ゲイルとの接触
どういう訳かゲイルと戦うことになった一行。
村を襲われた借りを返すことができるのか。
戦いが始まる。
♦VS ゲイル♦
青の残像が尾を引きゲイルの剛腕が唸りを上げ、
ボッと重い音を立てて空気が衝かれた。
「オラアアアアッ!喰らいやがれぇぇ!」
放たれた気弾が私の横を通り抜けるとビリっとした衝撃が
襲ってくる。あれは当たるとまずい。そう認識させるのに時間はかからなかった。
打ち出された気弾が、ぬかるんだ地面を抉り取る。
「動くんじゃねぇ!クソ野郎が!」
「止まるわけ無いでしょ!」
思わずそう叫び、当たらないことを祈る。
見てからじゃよけれない。正直よけれない攻撃の部類なのだが、
先からよけれているのは単にゲイルの命中率が低いだけ。
つまり状況的には非常に分が悪いのだ。
「これでも喰らいなさい!」
水のエレメントを取り出して投げつける。
「なんだ?その遅い攻撃は!ギィイッ!」
そういってゲイルは水槍でエレメントを切りつける。
やはり、攻撃にもならないか。
でも、ゲイルはまだ水のエレメントが威力のない攻撃だと
理解していないようだ。律儀に全てよけてくれるので
時間を稼げている。だけど、気がつかれたら
もう逃げるだけになってしまう。
それだけは何とか避けないと。
ゲイルの動きも薄々感づいているような動きになってきている。
間違っても奴に当てるようなことはあってはいけない。
あくまで誘うように避けさせるように投げつけて時間を稼ぐのよ。
「なんで雨なのよ!もうっ!」
文句が口から漏れ出ると同時にゲイルが動く。
「埒が明かねェ、おれさまが直接ひねりつぶしてやる……!」
そう言いながらゲイルが槍を構えて私に向かって突っ込んできた。
「ちょ、ちょっと!?」
まずい。咄嗟に精霊のハンドベルを取り出して水の盾を取り出す。
ギュリンッと音を立てて、ゲイルの槍が受け流される。
あぶない。正面から受けてたらどうなっていたことか。
腕がしびれる程の攻撃。ジャッカローブの時は獣ということもあり
よく見ればパターンが見えたものだけど、こいつは違う。
ほんの少しだけ力を弱めたり早めたりして魚の癖に蛇のような
いやらしい攻撃を仕掛けてくる。
正直ついていけているのが不思議なくらいだ。
「てか、あんたなんでこんな所に居るのよ!私たちが部屋に入ったときは
人の気配何て感じなかったわよ!」
少しでも攻撃の筋が鈍ってくれるようにゲイルに叫ぶ。
答えてくれなくてもいい。攻撃が鈍ってくれればそれでいい。
だが、ゲイルが幸運にも叫ぶように答えた。
「教える訳無ぇだろうがっ!敵に秘密を言うバカがどこにいやがる!」
そこで確信した。やっぱり何か秘密があるらしい。
その秘密がなんなのかはわからないが、それだけで十分な情報だ。
やはりこいつ、どこか抜けている。
魔法でいきなり現れたわけではないということだ。
「なるほどね……」
ぼそりとそう呟きながら攻撃をよける。
しかし、攻撃がだんだんと激しくなっていく。
このままじゃ腕が持たない。足もぬかるんでいて
上手く力を入れられない。
「っく……」
雨が目に入ってうまく前も見えないし
本当に動きづらいわ。
盾を構えながら後ろへと後ずさる。
だが、突然ぐらりと視界が動き、灰色に染まった。
「あ、やばいっ……」
背中に衝撃と湿った泥の感触が伝わってくる。
足を滑らせた……っ!
