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第二話―リーゼロッテの魔道書―

 三歳になった。母親が教えれば覚えると面白がって何でもかんでも教えるので私は、それをいいことに基本のセラフィナ交易文字、フランベルク王国文字、リノバルド公国語とその文字、ついでに魔法文字とルーン文字が書けるようになった。三歳の子供に英才教育し過ぎだと思うがねだったので仕方ない。


 必殺子供の武器はおねだりするとき最大の効力を発揮するのだ。


 ちなみに魔法文字とルーン文字は母も完璧には覚えておらず辞書で調べながら教えてくれた。ものすごく難しい文字だったが研究者の好奇心と赤ん坊の脳の柔らかさに助けられた。


 だが、少し代償があった。目が少し悪くなってしまったのだ。現在私は近視に悩んでいる。父に聞いたところ、目が悪いのは軽度の病気扱いで魔法で無効化できるそうだ。うん、魔法のメガネだ。今は父に魔法をかけてもらっている、毎朝だ。父は忙しいというのに面目ない。だから、私は父に相談することにした。


「父様、この魔法私にも教えてください。」


 さすがに三歳にもなると舌が回る。


「もちろんいいぞ、ついて来い。魔法書を取りに行こう。」

「あい!」


 だがこれだけは直さない。チャームポイントというのは残しておかねばならないのだ。だが、最近は両親ともに私の魅力に慣れてしまった様であまりちやほやしてくれない。正直少し残念である。


 さて、話を図書室に戻そう。我が家の図書室はかなり大きい、両親が二人ともトップクラスの冒険者なのだろうそもそも家が大きい。しかも作りが少し城っぽいのだ。我が家は生活塔と蔵書塔の二つの尖塔から成り立っている。要するにこの馬鹿みたいに広い家の半分が図書室なのだ。そして残り半分の大部分が武器庫と練金室なのだ。この事実を知った時私はこの家に永住することを決めた。研究するにも、勉強するにも訓練するにもこの場所は便利すぎる。


「リガロ、着いたぞ。」


 そして、たどり着いたのは蔵書塔の三階だった。それより上は吹き抜けになっておりさらに階段すらもない。

 円筒状の尖塔の壁に一分の隙もなく魔導書が収められた本棚が積み上げられている。


「ここが父さんの魔法書塔だ!」

「す……すごい……。」


 正直腰を抜かしそうになった。万を超える魔法書が収められた魔術師垂涎の塔だ。ところでもうやって本を取るのだろうか。


「ここの本はな、危険なものもあったりするんだ。そういうのはだいたい上の方にある。父さんじゃないと取れないから時が来るまでお預けだ。逆に、安全な魔法書や生活の役に立つ魔法が書かれているものはお前の手の届くところにある。」

「なるほど、上にある本は良くないものなのですね。」

「まぁ、そんなところだ。だけど、特殊な本はもっと上。それらは持ち主を選んだりする、魔法でできた魔法の書だとかがそうだ。」


 父が誇らし気に自らの蔵書を語っていると手元に一冊の魔導書が落ちてくる。


「リガロ、やったな!それは今話した特殊な本だ!」


 背表紙を見るとそこには魔導書とだけ記されていた。裏表紙には、リーゼロッテと書いてありこれはきっと作成者の名前だろう。


「これは……?」

「それは、通称万能魔法辞典もしくはリーゼロッテの魔導書と呼ばれるものだ。父さんの魔法の先生だ!」

「先生ですか?」

「おう!その魔法の書は多分この部屋で一番便利な本だぞ。魔法を教えてくれるんだ。」


 本が魔法を教える……。喋るのだろうか。


「使い方なんだがな、どんな魔法を使いたいかイメージして魔力を込める。って言ってもわからないよな……。」

「魔力ってどうやって込めるんですか?」

「だろうなぁ、わかったら父さんも自信失うレベルだしなぁ。」


 それはそうだ。当たり前だ。使ったことがないのだわかるわけがない。


「よし、リガロ父さんの手を握れ。多分これが一番わかりやすい!」

「あい!」


 これだけはやめない、意地でもだ。


 父の手を握ると何かが流れ込んでくるのがわかる。そして、体の中でそれは、一旦心臓のあたりに向かう。だが、その後道に迷ったように右往左往している。


「これが魔力ですか?」

「その通り、じゃあそれに命令してみろ。この本に行けってな。」


 言われた通り、体の中のそれに向かってこの本に向かえと命令する。


 すると、本が浮かび上がる、勝手に開いたのだ。ただし、白紙のページだった。


「出来たじゃないか!次は、その本に使いたい魔法のイメージを伝えるんだ。フワフワしたものでいいぞ。」


 言われた通り、私は魔法メガネのイメージを本に流し込む。そうすると、白紙のはずのページに文字が浮かび上がってくる。


『やっほ!なになに、視覚補正の魔法が使いたいの?んじゃオネーさんが教えてあげちゃう。』


 魔導書の口調がやたらフランクな件について著者のリーゼロッテを小一時間ほど問い詰めたい。だが、魔導書は詠唱の情報や無詠唱で使う際のイメージを伝えてくる。この本は口調以外はものすごく有能である。


「えっと……増幅せよ、我が力。瞳を助け、我に正しき視界を……トゥルービジョン。」

『あ、それと魔法名にはいろんな呼び方があるからね。厳密にはルーン語が一番正しいけど意味があってればどんな言い方でも問題ないことが多いよ。』


 魔導書が忘れてたとばかりに情報を追加する。この魔導書、実は中に人が入っているんじゃなかろうか。


「どうだリガロ、ちゃんと出来てるか?」


 そういえばかなり遠くの文字も見える、どうやら成功のようだ。


「あい!よく見えます。」

「やっぱり魔法の才能は十分みたいだな。だけど疲れてたりしないか?」


 そういえばほんの少しだけ疲れたような気がする。だけど、疲れた内に入らない疲れだ。


『リガロ君の総魔力は今4あるよ。』


 魔導書にはデカデカとそんな文字が浮かんだ。私はそのページを父に見せた。


「4か、その歳でそれだけあると将来が楽しみだ。」


 ちなみにリーゼロッテの魔導書曰く魔力とは魔法を使うために必要なリソースで今使ったトゥルービジョンが全魔法中ダントツで使用魔力が少なく魔力の最小単位として使用されているそうだ。ちなみに総魔力は10歳まではその日の消費魔力の二倍の量を回復する。つまり、毎日魔力が空になるまで使えば10歳までは倍々ゲームだ。


 さらに、総魔力は知識量による補正を受ける。魔法を使ったことのない人間の総魔力量はほぼ1、私は知識による総魔力量補正が4倍ということになる。頭がおかしい倍率だと思う。ただし、この倍率として適応されるのはセラフィナで得た知識だけなのではないだろうかと言うのが私の出した過程である。でなければ科学者としての知識のせいで生まれた瞬間に魔力量がインフレすることになるだろう。


 ちなみに、その日の夜消費魔力3の魔法をリーゼロッテの魔導書に尋ねたところちょうどよく睡眠の質を向上させる魔法があったためベッドの上で使ったら直後に寝落ちした。どうやら魔力が0になると眠ってしまうらしい。

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