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1-1 旅立ちはひっそりとに限るよね

本編のスタートです。

ここからは王子他、登場キャラの名前がバンバン出てきます。

王子視点の他、別キャラ視点を作るための措置です。

 やぁやぁこんにちは。みんな元気かな?いよいよ王都を出発するよ!


 倉庫から借りた収納袋には買い出しで揃えた旅の必需品がすべて入っているし、首元には神殿から借り受けた勇者のペンデュラムがぶら下がってる。もう、準備万端!ってところなのだよ。


 目的は魔王を倒すことで、そこまでの道のりも完全に把握している。なにせ元勇者が魔王城の中までマッピング済みなんだよね。


 なに、このイージーモード(笑)。


 まぁ“封印”ではなく“倒す”を目標にしているし、どうしても手間取るだろうから、そんなのチャラだよね~。


 ボクは防御力やら回復力は∞だけど、攻撃力はほとんど無いと言って良い。それを補う武器や魔法道具は揃えてきたから、まぁ、大丈夫だろう。死なないから何度だってやり直せるしね。


 さてさて、とっとと魔王とご対面するためにも、超短縮で冒険を進めないとね。よ~し、地図地図っと。


「・・・リヒトヴァイス王子」


 背後からの呼びかけ。初出だけれども、それはボクの名前。母上様が父上様と大喧嘩しながら決めたとかいう、なかなかバイオレンスな由来のある、けれど、大事な名前。


 フルで呼ばれるのは久々なので、ボクは一瞬誰のこと?とか思ってしまったりしたんだけれどもね。あはは。大事なんじゃないんかーい、とかいうツッコミは受け付けてません。


 しかし、誰だろね、ボクを呼ぶのは。


 そう考えて振り返った先には、元勇者の姿があった。


「やぁ、元勇者」


 とりあえず挨拶をしてみる。


「・・・あんたが、次の勇者だって」


 なんだかもごもごと言っているけれど、なんだろう?罪悪感か何か?やめるー!ってブチ切れなければ、制度が崩壊しなかった、とかなんとか考えてるんだろうか?


「勇者、ではないねぇ。その制度は崩壊したよ」


「・・・っ」


 あー、当たりかぁ。


 苦しげな表情を浮かべ、ボクにすがるような視線を向けてくる元勇者はイケメンだけに、庇護欲をそそるよねぇ。図体デカくて可愛げのないイケメンだけど、この国の民だからねぇ。


「気にする必要はないよ、全部父上様のせいだし」


「いや、俺が・・・俺が、もっと早く魔王の復活をたくらむ連中を倒せていたら・・・」


 もしもの話は今はいらないとは思うけど・・・彼なりに後悔する部分があるんだろうね。まぁ、元勇者なんて呼びかけちゃったボクも意地悪だったかな?


 元勇者なんて肩書きは今の彼には重すぎるだろうしね。


「レーゲン」


 名前を呼ぶと、彼はハッとして顔をあげる。


「あのね、レーゲン。ボクは王族としてこの国の民を守らなければならないんだ。直接戦いに行かないで守る方法もあるけれど、能力的には直接の方が有効だと思ったから魔王討伐に行くんだよ?」


「・・・王子」


「だいたいさぁ、魔王なんて倒しても倒してもいずれ復活する、とか言われて調子ぶっこいてるだけのただのおバカさんだからさぁ、ボクの加護には勝てないんだよ。ボクの加護は知っているだろう?」


「瀕死になっても決して死なないのと超復活・・・」


 ぼそり、と元勇者改めレーゲンが口にしたのがボクの加護。生まれた時からボクに与えられたそれは、もしかしなくてもこの時の為だったのかもしれないねぇ。


「そうそう。だからぁ、ボクは魔王の攻撃を一切気にすることなく攻撃に集中できるわけだ」


「しかし、攻撃力は・・・」


「うん、どれくらいかかるのかはわからないけど、フルボッコすればいつかは魔王も倒せるさ」


 それしか方法は無いしね。封印なんてまどろっこしいことしてるから、こんなことになるんだろうさ。


 何か言いたげなレーゲンのフォローもしてあげたいところだけれど、これ以上の時間を割けないのも確かだから・・・。


「ねぇ、レーゲン・・・ボクはこれから魔王城に行くけれど、君のおかげで楽な旅ができるんだよ。君のマッピングはとても丁寧だからね」


「!」


 ああ、しょうがないなぁ。


 そんなうるうるした目で見られても困るんだよぅ。


「まぁ、一緒に連れてけないけど、ボクの攻撃が魔王に通るように祈っててよ」


「いや、連れて行ってくれ・・・頼むから、あんたの剣にしてくれ」


 おぉう・・・なんだか色々とめんどくさいぞ?


 レーゲンの真剣な眼差しにどうやって答えたら良いかねぇ?ボクは仲間を引き連れてゾロゾロと魔王退治に行く旧タイプの勇者のまねはしたくないんだけどなぁ。


「うーん・・・気持ちはありがたいけど」


「頼む!!手伝わせてくれ!!」


 わー・・・今、ボク、絶っ対、虚ろな目をしてると思うよ。


 必死なのはわかるけど、めんどくさい。さて、レーゲンをどうやって納得させようか。


 深く頭を下げたまま懇願するレーゲンの背中を見つめながら、ボクは何か良い断り文句が無いもんかなぁ、と天を仰いだ。



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