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声にならない僕達の声

作者: スグル

この作品は、短篇ではありますが、数々のオムニバスで成り立っております。言い換えれば、短篇になるには、インパクトが弱かったネタの在庫一層セール。

『クロマグロ パート2』



『木曜特番、日本の文化は何処に?ああ、今宵も、あんたの、わさびが目に染みる。大体、オムライスとナポリタンは洋食だけど、日本で生まれたんだよ。だから、料理で日本の心を取り戻そうじゃないか、スペシャル』



 と、ナレーションが流れた後、妙に長いタイトルの特番が始まった。

 僕は、この番組の後に放送される今日の洋画劇場、『セクシーハンター・肉彦』が観たかったのと、この時間帯は、つまらない番組ばかりなので、仕方なく、このチャンネルにした。

 まぁ、とりあえず、料理に関する番組は観て、損はないだろうと思う。


 多くの食材が置かれた、和式のキッチンがセットされているスタジオで、アナウンサーがマイクを握って、立っていた。


「みなさん、こんばんわ。司会の蟹肉馬男です」


 と、アナウンサーが番組の進行を進めていた。


「今、街中の至る場所には、欧米化が進んだようなファーストフード店や、ファミレス、チェーン店、コンビニなど、海原雄山だったら、ブチギレて、長い演説を始めそうな飲食店が増えました」


 確かにと、僕は思った。

 特に、海原雄山あたりが。


「今日は、有名な料理の先生にお越し頂きまして、日本の文化の象徴である、日本の料理を、簡単、手軽かつ、財布に優しく、大胆かつ、セクシー、刺激的に!情熱的!に作って頂き、我々、日本人が忘れた日本の魂を甦らせようとするのが、今日の番組です」


 なるほど。

 日本食と言うのは高タンパク、低カロリーと言われてはいる。メタボリックとか、ダイエットブームが増えたのも、食事の欧米化による物だろ。

 ちょっと、興味が湧いてきたな。少し、日本食の勉強として観てみるか。

 とりあえず、どんな料理を作るだろう。


「さて、本日、大胆かつ、セクシーに、刺激的に!情熱的!に料理を作って頂きます、灰汁料理学校講師、黒鮪黒陰くろまぐろ くろかげ先生の登場です!」


 と、司会者が言うと、観客が拍手をし、BGMが流れた。

 すると、スタジオの脇から、黒い髪の毛を顔が見えなくなるまで伸ばした黒い服と、黒いエプロンの男が現れた。

 うわぁ…、怖ッ…。

 料理の先生なのかよ…。


「黒鮪先生、今日はお越し頂き、ありがとうごさいます」


 と司会者が、キッチンに立った黒い服の料理の先生に挨拶をした。

 すると…、



「体が、夏になれよ!!ためらう事になれた肌に事件起こせよ!!」

 何故か、いきなり、黒鮪先生が髪の毛を振り乱して、ブチギレた…。

 司会者の顔が固まった。

 観客が静まり返った。

 僕も、テレビの前で固まった。


「あっ…、すいません…」


 と、いきなり、正気に戻った黒鮪が謝りだした…。

 なに、これ生放送…?


「あっ、先生、お気になさらずに…。こちらこそ、申し訳ございません…」


 と、司会者が平常心で返答した。

 すると、頭を深々下げて、黒鮪が…、


「いや…、すいません…。楽屋に、頼んでいた物が来なかったんで…、ついイライラして…」


 と、司会者に言った。

 そんな楽屋話を、生放送で話すなよ…。


「あっ、だったら、スタッフに責任がありますので…。ちなみに、なにを頼んだんですか?」


 と、また司会者が黒鮪に謝る。

 すると…、



「デリバリー・ヘル…」



ブッ!!



 テレビの画面が、いきなり切れた…。

 僕は、『セクシー・ハンター肉彦』が始まるまで、一斉風靡セピアを踊る事にした。

 そいや!そいや!そや!



