その7 ご褒美
マミーがご褒美をくれます
『この巣で生まれた赤ん坊には女王より幾つかのものが献げられる。お前も何か貰ってこい。何、緊張することはない。女王とはいえお前の母だ。礼儀も作法も必要ない。じゃあ、行ってこい。』
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
近くに行くとその巨大さを改めて実感する。
...すごく...大きいです...。
まあ冗談はさておき、どうやって会話すればいいんだ?俺念話とかそういうスキル持ってないんだが。
ガズラの方を見ると、手で、待て、としている。ならば待つことにしよう。...............お。きた。
『あなたがカイですか?』
『そうだ』
『話はあなたの父親から一通り聞いていると思いますが私からも説明します。質問は私がいいと言った時に纏めてお願いしますね。』
『では先ずこの「国」のことから話しましょう。ここは、通称キメラの国。正式名称はありません。私はキメラの国の女王です。この国はある島の地下に造られています。元々は地上も我々の生活圏だったのですが、地上に星龍が現れてから、我々はなすすべ無く地下に追いやられてしまいました。これが、およそ300年前の話です。ここまでで質問はありませんか?』
『幾つかある。先ず、地表部分と地下の生活圏のそれぞれの面積はどれくらい?』
『地表はおよそ...あなたに分かりやすく言うと、九州2つ分くらい、ですね。ふふ、私くらいになれば相手の記憶を読むくらい造作もないのですよ。地中の生活圏の面積はさっきあなたが見た分で全てです。』
記憶を読まれてる!?...さすがマミー恐るべし。
『次に、星龍ってのはなんだ?』
『星龍、あの頃はまだ幼体でしたが、それでも、とてつも無く強かったですね。キメラの国が誇る戦士たちがまるで歯が立ちませんでした。星龍は龍種の一種です。まあ、龍「種」とついているものの、数は、世界に100もいません。それほど少ないのに種として数えられるほど強いのだと思ってください。星龍は固有魔法、星魔法を操ります。魔法の効果としては主に、隕石などによる大量破壊です。身体能力はそれほど高くないのですが、空を飛べるので、空中から隕石を落とされたら、基本的にどうしようもありません。星魔法は属性としては火と土の複合です。』
『では、話を進めましょう。次はあなたについてです。現在この巣にはあなたを含めて2人の人間型キメラがいます。人間型キメラは非常に珍しい存在です。他の者に絡まれるかもしれませんが、そこは、なんとか頑張ってください。人間型キメラの特徴は体を変化させる事です。食べたものの特徴を発現できます。スライムのように触手などを生やす事は無理ですが、爪や角を生やしたりできます。最初はとても弱いので、頑張って食べて、強くなってください。今世代は人間型が2人も生まれてくれました。よって、私はこの世代で地上を、星龍から取り返したいと思っています。その時の戦力として期待してますよ。何か聞きたそうですね。どうぞ。』
『もう1人の人間型はどんな奴なんだ?』
『ああ、あの子ですか。つい一昨日生まれました。とても可愛い子ですよ。いわゆるツンデレですね。』
『...............それ言ったら本人怒らない?』
『...この話はこれくらいにしましょう。最後に生まれてきたあなたにご褒美を上げましょう。通常は2つなのですが、あなたは人間型なのでこれから星龍に勝つためのトレーニングをしてもらいます。更に星龍戦においては主戦力になって頂きます。これについては私も申し訳なく思っているのです。よって、5です。あなたのご褒美は5つにしてあげます。では、どうぞ選んでください。』
『そうだな...じゃあ、
1.魔法を習いたい
2.鍛治を習いたい
3.魔結晶・虹励起が欲しい
4.私用のスペースが欲しいから、壁を掘り進める権利が欲しい
5.スキル発動を補助したり、演算能力を高めてくれたりするスキルがあれば教えて欲しい
この5つで頼む』
『先ずは1ですね。魔法は、【魔力感知】【魔力操作】【魔力変換】【魔力放出】そして魔法スキルがあれば使える筈です。先の4つについては大サービスです。私があなたにあげましょう。ただし魔法スキルは自分で入手してください。進化するたびに1つ手に入る筈です。魔法スキルが手に入ったら、また、私の元に来なさい。良い師を紹介しましょう。魔法はこれくらいにして。2つ目の鍛治は、この国の鍛冶屋に習うといいでしょう。後であなたに酒を渡します、それを彼に渡せば、教えてくれるでしょう。3つ目の魔結晶・虹励起については、いつでもこの部屋に来て採っていく許可を与えましょう。ただし、魔結晶・虹励起は全属性の同時操作ができなければ触れる事すら叶わないので、当分先になるでしょうがね。4つ目は、地図を書き換える必要が出てくる上に、海水が国に入ってきてしまう可能性があるので先に掘る場所を私に申請してください。問題なければ許可を出します。5つ目については、7大罪、7美徳スキルがそれに当たります。ただ、スキルの取得難易度がかなり高いので、頑張ってください。...こんな感じですかね?では、最後に酒とスキルです。』
そう言って母さんは、スライム体に生えた触手で酒瓶を俺に渡し、さらに、透明な瓶にスライム体の一部を入れて俺に渡した。
『先に渡した液体が酒です。それで鍛治を習ってください。後に渡した液体が魔法の行使に必要な4つのスキルです。家に着いたら飲んでみてください。では、今回はこれくらいにしましょう。ちょっと妬いてる子もいるようですしね。では、さようなら。』
さようなら、そう言って俺とガズラは母さんの部屋を後にした...
入れ違いに入ってきた女の子の
「ママ!誰、あの人!?ママとずっと話してた!」
という声を聞きながら。
マミーは全ての家庭に分体を置いてます。巣には本体の子と分体の子がいます。