その4 天の声
ヤバい。
逃げるべきか。
そう思った時だった。
『おい、息子』
そういう声が頭に響いたのは。ガズラはまだ俺のことをじっと見ている。まさか、俺の父は念話のようなものが使えるのか?
『なんだ?』
頭の中で言葉を返してみる。
『これ、食え』
そういって差し出された手の中にはおそらく俺と同じ種族が握られている。
...は?その手の中の明らかに俺と同族のそれを食えと申しますか。そうですか。マジで?それ食うの?
『マジで?それ食うの?』
『これ食うの。』
『それ?』
『これ。』
『マジで?』
『マジで。』
マジなようです。不本意だが、食うしかないようだ。
では、いざ実食。
弟(仮)が俺の目の前にべちゃりと置かれる。
頭部はヤギのような形で一般的な悪魔を彷彿とさせる。腕は両方とも熊のそれのような形状だ。動物的な外見の頭と腕とは打って変わって、胴体はほぼ人間みたいなものだ。下半身は基本的に馬だな。
さて、どこから食おうか。心の中でそう言いながら俺は弟(仮)を眺めやった。
よし、まずはこの馬のような足から食うとしよう。馬ならまだ抵抗は少ない。だが、このままじゃ食べにくいので足を引きちぎる。思いのほか簡単に取れた。
そして、思いっきりかぶりついた。
…うまい。かなりまずいものを期待してたんだが、多少の血生臭さはあるものの(もちろん血抜きはされてなかった)、生肉としてはかなり上出来だろう。まあ、前世でも馬刺しなんてものがあったぐらいだしな。
そして、最後の一口を腹に収めたときだった、
【熟練度が一定に達しました】
【種族特性スキル:他者吸収1の効果によりスキル:脚力1を入手しました】
【また、ユニークスキル:吸収強化1の効果によりスキル:脚力1がスキル:脚力2に変化しました】
【熟練度が一定に達しました】
【称号:同族喰らい、称号:外道を入手しました】
【称号:同族喰らいにより称号スキル:胃強化1、称号スキル:同族殺し1、称号:外道により称号スキル:敵痛覚強化1を入手しました】
なんて声が聞こえたのは。
主人公は食べることでスキルを入手できますがステータスは上がりません。
入手したスキルでステータスが上がることはあります。