表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

日常の変貌

初投稿です。お願いします!


まぶたを薄く開けると、カーテンからこぼれる光が、

ベッドの上の内村龍樹(うちむら たつき)を照らしてきた。

まだ意識がぼんやりした状態で、カーテンを全開にし、窓を開けた。

心地良い風が部屋の中を吹き抜ける。

何の変哲も無い、清々しい朝。


と、言いたいところだが、龍樹にはそれを邪魔する存在があった。


「龍樹!木刀持ってこーい!今日こそ殺ってやる!」


〈邪魔な存在〉というのは、

この、朝から物騒な奴、赤井一樹(あかい かずき)である。

高校の同級生であり、剣道仲間でもあり、

そのうえお隣さんなので、家族ぐるみの仲なのだが、


「うるさい!」


ので、少し苦手でもある。


「はやくぅー はやくぅー はやくぅーはやくぅー」

「あ゛ー もう、わかったよ!さっさとぶった斬って寝てやる!」


春休みになってからというもの、毎日これだ。

木刀を持った龍樹は、

急かしてくる一樹に向かって窓から飛び出した。


「オルァ!」


獣のような掛け声とともに、

ジャンプしつつ木刀を振り下ろした。


「カンッッ!」


木刀のぶつかり合う音とともに、打ち合いが始まった。


横からのスイングで相手に防御をさせつつ、

しゃがみ込みつつ回り、一樹の背後をとった龍樹の動きは、

剣道と言うより、殺陣(たて)の動きに近かった。

しかもその動きは、無駄の無い、とても洗練された動きだった。

それもそのはず。

龍樹と一樹は、幼少期に二人で見た映画に憧れ、

剣道の他にも、

空手、柔道、合気道、殺陣(たて)、アクロバットなど、

様々な武術、様々な運動をしてきている。


それだけのことをしてきているのだ。

動きが洗練されているのも頷けるというものだ。


もちろん、一樹もいっしょにやってきているので負けてない。

一樹が、背後にきた龍樹を、

振り向きもせずに上から斬りつけた。

しかし、龍樹は入り(いりみ)という、

相手の懐に瞬間的に潜る技を使うことで、斬撃をかわしつつ

一樹の首に木刀を 「すっ」 と当てた。


「くそ〜!負けた〜!」

「今日は存分に寝かしてもらうぞ!はっはっはっはー」

「しかたないな。明日は勝つ!覚えてろ!」


どこかの悪党みたいな捨てゼリフを吐いて帰っていく一樹を見つつ、

ため息をつく龍樹。

これが二人の日常だった。



・・・今までは。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



正午を回った頃、龍樹はまだ昼寝の最中だった。


「ピンポーン」


「・・・んんっ・・・・」


「ピンポーン」


「…………」


「ピンポピンポピンポピンポピンポピンポーン」


「うるせえっ!今何時だと思ってんだ!」


・・・昼の12時である。


「たつきぃー!開けろー!さもないと扉がぶっこわれッブホァッ!?」


開くと思ってはいなかったのか、扉の前で腕に力を込めていた一樹は、

いつも追いかけっこしているネコとネズミのネコのように、

「ビターン!……ベシャッ」という生々しい音とともに扉に叩きつけられた。


「いっちゃん⁉︎大丈夫⁉︎」


と、びっくり半分心配半分で横から一樹に声をかけるのは、

逸見紗咲(へんみ さえ)、彼女もまた、龍樹、一樹と育ってきた幼馴染である。

高校が違うものの、紗咲の噂が龍樹達の学校にまで広がるほどの美人である。

「美人」というより、「可愛い」のほうが似合うかもしれない。

ツヤのあるロングの黒髪に、決して貧相ではないボディーライン。

長い脚に整った顔立ち、常にほのかな紅色の頬。

初対面で、「この娘化粧してません。」と真実を言われれば、疑いたくなるレベルだ。

その華奢な体は道ゆく者を釘付けにさせ「ハァハァ」してる人をみると、

「アブナイ人が量産されそうだ」とハァハァの人を可哀想な人を見る目で見ざるをえなくなる。


「どうしたんだ?二人で来るなんて珍しいな。」

「えっとね、今日は〈あの日〉からちょうど1年目だから・・・」

「まさかそれお供え物かなにかか?」

「うん・・・」


「あの日」というのは、1年前、龍樹の両親が行方不明になった日だ。

夫婦水入らずで、16年ぶりに旅行に行ったきり、連絡もできなくなったのだ。

この事件後、引きこもりがちになった龍樹を更生させたのは、

実はこの幼馴染二人だったりする。


「まあ、入りなよ。なんか出すよ?」

「じゃあ、お言葉に甘えて!おじゃましまーす。」


「バタンッ」と扉が閉まった。

虚しいかな、倒れた一樹の目の前で・・・。


「そこに座ってて。お茶いれるから。」

「うんっ」


誰かさんの事をすっかり忘れている二人。

・・・じゃなく、一人。

実は龍樹は忘れてなどいない。

紗咲との時間を邪魔されたくないのだ。

というわけで放っておくことにした。

「一樹、ごめん。」

龍樹はそっとつぶやいた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「ドンドンドン!ドンドン!『開けろ龍樹!』ドンドンドン!」


「ん?・・・あ。」


ドアを叩く音で目が覚めた。夕方だ。

どうやら、紗咲と話をしている内に、二人で寝てしまったようだ。


「一樹置きっぱなしだった!回収しなきゃなぁ。」


そう言ってドアを開けると、


「龍樹!助けてくれ!」


叫ぶ一樹。どうしたのか、考える。

ふと、一樹の後ろに目がいった。


「・・・?」


「 こ ん に ち は 。」


「…ッ!?」


龍樹は本能的にその場を飛び退いた。

その声の主の女は、決して黒くない、黒くないはずなのに、ドス黒く見えた。

龍樹は背中に、氷水をぶっかけられた様な悪寒が走った。

“そいつ”の手には血まみれの刀が握られていた。

そしてその後ろには・・・


「うぅぅわあああぁぁぁーーーー!!!!」


“そいつ”はいまにも切りかかってきそうな殺気を出し、

一樹の背後で、口が裂けた様な笑みを浮かべ、こう言い放った。




「貴方と友達、どっちが先に死ぬ?」







とりあえず不定期ですが、

頻度は出来るだけ高めで投稿したいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