町へ行こう!
街のセールで買い物しすぎたフーカ。
帰り道で雨に降られたので仕方なくブナの木の下で雨宿りをすることに。
するとそこで謎の生物フレイと出会った。
♦町へ行こう!♦ 改稿回数 1 ☆
「おきた?フレイ?」
私はフレイに声を掛ける。
フレイは寝ぼけて天井を見たりしている。
なんだろう、こうして見ると人形みたいでかわいい。
昨日は結局最後までキャンプをせず雨が止んだ後にフレイを担いで家に戻ってきたのだ。
あのまま外で泊ることもできたけど、フレイのケガの事もあるし早めに家に帰りたかった。
何より食べ物が心配だし。
荷物とフレイを運ぶことになって帰れるか不安になったけど、
料理をしてリュックが多少軽くなったおかげで
どうにか帰ることができたのは幸いだったと思う。
その後、私はフレイをソファーに寝かせて眠ったのだけど……
今日の彼の姿にはどうにもぬぐえない違和感がある。
いいや、違和感というよりも理解はしているけど頭が認めないと言った方が正しい。
「フレイあなたどうして、ケガがなおってるの!?」
どういうことなのかは全くわからない。
だが、昨日のケガは嘘でした!と言わんばかりに
フレイはピンピンしているのだ。
深い切り傷や体のアザもきれいに消えている。
フレイは驚いているわたしの顔を見て察したらしく
ふよふよと浮かびながらこっちに近づいてきた。
「自然から力を借りればすぐ治るが、
昨日はそれすらままならなかったからな。
休ませてもらったおかけで力も出てきたし、
この程度ならすぐに治せる。私は精霊の王だからな」
この程度とはどの程度なのか……
どう見ても治るまでかなり時間がかかるケガだったはずなんだけど?
でも……本人が言うならそうなのかな……?たぶん……。
……というか今、自身の事を王様と言わなかった?
「え?フレイ?あなた王様ってどういうこと?王様ってあの王様?」
「ああそうだ。改めて自己紹介しよう。
私は精霊世界の創造主であり精霊界の王!
マグナ・フレイだ」
信じられない。だけど、なんとなく説得力がある雰囲気だ。
言葉の節々から威厳と言う物がにじみ出ている……様な気がする。
嘘を言っているようにも見えないし、本当に王様なのかも……。
そう思っているとフレイにお礼を言われた。
「まあ、そう固くならないでくれ。今は助けてもらった身だ、感謝する。」
いきなり感謝されると結構恥ずかしい。
「と、当然の事をしただけよ!褒められることはしてないわ!」
私は急に体温が上がるのを感じる。
普段、稼業でやっている風水師はあまりうまく行っておらず、
どちらかと言うとクレームの方が多い。
いつもがそんな感じなので褒められることには慣れていないのだ。
なんとか別の話題に逸らさないと私の気がもたない。
そう思い頭の中をぐるぐるとかき回してみる。
そこで、ふと昨日フレイが話してくれた事を思い出し少し冷静になった。
「……そういえば、あなたこれからどうするの?
昨日も話してくれたけど……元の世界に帰れなくなったんだよね?」
私が訪ねるとフレイは尻尾をだらりと垂らし静かに目を伏せながら落胆する。
「む、うむ、認めたくないが遺跡がこちらにない以上……
帰れなくなったという事だろうな……」
その姿を見て私は居たたまれなくなった。
「うーん、それだったら私の家に住まない?」
「いいのか!?」
フレイが勢いよく顔をあげ私の方を見つめてくる。
助けてしまった手前放っておけないという事もある。
だけど、本音は話相手がほしかっただけだ。最近は人とほぼ話していない。
会話するのは市場で買い物をするときぐらいだ。
そういう生活には慣れてしまったが時々無性におしゃべりがしたくなる。
フレイがいれば話す相手もできるし、それに無駄に家が広いので場所に関しては
一人ぐらい住人が増えても差し支えはない。
「ええ、いいわよ!」
「ありがとう、恩に着る!」
「気にしなくていいわ。それよりも、もう一回街に行って買い物しないとね」
急遽フレイが住むことになったので
今家にある食べ物の量ではフレイの分も考えると少し心もとないのだ。
とりあえずお金は部屋中にコロコロと転がっているお母さんのガラクタを
売り払って工面することにしよう。買ってきてはそこらへんに転がしておくので
たまに売り払わないと床がガラクタだらけになってしまうのだ。
だから勝手にだけどいらない物と判断したら売るようにしている。
いままで文句も言われたこともないし、たぶんこれからも大丈夫。
