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第五話 ―リガロ・アルソードの魔物退治

 レベル2に到達してから半年が経った。父親に強引にレベル2にされたのが七歳の誕生日の次の日だったからまだ私は七歳児である。日本で言うところの小学校二年生程度だ。

 さて、現在の状況を整理しよう。まず、ここはレベル2になったから立ち入りを許された魔物の出る森であり一般人が来るべき場所ではない。そして、レベル3以上に分類される魔物が出現する場所でもない。新米冒険者御用達の場所なのだ。


 だが、現在目の前にはボーンナイトバーサーカーと言われる魔物がいる。ボーンナイトバーサーカーは重鎧と巨大な剣、大盾まで持つ強力な魔物だ。重鎧はまさに鉄壁、巨剣は岩をも砕き大盾は不落の城塞と賞される魔物である。レベル3上級の格を持つ魔物で、これはレベル4に分類されるドラゴン一歩手前の強さである。


 あろうことか、私の後ろには少女がいる。大方、薬草でも取りに来たところを襲われでもしたのだろうそれを、間に割って入って助けたからこんなことになっている。しかも、足を怪我している。私が割り込んだ時かなり無理矢理だったもので捻ってしまったのだ。自ら退路を絶った形だ。愚策の極みだと思う。だが、私が彼女を見かけた時にはすでにボーンナイトバーサーカーの剣が少女を切り裂かんとしていたのだ彼女は許してくれるだろう。許してもらうためにも、突き飛ばしたことを謝るためにも今は生きて帰らなくてはいけない。謝るためにも守り通さなくてはいけない。


「ちょっと待っててね、できるなら逃げてもいいよ。」


 強がって見せたが怖いものは怖い。あんなに大きな剣を受ければ間違いなく死ぬ。


「ひっ……ッ!」


 私の後ろで少女が小さな悲鳴を漏らしすすり泣き始める。頼むから怖いなどと言わないでくれ私だって怖い。だけど、ここで逃げたら間違いなくこの子は死ぬ。まだ若いじゃないか、七歳か六歳か……。そういえば、私もまだ七歳だったな。


 勝にせよ負けるにせよ先手必勝だ。


「回れ、巡れ、我が力。迷い迷いて言霊を待つ。」


 これはオリジナルの魔法だ。いや、魔法というにはかなりお粗末だが私が考案した防御魔法の最初のピース。体内に循環させた変換準備済みの魔力を任意のタイミングで魔法に変換する。変換先の魔法はフォース、ただ圧力をかけ吹き飛ばす魔法だ。つまり、攻撃を吹き飛ばすための準備だ。


 さて、ディフェンスが整ったから今度はオフェンスだ。盾のことも考えて貫通力が必要。プラズマなら大概の物質は貫けるはずだ。となれば自ずと使う魔法は決まっている。


「レイ!」


 指先から放たれる青白いプラズマは問題なくボーンナイトバーサーカーの装甲を貫通した……。かに思えた。


 実際は命中する前に大盾に弾かれた。レイが大盾に着弾する瞬間盾が青白く光った気がする。


 次の瞬間。私の魔法を受け止めた盾が眼前まで迫ってくる。相当な勢いだ。シールドバッシュで私の体制を崩そうとしているのだろう。間合いがギリギリだ。当たるか当たらないかのギリギリの間合いでおそらく吹き飛ばされるほどの威力はない。これが計算だとしたら次がある。本命の攻撃が、間違っても受けるわけにはいかない。


「フォース・エクスプロージョン!」


 広範囲、しかも圧力に特化したこの魔法はその圧力の総量だけなら全魔法中最強である。念のために暗記していた魔法の一つだ。盾を持った相手の盾を吹き飛ばすことを想定したこの魔法、つまり今にもってこいだ。

 盾は吹き飛ばした。だが、予想通り次の攻撃が来た。盾を弾かれる勢いを利用した大剣の重い一撃だ。だが、予想はしてた対処はできる。


「グレーターフォースバレット!」


 フォース系最上位魔法。効果はフォースバレットをそのまま何十倍にも許可したものだ。面積あたりの圧力が最強の中級上位魔法である。少しでも反応を早めるため体内に循環させていた魔力を消費したため、循環魔力のほとんどが消費される。