「まずは一人だ……」
ゲイルの腕が振り上げられる。
「させません!」
ミラがゲイルの腰へ体当たりをする。
しかしゲイルは吹っ飛ぶどころかその場で四股を踏むように
ミラの体当たりを耐えきった。
「なんだその生ぬるい攻撃は?」
「そ、そんな!?」
動揺するミラ。
判断ができなかったのか避けることもかなわず
ゲイルの剛腕によって薙ぎ払われた。
「っぐ……!?」
ミラはそのまま攻撃を食らって洞窟近くの崖へと飛ばされる。
「ミラちゃん!」
すぐに立ち上がって体制を立て直す。
まずい、助けないと……!そう思い近づこうとすると
ルシが動いてくれた。
「ちぃっ!こいつは安全なところに運んでおく!集中しろ!」
ルシがそう叫んでミラのもとへと向かう。
ゲイルはそんなルシを見て動きを止める。
「どうせ後から皆殺しだ」
そう呟いてまたこちらを睨みつけてきた。
息を整えて、ゲイルを見据える。
天候が悪すぎて遠距離攻撃が封印されてしまっている現状
精霊のハンドベルで攻撃するしかないのだけど、
こいつに近接攻撃は危険すぎる。
隙を突こうにもこれと言って隙が見当たらない。
「まずい……このままじゃみんなやられる」
雨でどんどん体力が奪われていくし、
なんとか打開策を考えないと……
完全な感覚からくる予測なのだけど、奴は魚の様な格好をしているし、
水のエレメントに適性があるのだろう。
先からどんどん攻撃力とスピードが上がってきているような気がするのだ。
ミラが吹き飛ばせなかったのはおそらくそのせいだ。
つまりゲイルを倒すにはこの天気を変える必要がある。
今のままでは勝ち目は薄い。
でも、天候を変えるなんて無理に決まってる。
何か強力な攻撃をするしかない。
あたりを見渡す。何か……何か活用できるものは……
直後、小さい岩が崖から落ちてきた。
……あれは。地面がぬかるんで今にも崩れそうな大岩。
……!あれだ!あれを落としてゲイルに直撃させてやる!
水のエレメントを取り出してタイミングを見計らう。
そんな中、ゲイルが吐き捨てるように答えた。
「いや、後からじゃねェ。今からだ。」
ゲイルがにやりとギザギザの歯を見せつけながら
凶器に満ちた瞳で槍を構え叫ぶ。
「うねりやがれ!ゲイボルグ!」
するとゲイボルグが紫色のオーラに包まれた。
「な、何……?」
何が起きるかわからないけど嫌に心臓が飛び跳ねる。
ダメだ……嫌な予感がする。
とんでもない攻撃がくると予測して身構える。
だが、予想と反して奴の槍は空へと放たれた。
その瞬間、とんでもないことが起きた。
ビキンッと聞いたこともないような音を立てて
空間にひびが入ったのだ。
「……!?空間にひびが……!?」
まずい……!何かが起きる……!
直感で集まらないとまずいような気がした。
「ミィケちゃん!こっちにきて!」
水のエレメントを投げ捨て
ミィケの方に向かって走り出す。
「これでお前らも仕舞いだ!一網打尽にしてやる!」
ゲイルはゲイボルグをそのヒビに向かって勢いよく叩きつけた。
とたんにガラスが割れた様にバリンとわれて水がどうどうと
流れ出てきた。そのまま穴がどんどんと大きくなっていき
水の勢いを増していく。
洪水だ。その穴から大量に水があふれ出て来た水が口に入る。
しょっぱい……!これは……海!?
「ギャッギャギャッ!こいつは爽快だぜ!あの黒いドロドロ野郎!
本当にいいものをくれたもんだ!こいつでミナガメ村も制圧してやる!」
「させないわ!そんなこと!」
そういい返す中、私の頭の中で一瞬とある単語が引っかかった。
黒いドロドロ……?
どういうこと……ドロドロってフレイを閉じこめた奴ぐらいしか心当たりがない。
まさか、あいつがあの槍を与えたとでもいうの!?
そう考えた。しかしそんな考えも一瞬のうちに水流で押し流されてしまう。
「バカめ!今のお前に何ができる!そのまま流されて死んでしまえ!」
一瞬で足首までだった水流がみるみる間に腰ほどの高さにまで水位が高くなる。
「しまった……!このままじゃまずいわ!」
「ミラさん達は!?」
「きっと大丈夫よ。ミラとルシでうまくやってるはずよ!」
流されながらも何とか木へしがみつく。
このままじゃみんな流される。冗談じゃない。
あの穴をふさがないと!
「ミィケちゃんもう少し頑張って……!あの穴を何とかふさいでみるわ!」
「え、ええ?……いえ!わかりました!」
水のエレメントを取り出す。
私の予想が正しければ……これで!