私は適当に転がっているガラクタをリュックに詰め込んだ。
そしてリュックを担ぎ玄関の前に立ちドアを開けた。
「それじゃあ、街に向かうわよ!」
「私も連れて行ってくれ!」
「もちろん!遊びに来たんでしょ?」
私がそう言うと、フレイはうれしそうに尻尾を振って私の後についてきた。
空元気かもしれないが心の底から喜んでいるように見えた。
どこか子供っぽいけど、やっぱり王様というだけあって、
どうにもならないことを思いつめない性格なようだ。
帰れないなら楽しんだ方が良いに決まってる。
そう思うと私は少しほっとした。
そんなフレイを見て落ち込んでいないことを確認しつつ私たちは街へ向かう。
向かっている途中フレイは街の事が気になったらしく街の事を尋ねてきた。
「なあ、フーカ?今、向かっている街ってどういうところなんだろうか?」
「え、街の事知りたいの?」
「うむ、街に着くまでに少し聞かせてくれないか?」
「いいわよ!えーとね?今、向かっている街はメイタニカと言う街よ。
規模は小さいけど思ったよりも人は多いの。あと畜産業に力を入れているわ
だから牛もヒツジもいっぱいいるのよ。」
「ふむ、畜産か……だとするとチーズや牛乳がたくさん取れるのだろうか。」
「ええ、メイタニカの特産品は何と言っても濃厚な乳製品ね!
オススメはメイターニルってチーズなの!口当たりもよくてクリーミーでね?」
「ほほう!それはおいしそうだな!」
「ああ、私もなんだか食べたくなってきた……よし、ついでに買っておきますか!」
「何、買ってくれるのか!?」
「ついでよついで!」
そんな話をしながら歩いていると、気が付けばいつの間にか街の前についてしまっていた。
やっぱり楽しい話をしながら歩くだけでいつもの長い道のりも短く感じる。
もう少しだけ話ながら歩きたかったなと思いつつ私たちは街に入る事にした。
その時、ふとあるひとつの重大な問題に気が付く。
出合ってすぐ仲良くなったせいで頭から抜けてしまっていたが、
良く考えるとフレイは人ではない。
このまま街に入っても大騒ぎになるのは間違いないのだ。
なんとかフレイに事情を話さないといけないが、街の前にまで来てそれは心苦しい。
でも、事が起きてからでは遅いのだ。絶対に騒ぎになってしまう確信がある。
やっぱり、ここで話しておこう。
そう思い、苦々しい気分になりながらもフレイに事情を説明することにした。
「フ、フレイ……あの、ものすごく言いづらいんだけど……
よく考えたらあなた、街に入れないわ……」
「む、どういうことだ?」
「どういう事って……あなた、ここ当たりじゃ全然見ない姿してるから……騒ぎにならないかしら?」
しかしフレイは意外にも落ち着いている様子だ。
「ん?なんだそんなことか。気にすることは無いぞ!それよりも早く行こう!」
フレイは私にそう言うとズンズンと中へ入って行ってしまう。
「ちょ、ちょっとまって!フレイ!!」
私は慌ててフレイを引き留める。
しかし、フレイは大丈夫だと言わんばかりにどんどん進んでいった。
「おお?なんだかあっちの方がにぎやかで楽しそうだな!フーカ!先に行ってるぞ」
そう言い残し商店街の方へふよふよと飛んで行ってしまったのである。
「フ、フレイ!そっちはダメよ!」
私は急いで商店街へ走る。よりにもよって商店街の方へいくなんて……!
早くしないと大騒ぎになってしまう。そう思い私は急いでフレイの後を追いかける。
「もう、だいぶ手遅れだけど……騒ぎになる前に捕まえなくちゃ……!」
幸い商店街へ続く裏路地の方から入ったので人通りは少ない。
見渡してもぽつりぽつりと人が居る程度だ。
私は見つかっていない事を祈りながら走る。
お願い!空飛ぶ人形ぐらいに思っていてちょうだい!
背中の重いガラクタのせいでうまく走れず息を切らしながら商店街に着くとフレイが私を待っていた。
「おお、遅かったなフーカ」
「お、おそかったなじゃないわよ!ぜー…ぜー…ガラクタが邪魔で走りづらかったんだから……
って、そうじゃないわ!フレイ、早く隠れてよ!大騒ぎになっちゃうじゃない…………?」
私はすぐにフレイに注意をして目のつかないところに避難させようとする。
しかし、そこで周りの様子がおかしい事に気が付いた。
周りが騒がしくない。
私は息を整え冷静になる。周りを見渡すといつも通りの商店街だ。
まったく騒ぎになっていない……それどころか、私が注目を集めてしまっているぐらいだ。
「ど、どういうこと……?なんで……?
