俺、召喚する。
十三部大和はピッカピカの高校一年生である。
身長168センチ、体重62キロ、こういった物語の主人公としては最低限のルックスをもつ健康優良不良男子である。
これから始まるのはそんな彼が英雄になるまでのお話。
無論現代の若者である彼は漫画やアニメの主人公に憧れた事や自分が主人公に、ひいてはヒーローになったらなんて妄想も一度や二度じゃ足らないだろう。
それは彼とて同じ事。
いや、義務教育上がりの彼はまだふとそんな事を考える時もあった。
そして彼は知る事になる。
彼自身の運命の歯車は神の気まぐれなどで廻るのでは無く、この世に生を受けてよりの必然だったのだと。
日本某所、日曜日、午後16時頃、快晴、遊具の撤去された小さい公園
男十三部大和はコンビニで買った肉まんを食していた。
高校生になってから少しばかり増えたお小遣いは成長期男子の胃袋に消えた。
「しかし肉まんは美味い、俺なら肉まんを作った人物には国民栄誉賞を与え歴史に名前を残す事を約束するだろうな」
なんて事を一人誰もいない中何をするでも無く公園で呟く大和。
この公園に来た事すら間違いであるとも知らずに。
「喉が渇いたな、どれ水でも」
しかしこれがいけなかった!同じくコンビニで買ってきた炭酸飲料を手に取ろうとした時にもう片方の手に持っていた肉まんが落ちてしまった!
「うおっ!マジかよ!」
そしてその拍子に肘でペットボトルを倒してしまい、蓋が十分に閉められていなかったそれは中身をブチまけながら地面へと転がる。
「あーあー、ついてねぇなぁ……俺」
否!彼がついていないのはここからである!
ブチまけられた炭酸飲料が生み出した水溜りが奇妙な濃い光を発した後に肉まんを飲み込んでしまったでは無いか!
大和が狼狽えている間に元炭酸飲料の水溜りは魔法陣のような形になり、一層光を強くしていく!
「えっ、ちょっコレなんだよ!夢なのか!?」
実に平凡な反応を示す大和とは裏腹に目の前の非凡な現象は更に度合いを増していく。
大和以外は誰も居ない公園の夕方、大和の胃の中に入るはずだった肉まんと炭酸飲料は遂にその姿を人の形へと変えていた。
「ワタシヲ………………ッテ………ハ………マエ……」
挙げ句の果てに女性の声で話しかけてくる元コンビニ商品二点融合体を大和は泣きが入りつつも観察した。というか何を言ってるのかわからない。
「マジで……俺なんかしらねぇ内に妄想と現実の区別がつかなくなってたのかな……?」
「ワタシヲ………トキハナッタノハ………オマエ……?」
相変わらずノイズ混じりだがさっきよりもはっきりと聞こえてくる問いかけ、しかし大和は答えられないでいた。聞き取りにくいのもあるが彼はビビっていたのである。
「え、えーとあんたは?に、肉まんの精霊とか?俺が肉まん落としちゃったから、えっとその、怒ってるとか?」
「何を……言っている………?」
今度は全部聞き取れた。その姿ももうほぼほぼ人である。
言っている意味がわからない、といった風な仕草を取る人の形をした炭酸水の塊、実はまだしゅわしゅわ言っている。
しかしこれ以上無いほどテンパっていた大和はこう思っていた。
(肉まんの精霊じゃないならよかったが……もしや炭酸飲料の精霊か……?)
彼をアホと責める事はできないだろう。こんな摩訶不思議な事は生まれて初めてなのであるから。
「あ、あのー?俺は十三部大和って言うんだけど、お前はー、なんなんだ?一体?」
「十三部大和……十三部大和………」
相手の名を聞くときはまずは自分からとはよく言うが彼は相手の名を知る為に律儀にも名乗った、名乗ってしまったのだ。
十三部大和の名を繰り返しながら人型の炭酸水は色を変え遂には完全な女の人の体になったのである。……山羊のような角と蝙蝠のような翼を除けば、だが。
「うええっ!?ちょっと色々起こり過ぎだって!何なんだよ!!?」
コンゴトモヨロシクとでも言うのか?とか思いつつ、しかしやっぱり狼狽えつつ、おっかなびっくり目を向ける。と、ニカッと笑う炭酸の精霊(仮)と目があう。可愛い。
「十三部大和、よくぞ封印されていた余を召喚し解放してくれたな、礼を言おう」
「え、え?はあ、どうも、封印?」
「さて先ずは名乗るとしよう、我が名はラスシィル!高貴なる血統の悪魔なるぞ!」
「……悪魔!?」




