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第零章 ―アマデウスの輪廻論―

 八月九日午後二時十四分。第三次世界大戦が終戦した。それは、とてもシンプルでわかりやすい終戦だった。戦う人間がいなくなったのだ。地球上から人類が消えた日、人類は初めて後悔しただろう。争うために科学を磨いたことを、そしてそれすらも争いにしてしまったことを。


 我々人類は二度も手段を目的としてしまった。だから少なくとも私は後悔したのだ。死んで初めてとは滑稽だが、罪深い人類のその罪深い一人なら当然のことだろう。


 願わくば、もう一度やり直したい。人類のためを思って発明を公開したあの日から。そう、願って息を辞めた。


 ――――――――――――――


 覚めることないはずの目が醒める。私はあの時死んだのだ。


「ーーーー。」


 目の前には一人の女がいて何かを言っている。愛おしそうに私を見つめて微笑んでいる

 。

「ーーーーーーー。」


 視界の端から男が現れて女といっしょに笑っている。話し合っているようだ。だが、地球上のどの言語とも一致しない。


 言葉は通じないと断定し、ボディーランゲージによる情報収集を試みることにしようとして手をあげる。


 ぷっくりとしていて丸っこい。赤子のような手が視界に映る。そしてそれが、まるで自分の腕のように動くのだ。


「ーーーーーー!」

「ーーーー。」


 相変わらず目の前の二人は私の知らない言葉を話している。


 ふと、赤子の手に触れる。そして、その触覚は私へと伝わったのだ。確定だ、なんということだ。あろうことか私は赤子になってしまったのだ。


 しかし、世界は滅んだはずであり私も死んだはずである。だとしたら一体ここはどこだと言うのだろうか。地球だとするなら文明レベルがおかしい。建築様式は中世ヨーロッパに見られるゴシック様式だし、電球はなく燭台が基本だ。おそらく中身はロウソクだろう。


 電気発明以前、それよりもっと前千五百年代とよく似ている。


 アマデウスの輪廻論という、妄言として処理された論文が存在する。そもそも、魂の存在が前提のその論文にはこんな一節が存在する。


『輪廻転生には二つの世界が関わっている。一つはこの世界地球である。そしてもう一つ、魂のふるさとと呼ぶべきところが存在し、我々はその二つを行き来しているのだ。我々が時折空想するのは魂のふるさとのことである。故に、想像が尽きないのだと私は断言する。』


 とても、信じられる内容ではなかったが事実だとは思いもよらなかった。

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