フレイ、あなたもしかして私にしか見えていないのかしら……?」
フレイは私の質問に観念したかのように答える。
「あまり言いたくなかったが……
私が心から信頼した人間にしか見えないようになる魔法をかけているのだ」
「な、なんですって?そうなの?」
フレイも人が悪い。魔法を使っているならそうと言ってほしい。
そう思っているとフレイが目を丸くして訪ねてきた。
「気味悪がられると思ってなかなか言い出せずにいたのだが……
フーカは魔法と聞いて驚かないのだな?」
えっ、どういうことかしら?驚くも何も魔法は一般的に使えるものだと思ってたんだけど?
意味が解らない。あっそうか、もしかして精霊の世界とこっちの世界じゃ常識がちがうのかも?
そう思い私はフレイに魔法は一般的な物になったと軽く説明してあげる。
そういうとフレイが驚愕する。
「何っ!?どういうことだ!?魔女や精霊でなくても魔法が使えるというのか!?」
「ええ、そうよ」
「昔は魔法と聞いただけで皆、気味悪がっていたというのに……どういうことだ?」
フレイは不思議そうに頭をかしげた。
そのフレイの言葉で私は思い出した。
そう言えば、何となく記憶にある。
お母さんが、昔は魔女と言うだけで気味悪がれた時代があって
森の奥に隠れて魔法の研究をしていたとぼやいていた。
でもそんな話500年前の話。いまや歴史の教科書に載るレベルだ。
フレイが前に遊びに来たというのは、はるか昔の事らしい。
「なるほどね。心配しなくていいわ。そんな時代はもう来ないわよ。
なにせみんなが使えるんですもの」
フレイはまだ納得ができないのか私に尋ねる。
「しかし、普通の人は魔法が使えないはずでは?」
「エーテルを吸収できる食べ物が見つかったの。
だから魔力が無い人も魔法が使えるようになったのよ。
まあもともと本物の魔法使いもいるんだけどね?うちのお母さんとか。
火を出したり、水を出したり便利になったものよね……」
「じ、時代は変わったな……。まさか、一般的になるとは……」
「まあ、詳しい話はまた今度してあげるわ。
とりあえずこのガラクタをお金に換えてくるからここで待ってて」
「う、うむ。わかった。」
昔の事を思い出し思いふけるフレイにそう言い残し私は古物商へ向かう。
古物商へ着くと私は左側リュックのガラクタを取り出し店へ売り払った。
すると珍しくいつもより高値で買ってくれたので少しお金に余裕ができた。
「思ったよりも高く売れて助かったわ。これなら少し遊びに行けそうね……。
フレイにどこか行きたいところでも聞いてみようかしら?」
私はそう決め、フレイのところに戻ることにする。
「お待たせ!思ったより高く売れて余裕ができたからどこか遊びに行かない?」
「おお!それはいいな」
フレイは尻尾をぶんぶんさせて喜んでいる。
「それじゃあ、決まり!えーと、まずはあっちからね。
この先にメイターニルが売ってるわ。パンにはさんで出してくれるのよ
さっそく行きましょう!」
私たちは人ごみをかき分けてそのおいしいチーズ屋に向かった。
「はい、いらっしゃいませ!」
「あ、お兄さん?メイターニルを二つください!」
「はい!わかりました!あれ?でも、おひとり様のようですが?」
「あっ、それは……前に食べた時においしいと思ったから二つ食べたくて……?」
「ああ、そうなんですか!ありがとうございます!
そういうことならサービスしてこれも付けちゃいますよ!」
そういうと店員はワッフルクッキーも一緒にくれた。
やった!儲かっちゃった!あとでこれもフレイと一緒に食べよう。
「わあ!ありがとうございます!」
「いえいえ、また是非うちに来てください!お願いしますよ!」
私は手を振りながらその場を後にした。
先の合流したところまで歩く。
そして、人の目が無くなったのを見計らってフレイにチーズサンドを手渡した。
フレイは他人には見えないから少し考えて行動しないと色々まずいからだ。
丁度ベンチもあるし座って食べよう。
そう思いベンチに座る。
「はい、フレイ」
「おお、すまないな」
フレイはしげしげとチーズサンドを見た後パクリと一口食べた。
「うむ、これはなかなかおいしいな!甘くてクリーミーだ!
