がっているのでそれを再利用する手もある。

「三人か……みんな固まって動いていてくれればいいけどな。最悪なのは、君がここで足を止めたことを三人は道に迷ったと勘違いして、離ればなれに探そうとしている場合だ」

「そんなの、私は悪くない」

「声をかけて呼び止めたらよかったじゃないか」

「だって」

「呼び止められる状況じゃなかったんだろ。分かるよ。誰だって暗くて狭いところは進んでいると心細くなって歩けなくなる。声だって出せなくなる。崩落のあとだったし、大きな声を出すと別のところで崩落が起こってしまったら、今度は下敷きになるかもしれない。だけど、ひっそりといなくなられたら……残された側はもっと怖い」


 ランタンの灯りを一度、空気に晒す。火の勢いが弱まる様子はなく、僅かだが揺れている。風の流れがあるらしい。それを確かめてからアレウスは蓋を閉じた。


「一人で救出されたくないなら、付いてくるんだ。でも、疲れたり足を怪我したりして足を止める際は絶対に声をかけろ。迷惑をかけたくないからって黙ったまま、我慢したままでいられるとこっちは使わなくていい気を遣わなきゃならなくなる」

「分かった」

 あれだけ反抗的だったというのに、なぜか今はしおらしい。本当に喜怒哀楽の変化が激しすぎて付き合っていられない。

 もしかしたら自分は子供が嫌いなのかもしれない。そう思いながらアレウスは通路を進む。ああは言ったが、感知の技能で常に女の子の気配は捉えつつ、更には先ほどより歩く速度は抑えた。結局、気を遣ってしまっている。


「あなたはなんで助けに来たの?」

「外の二人に依頼されたから」

「子供に依頼されても仕事をするの? なにそれ、じゃぁお金で『犬になれ』って言われたら犬になるの?」

「あんまり冒険者を馬鹿にはするな。僕じゃなかったら殴られていてもおかしくない」

「私は貴族よ?」

「それがなんだ? 誰も見ていないここじゃ身分は通用しない。君は、ただの人間だ。そして僕だって人間だ。人間が人間に対して腹を立てれば手を出すのは当然の摂理だろ。人のやっている仕事を馬鹿にするのは、冗談であってもやっちゃいけないことだ。君だって、自分のことや自分の両親のことを馬鹿にされたら腹が立つだろう?」

「……御免なさい」

「すぐに謝るんなら言うなよ」

「だって……私の周りは、お金でしか言うことを聞かない人ばっかりしかいないから」

「そんなわけないだろ」

「絶対にそうよ。みんな、私のお金目当て。お金が欲しいから媚びへつらってる。お金で買った爵位って馬鹿にしているクセに、そのお金が欲しくてたまらないって顔している人ばっかり。お父さんが貧しい子を救うためにお金を使っているのだって、結局はお金の力でしょ?」

「……ちゃんと父親の仕事に付き添ったことは?」

「ないけど」

「なら、一度でもいいから付き添った方がいいだろうな。それで君が考えていることの大半は答えが出る。少なくとも、それが正しいのか間違っているのかの答えは絶対に出る」

 あまり子供に『絶対』という言葉は使わない方が良かったかもしれない。そう思いつつも、彼女からはなにか苛立たせてくるような言葉が出ることはなく、アレウスの後ろを静かに付いてくる。なんだかんだで寂しさはあったのだろう。あったのだろうが、指摘はしない。それこそ『絶対』にこちらを苛立たせてくるだろうから。最初からこれぐらい大人しければ、もっと物事はスルスルと進んだ気もしないでもない。


 揺れを感じ、アレウスは女の子の肩を掴んで無理やりその場にしゃがませる。自身も身を屈み、揺れが収まるのを待つ。


「廃坑にしたんなら、入り口もちゃんと塞げばよかったのに」

「塞いで廃坑にしていたんだよ」

「嘘。鍵、掛かってなかったし」

「鍵?」

「入り口……落盤で潰れちゃったけど、鉄格子と扉があって、そこの鍵が掛かってなかった」

「古い坑道だからな。もしかしたら鍵も錆びていたのかもしれない」

 錆び付いている鍵ほどアテにならないものもない。が、そしてシンギングリンは海に面していないために、潮風で錆びやすい環境にはない。

「錆び付いていなかったように見えたけど」

「なら、誰かが意図的に開けていた……? 鍵自体がなかったのか?」

「そこは分かんないわよ。ちゃんと見ていないもの」

 そりゃそうだ。入ってすぐに鉱夫に呼び止められ、そこから落盤によって入り口を塞がれてしまったのだ。ちゃんと見る余裕などこの子にはなかっただろう。

 管理ができていなかった可能性が出てくる。廃坑については鉱夫も割といい加減なところがある。これは外に出たらリスティに伝えておかなければならない。


「他にも坑道はあるんでしょ? なんでこの坑道だけ、こんなに脆いの?」

「土の精霊の加護は全体的に掛かっているんだけど、どうやら鉱石を採掘しすぎるとその加護が弱まっていく傾向にあるらしい。この坑道はそもそも採掘量が少なかったから加護自体も弱かったんだけど、そこを無理して掘り進めたから更に弱まったらしい」