大きく開いた異次元の穴に向かってエレメントを投げつけた。
そう水のエレメントは威力が高まるとどんどん冷たくなる
世界樹と戦ったときは冷気が見えるほどだったわ。
これならもしかしたら凍ってくれるかもしれない。
「おねがい……!うまくいって!」
そう祈りながら結果を見守る。
………
……
…
………んん?
ちょっとまって、何か水のエレメントの動きがおかしい。
水のエレメントは水の力を蓄えているのだろうか。
どんどんと冷気を蓄えていきブクブクと大きくなっていく。
いやまって、なんかちょっと予想と違う。
そのまま飛んでいき穴にたどり着き、
かなりの大きさになって
ズブリと穴に押し込む形で止まった。
「……と、止まった……?」
あたりの水がだんだんと引いていく。
「な、なんですかあれ……でも取りあえず止まったようですね……」
ミィケが答える。
……と、取りあえずはこれで安心……よね。
水が引くまで待つしかないというのがつらいところだ。
ミラちゃん達は大丈夫かな……?
そんな不安が募る中、水が引くまで木の上で待つことに。
少し落ち着いて
そういえばゲイルの奴はどこに行ったんだろう?
この濁流の中だ、奴もどこかで休んでいるに違いない。
もしくは……逃げたか。いずれにしろ水が引くまでは油断できない。
そう予想して、ミラ達を探すことにする。
濁流が流れるなか、目を凝らして探すと
ミラとルシが小高い岩の上に乗っているのが見えた。
よかった無事だわ。
「ミラちゃーん!ルシさーん!大丈夫ー!?」
手を振りながら叫ぶとルシが手を振ってくれた。
ミラが起きないところが不安だけどどうやら大丈夫らしい。
「よかった……」
そう呟いて安堵する。
だがすぐに、遠くからルシの声が薄っすら聞こえてきた。
何やらものすごく慌てているようだ。
「ヨケ……ー」
聞こえづらいが何か言っている気がする。
「ヨケロー」
よけ……ろ……?
ん!?避けろ!?
何も考えずに頭を下げる。
突如今まで頭のあったあたりの木の幹が貫かれて
向こうの景色が見えていた。
「いっ……!?」
思わず青ざめて下を見る。
まだ揺らいでいて波が立っている水面からゲイルの顔が出ていた。
「やはり生きていると思って黙っていれば、てめえらしぶとい野郎だな
そのまま黙っていれば楽になれたものを」
ブチンと音が聞こえた気がする。
その言葉でとうとう、私の怒りが頂点に達した。
言葉にならない感情が湧き上がってくる。
今、死にかけたんだという恐怖。
そして、殺されかけたということに対しての怒り。
それらがぐちゃぐちゃに混ざり合って気持ち悪い感情が出来上がっていた。
「許さない……」
エレメントを取り出す。火のエレメントだ。
ゲイルありがとう、一つ疑問が解決したわ。
はっきりわかった。感情が高ぶると私の適性のエレメントに強制上書きされるんだわ。
「最高にクールだわ。ミィケちゃんはそこで見てて」
火だねがいらないこれほどまでに感謝したことはない。
さあ、料理の開始だ。
「ギッギッギッ……火の玉ごときで何ができる!
この辺りは窪地だ。いつまでたっても流れた水はひかねーよ!