それにこのパンと言うのサクサク感もチーズという物に合うな!」
そう言うとフレイは残りも一気にパクパクと食べきった。
「うん、やっぱりここのチーズは美味しいわね!お腹も膨れたし次はどこに行きたい?」
「ふむ……では、そこの店に行ってみたいのだが」
フレイが指を指した店の看板を見ると
”的中率100%””絶対当たる!超占い!”と書かれている。
あからさまに怪しすぎるのだが……。
「えーと……怪しすぎない?というかフレイって占いに興味あるの?」
「いや、全くない。だが面白そうではないか!」
「ふーん……それでいいなら別にいいけど……こっちの小道を抜けた先みたいね」
私たちは看板の案内にしたがって建物の間の細い小道へ入っていく。
しばらくすると見た通りの占い屋という感じの店が見えてくる。
群青色の星空の様な小さなテントだ。
ここの主人はきっと形から入るタイプなのだろう。
八角鏡やら曼荼羅やら星座を模したオブジェなどそれっぽい物ばかりだ。
……が、まとまりがなさ過ぎてやっぱり胡散臭い。
「ここっぽいけど……」
「うむ、見事に……という感じだな……」
「とりあえず入ってみましょうか、ここまで来たんだし」
私たちは、胡散臭いとおもいつつ好奇心に駆られ中に入ってみることにした。
中に入るとお香が焚かれ紫の煙が立ち込めており、水晶は怪しく光っている。
そして、占い台の向こうには黒髪の女が座っていた。
「いらっしゃい」と声をかけられた。
黒髪の女は私を見る。
「あなた、名前は?」
「私はフーカ、よろしくね。こっちはフレイって……
あ、そうか見えないんだっけ……」
「……?どうかしたのかしら?」
「いえ、なんでもないわ。気にしないで」
「そう?何でもないならいいけど……」
黒髪の女は不思議そうにこちらを見る。
女は一呼吸ほど、間を開けた後、私に質問してくる。
「あなた、もしかして精霊とかに憑かれてない?」
「!?……」
憑かれているわけではないけど、私はフレイの事だと思い一瞬驚いてしまう。
「ふーん、図星ね。そこにフレイさんが居るってことか……」
「あ、あなた?一体何者なの……?」
フレイは他人には見えない。
この女の人も確かに、見えていないはずなのだ。
もし見えているならこんなに変わった風貌のフレイに驚かない訳がない。
この人は見えていなくても、フレイの存在を認識しているのだ。
「大丈夫よ、そんな真剣な顔をしないで?何もしないわ。
ただ、そこにいるのね?って聞いただけよ」
黒髪の女はクスクス笑いながら自己紹介してくれた。
「私は、ティル、天気予報士よ」
「……?あれ……?天気予報士?占い師じゃないの?」
「ふふ、それ、みんなに言われるわ。占い師は趣味なのよね」
「趣味!?」
「ええ、でも最近はこっちの方がもうかってるから
こっちが本業なのかしら?私もよくわからないんだけど。
それで、今日は占いと天気予報、どっちかしら?」
「そ、それじゃあ……占いの方でお願いするわ」
まさか、あんなにでかでかと看板に書かれていたのに趣味だとは思わなかった。
普通ならここで引き返しても良い所なのだが
実力もあるし、なにより面白そうなのでそのまま占ってもらう事にしよう。
「わかったわ!それじゃあ、ちょっとまっててもらえるかしら?」
そう言うと占い師は店の奥へ行ってしまう。
待っている間は暇なのでなぜ私だけがフレイに見えるのかフレイに聞いてみることにした。
なぜ、一番初めに出合った時になぜ私はフレイを見つけることができたのか?
そもそも、心を許すということはそれなりに信頼されないと見えないという事なのだけど。
始めた合った私に心を許すなんてことはあり得ない。さすがに疑問に思っていたのだ。
フレイもわかるかどうか怪しいところだけども。ただ待つよりは幾分かマシかな。
「ねえ、フレイ。なんで私にはフレイが見えているのかしら?