 まずいな、早く決着をつけてしまわないと。


 しかし、そう思う私とは裏腹にボーンナイトバーサーカーはケタケタと笑い出した。カラカラと嫌な音がなる。だが、今が防御を整え直すチャンスだ。


「回れ、巡れ、我が力。迷い迷いて言霊を待つ。」


 二度目の詠唱、先ほどの分の残りと合わせて魔力量は少し多い。


「ウオオオオォォォォ!」


 雄叫びだ。ここからが本番というわけか。本気ですらなかったとは驚きだ。殺されるかもしれないな……。それでも引くわけには行かない。


「応えよ、古き魔女の魂。我、求は無限の英知なり。」

『オッケー、いっちょやったるよ!』


 リーゼロッテの魔導書、その内部にあるリーゼロッテ本人と思考を一時的に共有するこの本の専用魔法だ。本来なら超常クラスの魔法だが、これには仕掛けがある。リーゼロッテ本人が手伝えは難易度、消費魔力共に格段に下がり上級極限魔法レベルまで難易度が低下する。おかげでようやく使えるのがこの魔法だ。ただし、効果は驚くほど絶大だ。一時的にではあるのだが、魔法のすべてを知っているリーゼロッテと思考を共有するのだ。当然、全魔法が使えるようになる。


 直後、ボーンナイトバーサーカーが剣を大雑把に横薙ぎに振ってくる。ひどく遅い。


「グレーターフォースバレット!」


 弾いた、だがすぐに盾が迫る。先程までとは比べ物にならないパワーが有る。それに、今回のシールドバッシュは私をひき肉に変えるだけの力を持っている。その上で、次の攻撃まで用意してあるのが見える。正直、もう、帰りたい。


「フォース・リモート!」


 遠隔でフォースを発生させる魔法。発生場所は自分の背後、対象は自分自身。つまり、自分自身を前に吹き飛ばすためにこの魔法を使う。根本なら殺傷能力もなく、そして、弾ける可能性もある。また、完全なゼロ距離こそ魔術師の独壇場だ。物理的な攻撃には必ず予備動作が必要で、その予備動作すら殺してしまうこの距離なら物理攻撃の有効性は極限まで落ちる。万が一、絞め技を食らった状態からでも魔法は発動できる。それこそ、接撃で威力だけに特化した使い勝手最悪の魔法もその距離なら使えるのだ。


「ゼロレンジ・マナフルバースト!」


 これがその使い勝手の悪い魔法の代表例だ。効果は相手に自分の魔力をすべて押し付け体内の魔力を飽和させてから一気に爆発の力に変える。必ず素手で触れないと発動しないことと、発動した後魔力が空になるなるためその場で強制的に気絶させられてしまうこと。また、完全に魔力が回復するまで魔法が使えないこと。まだある、余波で洒落にならないダメージを負うことだ。一種の禁じ手だ。


 私の魔力は膨大だ、その魔力が一度に爆発するのだ。洒落にならないですら生易しい表現だ。巨大な大爆発、それを防御用に体内を循環させていた魔力で上下に逃がす。それでも、私はかなりの余波を喰らい大やけどを負いながら吹き飛ばされた。もう、二度と使いたくない魔法の一つだな。


 そう、思いながら気を失った。


 目が覚めると、近くで少女が泣いていた。

 女の子を泣かせるとは、罪な男じゃないか。それに、よく見ると可愛い子じゃないか。金色の髪、翡翠色の瞳、なら、唇はルビーとでも言い表したほうがいいかな。何にせよ、可愛い子だ。


「大丈夫だよ。魔物は私がやっつけてやった……。」


 力が入らないな。かっこよく決めようと思ったのに台無しじゃないか。あぁ、ひどい。右手がやけどでただれてる。左手はきれいだ、これなら、触っても許してくれるかな。


「もう大丈夫だから、泣かないで。魔力が回復したら回復魔法をかけてあげる。」

「でも、手が……。」


 あぁ、たしかに右手ズタズタだし怖いよな。酷い有様だ……、勝ってもこのザマ。強い相手と戦うなんてやるもんじゃないねそんなことは。


「大丈夫、魔法をかければすぐ治る……。」


 あたりを見回すとそこには、ボーンナイトバーサーカーの死体がある。あの爆発でも原型を留めるような化物と戦ってたことを自覚して急に足がすくんだ。寝っ転がっててよかった、起きてたら間違いなく転んでいただろう。


「私が魔法をかけるから! 教えて!」


 優しい子だな、何かをしたいんだろう。こんな私を見て放っておけないんだろう。


『オッケー、じゃあオネーサンが教えてあげる。』


 まだ起動してたのか、この魔導書。しかもかなり勝手なやつだ。仕方ない、中の人がいるんだからそれもそれでいいじゃないか。どうせだ、今回は彼女に回復してもらおう。それでいいじゃないか、疲れたんだもの。