お前らはただじわじわと削られるだけだ!ギャハハハハ!」
そういってゲイルは水の中へと姿を隠す。
「……簡単だわ」
火のエレメントを次々と取り出す。
そして、冷静に中くらいのエレメントの塊を作り出してあたりに漂わせた。
「ミィケちゃん」
「は、はいっ!」
「奴の位置、わかるかしら?」
「い、位置ですか?」
「ええ、相手はお魚さんよ?」
どんな顔なのだろう。ミィケの顔が引きつる。
ごめん、抑えられないのよ。
「大丈夫……です。
……私が合図したら指の指す方に!」
「ええ、お願いね」
まるで群で飛ぶ虫のようにエレメントを宙で泳がせる。
その間にもエレメントを取り出して中くらいの塊を作り出していく。
どうどうと水が流れる中、ミィケが集中してゲイルの動きを観察する。
「……捕えました。合図と同時にあのポイントへ」
コクリと頷く。
ミィケの合図を待つ。
静かな時間だ。人生で一番集中している。
そんな中ミィケの腕が振り下ろされた。
「喰らいなさい。ミチオール」
スペルとともに漂う火球がより強く輝き、勢いよく水の中へと入っていく。
ジュウという音が絶え間なく続き次第に水面からは湯気が立ち始めた。
「今日は煮魚かしら」
マシンガンのように止まらない火球。
水面がグラグラと煮立ち上がったころ。とどめの一発だ。
残りの火球を全てまとめてうち放ったそれは池の水を全て蒸発させた。
あたりは結晶化した塩によって白く彩られる。
むわりと水蒸気が上がる中,私たちは木から降りて地面へと降り立つ。
だが、ゲイルの姿はそこにはなかった。
地面を見るとかなり慌てた形跡がみられる。
地面を強く蹴って勢いをつけたのだろう。
蹴った個所がひどくえぐれている。
「っち、逃げられたか」
でも深い痛手は与えられたようだ。
奴のヒレが地面に落ちていた。
結局あいつがここに現れた秘密もわからないし
逃げられるし最悪すぎよ。
ああ、腹が立つ……
むかついたので奴のヒレを蹴り飛ばそうとした。
その時気が付いた。
「……ちょっとまって」
そのえぐれた地面とヒレの落ちていた位置が妙に気になる。
向かっている先が、洞窟の中なのだ。
逃げるのに洞窟の中に?
普通は考えられない。
これから煮魚になる奴が、
みすみす死ぬところにいくわけがない。
「何かがおかしいわ」
急いでミラと合流して中を調べないといけない。
「ミィケちゃん!ミラ達のところへ急ぐわよ!
今すぐ洞窟の中を調べなきゃ!」
「何かあったんですか。わかりました急いで合流しましょう」
急いでミラ達と合流するため、走って取り残されていた小山の方へと向かう。
途中、向こうからも走ってきてくれたらしい。素早く集まることができた。
「ミラちゃん、大丈夫?」
「っ……あまり大丈夫では……すみません少し休ませてください」
「わかったわ、ミラちゃん。助けてくれてありがとう。
あの時は助かったわ。ルシさんミラちゃんを担いで頂戴」
「わかった。」
ルシはそういうとしっかりとミラを背負い
私たちはゆっくりと洞窟へと向かった。
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「こりゃひでぇな……」
ルシが顔を歪ませる。
洞窟の中は以前のおしゃれ空間ではなく
何もかもが泥まみれになっていた。
ミラを壁に寄りかからせるように休ませて、
すぐにたき火を起こすことに。
ただ、全部木が濡れているので火のエレメントを漂わせて
木を乾かしてから火をつけた。
「野郎はどうした。仕留められたか」
ルシが尋ねてくる。
「ダメよ逃げられたわ。」
そう答えるとルシが渋い顔になる。
「じゃあここで休んでる場合じゃねーか。
けが人もいるんだぞ。急いでここを離れないと」
「わかってる、でも今。今すぐに調べたいことがひとつわかったの」
お願い、ルシさんちょっとこの家を探索するのを手伝って!」
「な、なんだってんだ?」
「あいつがここに現れた理由がこの家に隠されてる。ついてきて。
たぶんこっちに秘密があるんだわ」
奥の水飲み場に半ば強引にルシを引き連れていく。
そこですぐに確信した。
思った通りだ。
水面に向かうように水場の縁に奴の足型が出来上がっている。
「ここ、どこかとつながってるみたいよ」
「何っ?」
ルシがまさかという表情を浮かべる。
「奴はここから入ってきたのよ。おそらく奴の……他の拠点とつながってるんだわ」
水場の底をよく目を凝らしてのぞいてみる。
