表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソラのウラガワ  作者: マサムネ
§0 プロローグ
1/14

§0 プロローグ

おはよう!ねえ、昨日の歌番見た?

見た見たー、anonymousの新曲、すごいカッコ良かった!

誰か数学の課題見せてくんない?

今日、アシカビのテスト飛行だよな。あー見に行きてぇ!

え、嘘、三組の吉川くんって、加賀美と付き合ってんの!?

一限目古典かぁ…かったるい・・・

誰かー、数学の課題ー



朝の教室の喧騒は好きだ。

いや、朝に限らず、教室に限らず、喧騒は好きだ。自分が紛れ込める世界は、安心する。


「テン!おはようテンちゃん!!な、な、数学の課題、見せてくれない?ウッカリ忘れちゃってさ。俺、今日当たるんだ」


ドアを開けた途端、縋り付いてきたのはカミナベ ダイチ。

クラスで一番騒がしい男である。


ウッカリっていうのは、たまにあるからウッカリというんだよ。

同じクラスになって1ヶ月ちょっとだけど、何度目だ、これで。


そんな呆れた眼差しを返すと、カミナベはパンッと顔の前で手を合わせ、

「頼む!テン様!」ボクを拝んだ。



しばらくジトりと睨んでみるが、なるほどカミナベはその体勢を崩す気はないらしい。


ったく、しかたないな・・・


断る方が骨が折れると判断したボクは、肩にかけたカバンの中から、課題の入ったクリアファイルを差し出した。


が、


「サンキュー・・・って、おい!」


カミナベが手を伸ばした瞬間、サッと引き戻した。

タダでなど、虫の良い話がある筈がない。


 おいマジかよ、


というカミナベの目を、ボクは高圧的な態度で見返した。

カミナベはあまり背の高い方ではない。

目線の高さはほぼ同じである。


「・・・わかったよ。チロルチョコ、一個」


一個!?


「ウソウソ、三個。どうだ!」


 どうだ、じゃないよ全く。二時間かけたんだぞ。安すぎるだろ、どう考えても。


「ちなみにこれ以上は無理だ。金がない!頼むよ、テン」


本音を言えば、報酬はもう少し釣り上げてやりたかったが、必死のカミナベに絆され、結局ボクは課題を渡してやった。


するとカミナベは

「いいの?マジで?ありがとうテンちゃん、テン様!やっぱり持つべきものは友だな!」

と調子よくバシバシとボクの肩を叩くいて、


痛いから!


抗議の眼を向けた時には、既に自分の席へすっ飛んでいった。


はぁ、と呆れた溜め息を一つ吐き、ボクも自分の席へ向かう。

窓際の1番後ろ。

麗らかな日差しの中、若葉の芽吹く並木を見下ろせるここは、二週間前の席替えで引き当てた特等席だ。


鞄から机の中へ教科書を移していると、ふと、視界の端で何か動いた気がした。

窓の外に眼をやると、青空の中、白い二本線が北東へ延びていた。

黒くボテッとした楕円のフォルムは、恐らく空艦トコタチだ。

開発中の有人人型戦闘艇アシカビを、訓練島へ運んでいるのだろう。


今日はアシカビのテスト飛行だと、さっき誰かが言っていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