0-5 勇者神殿からも援助をしてもらった
倉庫から向かったのは、城に付属して作られている勇者神殿。
ボクが行ったところで何の意味もないんだけども、一応、魔王討伐の一切は勇者神殿が管理しているので、旅立ちの報告をしないといけないからねー。
面倒だけど、仕方ないよねぇ。勇者を指定できる唯一の神殿っていう権威を守らなければならないから。実質、その権威は失われてしまったんだけれども。
ボクが魔王を完全に倒してしまったら、存在意義すらも無くなってしまうけれど、ま、いいよね?だって、次の国王はボクだしさ、二重権力とかいらないよね。あはは。
なんてつらつらと取り留めもなく考えていたら、神殿の入り口前に到着する。
雰囲気は神秘的でなかなかいい感じだし、清廉潔白なのは確かだから、積極的に潰さなくてもいいかなー。ほら、いずれ、勇者指名の権威を取り戻せるかもしれないじゃない?
「・・・っ、殿下!お出迎えが遅くなりまして」
あせあせと神殿の奥から神官服をまとった初老の男性が早足でやってくる。神殿の長である神官長である彼は、ボクが幼い頃から神殿に勤めている超エリートなのだ。
「ああ、出迎えなんていいのに。ボクは勇者じゃないしね」
「いえ!たとえ殿下が勇者ではなくとも、魔王討伐に向かわれる方に最大の敬意をもって対応させていただくのは当然のことです!」
・・・超エリートは、超堅物さんなのだが、まぁ、反発している人もいないし、問題なしだね。
「そうかい?・・・それならそれで良いんだけども。ところで、神官長は父上様の思いつきを聞いていたのかな?」
「いえ、寝耳に水で・・・まさか、継嗣である殿下を魔王討伐に向かわせるなんて・・・」
おや、神官長もグルかな、と思ってたんだけどな。
確かに、こうでもしないと母上様や大臣の一部が反対するのはわかりきってるしねぇ。
「死なないから良いんだってさ。そりゃそうだよね、犠牲は絶対出ないんだから、適任だと自分でもそう思うよ」
「・・・殿下」
神官長が神妙な顔でボクを見つめてくる。
ボクは納得しているから良い、それが、神官長には口惜しいのだと思う。勇者を指名するのが神殿の役目だ。それを放棄せざるを得なかったのだから。
「神官長、まぁ、見てなよ。ボクだってやるときはやるんだからさ」
「殿下が優秀なのは存じております。ですが、神殿からも最大限の援助をさせて頂きます」
おや、そこまで責任を感じなくてもいいのにねぇ。でもまぁ、貰えるものは貰っておく主義なので。ありがたく頂いとくことにしようかな。
「どんな援助をしてもらえるのかな?」
「殿下に蘇生薬は無駄と理解しておりますので、是非、こちらを」
そう言って神官長から渡されたのは、きれいな装飾が施されたダウジングペンデュラムだった。
「・・・これは?」
「勇者のペンデュラムです。闇の者を指し示す能力を持っております」
おお、それってかなり便利なのじゃないかな?闇の者っていうのは、とっても狡賢くて、一般の人に紛れていたりするんだよね。
「便利なものをありがとう。残念ながら察知能力が低いから、こういうのがあると助かるよ。・・・勇者にしか貸し出さないものなんじゃないのかい?」
「・・・魔王討伐に行かれるのです。決まりだからと、何もしないのはおかしい」
決まり、か。
結構無理したんじゃなかろうか?
ありがたいよね。神殿って、決まりには厳格だったと思うのだけどね。
「神殿の好意に感謝を」
「・・・殿下、御武運を祈っております」
そうだね、魔王を倒すことが、皆へのお礼になるんだから、頑張ろう。おー!