「……良く見えない。でも間違いなくここから入ってきたのよ」
適当にエレメントを取り出してみな底を照らす。
すると奥の方に穴が見えた、やっぱり間違いない。ここから入ってきたんだ。
するとルシが答えた
「おい、ちょっと待て、なんだあれは?」
「えっ?何?」
ルシが指を指すのはみな底だ。
「何かある。ちょっと取ってくるからそこで明かりを照らしてくれ」
そういってルシは上の服を脱いで水場へ飛び込んだ。
「……いきなり脱がないでよ。まったく」
そう呟きながら明かりでみな底を照らしてあげる。
しばらくするとルシが何か細長いものを片手に上がってくるのが見えた。
「おい、これ……あいつが使ってた槍じゃねぇか?」
そういって手渡されたのは錆に錆びたボロボロの槍。
形は確かにあいつが使っていた槍だ。
でもなんだかちょっと形が違う気がする。
「あら……?本当だわ。ルシさん早く上がって。ちょっと確認してみましょう」
そういってミラ達のいる方へ戻る。
戻るとミラ達がたき火で体を温めていた。
少し回復してきたみたいね。
「ミラちゃん。動いて大丈夫?」
「はい、なんとか……ちょっとまだ痛いですが歩ける程度にはなってきました。
ところで、その手に持ってる槍は一体どこで?」
「水場のみな底に刺さってたみたいで、ルシが見つけて取ってきてくれたの」
たき火の光で照らすようにその槍をしっかり調べる。
装飾は流れる水流のように綺麗でどこか神秘的な感じを漂わせている。
ただ、よほど長い間水に遣っていたのか見事に錆ていた。
強度は問題なさそうだし、ちょっと振ってみるか。
そう思って振ってみる事にした。
念のため、ぽっきり折れて飛ばないように人のいない方へ立って
勢いをつけて振ってみる。
ブンッっと音がなる。
すると、槍の先に違和感を感じた。
「ん?なんか変」
例えるなら、鋭いものを柔らかいものに押し付けてながら擦った跡のように
スルリとした軌道が見えるのだ。
「……まさかと思うけど……これただの槍じゃない……?」
もしかして……フレイの言っていたアーティファクト……?
そんなことが頭によぎる。理由はわからない。
なぜかそう思った。
導かれるように精霊のハンドベルを取り出す。
するとシャンッ、シャンッっと音が鳴り響いた。
「……!!」
やっぱりアーティファクトだ。
そう確信した。ゴクリとつばを飲み込み
ハンドベルを振るう。
シャリンという音を立てて現れたのは水の盾ではない。
7つの水のエレメントだ。それが槍の周りへと
囲むように集まって回転を始めた。
すると驚いたことに錆びがボロボロと剥がれ落ちていくではないか。
あっと言う間に綺麗なままの槍に姿を変貌した。
そのまま七つのエレメントが槍へと入り込んでいき
ふわりと浮かんだところで変化が止まった。
「な、なんだそれは!?」
ルシが驚愕の表情で尋ねてくる。
ミラもミィケも言葉を失ったようだ。
当然よね、私も最初はびっくりしたもの。
宙に浮かぶ槍を手に持ってみる。
軽い。槍にしては軽すぎるぐらいだ。
少し大きめの水筒ぐらいの重さしかない。
「これは……イイわね!」
勢いよく槍を横に振るってみる。
「えいっ!」
勢いよくふるうと空間に変化が起きた。
水が出ると同時に、空間が裂け、水があふれ出てきたのだ。
「……へっ?」
間違いなく、ゲイルと同じ槍。そう確信する。
違うのはゲイルの持っていた奴と違い、自然と空間が解けるように混じって元に戻ったところだ。
「こ、これ……どういうこと?」
よくわからない。けど空間を割くことができるって事よね。
そこでふと一つのアイデアが出来上がる。
一度村に戻って母さんと相談だ。もしかしたらこの槍を使って
フレイを助けられるかもしれない。それにどちらにせよ一度村に戻りたい。
ゲイルと鉢合わせて体力を消耗してしまったこのままギーズポグを追ってもいい結果は得られない。
「皆、一度村に戻りましょう。このまま戦いに行っても多分疲れているし一度建て直しをしないと」
「……仕方ねぇな」
ルシが覚悟を決めたように言う。
そのままミラを背負って歩き出した。
「私歩けますよ!」
そう抗議するミラ。だが、ルシは耳を貸さずそのまま歩き出す。
「おい、お前ら早くいくぞ。」
そうルシが答えると後を追うようにミィケがルシについていく。
「面倒見がいいのよね。意外に」
そう呟いて私も後を追い村に戻ることにした。
フレイ、大丈夫かな。と不安になっています。
 