フレイの魔法は、私にも例外なく効果が出るはずなのよね?」
「……そのはずなんだがな。実は私も良くわかっていないのだ」
フレイはそういうと顎に手を当て考え始める。
そして呟くように答えた。
「何故かフーカは私を私をみつけ看病してくれた。
普通は声さえ聞こえないというのにだ。
……つまり、フーカは精霊を見る才能があるんだろう。
稀に居るんだよ精霊と親和性が高い人間が」
「ふーん……」
その話を聞いて私は少しうれしくなり、顔をにやけさせる。
なんとなく才能があると言われるとうれしい。良くわからない才能だけども。
そう思っているとティルが奥から帰ってくる。どうやら占いの準備ができたようだ。
「おまたせ!今から占いを始めるわ!」
そういって彼女が取り出したものは星が描かれたトランプだ。
ティルはトランプを裏側にしてテーブルに並べておもむろにひっくり返していく。
まるで神経衰弱……いや、どうみてもそれである。
そして5回ほど真剣衰弱を行い揃ったカードの片方を
集めてカードをシャッフルする。
その後、ババ抜きのように裏面を扇状にして私に見せてきた。
「ここから引いてちょうだい」と彼女は言う。
胡散臭すぎるがこれが占いらしい、それに星占術が全くと言っていいほど関係ないじゃない。
関係ありそうなのは星柄のトランプだけだな。
そう思いつつ、私は言われるがままカードを引いてみる。
引いたカードはダイヤの7。
「7ね、あんたになにか良いこと起ころうとしてるね。
ただあんたが思ういい事というわけでもないよ。それが世の中さ」
世間一般的な占い師は結果が良ければ褒めちぎるのがお約束だけど、
この占い師は結果だけをすっぱり言うタイプみたいだ。
占いの結果はラッキーセブンだったしよかったということで!
「ありがとう!なかなか面白かったわ!また来るわね!」
「ええ!またいらっしゃい!」
少しウキウキ気分でテントを潜り外に出る。
すると外に出た途端、何かが顔に張り付いて急に視界が真っ暗になった。
「うわっ!?何!何が起きたの!」
あわてて顔に張り付いた何かを引きはがす。どうやら号外の新聞が顔に飛んできたようだ。
ムッとしつつ新聞に目をやると気になる記事が書かれていた。
【号外! 先ほど街はずれの草原に突如現れた巨大な遺跡!
見たこともない文明の跡があり大きな発見が期待される。
近いうちに地域の調査団が調査を開始する模様。】と書かれている。
本当に急いで発行したらしく文字だけの簡単な記事だ。
そういえば遺跡が何とかとフレイが言っていた気がするような……?
「フレイ?なんだか遺跡が急に出てきたとか新聞に書かれているんだけど?」
「何?遺跡?いや、遺跡は完全に消えたはず……。
……いや!まて!遺跡の気配を感じる!?どういうことだ!?
完全に消えたと思っていたのに!やった!これで帰れる希望が出てきたぞ!」
どうやら、このいきなり出てきたという遺跡は本当にフレイの物らしい。
なぜ、急に出てきたのかはわからないけど、本当に良かった。
「よかったわねフレイ!ところで遺跡に行けばすぐに帰れるのかしら?」
すると、フレイは喜んでいた顔を少し曇らせながら答えてくれた。
「いや、私が元の世界に帰るには最下層まで行って
帰還の儀式を誰かに手伝ってもらわねばならんのだ。
昔はこちら側にも精霊が沢山いて簡単に手伝ってもらう事が出来たのだが、
今や周りに私以外の力を感じることが少ない。
こちらに来る前は手伝ってもらえれば帰れると安易に考えていたのだが
……まさかこんなに居なくなっているとはな……」
そこまで言うとフレイは改めて私の方を向き直し深々と頭を下げてくる。
「そこでだ!頼む!私と一緒に最下層までついてきてくれないか!もちろんお礼はする!」
「ええ!?いきなりそんなことを言われても……」
どうしよう、遺跡って危険よね……?しかも最下層。絶対危ない。
さすがに私でも進んで危険な所には行きたくないわ。
「フレイ、うちに泊まるぐらいならいいけどさすがに遺跡はちょっと……
しかも最下層ってかなり無理があるわよ」
しかしフレイも食い下がる。
「私が帰れたら願いを一つかなえてあげよう。だから頼む!」
私はその一言に耳を疑う。
願いを叶える?どういう事だろう。口から出まかせを言うにしては幼稚すぎる。
それにこの状況でそんなことは普通言わないと思う。念のために聞いてみよう。
「えっと……願いを叶えてくれるってどういうこと?」
「そのままの意味だ。私は精霊の王だ!
自然の掟に背くことでなければほぼなんでもできるが?」
……願いを叶える。その言葉が私の好奇心をくすぐる。
正直半信半疑な部分はまだあるけど、
死ぬ直前のケガを治して次の日に動き回っているところを
見るとまんざら嘘ではないかもしれない。
「おもしろそうね!よし、わかったわ!その話に乗った!
でも願いを叶えるってのが嘘だったら承知しないわよ!」
「ありがとう。絶対約束は守る。必ずだ!」
「よし、そうと決まれば!さっそく家に帰って準備をするわよ!」
こうして私たちは意気揚々と街を出たのだった。
願いを叶えるという展開大好き!