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0-4 ボクと俺は別人だと言っておく

北海道・東北にて震災被害にあわれた方に心よりお見舞い申し上げます。

 さて、父上様への報復(?)は母上様に任せるとして。そろそろ準備に取りかかることにしよう。


 なにせ、魔王は復活してしまったんだしね。


 っていうかさ、何度も倒してんのに、復活とかめんどくせぇ・・・おっと、お口が悪かった。“俺”が混じったせいか、微妙に性格とか変わったように思うんだよね。いや、メインは“ボク”なんだけども。


 “ボク”の場合、ゲームをやっている時の“俺”の感情やら思考やら記憶やらを思い出しただけのようなんだよね。“思考”だから、ほんのちょっぴりゲーム外の情報もあったりする。


 “俺”の名前であったり、家族であったり、そこらへんの記憶は全く思い出していない。まぁ、必要ないから良いんだけど。・・・ああ、でも、“プレイヤー”としての名前なら覚えている。


 “エンプティ”・・・彼の国の言葉で空っぽというのを、外国の言葉で名付けたらしい。ううん、なんだか、ものすごく鬱屈した人物のようだけれど、“ボク”はどちらかというと陽気な部類の人間なんだな。


 というわけで、使える記憶と使えない記憶をきっちり分けさせてもらっているわけだ。その使える記憶を頼りにやってきたのは、城内の倉庫。


 城内の倉庫とか宝物庫と言えば、ゲームでは勇者がそりゃもう勝手にバカバカと宝箱を開けていろいろ持ってっちゃう場所なんだが、実は武器は城の備品だから、王族や城で勤務している者ならば、貸出届を出せばフツーに借りられたりするんだなー。あはは。


 ま、城(自分の家)で窃盗もなにもないだろ、ってのが本音です。はい。


「おや、殿下」


「やぁ、話は通ってるかな?」


 倉庫番がボクを見つけて声をかけてくる。いや、影薄いっていっても、城内の人たちはちゃんとボクを認識してるよ?うん、たぶん・・・。


 城内では研究所もあるし結構うろついてるもんだから、城内で働く人たちとは面識もあるし、軽く言葉を交わすことだってある。


 この倉庫番には研究関係で結構世話になってるから、遠慮なく話せる関係だし、あっちも敬意を持ってくれているから、口調はともかく態度は恭しい。


「はい、陛下の侍従がつい先程来て指示は受けましたがね・・・本気で殿下が魔王倒しに行かにゃならんのですか?」


「そうだねぇ・・・勇者制度が崩壊してしまったのだから、負けない人間を送り込むってのは当然といえば当然なのかねぇ」


「負けない、というあたりにはまぁ、絶対的な信頼がありますがね」


 そうそう。ボクは死んでも復活する。それも回数制限なく復活するんだから、ある意味魔王よりやっかいだよねぇ。それもこれも加護のおかげなんだけど、もしかして“俺”が転生するときに交渉した結果だったりしてね。


「・・・負けないことと勝つことはイコールじゃないんだけども、まぁ、死なないからこそ色々試せるからねぇ。今度こそ、きっちりと魔王を撃沈させてこないとね」


「はぁ、ま、殿下がそうおっしゃるなら、我々が文句を言える立場じゃないんですがね、皆、心配してるんです、出立する前に顔を見せてやってください」


「うーん、こっそりと出て行こうと思ったんだけどねぇ、大々的に送り出されるのは恥ずかしいじゃないか」


「たまには目立った方がいいんです。影が薄いからって殿下を侮るような愚か者はいやしませんがね、もうちょっと知名度があったっていいでしょうに」


 うーん、ごもっとも!


 目立つのが恥ずかしいからと逃げ回ってきたツケが、影の薄い王子っていう状況となって現れてるわけだし、多少はセレモニー的な何かをやった方が良いのかなぁ、とは思うんだけどね。


 でもなぁ、今回のは魔王討伐でそんなめでたいものじゃないし。ボクが勇者であるならまた違うんだけど。こればっかりはね。


「ま、無事、討伐できたら、ってことで」


 倉庫番はまだ納得してなさそうだったけど、なるべく早く出立したいからってことで言葉を飲み込んでもらった。


「で、何がご入り用で?」


「収納袋(大)を借りたいんだよ」


 ゲームではおなじみの“ふくろ”機能。ファンタジーが現実のこの世界では、収納袋として存在している。これがかなり便利で、極大、大、中、小、とあって、入る量が違うのはもちろん、装飾まで違う。


「極大、じゃなくていいんです?」


「ああ、アレはキンキラキンすぎて、目立つでしょ?」


「ですよね~・・・」


 大ならまだ高級品、って感じなんだけど。極大って、どこの成金!?って感じの、キンキラキンなもんで、ボクは持ち歩きたくない。絶対。


「それに、大で事足りるから。蘇生薬いらないし」


 そう。勇者なら自腹で蘇生薬だけど、こちとら、自分でしかも自動で復活なもんで、一番かさばる蘇生薬がいらないっていうのがいいよね。我ながら便利な能力だ。


「なんで、勇者専用の魔法に、蘇生がないんですかねぇ・・・」


 そんなしみじみと言われてもねぇ、ボクだって知りたいさ。この世界とは別のゲームじゃ、転移魔法や蘇生魔法があって当たり前な感じで“俺”は受け取っていたはずで。


 このゲームにはいちゃもんをつけまくっていたんだよなぁ・・・それでも、キャラメイキングにハマってたみたいで、このゲームから離れることはなかったようだけど。


「それこそ、神のみぞ知るってやつだよねぇ。まぁ、無い物ねだりしても仕方ないからね、とりあえずこれを借りてくよ」


 ボクは収納袋(大)を手に取り、倉庫番に貸出届を出すと、次の目的地に向かった。



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