「我は求める……天使の歌声を……。我は求める……癒しの呪歌を。」


 いや、少し待てこの詠唱は中級極限回復呪文だったはずだ。明らかに少女の魔力じゃ足りない。

 魔法が要求する魔力より、術者が持つ魔力が少なかった場合の結果はふた通りらしい。

 一つ、魔法は効果を現さない。

 二つ、魔法は術者の生命力や魂までも魔力に変換して強引に発現してしまう。

 前者はともかく、後者だった場合中級極限の消費は命程度では足りない。魂の完全消滅の可能性すらある。全ては彼女の生命力によって結果が変わるが少なくとも死は避けられない。


「ダメだ!やめろ!」


 思わず私は叫んだ。少女はかまわず詠唱を続けた。


「病める者に救いを、傷ついた者に安らぎを……。」

「リーゼロッテ!」


 私はリーゼロッテの魔導書を睨みつける。だがそこにはとてつもない膨大な量の文字が羅列されている。そして、それらは本から解き放たれ少女にまとわりつく。いや、少女に力を貸しているのだ。


「萎えた者に慈しみを、死せる者に安寧を。さすれば奇跡は舞い降りる!天使の呪歌!」


 そして、魔法は発動した。少女を生かしたままで強制的に。


『ふぅ……よし、まだまだ捨てたもんじゃない。』


 私はすでに立ち上がれた天使の呪歌の回復力の影響だ。今回ばかりはリーゼロッテにムカついたので空中のそれを掴むと強引にバタンと閉じた。


「いいか君!よく知りもしない相手の言葉を簡単に信じちゃいけない!死んでしまうかもしれなかったんだよ。」


 私は、少女を少し怒鳴りつけてしまった。良くない、私だって人のことを言えないことは多分にあるしこの子には悪いことをした直後なのに。


「もう、大丈夫?」


 そんなこと御構い無しに少女はこっちの心配ばかりしてくる。


「大丈夫だけど、良くないよ!」


 私は言って聞かせようとした。だが、少女は私の大丈夫を聞くとバタンと倒れてしまった。もしやと思い息を確認したが、ちゃんと息はあるどころか安らかな寝息だ。こんな可愛い子があんなことをと思うと少し胸が熱くなる。私もまだまだ捨てたもんじゃない。いや、これから捨てたもんじゃなくなるのか。

 ふと、リーゼロッテの魔導書を見ると表紙に文字が浮かんでる。


『せめて言い訳させてよ!』

「わかった言い分を聞こう。」


 私はそう言って魔導書を開いた。


『これ言い訳なんだけどさ、リガロが倒したボーンナイトバーサーカーいたじゃん?』

「居たな。」

『そいつがいい感じに魔力放ってて、この子の予備魔力としてそれを繋げて間で私が変換すればなんとかなるって思って。』

「なぜ先に言わない!?いくら先生でもひやひやしたんだからな!」

『だから、あくまで言い訳。ほんとごめん。』

「はぁ、先生はなんだかんだ抜けてるところがあります。ほんとにすごい人(?)なんだからそこを改めてください。」


 だが、やはりすごい人だ。さて、どうするか。ずっとここにいるわけにもいかないし、立てるようになったとはいえまだ怪我も残っている。さすがにこの状態で少女を担いで森を出るのは不可能だ。


『お困りならちょっと今は手を貸せるよ。ここは今魔力濃度がすごい高いからね。』


 だからいつまでたってもただの本に戻らないのか……。色々と納得だ。


「ちなみに何しようとしてるんですか?」

『リガロとその子、それからそこの死体もまとめてアルソード家に転移。』

「ぜひとも!」


 ほんとに何でもありだこの本。常時魔力を流していたらどうなることやら。一冊で無双しそうだ。


『じゃあ代理詠唱お願い。』


 前言撤回、無理だ。だが、魔法を使えない状態の人間にすら魔法を使えるように出来るのはとんでもない性能だ。


「わかりました。じゃあ、詠唱教えてください。」

『あ、それと魔法発動後きぜつするのは我慢してね?』

「先に言ってくださいよ!!」


 とりあえず、仕方がないので私はリーゼロッテの代理詠唱をして気絶しながらだが自宅に転移することがてきた。何はともあれ犠牲者ゼロ、文句無しである。

リーゼロッテの魔道書マジチートアイテムやでアーティファクトやで

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