…………………


『ポエム』



 今日、僕は中学校の課題で、ポエムを書くことになった。

 何故、ポエムを書くことになったのかと言うと、同じクラスの久彦ひさひこ君が、先生から朝の出席確認の際、名前を呼ばれた時に、


「俺が、ガンダムだ!!」


 と叫び、みんなから沈黙を買ってしまったからだ。

 このことが問題になり、すべての授業が中止。クラスで話し合いとなり、この久彦君の行動について、どう思ったかを、ポエムにして、明日、提出しなさいと先生が言ったからだ。

 しかし、参ったなぁ、僕はポエムが苦手なんだよなぁ…。


 このことを、晩ご飯の時に、お父さんや、お母さん、お姉ちゃん、なぜか、昨日から家に住み着いた親戚でも、知人でもないヴィジュアル系の人に相談してみた。

 お父さんは、


「いや、ガンダムはファーストだろ」


 と言い、お母さんは、


「ウィングよ」


 と言い、お姉ちゃんは、


「マクロスよ」


 と言って、口論になってしまった。

 すると、ヴィジュアル系の人が…、


「君が思ったことを、書き綴ればいい…。君がどう思ったかを、君の魂を、言葉と言う名の武力で、読み手の魂に介入しなよ」


 と、言った。

 僕は、いや、あんた、誰だよ?勝手に、ひとんちで飯食うなよ、と答えた。


 言われたとおりに、僕の魂を書き綴ったポエムを、朝、先生に提出した。

 すると、帰りのホームルームで、僕のポエムが、一番良かった、と先生が言った。僕は少し恥ずかしかったけど、嬉しかった。

 ヴィジュアル系の人、ありがとう。

 そして、飯代払え。

 先生が、みんなの前で、ポエムを読み上げなさいと言ったので、僕は、昨日の久彦君の行動について思ったポエムを披露した。



『中学生の冗談に、マジレスして、授業を潰すのは、どうかしてるし、なんで、作文じゃなくて、ポエムだよ』



 先生に、後で職員室に来なさい、と言われた。




…………………


『日本の文化』



「ハンバーガー、うめぇ!」


 日本の文化を考える人の会会長の、この一言から、すべてが始まった…。

 僕は、君と一緒に居たかっただけなのに…。

 戦場は、僕達だけじゃなく、友情をも、引き裂いた…。

 もう戻らない、夏の日…。

 帰りたい、君と過ごした日々を…。

 神様、お願い…。

 時間を巻き戻して…。




…………………


『ラブシーン』



「君が好きだ…」

「私も…」


 そうして、二人は、夜空の星の輝く東京タワーの下、静かに抱き合う。

 互いの温もりを感じ合いながら…。


 次回へ、つづく。




 次回、

『盛りそば、おかわり!』

 を、お楽しみに。




…………………


『運動会』



 僕は、借り物競争が苦手だ。

 普通に走るだけならいいけど、紙に書かれた物を借りなければ、ゴール出来ないなんて…。

 大体、紙に書かれた『ディスコマスター』って、なんだよ…。

 そう思って、周囲を見渡すと、観客席のお母さんが、カバンから、『ディスコマスター』を取り出してくれた。

 お母さん、ありがとう。

 そう思いながら、僕は片手に、ジョン・トラボルタのフィギュアを握り締めた。




……………………


『失恋』



 僕は失恋した。

 別に、告白してフラれたんじゃなく、その好きだった女性は僕のことなんか見ていないんだ。

 彼女には、彼氏が居る。

 だから、僕は、彼女にとって背景でしかない。

 それに、気付いただけだ。


 友人に、そのことを話した。


「相手に思いも告げず、自分の中で終わったことにするのか?そんなの、告白して、フラれるより、格好悪いよ。彼氏から、彼女を奪ってやるくらいの男らしさを見せろよ!」


 と、友人の彼が言った。

 確かに、そうかもしれない。

 でも、実は、僕が好きなのは、おまえの彼女なんだよ…、ドチクショウ…。

 いいよな、おまえは彼女が居て、人生ウハウハだから、んなこと言えんだろうが…、チクショウ…。

 大体、その慰めの言葉とか、ドラマの観すぎなんだよ、テラチクショウが…。

 ああ、俺より、幸せな男が憎い!



 こうして、僕は帝国軍を立ち上げ、来たるべき、非モテ達によるリベリオンに向けて、駒を進めた。


「もう戻れない。いや、戻らなくていい」


 こうして、僕の戦いが始まった。




……………………


余談ではありますが、作者の悪癖で、連載作品に、脱線気味のギャグ話を挿入してしまう癖があり、現在、連載中の、シリアス、ダークを意識している連載作品の『漆黒のシュガーレス』に過度のギャグ話を挿入してしまうかもしれないので、憂さ晴らしの形で、短篇を書かせて頂きました…。どちらも、未熟で、見苦しい作品ですが、よろしくお願いいたします。

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