その17 大魔王とまんじゅう
作者は両方の意味でまんじゅうが好きです。
そして15話冒頭に戻る。
「なあルナ、ずっとゴブリンとかホブゴブリンとか狩ってるの流石に飽きてくるんだけど」
「うるさいわね!あなたが怪我でもしたらどうすんのよ!」
「え?心配してくれてるの?」
「な、何言ってんのよ!?このバカ!!」
おぉ神よ...私は今幸せだ...。
そう思って俺は神に祈りをささげた。
『なんだ、呼んだか?』
!?
え!?誰!?
...応答なしかい。
と、そこで気づく、足元にどす黒い魔方陣が展開してる。
魔方陣に接してる足からどんどん何かが吸われていく感じがする。
なんだこれ、意識が保てない。
「ちょ、ちょっと!?どうなってんのよ!カイ何とか言いなさい!」
俺嫁(理想)のかわいい声を聞きながら、俺は意識を手放した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
う...どこだここ、知らない天jy、天井ないやん。あの名台詞言わせてよ...。
まあいいや。で、何なんだここは?
周りが全部黒い...真っ黒な空間、というよりか虚無?AAAカップみたいな感じ?
空間全体を見回してみる。壁とかはなさそうだな。ずっと真っ黒が続いてる。
闇魔法のスキルが教えてくれる。この空間は闇魔法の根源属性、吸収でできてる。おそらくこの空間の主以外にはスキルの使用は不可能だろう。すべての効果がこの空間に渦巻いてる吸収の魔力に奪われてしまう。この真っ黒だって何もないんじゃなくて、発生したそばから吸収されていってる。逆になんで俺という弱い存在がまだ俺という形を保ててるのかが不思議なくらいだ。
どうしようもないな。何とかしないと絶対にここからは出られないぞ。
「困っておるようじゃな。」
「誰だ!?」
「そう警戒するでない。我は過去、1なる魔王と呼ばれていた者じゃ。こう見えても数千年前は、全世界を恐怖に陥れた魔王として知られておったのじゃぞ?私の名を聞いた者は老若男女問わず、誰もが畏怖し、恐れおののいたものじゃ。して、貴様はなぜこのような場所におるのじゃ?」
魔王!?ヤバい...父さんに魔王様だけは怒らせてはならないって教わってたのに、完全にタメで話しちゃったよ...。
「えっと、足元にいきなり魔方陣が現れたんです。それで、気づいたらここにいました。」
「そうか、そうならば我の封印も弱まっておるということじゃな。小僧、どこから来たのじゃ?」
「キメラの地下洞、生活領域のすぐ外です。」
「そうか、ならば詫びねばならんな。我は勇者から逃げ出し、その洞窟に逃げ込んだのじゃが結局力尽きて勇者に封印されてしまったのじゃ。小僧、貴様はちょうどその場所を踏んだのじゃろう。封印が弱まっておったのじゃろうな。封印が弱いと外部の物が簡単にはいれるようになる。さて、詫びの物じゃ。何がほしいか?」
え、何かくれるの?そうだな...魔王様声からして...
「なるほど、じゃが残念ながらそれは無理じゃ。今の封印された我は精神体。肉体のほうは地上に、各国に分けて封印してある。じゃが、全部集めてきてくれたら、あるいは貴様の望みを叶えられるやもしれんの。」
「よっしゃ!では、ここからはどうやって出ればいいんですか?」
「我のスキルで貴様に試練を与える。それを無事達成できれば貴様にもここからは出れるだけの十分な力がついておるじゃろう。」
そう言うと同時に空間の裂け目とでもいうべきものが俺の眼の前に発生した。
「それは力の譲渡を可能にする空間じゃ。中で試練を与え、それを達成した者に我の力の一部が譲渡されるのじゃ。その力を使えばここから出られるじゃろう。」
「魔王様自身がその力を使って脱出できないんですか?」
「我は封印対象、貴様はあくまでも異物じゃ。かかってる封印の強さが格段に違う。それと小僧、我が魔王だったのは過去のことじゃ。我の事は魔王様ではなく、セレネ様と呼ぶが良い。」
「ありがとうございます!セレネ様!じゃ、頑張ってきます!」
「うむ。じゃが、最後に1つ。お前をここに落とした者、そ奴は悪の神という者じゃ。人間からは勇者とも呼ばれておる。気をつけるのじゃぞ。では、行って参れ。」
そして俺は、魔王様に開けてもらった空間の裂け目に足を踏み入れ...