 おやっさんから地図と一緒に貰った資料に書かれていたことだ。

「物を盗られれば、精霊も怒るってこと?」

「もしかしたら、そうなのかもしれない」

 アレウスが土の精霊の加護で憶えているのは墳墓が地下深くに続いているというのに、かなりの大きさで更には墳墓とは呼べないほどの大きな空間を有していたことだ。あれこそ土の精霊の加護が強く施されていた場所だった。恐らくは墳墓作成時に採掘を行っていないことと、墳墓完成後に一切の盗掘行為がなかったことによって成立していたのだろう。


 シンギングリンの坑道は基本的に平坦だ。まず直下に掘って、深さを確保している。そこからすり鉢状に形を整えてから、坑道を作っていくことで坑道内に出来る限りの坂道を作らないようにしている。だからトロッコもスムーズに進みやすい。ただし、進みやすいだけで坂になっているところもある。

 今まさに二人でその坂道を降りて、アレウスは左手に見える通路を選び、ほどなくして広い空間に出る。

「ここが休憩所?」

「だったところだな」

 蜘蛛の巣が張り、麦酒の入っていたタルは中身ごと腐って壊れている。椅子やテーブルも土埃を被り、腐食も進んでいて壊れ掛けている。水の入っていそうなタルは当然のごとく見当たらない。ただし、天井に吊り下げてある縄の老朽化も進んでいるため、リュックに入れていた縄を使って天井の木枠に引っ掛けて、そこにランタンを吊るす。

「紐も余裕がなくなってきたな」

 あと半分ぐらいだろうか。地図の縮尺から考えて、半分と判断したのだがこちら側では正確な長さは分からない。

「これからどうするの?」

「ここに君を残して、僕は奥に行く」

「っ! 冗談じゃない! 私をこんなところに独りぼっちにさせる気?!」

 直後、足元を鼠が駆け抜けて行って女の子が小さな悲鳴を上げる。

「独りぼっちにさせたくはないけど、君はここにいる方が安全だ」

「うるさい! そうやって私のことを除け者にしたいだけでしょ!」

 マセているというより捻くれている。それもアレウスと似た方向での捻くれ方だ。自分より年上をまず信用していないのだ。

「なら付いてくるのか?」

「独りよりはマシ」

「でも、そうなると君は休んでいる暇はないぞ? 他の子を発見できる可能性は時間が経てば経つほど絶望的になるんだ。僕としては日が沈む手前で全員を見つけて、今日はここで夜を過ごして、次の日の朝に脱出することを考えている。でなきゃ、」


 話している内に一際、大きな揺れが襲う。アレウスは女の子をテーブルの下に放り込み、すぐ近くに自身はしゃがむ。吊るしていたランタンが激しく揺れて落下し、中に入っていた油が零れて火の手が上がった。それを見過ごすわけにも行かず、アレウスは揺れている中で火と油に向かって土をかけて埋める。消火によって辺りが暗闇に包まれると同時に揺れも収まった。


 落ちたランタンを探すのではなく、リュックに収納していた予備のランタンに火を灯す。暗闇の中での火起こしは慣れている。『蛇の目』も相まって、過去の異界での生活ほどではない。

 落下して油を零したランタンを回収するが、蓋とガラス部分が壊れてしまっている。直せば使えないこともない。だが、ガラスが割れている以上、安定して火を灯し続けることは難しそうだ。


 女の子はテーブルの下でうずくまっていたが、アレウスのランタンに導かれるかのように這い出してきた。


「今の、大きかった」

「ああ」

 アレウスは自身に結んでいた紐を見る。火で焼き切れてしまっているが、その先を手繰ればそれ以外の問題にも直面する。


 紐に掛かる力が強すぎる。それこそ、なにかに押さえ付けられているかのようだ。進んできた道のどこかで落盤が起こり、紐が潰されてしまっている可能性が高い。


「どうかしたの?」

「なんでもない。さっきの揺れで事情が変わった。ここに残して落盤にでも見舞われたら僕の責任になる。それなら、無理やりにでも付いてきてもらった方がいい」


 なにも伝えず、アレウスは女の子の手を取り立ち上がらせた。

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