転移(?)する時って必ず気を失うのか、また意識を手放した。
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うぅ...頭がガンガン痛むぞ...。
目を覚ましたはいいがこの痛みはなんなんだ?
何か解決できそうなスキルが無いか、ステータスを開いてみる。鑑定!
【名前】カイ
【種族】リトルザコキメラ・転生種
【性別】男
【年齢】0
【レベル】4
【ランク】D−
【体力】145
【魔力】130
【攻撃力】148
【防御力】111
【敏捷性】191
【称号】クソザコ 転生者 同族食らい 外道 悪食
【スキル】筋力3 六感強化4 経験加速4 胃強化1 同族殺し1 敵痛覚強化1 鑑定2 色欲者1 強化吸収1 肉体変質3 集中2 高速機動3 合成1 物理超越1 神託5 神格上昇1 魂容量増加1 魔術師1 転生法1 刀鍛冶1 魔剣創造1 鍛治確率強化1 神蝕1 オーラ1
【魔法】獄炎魔法1 炎魔法3 闇魔法3
【加護】転生神の加護 鍛治神の加護 大魔王の加護
【肉体変質:形態】角 脳 爪
レベルとスキルがいくつか上昇してる。これはルナとのレベリングの成果だ。
だがステータスの伸びが明らかに異常だ。まあ原因はだいたい想像つくが。
【大魔王の加護】
【我が今までに加護を与えたのは貴様だけじゃぞ。誇るが良い、小僧】
【全ステータス100上昇】
【大罪スキルを獲得しやすくなる】
【大魔王の知識を得る】
【その知識量は余りにも膨大なため、一時的に脳の処理が追いつかなくなり、激しい頭痛に襲われる】
【スキル、神蝕、オーラを獲得する】
【神蝕】
【神や神話生命体、英雄、勇者などを殺した際にその神格を吸収する】
【吸収量はスキルレベル×10%】
【オーラ】
【魔力を纏って様々な効果を得る】
【自分より弱い敵対者が寄り付かなくなる】
【属性魔力をまとう事で様々な肉体性能の強化】
ほらね、まあ原因がわかれば対処法を考えるだけだ。
しかもその対処法も大体見当はついてる、それを実行に移す踏ん切りがつかないだけで。
【肉体変質:形態:脳】
【脳を1つ増やす】
説明がざっくりなんだよなぁ...。
まあいいや、使っちゃえ!スキル発動!
...................!?
頭痛がどんどん引いていく。頭の中に渦巻いてたものが落ち着いて整理されていく感じ。
そうだ!記憶落ち着いたんだしセレネ様の知識に何か無いか確認してみよう。
んー......あった!えーとなになに、これを使用するたびに頭の処理能力が脳1つ分増える。肉体変質には珍しい消費タイプの形態。また、自分の脳の数だけ別の事を同時に処理し、こなせるようになる、という事らしい。
まあ頭痛が消えたんだしなんでもいいや。
それよりさっさと現状を確認せねば。周りは洞窟になってる。小さな空洞で、出口は1つ。その出口もこの洞窟の奥に通じてるっぽい。鑑定!
【セレニティの試練の洞窟(セーフゾーン)】
そこで気づく。出口の正反対の位置の壁際に何か転がってる。何だろうか?
見てみると紙切れだった。そこにこう書いてある。
〈悪いの、餞別を渡し損ねておったようじゃ。受け取れ。魔力を流せば発動するからの。貴様は相当弱いから助けになるはずじゃ。〉
読み終わった瞬間に、紙切れはボロボロになって消えていった。そしてなぜか紙切れを握っていた俺の手には小さな宝石が握られていた。
言われた通り魔力を流してみる。
宝石が金色の光を放ち始めた!ま、眩しい!!
そして10秒ほど経って光が収まった時にそこにいたのは...
【スロウリースライム】
【人間的な見た目に進化を遂げたスライム】
【平坦な声で人の言葉を話す】
【いろいろな種類がおり、代表的なものは、東の方で行われたプロジェクトに参加した人物の顔を模したものなどがある】
え!?何でまんじゅうが出てくんの!?ここ異世界だよ!




